離婚に伴う家の売却の適切なタイミングや進め方、ローン返済中の注意点
離婚を決意したとき、多くの方が直面するのが、持ち家をどうするかという問題です。
思い出の詰まったマイホームを手放すことに躊躇いを感じる方もいるかもしれません。住宅ローンが残っていれば、売却が可能か不安に思う方もいるでしょう。
家の売却は、財産分与の選択肢の一つです。売却により、双方が新しい生活へ前向きに進める場合もあります。一方で、売却以外の方法が適しているケースもあるでしょう。
本記事では、離婚時の家の売却について、適切なタイミングや具体的な流れ、注意点をお伝えします。住宅ローンが残る場合の対処法や、売却できないときの解決策も取り上げますので、ぜひ参考にしてください。
離婚で家を売却するとどうなる?
家を売却すると公平な財産分与が可能となり、将来のトラブルの防止につながるでしょう。
離婚時には、夫婦が婚姻中に協力して築いた財産を公平に分配する財産分与を行います。売却して現金化すると、分配価格が明確になるため、公平な財産分与が可能です。
また、ローン残高が売却益を下回るアンダーローンの場合は、売却によって住宅ローンを完済できるメリットもあります。家の売却でローンを清算できれば、将来の金銭的な不安から解放され、お互いが新しい生活へ踏み出しやすくなるでしょう。
ただし、ローン付き不動産の売却には、金融機関の承諾が必要です。スムーズな売却を目指すには、夫婦の状況に合わせて最適な時期と方法を慎重に選ぶのが重要です。
家を売るタイミングは離婚前・離婚後のどちらがいい?
最適な売却タイミングは、配偶者との関係性や売却に費やせる時間によります。
離婚前・離婚後の売却のいずれにもメリット・デメリットはあるため、自身のケースに当てはめて検討するのがおすすめです。以下では、離婚前に売却したほうが良いケース、離婚後に売却した方が良いケースを解説します。
| 離婚前に売却すべきケース | 家の売却が決まってから離婚したい 離婚前にやりとりを終わらせたい 離婚後のトラブルを避けたい |
| 離婚後に売却すべきケース | とにかく早く離婚したい 離婚後も連絡をとることができる 離婚後も一定期間住む予定がある |
離婚前に売却したほうがよいケース
離婚後に元配偶者と連絡を取りたくない人や、新生活の資金を確定させてから再出発したい人は、離婚前の売却を検討すると良いでしょう。
次の3つの状況に当てはまる方は、離婚前の売却を検討してみてください。
家の売却が決まってから離婚したい
売却代金を新生活の資金に充てたい場合など、家の売却が確定してから離婚したいと考える方も多いでしょう。
離婚前に売却を済ませれば、離婚に伴う引越し費用や賃貸物件の初期費用、離婚後の当面の生活費を売却益で賄えます。特に専業主婦(夫)の方は、仕事が見つかるまでの生活を支える資金として、売却益を確保しておく意味は大きいでしょう。
売却が決まれば、新生活の予算を正確に組めます。家賃の上限や引越し先のエリア選びなどの判断に必要な数字が揃うためです。
金銭的な見通しが立った状態で離婚できれば、漠然とした不安を抱えずに再出発の準備を進められるでしょう。
離婚前にやりとりを終わらせたい
離婚後に元配偶者となるべく連絡を取りたくないなら、離婚前の売却が望ましいでしょう。
家の売却では、価格の決定や内覧対応、契約手続きなど多くの場面で双方の協力が欠かせません。コミュニケーションが円滑に進まないと、売却手続きが滞るおそれがあります。
離婚前に売却すれば、離婚成立後に家の件で元配偶者と連絡を取る必要がなくなります。
離婚後のトラブルを避けたい
離婚後の紛争の蒸し返しを避けたい場合も、離婚前の売却が適しているでしょう。
例えば家の査定額と実際の売却額にズレが生じる場合があります。売却前の段階で財産分与を取り決めると、実際の売却額が想定より低くなったときに不公平感が生まれがちです。
実際に売却して現金化すれば、1円単位で公平に分けられます。金額が明確になるため、双方が納得しやすく、後のトラブルを避けられるでしょう。
離婚後に売却したほうがよいケース
離婚を急ぐ事情がある場合や、すぐに退去できない事情があるときは、離婚後の売却を検討しましょう。
とにかく早く離婚したい
離婚を急ぐ事情がある場合は、離婚成立を優先しても差し支えないでしょう。
家の売却には通常3〜6か月程度かかります。売れるまで待っていると、離婚成立が大幅に遅れる可能性もあります。
家を売却するか否かを含め、財産分与の話し合いは離婚後でもできます。夫婦間で話し合えないときは、財産分与請求調停・審判での解決も図れます。財産分与請求権の時効は、離婚後5年(2026年3月31日以前に離婚が成立した場合は2年)です。
ただし、離婚後に相手が非協力的になるリスクもあります。離婚を先行する場合は、売却時期・代金の分配割合・連絡方法を事前に取り決めておいた方が良いでしょう。
離婚後も連絡をとることができる
配偶者と連絡をスムーズにとれるなら、離婚後の売却でも問題ありません。
売却活動中は、内覧の日程調整や契約手続きに関する連絡が生じます。冷静に意思疎通をとれる関係性があれば、離婚後でも問題なく進められるでしょう。
ただし、相手が遠方に引っ越す場合など、書類のやりとりや代理人の選任が必要になるケースもあります。郵送での署名・捺印や、司法書士への委任状の準備に時間がかかるため、スケジュールに余裕を持たせましょう。
途中で連絡が途絶えないよう、連絡先が変わった際の通知義務を約束しておくと安心です。
離婚後も一定期間住む予定がある
当面の間、夫婦の一方が家に住み続ける場合も、離婚後の売却を検討できます。
たとえば、子どもの転校を避けるため、転居先が見つかるまでなど、一定期間の猶予を設けて居住を継続するケースです。
一方が住み続ける際は、居住継続の期限をあらかじめ定めておきましょう。なし崩し的に住み続けると、売却のタイミングを逃すおそれがあります。
誰が住宅ローンや固定資産税を負担するのか、家賃相当額はどうするのかも決めておくと、離婚後のトラブルを防げます。
離婚で家を売却する際の主な流れ
家の売却の全体像を把握しておくと、いつ何をすべきかが見え、不安を解消できるでしょう。ここでは、一般的な仲介による売却の流れを解説します。
1.不動産の所有者を確認する
家の所有者が誰か正確に把握しましょう。土地と建物の名義が異なる場合もあるため、両方とも確認してください。
売却手続きができるのは、原則として所有者のみです。共有名義の場合は、一方の意思だけで不動産の全部を売却できません。
所有者は、登記事項証明書や登記識別情報通知で確認できます。登記事項証明書は、法務局の窓口のほかオンライン・郵送請求で取得でき、手数料は以下のとおりです。
- 窓口請求・窓口交付:600円
- オンライン請求・郵送:520円
- オンライン請求・窓口交付:490円
登記事項証明書では、住宅ローンなど融資を受けた金融機関が設定した抵当権の情報も確認できます。なお、証明書に記載された債権額は現時点の残高を示すものではありません。ローン残高は金融機関が発行する残高証明書や支払予定表で確認してください。
2.不動産会社に査定を依頼する
家の市場価値を把握するために査定を受けましょう。
適正な価格を知るために、複数の不動産会社に査定を依頼するのをおすすめします。1社だけでは、価格が妥当か判断できません。会社によって査定額に数百万円の差が出る場合もあります。
査定額が出たら、住宅ローン残高と比較しましょう。売却額でローンを完済できるかどうかによって、その後の方針も異なります。
机上査定だけでなく、実際に家を見てもらう訪問査定を受けると、より正確な金額がわかります。
【関連記事】離婚時の家の査定方法は?財産分与で損しない手順を解説
3.財産分与の方法を夫婦間で決める
査定結果をもとに、夫婦間で家をどのように分けるか話し合いましょう。
不動産の分与方法は、主に「家を売却後に現金で分け合う」か「夫婦の一方が住み続け、他方は現金を受け取る」の2パターンです。
家を売却後に現金で分け合う
家を売却して現金を分け合うのが、公平でトラブルの少ない方法です。
売却代金から諸経費(仲介手数料や登記費用など)や住宅ローン残高を差し引いた残額が、財産分与の対象となります。
売却により評価額が確定するため、どちらか一方が不動産を取得する場合のような評価方法を巡る争いを避けられるでしょう。売却により、維持管理費や固定資産税といったランニングコストからも解放されます。
離婚後に元配偶者と家の管理について連絡を取り合う必要もなくなるため、精神的な区切りもつけやすいです。
ただし、売却額がローン残高を下回るときは、手元に現金が残りません。オーバーローンの家の売却を希望する場合は自己資金で補填するか、任意売却を検討する必要があります。
夫婦の一方が住み続け、他方は現金を受け取る
家を売却せず、夫婦の一方が家を取得して住み続ける方法もあります。
たとえば、夫が家を取得する場合、夫は家の価値の半分に相当する現金(代償金)を妻に支払います。家以外にも共有財産がある場合は、他の財産を妻が取得して調整する方法もあるでしょう。
代償金を支払う場合は、家を取得する側にまとまった資金力が必要です。十分な資金を用意できなければ、現実的な選択肢にはなりません。
また、夫婦間で家の評価額について意見が対立しやすい傾向があります。家を取得する側は、支払う代償金を抑えるために評価額を低くしたいと考えます。一方、お金を受け取る側は、受け取る代償金を増やすために評価額を高くしたいと考えるためです。
査定書などの客観的な資料をもとに互いに譲歩する姿勢を持つと、円滑に財産分与を進められるでしょう。
【関連記事】離婚で不動産を分与するときのポイント|家やマンションの財産分与をわかりやすく解説
4.公正証書を作成する
分与方法が決まったら、合意した内容を公正証書にしましょう。
公正証書とは、公務員である公証人が権限に基づいて作成する公文書で、私文書より高い証明力を有します。金銭の支払いについて、約束を破ったときに強制執行を受けても異議を述べない旨の強制執行認諾文言をつけると、執行力も有します。
そのため、特に売却代金の分配方法や分配時期、代償金の支払いについては、執行認諾文言付き公正証書の作成がおすすめです。約束を破られたときに裁判なしで強制執行できます。
公証証書は、公証人への事前相談・打ち合わせを経て、夫婦双方が公正役場に出向いて作成します。
公正証書の作成には費用がかかりますが、将来のトラブル防止のためにも作成を検討してみてください。
5.売却活動を開始する
売却手続きを依頼する不動産会社を選び、売却活動を開始します。
売却先の目途が経っていない場合、不動産業者に仲介を依頼するのが一般的です。具体的には、売り出し価格を決定し、広告を出してもらいます。インターネットやチラシで物件情報が広く公開され、興味を持った人が実際に家を見に来る流れです。
購入希望者からの内覧申し込みには、都度対応が必要です。部屋を清掃し、明るい対応を心がけると早期売却の可能性が高まるでしょう。
週末は内覧のために予定を空けておく必要があるため、生活に多少の制約が出る場合もあります。急な内覧希望にも柔軟に対応できると、売却がスムーズに進むでしょう。
6.売却が決まったら決済して家を引き渡す
売却が決まったら、買い手と売買契約を結び、代金の受け取りと家の引き渡しを行います。
通常、契約時に手付金、引き渡し時に残代金を受け取ります。住宅ローンが残っている場合は、売却益から住宅ローンを一括返済し、抵当権を抹消します。抵当権が残ったままでは買い手に所有権を移せないため、完済が必須です。
司法書士の立会いのもと、所有権移転登記を行います。金融機関・不動産会社・司法書士が同席し、書類の確認と手続きを同時に進めるのが一般的です。
離婚で家を売却する2つの方法
売却方法には、仲介と買取の2種類があります。
少しでも高く売りたいなら仲介、安くても早く現金化したいなら買取が適しています。それぞれの特徴を理解し、自分たちの状況に合った方法を選んでください。
仲介|時間をかけても高値で売却したい
時間をかけても高値で売却したい場合は、仲介による売却が適しています。
仲介は、不動産会社が売主と買主の間に入って、買い手を探してくれるサービスです。一般的な売却方法で、市場価格に近い金額で売れる可能性が高いのが魅力です。
ただし、買い手が見つかるまで数ヶ月かかる場合もあり、売却が確実に成立する保証はありません。
売却が成立すると、以下の仲介手数料が発生します。仲介手数料は、法律により上限が定められており、売却価格が400万円以上の場合は、以下の計算式を用います。
| 仲介手数料の上限=売却価格×3%+6万円+消費税 |
仲介手数料は、売買契約成立時に50%、決済および引渡時に50%を支払うケースが多いです。
買取|なるべく早く売却したい
なるべく早く家を売却したい場合は、買取を検討すると良いでしょう。
買取は、不動産会社が直接物件を買い取る方法です。買い手を探す期間が不要なため、数日から数週間という短期間で現金化できます。離婚を急いでいるとき、転居先の契約や新生活の準備資金が早く必要な場合に有効です。
ただし、買取価格は市場価格の60〜80%程度になるのが一般的です。不動産会社は買い取った後にリフォームして再販するため、その利益分が差し引かれるためです。
近所に知られずに売却できるため、離婚を周囲に隠したい場合にも選ばれています。広告を出さず、内覧対応も不要なので、プライバシーを守りながら手続きを進められます。
住宅ローンが残っている家の売却で知っておきたいポイント
住宅ローンが残る家を売却する場合、アンダーローンかオーバーローンかによって注意点が異なります。
アンダーローンの場合、売却を視野に入れられますが、贈与税や譲渡所得税の課税リスクがあります。一方、オーバーローンの場合は、一定の条件をクリアできなければ売却は難しいでしょう。
アンダーローンの場合
アンダーローンとは、家の時価が住宅ローン残高を上回る状態です。売却すればローンを完済でき、手元に資金が残るかもしれません。
ただし、財産分与の方法や得られた売却益によっては、税金がかかるケースもあります。
贈与税がかかるケースがある
分与額が過大な場合、財産分与を受け取る側に贈与税が課税される可能性があります。
財産分与は、共有財産の清算や離婚後の生活保障を目的とする制度です。分与割合は原則2分の1ずつであるため、一方が財産の大半を受け取ると、分与ではなく贈与と判断される可能性があります。
分与額が過大かどうかは、以下のような事情を考慮して判断されます。
- 婚姻期間
- 職業
- 収支の状況
- 生活の程度
- 当該財産の取得に対する夫婦それぞれの貢献の程度
たとえば、家以外に共有財産がほとんどないにもかかわらず、夫婦の一方が売却益を全額取得するケースです。分与を受ける側の特別な能力や努力により家を取得した事情などがなければ、過大な分与と判断される可能性があります。
過大な分与と判断された場合には、多すぎる部分ついて贈与税を支払わなければなりません。
売却益があれば譲渡所得税がかかる
家を売却して利益が出た場合、利益部分(譲渡所得)に対して税金がかかります。
購入時より高く売れた場合が典型例です。譲渡所得に対しては、所得税および住民税が課税されます。
具体的には、家を売却した年の1月1日時点での所有期間に応じて、以下の税率が適用されます。
- 所有期間が5年超の場合:売却益の20%
- 所有期間が5年以下の場合:売却益の39%
所有期間10年超の家を売却して新たにマイホームを購入した場合は、3,000万円の特別控除の特例の適用により課税を回避できる可能性があるでしょう。
【関連記事】財産分与の際にかかる税金と5つの節税方法まとめ
オーバーローンの場合
オーバーローンとは、住宅ローン残高が家の時価を上回る状態です。家を売却してもローンを完済できないため、売却を実現するためには不足分の支払いが必要です。
住宅ローンは原則一括返済を求められる
オーバーローンの家を売却する場合、金融機関から残債の一括返済を求められます。
住宅ローンが残る家には金融機関の抵当権が設定されており、売却時には抵当権を抹消する必要があります。抵当権を抹消するには、ローンを完済しなければなりません。
たとえば、家の売却価格が2,500万円でローン残高が3,000万円なら、500万円を別途用意しなければなりません。
自己資金での補填が難しい場合は、金融機関の承諾を得て任意売却を行う方法もあります。任意売却とは、金融機関の合意を得て売却する方法です。競売と比べて市場価格に近い価格で売れる可能性が高く、売却日程にもある程度の融通が利きます。
ただし、任意売却後も残債の返済義務は残るため、金融機関と返済計画について協議する必要があるでしょう。資力がなければ認められない場合もあります。
売却できないならローン名義人が住み続けるのが無難
売却が難しい場合は、ローン名義人が家を単独取得し、居住とローン返済を継続するのが現実的な選択肢です。
ローン契約者ではない側が家に住み続ける選択肢もありますが、リスクが高いためおすすめできません。ローン契約者が返済を滞納すれば、家は金融機関に差し押さえられ、住んでいる側は強制退去を余儀なくされるためです。
ローン契約者が家を取得する場合でも、家を取得しない配偶者が連帯保証人になっているときは、連帯保証の責任が残ります。連帯保証人を外すには、別の保証人を立てるか、十分な担保を提供する必要があります。
【関連記事】財産分与する際に住宅ローンはどうすればいい?
離婚時に家を売却できない4つの原因
離婚に伴い家を売却したいと考えても、さまざまな事情で売却が進まないケースがあります。以下では、離婚時に家を売却できない主な原因を紹介します。
夫婦間で意見が対立している
家の売却について夫婦間で意見が対立している場合、売却手続きを進められません。
一方は早期売却を希望しているものの、もう一方は住み続けたい、または売却時期を先延ばししたいと考えているケースです。特に、子どもの学校や仕事の都合で転居を避けたい側と、財産を早く清算したい側で意見が対立しやすい傾向があります。
家が共有名義の場合、両者の同意なしに売却できません。単独名義であっても、財産分与の対象となる家を一方が勝手に売却すれば、後にトラブルとなるでしょう。
感情的な対立が激しいケースでは、話し合いの場を持つこと自体が困難です。離婚協議全体が停滞し、家の売却時期が不透明なまま数か月から数年が経過するケースも珍しくありません。
住宅ローンを一括で返済できない
売却代金だけではローンを完済できず、不足分を用意できない場合です。
住宅ローンが残る家には金融機関の抵当権が設定されています。売却時には抵当権を抹消する必要があり、ローンの完済が必須です。
離婚協議中は引っ越し費用や新居の初期費用などで出費がかさみ、自己資金に余裕がないケースも多いです。また、離婚後の生活再建のために貯蓄を温存したいと考える場合もあるでしょう。
住宅ローンを一括返済できない場合、金融機関に売却の承諾を得るのは難しいのが実情です。
設定した売り出し価格が高すぎる
設定した売り出し価格が高すぎて、買い手がつかないケースです。
ローン完済後の手取り額を増やしたいという思いが強いと、価格を高めに設定しがちです。また、思い入れのある家に対して、客観的な相場観とかけ離れた価値を感じている場合もあります。
近年はインターネットで類似物件の価格を簡単に比較できるため、割高な物件は敬遠されます。相場より高い価格では、内覧の申し込みすら入らない可能性が高いでしょう。
価格が適正でなければ、数か月経っても買い手が見つからず、売れ残り物件という印象を与えてしまいます。
時間が経つほど売却条件は不利になり、最終的には相場以下での売却を余儀なくされるケースも少なくありません。
内覧前の清掃や内覧時の対応が行き届いていない
内覧時の家の印象が悪いと、購入希望者の購買意欲を損ないかねません。
内覧時に室内が散らかっている、汚れが目立つ、不快な臭いがするといった状態では、購入を見送られる可能性が高まります。離婚協議中で精神的な余裕がなく、家の管理がおろそかになっているケースも少なくありません。
日当たりや間取りといった物理的な条件だけでなく、清潔感や居心地の良さも重要な判断材料です。特に水回りの汚れや玄関の印象は、物件全体の評価に直結します。
内覧対応が冷淡だったり、売主の生活感が強すぎたりする場合も、購入希望者は不安を感じるでしょう。第一印象で敬遠されると、再度内覧してもらう機会を得るのは困難です。
離婚で家が売却できない原因別の対処法
売却が進まない原因が明確になれば、適切な対処法を講じることで状況を改善できるかもしれません。ここでは、前章で列挙した原因別の対処法を解説します。
相手に売却するメリットと売却しないデメリットを伝える
売却に消極的な配偶者には、客観的な事実に基づいて説得を試みましょう。
たとえば、売却しない場合はローン返済の負担が残る、将来的に家の価値が下がるリスクがあるなどデメリットを具体的に説明します。逆に売却すれば、まとまった現金が入るメリットも強調しましょう。新居の頭金や生活資金として使えるうえ、固定資産税や維持管理費からも解放される点も伝えます。
感情に訴えるのではなく、経済的な合理性を数字で示すと相手も納得しやすくなります。「このまま家を維持し続けると◯年で◯万円の損失」と計算して見せれば、冷静に判断してもらえるでしょう。
住宅ローンの借換え・名義変更を検討する
オーバーローンで売却が難しい場合、借り換えや名義変更で解決できる可能性があります。
家に住み続ける側が新たにローンを組み直せば、元配偶者との金銭的な関係を断ち切れます。ただし、借り換えには十分な収入と信用情報が必要で、金融機関の審査に通らなければ実現しません。
借り換えが困難な場合は、金融機関の承諾を得て任意売却を行う選択肢もあります。任意売却では、競売よりも市場価格に近い金額で売却できる可能性が高いです。売却後の残債については、金融機関と返済計画を協議します。
いずれの方法も専門的な知識が必要なため、早い段階で弁護士や不動産会社への相談をおすすめします。任意売却に詳しい弁護士に依頼すれば、金融機関との交渉もサポートしてもらえるでしょう。
売却価格や売却方法を変える
売り出し価格が相場とかけ離れている場合、価格設定を見直しましょう。
査定額の平均値を参考に、現実的な価格で再度売り出します。売り出し後も反応が薄い場合は、不動産会社と相談のうえ、適切なタイミングで価格を調整する柔軟性が必要です。
また売却方法を変えるのも効果的です。一般媒介契約から専任媒介契約に切り替えれば、不動産会社が積極的に販売活動を行う可能性が高まります。契約期間の満了が近づいていれば、不動産会社そのものを変更する選択肢もあるでしょう。
さらに買取に変更する選択肢もあります。市場価格より安くなりますが、確実かつ迅速に現金化できるでしょう。
内覧前の清掃や内覧時の対応を改める
内覧時の印象を良くするため、清掃と対応を徹底しましょう。
内覧前には室内を徹底的に掃除し、不用品は処分または収納します。特に、水回り、玄関、リビングは念入りに清掃しましょう。換気を行い、明るく清潔な雰囲気を演出するのも大切です。
内覧時の対応も重要です。購入希望者の質問には丁寧に答え、物件の長所を自然にアピールしましょう。
不動産会社の担当者にアドバイスを求め、第三者目線での改善点を把握するのも有効です。場合によっては、ホームステージングサービスを利用して、モデルルームのような演出を施す方法もあります。プロの力を借りることで、成約率を高められます。
離婚に伴い家を売却する際の注意点
家の売却をスムーズに進めるために、法的・手続き上の制約を理解しておきましょう。特に以下の3点は重要です。
住宅ローン付の家の売却は金融機関の承諾が必須
住宅ローンが残る家を売却する場合は、金融機関への事前連絡と承諾が必須です。
ローン返済中の家には金融機関の抵当権が設定されており、売却時には抵当権を抹消しなければなりません。抵当権を抹消してもらうには、ローンを完済する必要があります。
一括返済には手数料がかかるのが一般的です。金融機関によって手数料の金額は異なるため、売却を計画する段階で必要な総額を確認しておきましょう。手数料を考慮せずに売却価格を決めると、手元に残る金額が想定より少なくなります。
オーバーローンの場合は、不足分を自己資金で補填するか、金融機関の承諾を得て任意売却を行う必要があります。いずれの場合も、早めに金融機関に相談し、売却の可否や条件を確認するのが重要です。
家を売却できるのは名義人のみ
不動産の売却は、登記上の名義人のみが行える法律行為です。
夫婦の一方が単独名義の場合、名義人でない配偶者には売却の権限がありません。とはいえ、名義が一方的に売却を進めるのにもリスクがあるでしょう。婚姻中に取得した家は財産分与の対象となるため、名義人が一方的に売却を進めると、後に財産分与をめぐってトラブルが生じます。
共有名義の場合は、共有者全員の同意がなければ売却できません。一方が売却に反対していれば、手続きを進められないため、事前に十分な協議が必要です。
売却前に離婚協議書や公正証書で財産分与の内容を明確にしておきましょう。
財産分与を請求する権利には期限がある
財産分与を請求する権利には、期限があります。2026年4月の法改正により、下記のとおり期限が異なるので注意してください。
- 2026年3月31日以前に離婚が成立した場合:離婚の時から2年
- 2026年4月1日以降に離婚が成立した場合:離婚の時から5年
上記期限を超えると、財産分与を請求する権利が消滅します。
離婚後に改めて財産分与の話し合いをしようとしても、相手が応じない、連絡が取れないといったケースは珍しくありません。気付けば期限が迫っていたという事態は充分起こり得ます。
時間が経つほど証拠の収集も困難になり、財産の内容や評価額について争いが生じやすくなるでしょう。
離婚を急ぐあまり財産分与を後回しにすると、権利自体を失うリスクがあります。
離婚時の家の売却について弁護士に相談する4つのメリット
離婚時の家の売却は、法律問題と不動産取引が複雑に絡み合います。弁護士に相談すれば、法的なリスクを回避し、円満な解決を目指せるでしょう。
家の評価額や売却代金の分け方について的確な助言が得られる
弁護士に相談すれば、家の評価額や売却代金の分け方について、的確なアドバイスが得られます。
不動産の評価方法には複数の選択肢があり、どの方法を採用するかで分配金額が大きく変わる場合もあります。財産分与に詳しい弁護士に相談すれば、過去の判例や実務の経験をもとに、個々の状況に応じた最適な評価方法を提案してもらえるでしょう。
住宅ローンが残る家は、残債の状況によって、適切な分与方法が異なります。弁護士に相談すれば、売却して清算するのか、一方が住み続けて代償金を支払うのかといった選択肢ごとのメリット・デメリットを整理できます。後のトラブルを避けるための条件設定について、具体的な助言を得られるのもメリットです。
税理士と連携している弁護士であれば、税務面のアドバイスも受けられ、より専門的なサポートが期待できます。
相手方との交渉を任せられる弁護士に交渉を依頼すれば、感情的な対立を避けながら冷静に協議を進められます。
家の売却に関する話し合いでは、売却方法や売却時期、売却代金の分配割合など決めるべき事項が多岐にわたります。当事者同士では感情的な対立から話が平行線になり、協議が長期化するケースも少なくありません。
弁護士は、法的根拠に基づいて論点を整理し、相手の過大な要求にも適切に反論できます。現実的な落としどころを探れるため、早期解決が期待できるでしょう。
また、相手方と直接やり取りする必要がなくなるため、精神的な負担も軽減できます。
合意内容を不備なく書面化できる
合意内容を法的に不備のない形で書面化してもらえるのもメリットの一つです。
当事者だけで作成した書面は、条項の抜け漏れや表現の曖昧さが原因で、離婚後にトラブルへ発展するおそれがあります。
弁護士であれば、将来発生する可能性のあるリスクを想定し、必要な対策を条項として漏れなく盛り込めます。曖昧な取り決めが原因で後から争いになる事態を防げるでしょう。
公正証書の作成もサポートしてもらえます。公証人とのやり取りも任せられるため、不慣れな手続きへの時間的・精神的な負担も軽減できるでしょう。
売買契約書に潜む法的なリスクを確認してもらえる
弁護士に依頼すれば、売買契約書に潜む法的なリスクも確認してもらえます。
契約書には、瑕疵担保責任、契約解除の条件、違約金の定めなど重要な事項が記載されています。一般の方がすべての条項を正確に理解し、リスクを判断するのは困難でしょう。
弁護士は、契約書の内容を精査し、不利な条項や曖昧な表現がないか確認します。必要に応じて修正案の作成、買主側や不動産会社との交渉も依頼できます。
売買契約は高額な取引であり、一度締結すると簡単には解除できません。弁護士のチェックを受けることで、安心して契約を進められます。
【関連記事】財産分与は弁護士に相談しよう!|依頼するメリットや費用などを解説
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離婚時の家の売却についてよくある質問とその答え
ここでは、家の売却についてよくある質問に、Q&A形式で回答します。
Q.配偶者が反対していても、自分が所有者なら売却していいですか?
法律上は可能ですが、トラブルのリスクが高いためおすすめできません。
不動産の売却は名義人のみが行える法律行為です。理論上、単独名義であれば、名義人が単独で売却手続きを進められます。
ただし、婚姻中に取得した家は財産分与の対象となるため、配偶者の同意なく売却すると、後に財産分与をめぐってトラブルが生じます。相手方から損害賠償を請求される可能性もあるでしょう。
売却を進める場合は、事前に配偶者と十分に協議し、合意を得るのが重要です。協議が難航する場合は、弁護士に相談し、調停での解決を検討しましょう。
Q.財産分与の審判や離婚裁判で家の売却を命じてもらうことはできますか?
財産分与請求審判や離婚裁判で、家の売却が命じられることはありません。
家が売れるかどうかは不確定な事柄だからです。家を売却して売却金を分配する方法が取れるのは、夫婦が合意ができる場合に限られます。
共有名義の不動産については、共有物分割請求訴訟を提起する余地があるでしょう。ただし、分割請求を受ける側の不利益が大きい場合は、権利の濫用として認められない可能性があります。
Q.共有名義の不動産の場合、自分の持ち分だけ売却できますか?
法律上は可能ですが、現実的には買い手が見つかりにくいでしょう。
共有名義の場合、各共有者は自己の持分を自由に処分できます。自分の持分だけであれば、他の共有者の同意なく第三者に売却できます。
しかし、買主は不動産全体を自由に使用・処分できないため、一般の購入希望者が現れる可能性は極めて低いでしょう。
仮に買い手が見つかったとしても、不動産業者などが相場より大幅に安い価格で買い取るケースがほとんどです。通常の売却価格の3割から5割程度になることも珍しくありません。
共有名義の不動産を売却する場合は、共有者全員の同意を得て不動産全体を売却する方法が現実的です。
まとめ
離婚に伴う家の売却の適切なタイミングは、個々の事情により異なります。離婚前の売却なら新生活の資金を確保でき、元配偶者との連絡を最小限に抑えられるでしょう。子どもの転校を避けたり、転居先を探したりする必要がある場合には、離婚後の売却も検討できます。
売却方法は、高値を狙うなら仲介、早期現金化なら買取を選びましょう。オーバーローンの家の売却は、原則としてローン残高の一括返済が必要です。
家の売却時には、家の評価方法や財産分与方法、税務など専門的な知識が求められる場面も多いです。
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