慰謝料請求をしたのに音沙汰なし?主な理由と無視されたときの4つの対処法を解説


不倫や離婚にともなって慰謝料を請求したのに、相手からまったく返答がない状況に、焦りや不安を感じていませんか?
実は、慰謝料請求に対して相手方が無視をするケースは少なくありません。
そして、無視された状況で何も対応しないままでいると、請求そのものがうやむやになってしまう可能性があるため、適切に対処する必要があります。
本記事では、相手が慰謝料請求を無視する主な理由や無視されたときの対処法、請求時の注意点を解説します。
無視されたからといって不適切な方法で支払いを迫ると、かえって請求者側が法的責任を問われるリスクもあるため、本記事で正しい知識を身に着けておきましょう。
慰謝料請求をしたにもかかわらず音沙汰なしの状態になる主な理由
慰謝料を請求したのに相手からまったく反応がないのには、いくつかの理由が考えられます。
ここでは主な理由を紹介します。
1.自分には関係ないと思っている
慰謝料請求をしてから音沙汰がない場合、相手に通知が届いていたとしても、真剣に受け止めてもらえず、「自分には関係ない」と受け流されている可能性があります。
この場合、電話やメールで連絡を取り、請求がきちんと届いているか、どのように受け止めているかを確認したり、回答を催促する書面を送付してみましょう。
2.どう返答すればよいか迷っている
慰謝料請求後に音沙汰がない場合、請求された慰謝料の金額が想定を超えていたなどの理由で、相手が対応に困っているというケースも考えられます。
また、慰謝料を支払うかどうか考えている途中というケースもあるでしょう。
この場合でも相手方と連絡を取り、「今後どう対応するのか教えてほしい」と督促する必要があります。
3.そもそも相手に届いていない可能性がある
慰謝料請求をしたのに音沙汰なしの場合、そもそも相手の住所や電話番号、メールアドレスが間違っており、連絡自体が届いていない可能性も考えられます。
メールなどの送付からしばらくたっても音沙汰ない場合は、相手の連絡先に誤りがないか、もう一度確認しましょう。
内容証明郵便や書留郵便で送付した場合、住所に誤りがあれば「あて所に尋ねあたりません」という理由で返送されますが、普通郵便で送付した場合、住所に誤りがあっても郵便受けに投函されてしまうことがあります。
慰謝料請求を書面でおこなう場合、書面には個人情報が多数含まれています。
間違った相手に書面が届くと、プライバシーの侵害やトラブルにつながるおそれがあるので、細心の注意を払いましょう。
慰謝料請求をしたのに音沙汰なし!あなたが取れる4つの打開策
慰謝料請求後に相手から一向に音沙汰がない場合、以下で紹介する4つの方法も検討してみてください。
1.内容証明郵便で請求をしてみる
電話やメールだけで慰謝料を請求しており、相手から音沙汰がない場合は、内容証明郵便を使って、請求の意思を明確に伝えるのがおすすめです。
内容証明郵便とは、いつ、どんな内容の文書が誰から誰あてに差し出されたかを郵便局が証明してくれる制度です。
内容証明郵便を利用することで、次のような効果が期待できます。
- 相手に本気であることが伝わり、心理的なプレッシャーを与えられる
- 慰謝料請求をおこなった証拠が残る
- 時効の進行を一時的に停止できる
また、内容証明郵便はその後の調停や裁判などで証拠として扱うことができるので、後々の対応にも役立つ点でメリットがあります。
2.民事調停を使って慰謝料を請求する
内容証明郵便を使っても慰謝料請求について音沙汰がない場合、民事調停で慰謝料請求をおこないましょう。
民事調停は、家庭裁判所に所属する「調停委員」という第三者が間に入り、当事者双方の主張を聞きながら、解決案の提示や解決のための必要な助言をする手続きです。
裁判のような強制的な判断ではなく、当事者同士の合意に基づいて解決することを目的とします。
民事調停には、メリットとデメリットがそれぞれあるので、よく確認したうえで利用を検討しましょう。
メリット | デメリット |
・調停委員が中立の立場から助言してくれる ・話し合いがまとまると調停調書が作成され、法的効力を得られる ・相手と直接やり取りせずに済むため、冷静に話し合える |
・話し合いがまとまらなければ調停調書は作成されない ・意見が対立したままだと、裁判に移行する可能性がある ・精神的な負担や弁護士費用、裁判所に対する手数料が発生する |
3.通常訴訟を提起して慰謝料を請求する
慰謝料請求を無視されており、内容証明郵便や調停でも解決に至らなかった場合は、通常訴訟を提起しましょう。
訴訟を起こすと、慰謝料の金額や支払い義務の有無について裁判所が最終的な判断を下します。
そして、判決後にも相手方が慰謝料の支払いに応じない場合、法的根拠に基づいて強制執行などをおこない、相手の財産を差し押さえることも可能です。
なお、訴訟を起こした場合でも、途中で裁判所から和解勧告が出されることがあり、当事者どうしが歩み寄れば、正式な判決を待たずに解決できます。
通常訴訟にもメリットとデメリットがそれぞれあるので、よく確認しておきましょう。
メリット | デメリット |
・裁判官が法的な判断を下してくれる ・相手方が合意しなくとも、判決により支払いを命じられる ・裁判上の和解が成立した場合、和解金が支払われなければ強制執行が可能 ・判決に従わなければ強制執行も可能で、実効性が高い |
・当事者尋問で相手と対面する可能性がある ・手続きが複雑で、時間がかかる ・精神的な負担や弁護士費用、裁判所に対する手数料が発生する |
4.弁護士に依頼して請求してもらうのもおすすめ
慰謝料請求について音沙汰がない場合、弁護士から相手方に対して請求をしてもらうのもおすすめです。
たとえば、内容証明郵便を使って慰謝料請求をする場合でも、自分名義で出すか、弁護士名義で出すかによっても、相手に与える印象は大きく変わります。
弁護士名義の通知が届くと、相手は「このままだと裁判になるかもしれない」と感じやすくなり、真剣に対応してくれるかもしれません。
音沙汰なしの相手方に対して慰謝料請求をするときの4つのポイント
音沙汰がない相手に対して慰謝料請求をするうえでは、意識すべきポイントがいくつかあります。
ここでは、主なポイントを4つ見ていきましょう。
1.一度設けた支払い期限までは相手からの返信を待つ
慰謝料請求する場合、通常は、「◯◯までにお支払いください」などと支払い期限を設定します。
そのため、まずは慰謝料請求の支払い期限まで待ってみましょう。
相手が期限ぎりぎりになって連絡をしてくるかもしれません。
また、これまで口頭やメールなどの証拠が残りにくい方法で慰謝料請求していたのであれば、改めて内容証明郵便を出すなどして請求してもよいでしょう。
そして、期限まで待っても返信がなければ、次の対応を考えましょう。
2.あまりにも返答が遅いなら催促の連絡をしてみる
相手から返答がまったくない場合は、相手方に督促の連絡をしてみましょう。
相手のメールアドレスなどがわかっている場合は、「今どのように考えているのか」「いつ頃返事がもらえそうか」などを軽く尋ねるだけでも構いません。
丁寧なやりとりを心がければ、相手の警戒心がやわらぐこともあります。
もしメールや電話番号などがわからなければ、相手の住所宛に「これ以上返答がない場合は、やむを得ず訴訟に進むことになります」という内容の最終通告の書面を送る方法も有効です。
3.反省がないことを理由に慰謝料額の増額を主張する
相手が慰謝料を支払う気がまったくなさそうであれば、慰謝料額の増額を主張することも可能です。
不倫や浮気に関する慰謝料の相場は30万円〜300万円程度とされていますが、金額は状況によって大きく変動します。
そして、「反省度合い」も慰謝料の金額に影響する要素のひとつです。
請求を無視し続けたり、誠意を示さなかったりする場合は、反省の態度が見られないとして、慰謝料の増額理由にできるのです。
4.3年間という損害賠償請求権の時効に気を付けておく
不倫などを原因とする慰謝料請求権は、消滅時効にかかる可能性があるため、注意しましょう。
民法第724条によれば、請求できる期間は「請求者が損害と加害者を知ってから3年間」に定められています。
(不法行為による損害賠償請求権の消滅時効)
第七百二十四条 不法行為による損害賠償の請求権は、次に掲げる場合には、時効によって消滅する。
一 被害者又はその法定代理人が損害及び加害者を知った時から三年間行使しないとき。
引用元:民法 | e-Gov 法令検索
たとえば、不倫の事実を2022年4月1日に知った場合、2025年3月31日までに慰謝料請求をしなければ、以後は慰謝料請求ができなくなる可能性があります。
ただし、内容証明郵便を送ったり、裁判を提起したりすれば、時効の進行を停止することができます。
相手が慰謝料請求に応じないまま時間だけが過ぎているような状況では、気づかないうちに時効が完成してしまうケースもあるので、早めの対応が重要です。
慰謝料請求をしてから音沙汰なしの状態になったときの3つの注意点
慰謝料請求について、相手から音沙汰がないからといって、やみくもにアプローチするのは逆にリスクとなります。
ここでは、主な注意点を3つ紹介するので、よく確認して冷静に対応しましょう。
1.相手方の自宅や職場に乗り込まない
慰謝料請求に応じないからといって、相手の自宅や職場に無断で訪問することはやめましょう。
最悪の場合、不法侵入や名誉毀損とみなされ、逆に責任を問われてしまう可能性があります。
2.脅しや侮辱は絶対にしてはいけない
慰謝料請求についての話し合いの際に感情が高ぶったとしても、相手への脅迫や侮辱的な発言は避けましょう。
これらの行為に及んだ場合、恐喝、脅迫、名誉毀損、侮辱として逆に訴えられる可能性があります。
3.関係のない第三者に対しては請求しない
相手が慰謝料請求を無視しているからといって、親族や知人などの第三者に対して請求をするのは控えましょう。
第三者には法律上の支払い義務がない場合がほとんどであり、無関係な第三者を巻き込むことで、不要なトラブルを引き起こすリスクがあります。
請求は必ず本人に対しておこないましょう。
さいごに|慰謝料請求を無視されているなら一度弁護士に相談してみよう
慰謝料請求に対して相手が無視を続けているのは、「支払う意思がない」「金額が高すぎて対応できない」「請求を軽く見ている」など、さまざま理由があります。
ただ、話し合いが進まないまま時間が過ぎると、請求権が時効により消滅するおそれもあるため、何らかの対処が必要です。
相手から連絡がまったくなく、内容証明郵便すら無視されているといった状況が続いているなら、一度弁護士に相談するとよいでしょう。
弁護士に相談すれば、弁護士名義での内容証明郵便の送付や訴訟準備など、状況に応じて適切に対応してくれます。
不倫問題は、精神的な負担が大きくなりやすいものです。
慰謝料支払いに少しでも不安を感じたら、ひとりで抱え込まず、まずは弁護士に相談しましょう。