不倫慰謝料は離婚しないでも請求できる?具体的な流れや請求できた事例などを解説
 
        
           
              「離婚はしたくないけど、裏切られたまま何もなかったことにはできない…」
配偶者の不倫が発覚したとき、多くの方がこうした葛藤を抱えます。
実は、不倫による精神的苦痛に対する慰謝料請求は、離婚しなくても可能です。
民法上の「不法行為」として、不倫相手や配偶者に対して損害賠償を求める権利が認められており、実際に離婚せずに慰謝料を受け取れた事例も数多く存在します。
とはいえ、証拠の有無や交渉方法、請求相手の選び方など、適切な対応をしなければ思うような結果につながらないのも事実です。
また、夫婦関係を維持しながら慰謝料請求を進めるには、慎重な判断と冷静な対応が求められます。
そこで本記事では、離婚せずに不倫慰謝料を請求する際の具体的な流れや注意点、実際に請求できた事例、弁護士に依頼するメリットまでわかりやすく解説します。
「離婚は避けたいけれど、しっかりけじめをつけたい」と考えている方は、ぜひ参考にしてください。
離婚しない場合でも不倫慰謝料を請求することはできる!
結論からお伝えすると「離婚はしたくないけれど、裏切られたままでは納得できない…」という場合でも、不倫慰謝料を請求することは可能です。
民法上、不倫(不貞行為)は「不法行為」とみなされるため、精神的苦痛を受けた配偶者は、加害者である配偶者または不倫相手に対して損害賠償(慰謝料)を請求できます。
そして、この請求権は離婚の有無にかかわらず認められています。
ただし、離婚しない場合は「婚姻関係を維持しているのに、なぜ損害賠償が必要なのか?」という点が争点になることも少なくありません。
そのため、不倫によってどれほど強い精神的苦痛を受けたか、客観的に説明できる証拠が重要です。
「離婚せずにけじめをつけたい」「相手に責任を取らせたい」と考えている方は、感情だけで動かず、証拠や交渉方法をしっかりと整理してから行動しましょう。
離婚しないで不倫慰謝料だけを請求する際の大まかな流れ
離婚せずに不倫慰謝料を請求する場合も、基本的な手順は離婚時とほとんど変わりません。
不倫慰謝料請求の大まかな流れは、以下の4ステップです。
- 不倫に関する証拠を集める
- 慰謝料の請求相手を決める
- 慰謝料を請求して交渉する
- 話し合った内容を示談書にまとめる
ただし、夫婦関係を継続したまま進める以上、より慎重な対応が求められます。
ここからは、それぞれのステップについて詳しく見ていきましょう。
1.不倫に関する証拠を集める
不倫慰謝料を請求するには、まず「不貞行為があった」と証明できる証拠を集めることが最優先です。
なお、ここでいう不貞行為とは、配偶者と第三者が肉体関係を持ったことを指します。そのため、単なる食事や連絡のやりとりだけでは慰謝料請求が認められない可能性がある点に注意しましょう。
不貞行為を証明する有効な証拠として代表的なものは、以下のとおりです。
- ラブホテルへの出入り写真や領収書
- 浮気相手とのLINEやメールでのやりとり
- 探偵による調査報告書
- 性的関係を示唆する音声・動画データ
なお、これらの証拠は、「時系列」「継続性」「具体性」の3点を意識して集めると説得力が高まります。
具体的にどんな証拠があるとよいのかについては、弁護士とも相談しながら証拠の収集をおこないましょう。
盗聴や無断侵入など、違法な手段で取得した証拠は裁判で無効となる場合もあるため、慎重に行動することが重要です。
2.慰謝料の請求相手を決める
不倫慰謝料を請求する際は、「誰に対して請求するのか」を明確にしなければなりません。
不倫慰謝料の請求先としては、基本的に以下の3パターンが考えられます。
| 請求相手 | ポイント | 
| 不倫相手のみ | 配偶者との関係を続けたい場合に有効 | 
| 配偶者のみ | 不倫相手との関係が不明・接触を避けたいときに | 
| 配偶者+不倫相手 | 精神的苦痛が大きく、責任を明確にしたい場合に | 
なお、不倫相手に慰謝料を請求する場合は、「相手が配偶者の婚姻関係を知っていたか」が重要な判断材料となります。
相手が既婚者と知らずに交際していた場合、慰謝料が認められないこともあるため注意しましょう。
また、夫婦関係の修復を目指すのであれば、配偶者ではなく不倫相手にのみ請求するという選択もあります。
請求先の判断に迷う場合は、弁護士に相談してアドバイスを受けるのがおすすめです。
3.慰謝料を請求して交渉する
証拠がそろい、請求相手が決まったら、いよいよ慰謝料の請求に進みます。
この段階では、「いつ・誰に・いくらを・どのような理由で請求するのか」を明確に伝えることが重要です。
具体的な請求方法としては、まずは内容証明郵便が考えられます。
内容証明郵便とは、いつ誰が誰宛てに何を送付したのかを郵便局が証明してくれる郵送方法のことです。
内容証明を送ることで、請求内容を証拠として残すことができ、相手に対する心理的なプレッシャーにもなります。
ただし、内容証明の送付だけで相手がすぐに慰謝料の支払いに応じるとは限りません。
必要に応じて話し合いの場を設け、冷静かつ丁寧な姿勢で交渉を進めましょう。
なお、不倫慰謝料の相場はケースによって異なりますが、離婚しない場合は50万~200万円程度が一般的とされています。
具体的な金額は、精神的苦痛の大きさや不倫期間の長さ、謝罪の有無などによって変動するので、弁護士に相談しながら請求額を決めるのがよいでしょう。
また、交渉が難航する場合や相手が無視を続けるような場合には、無理に一人で対応せず、弁護士に間に入ってもらうのが賢明です。
【関連記事】内容証明で慰謝料請求する方法|不利な立場にならないための手引き
4.話し合った内容を示談書にまとめる
慰謝料の金額や支払い方法について合意できたら、必ず示談書(和解契約書)という形で文書化しておきましょう。
示談書は、後々の「言った・言わない」のトラブルを防ぐための大切な証拠になります。
示談書には、次のような内容を明記するのが一般的です。
- 不倫行為があったことと、それによって慰謝料を支払うこと
- 慰謝料の金額、支払期日、支払い方法(分割か一括か)
- 今後、当事者同士で接触しないこと
- 本件について、これ以上の請求をしないこと(清算条項)
- 守られなかった場合のペナルティ(遅延損害金や違約金など)
また、作成した示談書は、可能であれば公正証書化しておくことをおすすめします。
これにより、支払いが滞った際に強制執行などの対応が可能です。
示談書の作成は法律文書としての形式が求められるため、内容に不安がある場合は、弁護士にチェックしてもらうと安心です。
離婚しない場合に不倫した配偶者に対しておこなうべき対応
不倫慰謝料の請求後も夫婦関係を継続したいと考えている場合は、今後また同じ過ちを繰り返さないように対策を講じることが重要です。
とくに、以下のような対応を取っておくことで、再発の防止や生活の安定につながります。
- 二度と不倫しないよう誓約書を作成させる
- 別居する場合は婚姻費用などを請求する
それぞれの対処法について、詳しく見ていきましょう。
1.二度と不倫しないよう誓約書を作成させる
離婚せずに夫婦関係を続ける場合、不倫をした配偶者に対して誓約書を作成させることは、再発防止の有効な手段となります。
誓約書とは、「今後同じことを繰り返さない」「家族としての責任を果たす」といった意思を、文書で明確に示すものです。
誓約書には、以下のような内容を盛り込むとよいでしょう。
- 不倫関係を一切解消すること、今後一切不貞行為をおこなわないこと
- 同様の行為が発覚した場合の罰則(慰謝料増額・離婚の同意など)
- 家族関係の維持に努めること
- 家族としての生活費を継続的に支払うこと
一見すると形式的に思えるかもしれませんが、「文書として残す」ことで配偶者に心理的なけじめをつけさせる効果が期待できます。
また、将来再び問題が起きたときの証拠としての機能もあるため、可能であれば署名・押印をし、公正証書として作成しておくと安心です。
2.別居する場合は婚姻費用などを請求する
不倫によって信頼関係が壊れ、精神的に耐えられないと感じた場合、いったん別居を選択する夫婦も少なくありません。
離婚はしないものの、生活を共にできない状況であれば、無理に同居を続けるよりも冷却期間を設けたほうが、関係修復につながることもあります。
ただし、別居中も夫婦であることには変わりないため、収入に差がある場合は「婚姻費用の分担請求」が可能です。
婚姻費用とは、生活費・家賃・教育費など、夫婦や子どもが生活するために必要な費用のことを指します。
請求の流れは次の通りです。
- 配偶者に対して婚姻費用の支払いを求める意思を示す
- 合意できない場合は家庭裁判所に調停を申し立てる
- 調停で支払い金額や期間が決定される
なお、婚姻費用の金額は裁判所の算定表をもとに決められるため、相手の収入や子どもの有無などによって変動します。
離婚しないからといって、経済的に我慢し続ける必要はありません。
正当な権利として、きちんと請求することが大切です。
【関連記事】婚姻費用とは?算定表の見方と計算方法、もらえる期間や請求手続きを解説
離婚せずに不倫慰謝料を請求する場合は弁護士に相談しよう
「離婚はしないけれど、慰謝料だけ請求したい」
そう考えていても、実際には感情的になってしまったり、相手にうまく言いくるめられたりと、個人での対応が難しい場面も多くあります。
そんなときは、弁護士への相談がおすすめです。
法律の専門家である弁護士なら、不倫の事実や状況を冷静に整理し、あなたにとって最適な対応策を一緒に考えてくれます。
とくに、以下のようなケースに当てはまる方は、早めに弁護士へ相談するとよいでしょう。
- 相手が慰謝料請求に応じない
- どの程度の慰謝料を請求できるのかわからない
- 証拠があるかどうかに自信がない
- 夫婦関係を壊さず穏便に解決したい
ここからは、弁護士に依頼することで得られるメリットを4つに分けて詳しく解説します。
1.慰謝料を請求できるか判断してくれる
不倫されたことにショックを受けても、「本当に慰謝料を請求できるのか?」と迷ってしまう方も少なくありません。
そもそも慰謝料を請求するには、不貞行為の有無や、精神的苦痛の程度、証拠の有無など、複数の条件を総合的に見て判断する必要があります。
その点、弁護士に相談すれば、請求の可否や見込み金額、相手の責任の度合いについて専門的な視点でアドバイスを受けることが可能です。
また、相手が「不倫ではない」と否定してきた場合でも、弁護士なら適切な対応・反論ができます。
自分のケースで慰謝料請求が成立するかどうか不安がある方は、まずは初回相談などを利用して、早めに見通しを確認しておくと安心です。
2.不倫慰謝料を増額できる可能性がある
不倫の慰謝料請求に弁護士が介入することで、請求できる慰謝料額を増額できる可能性があるのもメリットです。
離婚を伴わない場合、一般的な慰謝料額相場は50万~200万円程度ですが、以下のような事情があると慰謝料が高く認められる傾向にあります。
- 不倫の期間が長期間にわたっていた
- 相手が悪質な手口で交際を続けていた(複数回の隠ぺい工作など)
- 被害者がうつ状態や体調不良になるほどの強い精神的苦痛を受けた
- 家庭内での育児や家事への支障が出た
- 配偶者が不倫相手との間に子どもをもうけていた
弁護士は、こうした増額要素を的確に主張し、相手と交渉してくれます。
また、示談交渉だけでなく、必要であれば裁判を視野に入れて進めることで、相手側の譲歩を引き出しやすくなるのも大きなメリットです。
「少しでも多くの慰謝料を取りたい」と考える方にとって、弁護士の存在は心強い支えとなるでしょう。
3.不倫慰謝料の請求手続きを一任できる
慰謝料請求は、感情のぶつかり合いや複雑なやりとりが発生しやすいデリケートな問題です。
とくに相手が開き直ったり、責任逃れをしようとしたりすると、精神的にも大きな負担となってしまいます。
そんなとき弁護士に依頼すれば、慰謝料請求に関する手続きを全て任せることが可能です。
具体的には、以下のような対応を一任できます。
- 内容証明郵便の作成・送付
- 相手との示談交渉
- 必要に応じた調停や訴訟の代理
- 示談書や和解契約書の作成サポート
これにより、自分で配偶者や不倫相手と直接交渉する必要がなくなり、余計なストレスやトラブルを回避できます。
また、法律に基づいた正確な請求ができるため、相手側に「本気度」や「法的な裏付け」を示すことにもつながるでしょう。
4.配偶者に対する対応も任せることができる
不倫慰謝料の請求では、不倫相手への対応だけでなく、その後も夫婦関係を継続する配偶者への向き合い方に悩む方も多くいます。
実際、「話し合いができる状況ではない」「逆ギレされたらどうしよう」と不安を感じるケースも少なくありません。
その点、弁護士に依頼すれば、配偶者との交渉や連絡の窓口も引き受けてもらうことが可能です。
例えば、以下のような対応を任せることができます。
- 配偶者との話し合いの場に同席してもらう
- 誓約書の作成や文面の調整
- 別居に向けた取り決めの支援(婚姻費用の請求など)
- 将来離婚を検討する際のアドバイス
「感情的にならず、冷静に話し合いたい」「法的な根拠を示してけじめをつけたい」といった希望がある方にとって、弁護士は心強い存在となってくれるはずです。
夫婦関係を維持するか、距離を置くかにかかわらず、自分の立場を守るための武器として、専門家の力を借りることを検討しましょう。
実際に離婚しないで不倫慰謝料だけを請求できたケース2選
「離婚せずに慰謝料を請求するのは難しいのでは…」と不安に感じている方も多いかもしれません。
しかし実際には、夫婦関係を継続しながら、不倫相手や配偶者から慰謝料を受け取れた事例も数多くあります。
ここでは、離婚せずに不倫慰謝料を請求できた実際の事例を2つ紹介します。
1.離婚せずに不倫相手から慰謝料100万円を獲得できた事例
本件は、神奈川県在住の20代女性が、配偶者に対して不倫慰謝料を請求した事例です。
結婚してまだ1年の夫婦でしたが、夫の行動に不信感を抱き、探偵に依頼したところ不倫が発覚。相談者は「慰謝料は請求したいが、離婚するかどうかは迷っている」という状態で弁護士に相談しました。
その結果、不倫相手には悪質性があると判断され、100万円の慰謝料を受け取ることに成功。
さらに、夫に対しては「再度の不倫が発覚した場合のペナルティ」などを盛り込んだ誓約書を取り交わすことで、再発防止の措置も講じました。
誓約書作成時には弁護士が同席し、内容の説明を丁寧におこなったことで、納得のうえで合意に至っています。
離婚という選択をしなくても、きちんと責任を問うことはできることを示した事例といえるでしょう。
【関連記事】不倫が発覚し、不倫相手に慰謝料を請求、夫と誓約書を交わしたケース
2.離婚せずに配偶者から慰謝料と婚姻費用を獲得できた事例
本件は、夫の不貞行為が原因で、30代の専業主婦の女性が相談に訪れたケースです。
結婚5~6年目、子どももいる状況でしたが、相談者は「子どものためにも、経済的に安定した生活を維持したい」と考え、離婚をせずに法的対応を選びました。
弁護士のサポートのもと、まずは裁判によって夫から不貞慰謝料135万円を獲得。
さらに、別居後も生活を支えるため、家庭裁判所の審判を通じて、毎月23.5万円の婚姻費用の支払いも認められました。
これは通常の養育費を大きく上回る金額であり、離婚しないからこそ得られた経済的なメリットといえます。
今回のケースでは、離婚を急がず、近隣の実家に移って子どもと生活することで、長期的に婚姻費用を受け取る体制を整えた点も特徴です。
不倫の被害者が、離婚せずに生活の安定を図った実例として非常に参考になります。
【関連記事】夫の不貞行為で、離婚せずに135万円の慰謝料と毎月23.5万円の婚姻費用を獲得
さいごに|配偶者の不倫が発覚したら早めに弁護士に相談するのがおすすめ
本記事では、離婚しない場合の不倫慰謝料について、請求可否や手続きの流れ、過去の事例などを詳しく紹介しました。
離婚を選ばなくても、不倫という不法行為の責任を問うことは十分に可能です。
精神的な苦しみを抱えながら我慢を続ける必要はなく、慰謝料を請求することで、気持ちの整理や今後の生活への備えにもつながります。
ただし、証拠の集め方や交渉の進め方を誤ると、夫婦関係がさらに悪化してしまう可能性もゼロではありません。
また、法的な主張が不十分だと、適正な慰謝料を得られないおそれもあります。
そのため、配偶者の不倫が発覚した場合は、できるだけ早い段階で弁護士に相談するのがおすすめです。
弁護士であれば、あなたの気持ちや希望を尊重しながら、証拠の整理・相手との交渉・示談書の作成などをサポートすることができます。
離婚を前提としない慰謝料請求でも、適切な対応をとれば経済的にも精神的にも納得のいく解決が可能です。
まずは一人で抱え込まず、信頼できる専門家に相談してみましょう。

 
 
         
         
     
         
         
         
           
 
 
