借金返済中でも生活保護は受けられる!申請する際の順番と具体的な流れについて解説


体調不良や収入の減少により生活が困窮した場合、生活保護の受給を検討すべきです。
しかし、すでに借金を抱えている場合、「借金があると申請が通らないのでは?」「生活保護を受けたら借金の返済はどうなるの?」と、不安に感じることもあるかもしれません。
実は、借金があっても生活保護を受けることは可能です。
ただし、申請時にはいくつか注意点があります。
また、自己破産の申請もあわせて検討すべきですが、申請のタイミングにも気をつけなければなりません。
本記事では、借金がある場合の生活保護申請のポイントや注意すべき点を詳しく解説します。
生活保護と自己破産の申請順についても触れているので、それぞれ最適なタイミングで申請できるように、最後までチェックしてください。
借金があっても生活保護の申請をすることができる!
借金を抱えている状態でも、基本的には生活保護の申請は可能です。
なぜなら、生活保護を受給するためには、主に以下の要件を満たせばよいからです。
【生活保護の主な受給要件】
- 世帯収入が、国が定める保護基準(最低生活費)を下回っている
- 預貯金や土地などの財産を持っていない
- 家族や親族などから支援を受けられない
- 病気やけがなどが理由で、働けずに収入を得られない
生活保護の受給要件からもわかるとおり、借金の有無は生活保護の受給に直接的には影響しません。
実際はケースワーカーから「先に自己破産をするよう」に言われることが多い
借金があっても生活保護の申請はできます。
ただ実際は、ケースワーカーに相談した際に「まずは先に自己破産をするように」と言われ、自己破産の手続きが完了するまで申請を受け付けてもらえないことがあります。
生活保護は、あくまでも最低限度の生活を保障する制度であり、原則として生活保護費を借金返済に充てることは認められていません。
そのため、借金を抱えたまま生活保護を申請すると、ケースワーカーから先に自己破産を求められることがあるのです。
こうした対応に戸惑うこともあるかもしれませんが、適切な手順を踏めば、自己破産をせずとも生活保護を受給できる可能性は十分にあります。
不安がある場合は、弁護士にも相談しながら、正しい対応を進めることが大切です。
借金がある人は生活保護申請と自己破産のどちらを先にするべきか?
生活費の補填のために生活保護の申請を先にすべきか、それともケースワーカーから指導があったとおりに自己破産を先に進めるべきかは、具体的な事情により異なります。
基本的には、生活保護の申請を先にしたほうがよいですが、経済状況によっては生活保護の申請を先にしても問題ありません。
以下、それぞれの選択肢の特徴やメリットを解説します。
1.基本的には生活保護の申請を先にするほうがおすすめ
自己破産にかかる期間や費用を加味すると、基本的には生活保護申請を先にするのがおすすめです。
自己破産の免責が確定するまでには、6ヵ月~1年程度の期間がかかります。
一方、生活保護は申請から14日以内に支給の可否が決定され、認定されれば直近の支給日から受給を開始できることがほとんどです。
そのため、当面の生活費を早急に確保したい場合は、生活保護を先に申請するのが適切でしょう。
また、生活保護を受けたあとに自己破産の手続きを申し立てる際は、法テラス(日本司法支援センター)の立替制度を利用できます。
立替制度を利用するにあたっては、「収入または資産が一定以下であること」などの条件があり、条件を満たせば、自己破産の手続きに必要な弁護士費用などを立て替えてもらうことが可能です。
立替制度の対象は弁護士費用で、自己破産を裁判所に申し立てる際に必要な予納金(通常約20万円程度)は対象となっていないのが通常です。
しかし、生活保護を受けている場合は、予納金も立替えの対象となることがあります。
また、立替制度で立て替えた費用は、後日分割で返済することが原則ですが、自己破産手続きが終了したあとも生活保護を受けている場合は、返済の免除を申請できる場合があるのもメリットです。
自己破産よりも先に生活保護を受給していれば、結果として自己負担なしで自己破産の手続きを進められるかもしれません。
2.生活費に余裕があるなら自己破産が先でもよい
生活費にある程度の余裕があれば、自己破産を先に進めることも選択肢の一つです。
自己破産を終えてから生活保護を申請すれば、ケースワーカーから「まずは自己破産をしてください」といわれることがなくなるので、スムーズに手続きを進められる可能性があります。
そのほかにも、生活保護の不正受給とみなられるリスクが減る、債権者からの差し押さえが止まった状態で生活保護を受給できる、などもメリットです。
生活保護を受給してから自己破産をする際の大まかな流れ|5ステップ
生活保護を受給してから自己破産を進める場合、手続きは次のような流れで進みます。
- 自己破産が得意な弁護士に相談する
- 地域の生活保護相談窓口で相談する
- 窓口で生活保護の申請手続きをおこなう
- 法テラス経由で弁護士に相談・依頼する
- 弁護士に自己破産の手続きを進めてもらう
以下、それぞれの手続きについて詳しく解説します。
1.自己破産が得意な弁護士に相談する
生活保護申請をする前に、自己破産が得意な弁護士に相談しておきましょう。
先に弁護士に自己破産を相談・依頼しておくことで、ケースワーカーへ自己破産の意思があることが伝わりやすくなり、生活保護の申請がスムーズに進むことが期待できます。
2.地域の生活保護相談窓口で相談する
次に、生活保護相談窓口に相談しましょう。
生活保護相談窓口は、住んでいる地域を所管する福祉事務所の生活保護担当に設けられています。
相談窓口では、相談員が生活困窮に至った経緯や相談者の家庭の状況について質問したあと、生活保護制度について説明を受けることができます。
3.窓口で生活保護の申請手続きをおこなう
相談窓口へ相談したあとは、生活保護申請をおこないましょう。
申請の際は、原則として以下のような必要情報を記載した申請書を、福祉事務所に提出しなければなりません。
- 氏名、住所
- 生活保護を希望する理由
- 資産や収入の状況
また、世帯の収入や資産に関する資料として、通帳のコピーや給与明細書などを提出が必要な場合もあります。
提出後は、ケースワーカーが申請者の生活保護の必要性などの審査し、生活保護を受けるかどうかが決定されます。
4.法テラス経由で弁護士に相談・依頼する
生活保護を申請したあとは、自己破産の手続きを進めるために、再度弁護士に相談しましょう。
このとき、法テラスを経由して立替制度を利用すれば、自己破産手続きの裁判所費用や弁護費用を立て替えてもらえます。
金銭的に余裕がない場合には、法テラスを利用するのがおすすめです。
5.弁護士に自己破産の手続きを進めてもらう
正式に依頼する弁護士が決まったら、その弁護士に自己破産の手続きを進めてもらいます。
破産を申し立てたあと、裁判所での書面審査、免責審尋などの手続きを経て、裁判所から免責許可決定が下されれば、借金の返済義務が免除されます。
自己破産の手続きを詳しく知りたい方は、以下の記事をご覧ください。
【関連記事】自己破産したらどうなる?デメリットや費用・条件を弁護士がわかりやすく解説
借金返済中に生活保護を受ける際の3つの注意点
生活保護を申請したあとに自己破産を申し立てる場合は、借金返済中に生活保護を受給することになります。
この際、とくに気をつけるべき注意点が3つあるので、しっかりと確認しておきましょう。
1.生活保護を受給しても借金は免除されない
生活保護を受給しても、借金の返済義務は免除されません。
また、そもそも生活保護制度は受給者の最低限の生活を保障するものなので、受給者の負債を解消する効力はないことを知っておきましょう。
そのため、生活保護受給後も、債権者からの取り立てが続く場合があります。
厳しい督促を受けて、精神的に負担を感じる場合には、早めに弁護士に自己破産について相談してください。
弁護士が自己破産の依頼を受任すると、受任通知が債権者に送付されます。
受任通知を受け取った債権者は、債務者に対して取り立てができなくなるので、精神的な負担が軽減されるでしょう。
2.生活保護費を借金の返済に充てることはできない
生活保護費は、生活を営むうえで必要な費用のために支給されるので、借金の返済に充てることは禁止されています。
もし借金の返済に充ててしまうと、不正受給とみなされてしまうので、注意してください。
3.銀行口座の生活保護費は差し押さえられる可能性がある
借金が残った状態で生活保護を受給すると、生活保護費が差し押さえられるリスクがあります。
借金の返済を求める債権者は、裁判所の判決や支払督促などの「債務名義」を取得することで、債務者の財産に対して強制執行をおこなうことができます。
通常、強制執行では最低限度の生活を送るために必要とみなされる財産を差し押さえることはできません。
そして「生活保護を受け取る権利」は、差し押さえの対象外です。
しかし、生活保護費は一度銀行口座に振り込まれると、その時点で「生活保護費を受け取る権利」から「銀行に預けているお金を引き出す権利」へと性質が変わります。
そのため、生活保護費であっても強制執行によって差し押さえられる可能性があるのです。
さいごに|借金と生活保護に関する悩みがある場合は弁護士に相談を!
借金があっても生活保護の申請はできますが、自己破産のタイミングもあわせて考えなければなりません。
また、借金返済中に受給した生活費を借金の返済に充てると不正受給とみなされるなど、受給後にも多くの注意点があります。
そのため、生活保護や自己破産の申請の際は、債務整理を得意とする弁護士に相談するのがおすすめです。
弁護士に相談すれば、両制度を申請する順番やタイミングに関してアドバイスをもらえます。
また、手続きの進め方に疑問点が生じた際は、都度弁護士に質問できます。
借金の話は他人に話しづらいものですが、まずは弁護士に気軽に相談してみましょう。
なお、「ベンナビ債務整理」を利用すれば、債務整理を得意とする弁護士を簡単に探せます。
たとえば「初回の面談相談無料」などの条件に合致する弁護士を絞り込めるので、費用面が不安な方でも安心です。
身近に相談できる弁護士がいない場合は、ぜひご活用ください。