不倫慰謝料を払えないとどうなる?4つのリスクと対処法をわかりやすく解説


不倫の慰謝料を請求されたものの、「支払うお金がない」と悩んでいる方は多いのではないでしょうか。
不倫の慰謝料を支払わずにいると差し押さえなどの法的措置を取られることもあり、生活や信用面で大きなダメージを受ける可能性があります。
しかし、慰謝料が払えない状況でも、適切な対処をすれば負担を軽くすることが可能です。
本記事では、不倫慰謝料を払えない場合に起こり得る4つのリスクをわかりやすく解説するとともに、すぐに実践できる対処法や、慰謝料の免除や時効についても紹介します。
不倫慰謝料を支払えずに悩んでいる場合は、正しい知識を得て落ち着いて対処しましょう。
不倫慰謝料を払えないとどうなる?考えられる4つのリスク
不倫慰謝料を払えない状況を放置していると、以下の4つのリスクが生じるおそれがあります。
- 裁判を起こされ、より高額な慰謝料を請求される
- 遅延損害金のペナルティが発生する
- 給与や財産を差し押さえられる
- 家族や勤務先に不倫がバレる
それぞれについて、わかりやすく解説します。
裁判を起こされ、より高額な慰謝料を請求される
不倫について慰謝料を支払うよう求められたにもかかわらず、無視したり放置したりすると、相手側が裁判を起こす可能性があります。
不倫の慰謝料は、当事者間の交渉や裁判所を通した話し合いである調停などで決められて請求されるのが通常です。
しかし、当事者同士での和解で決まった支払いを果たさずに放置していると、相手側がより強制力のある訴訟という選択をとるケースがあるのです。
訴訟になると、慰謝料の支払いについて誠実に対応しなかったことが裁判所にマイナス評価され、示談段階での金額よりも高額な慰謝料の支払いが命じられる可能性があります。
また、慰謝料以外に訴訟費用や弁護士費用なども加算されることがあり、結果的に当初よりも支払う金額が膨らんでしまうケースがほとんどです。
裁判では、過去のやり取りや謝罪の有無なども判断材料となるため、「払えないから放置」という選択は極めて危険です。
遅延損害金のペナルティが発生する
慰謝料の支払い期限を過ぎたにもかかわらず支払わない場合、遅延損害金が発生します。
遅延損害金とは、約束通りの期日までに支払いをおこなわなかったことに対する賠償金のようなものです。
慰謝料の遅延損害金は、民法の決まりにしたがって年3%の割合で算出されます。
しかし、慰謝料に関する合意によってはそれ以上の利率で発生することもあるので注意しましょう。
たとえば、100万円の慰謝料を半年間滞納すれば、それだけで5万円以上の損害金が発生するケースもあります。
「払えないから仕方がない」と慰謝料の支払いを放置すると、損害金が膨らんで支払い負担が増してしまうので、たとえ一括で支払えなくても、分割や猶予を求めるなどの誠実な対応を心がけましょう。
給与や財産を差し押さえられる
裁判所の判決によって決まった慰謝料の支払いをせずに放置していると、最悪の場合、財産を差し押さえられる「強制執行」がおこなわれる可能性があります。
強制執行とは、裁判所を通して、給与や預貯金、不動産などの財産を差し押さえて強制的に未払いの慰謝料を回収する手続きです。
給与が差し押さえられると、手取り額の一部(最大で4分の1程度)が強制的に天引きされるため、生活費が圧迫されることになるでしょう。
また、銀行口座の差し押さえにより預金が凍結されると、公共料金や家賃などの自動引き落としにも支障をきたすこともあります。
家族や勤務先に不倫がバレる
慰謝料を支払わずに放置した結果、訴訟や差し押さえといった法的手続きに発展すると、不倫が家族や職場にバレるリスクも生じます。
たとえば、給与の差し押さえが実施された場合は、勤務先にその事実が知られることになり、不倫を理由とする慰謝料請求であることまで判明する可能性があるでしょう。
また、自宅に届いた裁判所からの訴状や差押命令を家族が目にして、不倫が発覚するケースも考えられます。
これらは、不倫の事実を隠したまま生活している人にとっては、家庭や仕事の信用を一度に失う大きなリスクといえるでしょう。
不倫慰謝料を払えない場合の対処法
不倫慰謝料の支払い義務があるにもかかわらず、経済的な事情でどうしても払えないという状況に陥る人は一定数います。
しかし、請求を放置すれば、損害金の加算や裁判、差し押さえなど、状況がどんどん悪化してしまいます。
そこで重要なのは、誠実な姿勢で相手に対応し、自分が取れる現実的な解決策を探ることです。
ここでは、不倫慰謝料を払えない場合にとるべき対処法を具体的に紹介します。
前提として相手の請求を無視するのはNG
前提として、慰謝料を請求された場合は以下のような理由から絶対に無視をするべきではありません。
- 相手のさらなる怒りを買う
- 交渉で解決するのが難しくなる
- 裁判を起こされる可能性が高まる
- 慰謝料が増額されるおそれがある
- 強制執行をされるおそれがある
対応しないままでいると、反省している姿勢が見えないとして、裁判になった際にもより高額な慰謝料や遅延損害金を支払うことになりかねません。
たとえ今すぐに払えない状況だとしても、誠実に話し合うことで分割払いや減額に応じてもらえる可能性もあります。
まずは慰謝料の支払いから逃げないことが、リスク回避の第一歩です。
まずは支払えていないことについて相手に謝罪する
慰謝料の支払いができていない場合、まず相手に対して誠意を込めて謝罪することが重要です。
謝罪の際は、支払いができない理由や現在の生活状況を率直に伝えることで、相手の理解を得やすくなる場合があります
たとえば、「非を認めており誠意はあるが、収入が少なく一括で支払うのが困難」と丁寧に伝えるだけでも、印象は大きく変わるでしょう。
相手も人間である以上、こちらの態度次第で柔軟に対応してくれる可能性もあります。
謝罪を怠ると、示談交渉や分割払いの可能性すら閉ざされてしまうおそれがあるので、まずは誠意ある対応を心がけましょう。
減額交渉をする
慰謝料の支払いが難しい場合は、慰謝料額の減額交渉をするのも選択肢のひとつです。
そもそも不倫慰謝料の金額は、法的に決まっているものではありません。
そのため、たとえば「現在の年収では○万円が限界です」といった具体的な提案をすることで、相手が現実的な慰謝料にまで減額してくれる可能性があります。
ただし、減額交渉の際は、感情的にならず冷静かつ誠実に交渉することが大切です。
自力での交渉が難しいと感じた場合は、弁護士を通じて法的根拠を挙げながら減額交渉を依頼することも可能です。
支払い意思を示しながら現実的な金額を提示することが、円満な解決のカギになります。
分割で支払ってもよいか交渉する
慰謝料の一括支払いが難しい場合は、分割払いの交渉を試みるのも現実的な対処法です。
実際の慰謝料請求では、分割払いで和解するケースも多くあります。
ただし、分割払いに応じてもらえるかどうかは、相手との信頼関係や支払い意思の有無に左右されるため、交渉の際は誠実な態度で具体的な返済計画を提示することが重要です。
たとえば、「月3万円ずつの分割で、20回払いとしたい」など、明確な金額と回数を示して交渉すると、合意が得られやすくなるでしょう。
また、分割払いの際は、後々のトラブルを防ぐために、口頭だけでなく示談書を作成しておくのがおすすめです。
交渉が不安な場合は、弁護士にサポートを依頼することも検討しましょう。
親や親戚などに立て替えてもらう
経済的に困窮しており、慰謝料を自力で支払うのが難しい場合は、信頼できる家族や親戚に立て替えをお願いするという選択肢もあります。
親族への金銭的な相談には勇気が必要ですが、不倫慰謝料の滞納というトラブルを放置することのほうが、将来的には大きな損害につながるリスクがあります。
なお、慰謝料を親族に立て替えてもらう際は、あくまで一時的な支援として捉え、借用書を作成して返済計画を明示するなど、誠実な対応を心がけましょう。
消費者金融などで借金をして、慰謝料を支払うのはおすすめできない
すぐにお金が用意できないとしても、消費者金融やカードローンなどでお金を借りて慰謝料を支払うのは絶対に避けるべきです。
新たな借金を増やすことで、さらに返済不能に陥るリスクが高まるおそれがあります。
消費者金融は、銀行などと比較すると審査も緩くスピーディに融資を受けられる傾向がありますが、年利は15%~18%と高金利であるケースが多いです。
慰謝料のような高額な支払いのために多額の借金をすると、その分利息の支払いに苦しむことになるでしょう。
どうしても資金が用意できない場合は、弁護士に相談し、債務整理や減額交渉を検討するほうが現実的かつ安全な解決策といえます。
自己破産を検討する
どうしても慰謝料を支払う見込みが立たない場合は、最終手段として自己破産を検討することも検討しましょう。
自己破産とは、裁判所から許可を得て慰謝料や借金などの支払い義務を免除してもらう手続きです。
ただし、不倫による慰謝料は、自己破産の免責対象とならない非免責債権と判断されるケースがあるため注意しましょう。
不倫慰謝料の支払いが原因で自己破産を検討する場合は、必ず借金問題解決の専門家である弁護士に相談したうえで、慎重に判断しましょう。
弁護士に対応を相談・依頼する
不倫慰謝料に関するトラブルは、個人で対応するには精神的な負担が大きく、また交渉の進め方によっては不利な条件で和解させられてしまうこともあります。
そのため、慰謝料の支払いについて悩んでいるなら、専門家である弁護士に相談・依頼するのがおすすめです。
弁護士であれば、慰謝料の支払い義務が本当にあるのか、金額は妥当か、減額や分割交渉が可能かなど、状況に応じた解決策を提示してくれます。
さらに弁護士が代理人となることで相手との直接交渉を避けられるため、精神的負担も大きく軽減されるでしょう。
費用が心配な場合でも、初回相談が無料の法律事務所や、法テラスといった公的機関を利用すれば、経済的に困窮している人でも弁護士との相談は可能です。
慰謝料の支払いが困難な場合は、まずは一人で抱え込まず、専門家に相談してみましょう。
不倫慰謝料を払えない場合によくある質問
ここでは、不倫の慰謝料を支払えない場合によくある質問についてまとめました。
慰謝料を支払うための資金を用意できない人は、ぜひ参考にしてください。
無職やシングルマザーなどで支払い能力がない場合、不倫慰謝料は免除してもらえる?
無職で収入がない、あるいはシングルマザーで生活に余裕がないといった事情がある場合でも、不倫慰謝料の支払い義務そのものが免除されることはありません。
法律上、慰謝料は不法行為に対する損害賠償とされており、経済状況にかかわらず支払う義務が生じます。
ただし、支払い能力がないことを理由に、減額や分割払いを相手に交渉することは可能です。
話し合いで合意が得られれば、支払い義務を軽くしてもらえるケースもあります。
不倫慰謝料を支払えない場合、生活保護費まで差し押さえられる可能性はある?
生活保護を受給している人が不倫慰謝料の支払いを命じられた場合でも、原則として生活保護費自体が差し押さえられることはありません。
これは、生活保護費が「最低限度の生活を保障するための公的支援」として、差し押さえが禁止されているためです。
ただし、生活保護の受給者でも、生活に余裕があると判断された場合には、支給額の見直しなどがおこなわれる可能性はあります。
そのため、生活保護受給者が慰謝料を請求された場合は、自治体のケースワーカーや弁護士に早めに相談することをおすすめします。
不倫慰謝料に時効はある?時効がきたら支払う必要はない?
不法行為に基づく損害賠償請求権の時効は「被害者が損害と加害者を知った時から3年」または「不法行為の時から20年」と定められています。
つまり、被害者となる人が不倫を知ってから3年以内に慰謝料請求がなければ、基本的に時効を主張して支払いを拒否することが可能です。
ただし、時効は自動的に成立するわけではなく、相手に対して「時効の援用」という意思表示をおこなうことで初めて成立します。
さらに、時効までの期間で一部支払いをしたり、支払う意思を示すような行動をしたりすると、時効が中断する可能性がある点にも注意が必要です。
慰謝料請求を受けたときに時効が成立しているかどうかわからない場合は、弁護士に相談のうえで慎重に対応することが重要です。
さいごに | 不倫慰謝料が払えない場合は弁護士に相談を!
本記事では、不倫慰謝料が払えない場合に発生するリスクや、払えないときの対処などについて詳しく解説しました。
不倫は不法行為であり、基本的に支払い義務から逃れる方法はありません。
支払えないからといって放置していると、相手側から訴訟を起こされたり、さらに慰謝料が高額になったりといった大きなリスクが生じます。
慰謝料の請求自体から逃れることは難しいですが、きちんと誠意を持って対応すれば分割払いや猶予などの対応をとってくれる可能性があるのも事実です。
慰謝料を支払えずに困っている場合は、まずは弁護士に相談して、自分の状況に適した対応を提案してもらいましょう。