強制わいせつ(不同意わいせつ)罪で逮捕されるとどうなる?流れや注意点を解説


- 「もしかして、何らかの罪に該当するかもしれない…」
- 「逮捕されるのではないか…」
いかがわしい行為をしてしまって、このような不安を抱えていませんか?
被害者の同意なくわいせつな行為をした場合は、不同意わいせつ罪が成立します。
逮捕されれば取り調べや勾留を受けることとなり、最悪の場合は刑事裁判へと進む可能性があります。
そのため、まずは状況をしっかりと整理し、自覚があれば真摯に反省して、弁護士に相談するのが重要です。
本記事では、どのような行為が不同意わいせつ罪に該当するのか、逮捕される場合とそのあとの流れを詳しく解説します。
また、弁護士に相談することで得られるメリットについても紹介するので、今後の対応の参考にしてください。
強制わいせつ罪とは?現在は不同意わいせつ罪の容疑で逮捕される
従来は、わいせつ行為をおこなった場合には「強制わいせつ罪」が成立していました。
しかし、2023年7月13日に刑法が改正され、「不同意わいせつ罪」に名称が変更されるとともに、犯罪の成立要件が見直されました。
ここでは、旧法の強制わいせつ罪と、新法の不同意わいせつ罪の違いについて、詳しく解説します。
2023年7月12日以前は強制わいせつ罪が成立した
わいせつ行為に関する法律としては、2023年7月12日以前は以下の強制わいせつ罪が規定されていました。
(強制わいせつ)
第百七十六条 十三歳以上の者に対し、暴行又は脅迫を用いてわいせつな行為をした者は、六月以上十年以下の懲役に処する。十三歳未満の者に対し、わいせつな行為をした者も、同様とする。
引用元:刑法|e-Gov法令検索
このように、強制わいせつ罪では、犯行時に「暴行」や「脅迫」を用いることが要件とされています。
そのため、被害者の性的な意思決定の自由が明らかに侵害されている場合でも、暴行や脅迫を伴っていなければ、強制わいせつ罪が成立しない事例が多いことが問題視されていました。
たとえば、上司などが自身の権力を利用し、直接的な暴力を振るうことなく、部下を性的関係に追い込むような事例です。
2023年7月13日以降は不同意わいせつ罪が成立する
強制わいせつ罪の問題点を解消するため、2023年7月13日の刑法改正により、名称が「強制わいせつ罪」から「不同意わいせつ罪」に変更されました。
また、同時に成立要件についても、以下のように変更されています。
(不同意わいせつ)
第百七十六条 次に掲げる行為又は事由そのほかこれらに類する行為又は事由により、同意しない意思を形成し、表明し若しくは全うすることが困難な状態にさせ又はその状態にあることに乗じて、わいせつな行為をした者は、婚姻関係の有無にかかわらず、六月以上十年以下の拘禁刑に処する。
一 暴行若しくは脅迫を用いること又はそれらを受けたこと。
二 心身の障害を生じさせること又はそれがあること。
三 アルコール若しくは薬物を摂取させること又はそれらの影響があること。
四 睡眠その他の意識が明瞭でない状態にさせること又はその状態にあること。
五 同意しない意思を形成し、表明し又は全うするいとまがないこと。
六 予想と異なる事態に直面させて恐怖させ、若しくは驚愕がくさせること又はその事態に直面して恐怖し、若しくは驚愕していること。
七 虐待に起因する心理的反応を生じさせること又はそれがあること。
八 経済的又は社会的関係上の地位に基づく影響力によって受ける不利益を憂慮させること又はそれを憂慮していること。
2 行為がわいせつなものではないとの誤信をさせ、若しくは行為をする者について人違いをさせ、又はそれらの誤信若しくは人違いをしていることに乗じて、わいせつな行為をした者も、前項と同様とする。
3 十六歳未満の者に対し、わいせつな行為をした者(当該十六歳未満の者が十三歳以上である場合については、その者が生まれた日より五年以上前の日に生まれた者に限る。)も、第一項と同様とする。
引用元:刑法|e-Gov法令検索
つまり、暴行や脅迫を用いた場合に限らず、被害者が抵抗できない状況にあった場合にも犯罪が成立することになり、加害者が処罰されやすくなったといえます。
不同意わいせつ(強制わいせつ)罪で逮捕される可能性が高いケース3選
2023年の検察統計によると、不同意わいせつ罪で検挙された事件は4,505件あり、そのうち2,656件で被疑者が逮捕されています。
そのため、不同意わいせつ罪で逮捕される確立は、約59%です。
不同意わいせつ罪に該当する行為をおこなったからといって、必ずしも逮捕されるわけではありません。
しかし、以下の3つのケースに該当すれば、逮捕される可能性は高くなってしまいます。
1.わいせつ行為の悪質性が高い場合
わいせつ行為の内容が悪質であると判断された場合、逮捕される可能性が高くなります。
一般的に、以下のような行為があれば、悪質性が高いと判断されやすいです。
【わいせつ行為の悪質性が高いと判断される可能性がある場合】
- 犯行に凶器を用いた場合
- 犯行の継続時間が長かった場合
- 胸や淫部など部位に接触した場合
2.一度、現場から逃亡している場合
不同意わいせつの現場から一度逃亡している場合には、逃亡のおそれがあると判断され、逮捕される可能性が高まります。
3.証拠隠滅をする可能性が高い場合
証拠隠滅のおそれがあると判断された場合、逮捕される可能性が高まります。
一般的に、以下のような行為があれば、証拠隠滅のおそれが高いと判断されやすいです。
- 口止めのために被害者にお金を渡して示談を迫る
- 証言を歪ませるために被害者を脅迫する
逮捕をおそれて証拠隠滅を図るのは逆効果なので、絶対に控えてください。
不同意わいせつ(強制わいせつ)罪で逮捕されたあとの一般的な流れ
不同意わいせつ罪で逮捕された場合、刑事手続きは以下のような流れで進みます。
- 逮捕
- 送致
- 勾留
- 起訴
- 刑事裁判
ここから、それぞれの手続きについて詳しく解説します。
1.逮捕
被害者の供述や証拠などから、犯罪の嫌疑が強いと警察が判断した場合、逮捕されます。
逮捕されると警察署に連行されて取り調べを受け、身柄を拘束されることになります。
なお、逮捕された時点では、まだ正式に罪が確定したわけではありません。
2.送致|逮捕から48時間以内
逮捕から48時間以内に、警察は検察へ被疑者を送致します。
被疑者が容疑を否認している場合や、黙秘している場合でも、基本的に全ての事件で送致がなされます。
3.勾留|逮捕から72時間以内
事件を引き継いだ検察官は、送致された内容を確認したうえで、被疑者をさらに身体拘束する必要があるかどうかを慎重に判断します。
この判断は、送致を受けてから24時間以内(逮捕から72時間以内)におこなわれます。
勾留の必要がないと判断されれば、被疑者は身体拘束を解かれます。
そのあとは在宅事件として捜査が進み、必要に応じて検察からの呼び出しを受け、取り調べに応じる形で捜査が進められるのです。
一方で、勾留の必要性があると判断されれば、検察官は裁判所に対して勾留請求をおこないます。
裁判所が勾留請求を認めた場合には、勾留が決定し、被疑者は引き続き身体拘束を受けます。
勾留期間は原則として10日間ですが、捜査に必要な場合は最長10日間の延長が認められるので、最長20日間にわたって身体拘束を受ける可能性があるでしょう。
4.起訴|逮捕から最長23日以内
勾留期間中に捜査機関が捜査を進め、被疑者を起訴するかどうかを決定します。
捜査の結果、犯罪の立証が困難であると判断されたり、被害者との示談が成立したりして刑事裁判をおこなう必要がないと判断された場合には、「処分保留」または「不起訴処分」となり、被疑者は釈放されることになります。
一方で、刑事処分の必要性があると判断されれば、検察官は被疑者を起訴します。
起訴された場合は、被疑者勾留から被告人勾留へと自動的に移行します。
そのあとは、保釈されない限り、刑事裁判が終わるまで警察署または拘置所で引き続き身体拘束を受けます。
5.刑事裁判|起訴から約2ヵ月後
起訴されたあとは、刑事裁判が始まります。
刑事裁判の開始日に期限は設けられていませんが、起訴後の1回目の勾留期間は最長2ヵ月に決まっているなどの事情から、起訴から約2ヵ月後に第1回公判期日が指定される場合が多いです。
被告人が罪を認めていれば、第1回公判で結審し、その後2週間ほどで判決が下されることになります。
一方、被告人が罪を争い、証人尋問や被害者との示談交渉が必要な場合などは、そのあとの裁判は月に1回程度のペースで進行します。
不同意わいせつ(強制わいせつ)罪で逮捕されないための3つのポイント
逮捕されると、長期間の身体拘束を受ける可能性があるだけでなく、社会的信用も大きく失墜してしまいます。
逮捕を回避するためには、ポイントを押さえて適切な対応を取ることが重要です。
ここでは、主なポイントを3つ解説します。
1.被害者との示談を進める
被害者のいる犯罪では、被害者が警察に被害届を提出していなければ、基本的には逮捕されません。
そのため、被害届が提出される前に被害者と示談を進めておくのが重要です。
知人の女性に対する不同意わいせつであれば、被害者の連絡先を知っている可能性が高く、連絡することで示談を進められるケースもあるでしょう。
しかし、加害者が直接被害者に接触することは避けてください。
被害者が恐怖を感じ、かえって被害届を提出する決意を固めてしまうかもしれません。
示談交渉を適切に進める際には、弁護士などの第三者に仲介を依頼することが望ましいです。
第三者が間に入ることで、冷静に話し合いをしながら示談を進められるので、双方の合意形成が円滑に進むでしょう。
2.事件発覚前なら自首する
捜査機関が事件の犯人などの情報を把握していない状態であれば、自首できます。
自首とは、犯人が事件について事実を認めたうえで、自身への刑事処分を求める行為です。
自首することで、刑罰が軽くなる場合があります。
しかし、以下のケースの場合には、自首とは認められません。
- 捜査機関が事件の犯人を特定している場合
- 警察から任意で出頭を求められ、それに応じた場合
そのため、自首するのであれば、タイミングはなるべく早いほうが好ましいでしょう。
3.刑事事件が得意な弁護士に相談する
逮捕を避けるには、弁護士に相談して逮捕の必要性がないことを適切に主張してもらうことが非常に重要です。
弁護士は法律の専門家であり、刑事事件に関する知識や経験も豊富に備えています。
個人でも逮捕の必要性がないことを主張できますが、弁護士に相談して主張してもらったほうが、逮捕の可能性は低くなるでしょう。
なお、刑事事件では国選弁護人制度があり、一定の条件を満たせば無料で弁護士がつきます。
しかし、国選弁護人制度は、「勾留後」か「起訴後」のタイミングでなければ利用できません。
逮捕を避けたい場合は、逮捕前の段階で自ら弁護士を選び、依頼する必要があります。
また、弁護士にも得意・不得意分野があるので、刑事事件を得意とする弁護士を選ぶようにしましょう。
不同意わいせつ(強制わいせつ)罪で逮捕された場合に弁護士に依頼するメリット
逮捕前・逮捕後に限らず、不同意わいせつ罪に問われるおそれがあるときは、できるだけ早く弁護士に相談・依頼することが重要です。
ここでは、弁護士に依頼することで得られる主なメリットを3つ解説します。
1.早期に身柄が解放される可能性が高まる
不同意わいせつ罪で逮捕されると、警察の取り調べがおこなわれ、最長で23日間の身体拘束を受ける可能性があります。
その際、弁護士に依頼することで、「逃亡や証拠隠滅の恐れがないため、勾留の必要がない」と裁判所に主張してもらえます。
また、勾留が決定しても、準抗告(勾留決定に対する不服申立て)を申立ててもらうことで、勾留を避けられる可能性もあるのです。
できるだけ早く身柄拘束を解くためには、弁護士による迅速な対応が重要となるでしょう。
2.不起訴処分になるよう努めてくれる
弁護士は、被疑者の不起訴処分を獲得するよう、適切な対応を取ってくれます。
具体的には、以下のような弁護活動に期待できるでしょう。
被害者との示談
被害者との間で示談が成立し、加害者の処罰を希望しないという意向が確認されると、検察が「処分の必要性が低い」と判断しやすくなります。
その結果、不起訴となる可能性が高まります。
再発防止のため性依存症の治療
不同意わいせつ罪をはじめとする性犯罪で逮捕される人のなかには、自覚がないまま性依存症となり、自分の行動をコントロールできなくなっているケースも見られます。
この場合、専門の医療機関やカウンセラーによる治療を受けることが有効です。
再犯防止に向けて、真摯に治療へ取り組んでいることを検察に主張できれば、不起訴の可能性が高まります。
冤罪時の対応
冤罪の場合は、黙秘を貫き自白調書を作成させないことで、嫌疑不十分により不起訴となる可能性が高まります。
黙秘することで取調官からの圧力が強くなることもありますが、弁護士は頻繁に被疑者と接見し、適切な対応のアドバイスや精神的なサポートを提供します。
3.実名報道を防げる可能性が高まる
わいせつ事件で逮捕された場合、新聞やテレビ、インターネットなどで実名報道される可能性があります。
一度でも実名で報道されてしまうと、再就職をはじめとする社会復帰や名誉回復において、非常に大きな影響を受けることになるでしょう。
実名報道の基準は明確に定められていませんが、少しでも報道リスクを下げるためには、早めに弁護士へ相談することが重要です。
たとえば、警察が事件を捜査する前に被害者と示談が成立していれば、実名報道のリスクが下がります。
弁護士に依頼することで、早期の示談成立に向けて交渉を進めてもらいましょう。
また、逮捕後に警察が事件を捜査している段階でも、弁護士から警察署長などに対し、実名報道を控えるよう求める上申書を提出してもらうことも可能です。
さいごに|ベンナビ刑事事件で性犯罪の解決が得意な弁護士を探そう!
事件の悪質性や証拠隠滅のおそれが高いと判断されれば、不同意わいせつ罪で逮捕されてしまう可能性は十分に考えられます。
逮捕を防ぐためには、刑事事件に得意な弁護士に相談したうえで、被害者との示談交渉や自首などを速やかに進めることが大切です。
また、万が一逮捕されても、弁護士に相談すれば、早期の身柄解放・不起訴処分の獲得・実名報道の回避に向けて尽力してもらえます。
重要なのは、逮捕前でも逮捕後でも、できるだけ早く行動を起こすことです。不安を感じている場合は、一人で悩まず、早めに弁護士に相談して専門的なアドバイスを受けるのがよいでしょう。
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