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相続放棄前後の預金引き出しはバレる?バレても問題ないケースも解説

弁護士監修記事
遺産相続 相続放棄
2025年12月15日
2025年12月15日
相続放棄前後の預金引き出しはバレる?バレても問題ないケースも解説
この記事を監修した弁護士
金森 将也弁護士 (金森総合法律事務所)
23年以上のキャリアを持ち、高度な専門知識で安心のアドバイスを提供。「話しやすさ」と「的確な見通しの提示」を大切にしています。
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  • 「相続放棄をしたいのに預金を引き出してしまった」
  • 「預金の引き出しがバレるとどうなるのか」

相続放棄を検討している方の中には、このような悩みを抱えている方も多いのではないでしょうか。

仮に被相続人の預金を引き出し、葬儀費用以外の目的で消費したり隠したりすると、単純承認とみなされ相続放棄ができなくなるおそれがあります。

そのほか、不当利得返還請求を受けることもあるため、相続放棄を予定している・またはすでに申述したなら、不用意に預金を引き出すことはやめておきましょう。

もし預金を引き出してしまったら、弁護士に相談することをおすすめします。

本記事では、相続放棄前後の預金引き出しがバレるかどうかについてや、バレたときのリスク、バレても問題ないケースを解説します。

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相続放棄前後の預金引き出しはバレるの?

ここではまず、相続人や被相続人の債権者に預金の引き出しがバレる可能性について解説します。

相続人にはバレてしまう可能性が高い

被相続人の預金を引き出した場合、相続人にはどこかのタイミングでバレてしまう可能性が高いです。

例えば、遺産分割協議や相続税申告の際には、被相続人が所有していた全ての財産を調べる必要がありますが、その際には通帳を記帳したり、金融機関に取引明細書を請求したりするのが一般的です。

そのため、入出金履歴に不自然な動きがあれば、誰かが預金を引き出したことを気づかれるでしょう。

相続放棄を予定している・またはおこなった人が通帳を管理していた場合、使い込みを疑って念入りに調べられる可能性も考えられます。

債権者が調査に乗り出してバレる可能性もある

被相続人の預金引き出しは、被相続人の債権者が調査に乗り出してバレる可能性もあります。

債権者は債権を確実に回収するため、弁護士会照会や裁判所の文書送付嘱託を利用することがあるからです。

これらの手続きでは、金融機関などが開示請求者に対して預金の状況などを開示するため、相続前後に不自然な預金の引き出しがあれば、指摘を受ける可能性があります。

相続放棄後の預金引き出しがバレた場合のリスク

相続放棄後に預金の引き出しがバレた場合、以下のようなリスクがあります。

  • 単純承認とみなされ相続放棄の効力が無効になる可能性がある
  • 相続人に不当利得返還請求をされてしまう可能性がある

このような事態になると、借金を背負うことになったり予期しない金銭トラブルに巻き込まれたりするおそれがあります。

ここからは、それぞれのリスクについて見ていきましょう。

単純承認とみなされ相続放棄の効力が無効になる可能性がある

被相続人名義の預金口座からお金を引き出して使い込むと、単純承認とみなされ相続放棄の効力が無効になる可能性があります。

引き出したお金を使い込む=相続する意思がある」と判断されるためです。

また、引き出した預金を使い込んだことに債権者が気づいた場合、相続放棄無効の審判を提起されるおそれもあります。

その結果、相続放棄が無効と認定されると、本来免れるはずだった被相続人の借金や債務を引き継ぐ義務が生じます。

相続人に不当利得返還請求をされてしまう可能性がある

相続放棄後に預金を引き出した場合、相続人から「不当利得返還請求」をされる可能性があります。

不当利得返還請求とは、法律上正当な理由がないにもかかわらず利益を得た人に、その利益を返すよう求める手続きです。

例えば、相続放棄した人が被相続人の預金を引き出して使い込んだ場合、相続人から使い込んだ人に対し、「預金を返してほしい」と請求できます。

なお、不当利得返還請求をおこなうには、以下の要件を満たさなければなりません。

要件
請求を受けた人が利益を得たこと 被相続人の預金を引き出し使い込んだ
請求者が損失を受けたこと 請求者が相続できる財産が減った
損失と利益に因果関係があること 請求を受けた人が被相続人の預金を引き出し使い込んだため、相続財産が減った
請求を受けた人が利益を得る権利がないこと 請求を受けた人が相続放棄をしていた

要件全てに該当してしまった場合は速やかに返還の意思を示し、できる限り元通りに返還することが重要です。

相続放棄前後の預金引き出しがバレても相続放棄が可能なケース

相続放棄前後に預金を引き出したことがバレても、以下のケースに該当する場合は相続放棄が認められる可能性があります。

  • 相続放棄後に引き出した預金を葬儀費用に使った
  • 預金を引き出したものの現金として保管し使ったり隠したりしなかった
  • 支払い期限が過ぎている借金などを返済するために使った

このように、預金を引き出したあとの行動によっては相続放棄が無効にならない可能性があります。

それぞれのケースについて、詳しく見ていきましょう。

相続放棄後に引き出した預金を葬儀費用に使った

引き出した預貯金を葬儀費用に使用した場合、常識的な金額であれば相続放棄が認められる可能性があります。

預金を使ったとしても、葬儀費用であれば相続財産の処分にはあたらないためです。

ただし、かかった金額によっては相続放棄が認められない可能性がある点に注意しましょう。

また、葬儀費用として支出したことの証拠として、領収書や明細書を保管しておくことが大切です。

お布施や心づけといった領収書が出ない費用については、支払った日や金額、支払い先などを記録しておきましょう。

相続放棄の手続きに領収書や明細書の提出が必須とされているわけではありませんが、あとから「遺産の使い込み」と疑われたり、単純承認とみなされたりしないために、証拠となるものは残しておくのが安心です。

なお、葬式費用には火葬・埋葬代や納骨費用、お布施などが該当しますが、喪服や香典返しの費用、墓石代などは葬式費用として認められにくいため注意が必要です。

預金を引き出したものの現金として保管し使ったり隠したりしなかった

引き出した現金を葬式費用以外のことに使ったり自分の口座に振り込んだりせず、相続人や債権者も状況を把握しているのであれば、単純承認に該当しない可能性があります。

ただし、自分の財産と混ざってしまうと「相続財産を自分のものにした」と判断される可能性があるため、引き出したお金は自分のお金と明確に分けて管理しなければなりません。

また、そもそも被相続人の預金を使いもせずただ保管する意味はないと考えられるため、わざわざ遺産の使い込みを疑われるような行動は謹んだほうがよいでしょう。

もし預金を引き出してしまったらそのまま被相続人の口座に戻すか、手をつけずに専門家に相談するのがおすすめです。

支払い期限が過ぎている借金などを返済するために使った

支払い期限が過ぎている被相続人の借金や公共料金の未払い分など、やむを得ない債務の支払いとして預金を使用した場合は、相続放棄が認められる可能性があります。

被相続人の現金や預貯金は減りますが、債務を返済したことで相殺され、財産全体の金額は変化しないと考えられるためです。

とはいえ、相続放棄した人に被相続人の支払いをする義務はありません。

「なんでわざわざ借金の返済をしたんだ」と指摘されることがないよう、支払い関係はできるだけ相続人に任せるのがよいでしょう。

なお、ほかに相続人がいない場合も相続放棄をした人が借金などの支払う必要はないため、請求書が届いたら相続人が不在であることや相続放棄したことを伝えれば問題ありません。

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相続放棄前後の預金引き出しについてよくある質問

ここからは、相続放棄前後の預金引き出しに関するよくある質問とその回答を紹介します。

相続放棄の申述後に裁判所はどこまで調べるの?

相続放棄の申述後、家庭裁判所は預金の入出金履歴や用途まで詳細に調査することはあまりありません

家庭裁判所が実地調査や事実確認をおこなうケースはほとんどなく、明らかな却下理由がなければ基本的に申述は受理されます。

令和6年の司法統計年報でも、相続放棄の申述却下率は0.12%と非常に低く、ほぼ全ての申述が認められています。

ただし、家庭裁判所に受理されれば確実に相続放棄できるとは限りません。

申述後に相続人や債権者から「財産の使い込みや隠匿があった」などと訴えられ、家庭裁判所に相続財産の隠匿や消費、処分であると認定されたときは、放棄が無効になるリスクがあります。

相続放棄後に誤って預金を引き出してもすぐに戻せば問題ない?

相続放棄後に誤って預金を引き出してしまっても、すぐに再入金すれば単純承認とは判断されにくいでしょう

ただし、あとからトラブルになるのを避けるため、相続人に事情を説明しておくことをおすすめします。

入金の記録は通帳のコピーやスクリーンショットなどで残しておくと、説明の際にスムーズです。

さいごに|相続放棄の手続きに不安があれば弁護士に相談を!

相続放棄前後の預金引き出しがバレるかどうかやバレた場合のリスク、バレても相続放棄が可能なケースについて解説しました。

相続放棄前後の預金引き出しは、相続人や被相続人の債権者にバレる可能性が高いです。

預金の引き出しがバレると、単純承認とみなされて相続放棄が無効になったり、相続人から不当利得返還請求をされたりするおそれがあるため注意が必要です。

ただし、預金を葬儀費用に使ったときや、消費せず現金として保管し、使ったり隠したりしなかった場合は、引き出しがバレても相続放棄が認められる可能性はあります。

とはいえ、万が一相続放棄の検討中に預金を引き出してしまった場合は、念のため弁護士へ相談することをおすすめします

弁護士なら、あなたの状況に合わせて最適なアドバイスができるほか、必要に応じてそのほかの相続人への説明も任せることが可能です。

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