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遺産分割が未了だとどうなる?デメリットや未了の場合の対処法を解説

弁護士監修記事
遺産相続
2023年03月01日
2024年04月09日
遺産分割が未了だとどうなる?デメリットや未了の場合の対処法を解説
この記事を監修した弁護士
葛城 繁弁護士 (葛城法律事務所)
相続問題を中心に分野を問わず幅広い法律問題に対応。
『ご依頼者の利益が最大限になるためのサポート』となることを心掛け、的確なアドバイスを伝えられるよう客観的視点を忘れず、日々、業務と向き合っている。
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被相続人が遺言を残さずに死亡した場合は、法定相続人のみで遺産分割の話し合いをおこなわなければなりません。

しかし、遺産相続の話し合いは時間がかかることが多く、遺産分割が全て終わらないケースもあります。

相続人が遺産分割を期間中におこなえない場合どのような事案が発生するのでしょうか。今回は遺産分割が期間内に終わらない場合のデメリットや、未了の際の申告方法をご紹介します。

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遺産分割の未了が発生する主な理由

遺産分割の未了が発生する理由は様々ですが、主に、相続人同士の意見が対立することや、相続人と連絡がつかない、またはそもそも遺産の存在に気づいていない相続人がいる、といった場合などが挙げられます。

相続人同士で意見が対立して協議がなかなか進まないまま遺産分割の期限を迎えることが最も多いケースといえるでしょう。遺産分割の協議で話し合いがまとまらなかった場合は、弁護士への依頼をするケースもありますが、弁護士が代理人として出てくると更に時間がかかる場合はデメリットとも考えられます。

また、相続人と連絡がつかず分割の話し合いすらできない場合も遺産分割の未了になります。

さらに、遺産そのものに気がつかずに、相続税の未納通知がきた際に初めて遺産があることに気づくケースもあります。この場合は、気づいた時点から未了のため、対策を行使できず多額の相続税を支払う必要があります。

また、以下のような理由で遺産分割の未了が発生することもあるため、自身が遭遇しないように注意しておきましょう。

  • 他の相続人と会いたくない
  • 遺産分割の話題に誰も触れない
  • 認知症の相続人がいる

遺産分割を未了のままにするデメリット

法律上、相続人が遺産分割を必ずおこなわなくてはならない期限は定められていません。つまり、法律上では遺産分割はいつまでも放置しておくことが許されるということになります。

しかし、遺産分割を長期間にわたり未了のまま放置しておくと、実際には複数の問題が発生する可能性があります。

そこで、以下では遺産分割をしないことによって発生する4つのデメリットをご紹介します。

管理や使用への同意に時間がかかる

被相続者の遺産に土地や建物などの不動産がある場合、遺産分割されていないとその処分や有効活用が難しくなります。

遺産分割が未了の場合、その財産は相続人の共有財産となります。共有財産は他の相続人の同意がないと、建て替えや処分、賃貸などに切り替える際も多くの時間を有してしまいます。

そのため、単独の相続人が不動産財産を、他の相続人の同意なしに売却することはできません。

また、遺産分割未了のうちに相続人が死亡し、次の相続が発生してしまうと相続人の数が増えるため遺産分割がさらに困難になります。

数次相続が発生しやすくなる

遺産分割をしない間に数次相続が発生することによって相続人の数が増え、遺産分割が困難になるというリスクも発生します。

たとえば、相続人が4人いる場合の、被相続人の遺産について遺産分割が未了のままであったケースを考えてみましょう。

遺産分割が未了のまま相続人が全員死亡し、それぞれの相続人が3名ずついた場合、相続人の数は4人×3人で合計12人にも及びます。

この場合、被相続人の遺産について相続持分を有する合計12名の相続人で遺産分割をおこなう必要がありますが、複数人による遺産分割になるため遺産分割がさらに難しくなる可能性が高いです。

弁護士に依頼して代行としてもらうのも1つの方法ですが、費用が高額になるデメリットもあるため、よく検討しましょう。

配偶者制度が使用できない

配偶者控除とは、配偶者が相続する財産が法定相続分である場合や財産の総額が上限1億6,000万円までの場合に相続税が控除される制度です。

遺産分割が未了の場合、期間内に相続税申告書を提出できず税金対策ができなくなります。納税は国民の義務のため必ずおこなわなければなりませんが、節税が可能であればおこなっておきたいところです。

遺産分割には10ヵ月という期限があるため、期限内に遺産分割をおこなうようにしましょう。

相続税の特例を活用できない

遺産分割の未了が続くと、相続税の特例が活用できなくなります。特例の活用で得をするケースも多くあるため遺産分割は未了のままにしておかず、期間内に終わらせるのがよいでしょう。以下では活用できなくなる特例を4つご紹介します。

小規模住宅特例

小規模宅地等の特例とは、居住用宅地や事業用宅地などで、不動産の評価額によって条件が異なりますが5割から8割ほど相続税が減額される制度です。

相続税申告書の提出期間内に該当する家や土地の遺産分割を終えていない場合は、小規模宅地等の特例が利用できず不動産の価値のまま相続税を支払わなければならなくなります。

農地等の納税猶予

農地等の納税猶予とは、被相続人の財産に農地があり、相続後も継続して農業を営んだ場合に特例として、農地に対しての相続税が減額される制度です。

農地等の納税猶予の条件も、遺産分割の期限内に相続税申告書を提出することなので、遺産が未了のままの場合は土地の価値に対した通常の相続税額になります。

物納

相続税が多額になり、金銭での納付が困難になった場合や、支払い能力がないと判断されれば、不動産等の財産を金銭の代わりに納付できる物納という制度が設けられています。

遺産分割の協議がまとまるまでは、被相続人が所有していた財産は全て相続人の共有物になります。従って相続税を金銭で支払えずに物納する場合は、相続人全員の申請が必要となります。

被相続人の財産の価値が上がるほど納税額も上昇していく傾向があるため、遺産分割を未了のままにしておくと予想以上の相続税が必要になるでしょう。

非上場株式の猶予

相続する財産には、会社や株式などの権利も相続することが可能になります。従って会社や株式に相続税がかかってきます。

株式は評価額によって価値が変動しますが、その時の評価額によっては多額の相続税が必要になることがあります。

株式は換金をして初めてその価値が金銭に変わる他、会社の価値も事業によって異なるため、相続した会社や株式をスムーズに引き継ぐためには、非上場株式の猶予を利用するべきです。

この制度も他と同様、遺産分割の期限内に相続税申告書の提出がないと利用できないためです。

遺産分割の未了は相続税の多くの特例を利用できないため、相続税の支払いで相続した遺産の額が大幅に少なくなることもあるため注意しましょう。

遺産分割が未了の場合にとるべき対処法

遺産分割が未了のままでは様々なデメリットがあることを説明してきましたが、遺産分割が間に合わない事情がある場合には、あらかじめ申請しておくことで、後からでも税法上の優遇措置を受けることができます。

3年以内の分割見込書を提出する

遺産分割が期限内にできない場合は、まず相続人同士で話し合い、法定相続分で相続した内容の相続税申告をおこない、納税をおこないましょう。

同時に3年以内に分割を見込めるといった見込み書の提出もおこなっておきましょう。

まず、遺産分割が未了の場合多くの税金に関する特例を受けられなくなります。これは相続人全員が不利になるため、遺産分割がまとまっていない場合は仮で法定相続分で相続したことにして申請します。同時に見込み書を提出することで、3年といった猶予ができます。

この見込み書の3年以内に改めて遺産分割の協議をおこない、修正申告することで還付請求などをおこなえます。

遺産分割の未了で相続税が多額になるよりも、仮の申告書を提出後に再度協議するほうが相続税が減額される可能性が高いため、多く使われている方法になります。

特別に期限を延長できる承認申請書を提出する

見込み書の提出後、3年経過後も遺産分割協議がまとまっていない場合でも、税務署の承認を受けることができれば、特例として遺産分割の期限を延長できます。

税務署の承認を得るためには、遺産分割の未了がやむを得ない理由がある旨の承認申告書を提出して受理されなければなりません。

やむを得ない理由は様々ですが、一例として、現在も裁判で争っている場合や、遺言書により一定期間遺産分割を禁止する旨の遺言があった場合になります。

承認申請書は見込み書提出の3年後から2ヵ月以内に提出することが必要なため、期限を過ぎないように注意しましょう。

配偶者の特例と小規模宅地等の特例を適用させるにはやむを得ない事情が解消してから4ヵ月以内の修正申告が必要です。

まとめ|遺産分割が未了にならいように早めの手続きを

遺産分割が未了のまま放置すると、デメリットが多く生活に直接影響が出るケースが多いです。余計な税金の支払い義務が発生したり、数次相続に繋がり遺産分割がさらに滞ったりしてしまいます。

遺産分割は面倒な手続きです。揉めてしまった場合はさらに遺産分割が困難になるため、法律に従って、的確に話し合いを進めてくれる弁護士に依頼して遺産分割をおこなってもらうこともおすすめです。

遺産分割が必要な状況になった場合、遺産分割が遅くなればなるほど争いが激化する可能性があります。できるだけ早い段階で話し合いを進め、未了のまま放置しないようにしましょう

弁護士への相談は遺産分割について弁護士に無料相談する方法|弁護士に依頼するメリットも解説をご覧ください。

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