特殊詐欺の「受け子」は逮捕される?罪名や量刑相場、逮捕後の流れなどを解説
高額な報酬につられて応募したバイトが、実は詐欺グループの「受け子」だった。
そんな状況に心当たりがある方は、今まさに「自分は逮捕されてしまうのではないか」と強い不安を抱えているかもしれません。
また、子どもや家族が詐欺に関わっている可能性に気づいて、どう対応すべきか悩んでいる方もいるでしょう。
本記事では、詐欺の受け子に関わってしまった、または関わる可能性のあるご家族をもつ方に向けて、逮捕の可能性や実際のケース、逮捕後の流れなどをわかりやすく解説します。
不安を抱えたまま悩み続けるのではなく、正確な情報と対応策を知ることで、冷静に判断する助けとなるはずです。
詐欺の受け子は逮捕されやすい?
特殊詐欺の受け子は、犯行現場で直接現金やカードを受け取る役割を担うため、警察に逮捕されやすい立場にあります。
以下では、実際のデータをもとに、受け子がどの程度の確率で捕まるのかを見ていきます。
特殊詐欺犯のなかでも受け子・出し子・見張り役は逮捕されやすい
以下の表は、令和5年における特殊詐欺事件の検挙人員の内訳を示したものです。
| 種別 | 検挙人員 | 割合 |
| 特殊詐欺全体 | 2,455人 | 100% |
| 受け子・出し子・見張り役 | 1,856人 | 約75.6% |
【参考】令和5年における特殊詐欺の認知・検挙状況等について(確定値版)
このデータからは、特殊詐欺事件で検挙された人のうち約75.6%、つまり約4人に3人は受け子・出し子・見張り役だったことがわかります
これには、受け子や出し子、見張り役は、被害者と直接接触する機会が多く、警察の張り込みや「だまされたふり作戦」によって現行犯逮捕されやすいことが背景にあります。
また、防犯カメラや通信履歴などから後日逮捕されるケースも多いのです。
詐欺の受け子と知らなかった場合でも逮捕され有罪となる可能性がある
近年、特殊詐欺は社会問題化しており、捜査機関や裁判所は「知らなかった」という弁解を容易には認めません。
なぜなら、高額な報酬や不自然な仕事内容などから、通常の仕事ではないと判断できたはずだとみなされるためです。
そのため、自分が詐欺と気づいていなかったとしても、状況から犯罪と認識できたと判断されれば、逮捕・起訴される可能性は高いでしょう。
詐欺の受け子は初犯でも実刑になる可能性がある
特殊詐欺は被害額が高額になりやすく、社会的影響も大きいことから、裁判では厳しい判断が下される傾向にあります。
たとえ受け子のような末端の立場であっても、初犯であれば必ず執行猶予がつくとは限りません。被害の規模や反省の有無によっては、拘禁刑が言い渡されるケースもあります。
なお、刑法246条では、詐欺罪の法定刑は10年以下の拘禁刑と定めており、罰金刑は規定されていません。
「友人に誘われただけ」「お金が必要だったから」といった理由であっても、受け子として行動すれば、重大な犯罪に関与したとみなされます。
軽い気持ちで関わった行為が実刑につながることもあるため、特殊詐欺には絶対に関わらないよう注意が必要です。
【関連記事】詐欺罪とは?懲役になる?成立要件・刑期・家族が逮捕された場合の対処法を解説
詐欺の受け子が逮捕される主なパターン
受け子が逮捕されるタイミングは、主に以下2つにわかれます。
- 現行犯で逮捕されるパターン
- 後日逮捕(現行犯以外)のパターン
ここでは、それぞれのパターンについて詳しく見ていきましょう。
現行犯で逮捕されるパターン
受け子が逮捕されるケースで多いのは、現金やキャッシュカードを受け取る現場で警察に取り押さえられる「現行犯逮捕」です。
被害者やその家族が不審に思って通報した場合や、警察がだまされたふり作戦を実施して張り込んでいる場合には、受け渡しの瞬間に逮捕されます。
「だまされたふり作戦」とは、警察があらかじめ被害者と連携し、詐欺グループをおびき寄せる捜査方法です。
また、警察は事前に監視カメラやGPSを活用して受け子の動向を把握していることも多く、現金を受け取った瞬間に複数の捜査員に囲まれて逮捕されるケースもあります。
現行犯逮捕の場合は証拠が明確に残るため、起訴や有罪判決につながる可能性が高くなります。
【関連記事】現行犯逮捕とは|逮捕できる条件と流れ・捕まった場合の対策を解説
後日逮捕のパターン
現行犯で逮捕されなかった場合でも、あとから警察の捜査によって身元が特定されて逮捕されるケースも多いです。
これを「通常逮捕」(後日逮捕)といい、主に防犯カメラやATMの映像解析、通信履歴、共犯者の供述などによって足がつくことも少なくありません。
特殊詐欺では同じ手口で複数の被害が発生しているため、警察は共通する人物像や服装、移動経路などを分析して身元を割り出します。
共犯者が先に逮捕され、取り調べで関与を認めた結果として後日逮捕に至ることも珍しくありません。
【関連記事】後日逮捕とは?よくある疑問や事例、やるべきことなどを解説
詐欺の受け子が逮捕された場合の罪名・刑罰
詐欺の受け子として逮捕された場合は、関与した行為の内容によって適用される罪名が異なります。
それぞれの罪名と刑罰の違いを整理しながら、どのような場合にどの罪が適用されるのかを解説します。
受取型・送付型の場合|詐欺罪が適用される
被害者をだまして現金やキャッシュカードを受け取った場合は、刑法246条の詐欺罪が適用されます。
法定刑は10年以下の拘禁刑で、罰金刑の規定はありません。
被害者が警察官や家族を名乗る受け子にカードや現金を渡した場合、一見すると自らの意思で金品を手渡しているように見えますが、これらがだまされた結果の行動であれば詐欺罪に該当します。
【関連記事】詐欺罪とは?懲役になる?成立要件・刑期・家族が逮捕された場合の対処法を解説
すり替え詐欺をおこなった場合|窃盗罪が適用される
被害者をだましてキャッシュカードを確認のために預かると言い、返却するように見せかけて別のカードにすり替える手口では、詐欺罪ではなく窃盗罪が適用されます。
被害者は一時的にカードを預けただけであり、金品を差し出す意思がないため、最終的に盗み取ったと判断されるのです。
窃盗罪の法定刑は10年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金です。
詐欺罪と比べると罰金刑の規定がありますが、実際の裁判では多くのケースで拘禁刑が科されています。
すり替え行為は明確な窃取行為とみなされるため、被害額や関与の程度によっては重い処分となることがあります。
【関連記事】窃盗罪に該当する行為と罰則|窃盗事件で弁護士に相談すべき4つの理由
詐欺の受け子が逮捕されたら懲役(拘禁)何年?量刑相場は?
以下の表は、令和3年版犯罪白書の統計をもとにした特殊詐欺事件の量刑分布です。
| 全部執行猶予 | 全部実刑 |
| 45.1% | 54.9% |
参照元:令和3年版犯罪白書
| 量刑 | 割合 |
| 1年未満 (全部執行猶予) |
1.1% |
| 1年以上2年未満 (全部執行猶予) |
0% |
| 2年以上3年以下 (全部執行猶予) |
44.0% |
| 1年以上2年未満 (全部実刑) |
5.5% |
| 2年以上3年以下 (全部実刑) |
37.4% |
| 3年超4年以下 (全部実刑) |
11.0% |
| 4年超5年以下 (全部実刑) |
0% |
| 5年超10年以下 (全部実刑) |
1.1% |
【参考】令和3年版犯罪白書
実刑と執行猶予の割合を見ると、初犯でも半数以上が実刑判決を受けており、量刑の中心は拘禁2年から3年程度であることがわかります。
なお、執行猶予がつくかどうかは、被害弁償の有無や反省の態度、共犯者との関係性などの情状によって大きく異なります。
そのため、もしも自分や家族が受け子として詐欺行為にかかわってしまった場合は、執行猶予を獲得するために、いち早く弁護士などへ相談して適切に対処することが大切だといえるでしょう。
詐欺の受け子が逮捕された場合の流れ
受け子として逮捕された場合、事件は警察での取り調べから始まり、検察官への送致、勾留、そして起訴または不起訴の判断へと進みます。
手続きには厳格な期限がありますが、身柄拘束が長期化するケースも少なくありません。
ここでは、逮捕から起訴までの一連の流れを時系列で解説します。
【逮捕後48時間以内】警察での取り調べ・検察庁への送致
受け子として逮捕されると、まず警察署に身柄を拘束された状態で取り調べが始まります。
警察は関係者の供述を集め、スマートフォンや通話記録、防犯カメラの映像などから詐欺グループとの関係を確認します。
その後、逮捕後48時間以内に被疑者の供述や押収した証拠をもとに事件の概要を整理し、検察庁へ送致するかどうかを判断します。
この間、被疑者は警察の留置場で生活することになり、外部と連絡をとることはできません。
なお、弁護士が付いている場合は、この段階で接見をおこない、取り調べ対応や今後の方針を被疑者に助言することが可能です。
【逮捕後72時間以内】検察官の取り調べ・勾留(身柄拘束)の請求
警察による取り調べが終わると、事件は検察庁に送致されます。
検察官は新たに取り調べをおこない、逃亡や証拠隠滅のおそれがあるかを判断したうえで、勾留を請求するかどうかを決めます。
この勾留請求は、逮捕から72時間以内におこなわれなければなりません。
【最大20日間】検察官の取り調べ・起訴/不起訴の判断
勾留請求の結果、裁判所が勾留を認めると、最初に10日間、最長で20日間の身柄拘束が続きます。
勾留期間中におこなわれるのは、検察官による取り調べです。
特殊詐欺事件のように複数の関係者がいる場合は、供述の食い違いを精査するため、長期間の勾留がおこなわれることも少なくありません。
被疑者はその間、留置場での生活を余儀なくされ、外部との接触も制限されます。
勾留期間中に検察官は、証拠や供述内容をもとに起訴するか、不起訴にするかを判断します。
被害弁償や示談が成立している場合は、不起訴や起訴猶予となる可能性もありますが、特殊詐欺のように被害が重大な事件では、起訴されて刑事裁判に進むケースが大半です。
【約1ヵ月後~】刑事裁判へ移行し判決が下される
起訴されると、事件は刑事裁判へと移行します。
初公判が開かれるまでの期間はおおむね1ヵ月前後です。
裁判では被告人の供述や証拠をもとに、詐欺への関与の程度や反省の有無などが審理されます。
特殊詐欺事件の裁判では、受け子が「どの程度犯行を認識していたか」「被害弁償や示談がなされているか」が重要な判断材料となります。
被告人が罪を認めている場合は、審理が短期間で終了することが多く、初公判で判決が言い渡されるケースも少なくありません。
そのほか、判決では被害額や共犯者との関係性、反省の態度、再犯のおそれなどを総合的に考慮して量刑が決定されます。
初犯であっても悪質と判断されれば実刑が科されることもあり、反対に示談や被害弁償が成立していれば執行猶予が付く場合もあります。
裁判が終わり判決が確定すると、実刑であれば拘置所を経て刑務所に収容されます。執行猶予が付いた場合は釈放されますが、前科が残る点は変わりません。
受け子が逮捕されるのが不安なら?家族が受け子で逮捕されたら?
受け子として詐欺に関与してしまった、あるいは家族が受け子容疑で逮捕された場合、どうすればよいのかわからず不安を抱える人も多いでしょう。
特殊詐欺は社会的に重大な犯罪とされており、早急に適切な対応を取らなければ、取り返しのつかない結果につながる可能性があります。
ここでは、逮捕前後のそれぞれの状況に応じて、取るべき具体的な行動を説明します。
なるべく早く弁護士に相談・依頼する
受け子として詐欺に関与してしまった、あるいは家族が逮捕された場合は、できるだけ早く弁護士に相談することが重要です。
刑事事件では時間が経過するほど対応の選択肢が限られていきますが、逮捕前であれば事前の相談によって逮捕を回避できる場合もあります。
特に、逮捕直後は弁護士が唯一外部と接触できる存在です。
弁護士は、取り調べの対応や供述内容に関する助言、被害者との示談交渉、保釈請求などを通じて、被疑者や家族を支援します。
特に特殊詐欺のような組織的犯罪では、共犯関係の中で誤解や不利な供述が残りやすく、専門的なサポートが欠かせません。
逮捕前でも警察からの呼び出しがあった時点で弁護士への相談を検討し、逮捕後であれば速やかに弁護士を依頼して今後の方針を明確にすることが大切です。
被害者との示談交渉を成立させる
被害者との示談交渉は、刑事事件の処分を大きく左右する重要な要素です。
被害者が受けた損害を金銭的に弁償し、謝罪の意志を示すことで、被害者の処罰感情が和らぎ、起訴猶予や執行猶予が付く可能性が高くなります。
ただし、示談交渉は被疑者本人や家族が直接おこなうのではなく、弁護士を通じて進めるのが原則です。
特殊詐欺のような重大事件では、被害者との連絡を本人が取ること自体が問題視される場合もあるため、専門家による慎重な対応が求められます。
示談が成立すると、被害者から「処罰を望まない」という嘆願書が提出されるケースもあり、不起訴処分の獲得や減刑にも大きく影響します。
そのため、できる限り早い段階で弁護士に依頼し、示談交渉を進めることが重要です。
警察から出頭要請がかかったら応じる
警察から出頭を求められた場合は、必ず応じることが大切です。
出頭要請を無視したり、逃げようとしたりすると、逃亡や証拠隠滅の意図があると判断され、逮捕される可能性が高まります。
また、出頭時には落ち着いて事実関係を説明することが重要です。
虚偽の供述や曖昧な回答をすると、かえって疑いを深める結果になることがあります。
誠実な態度で取調べに臨み、必要に応じて弁護士の助言を受けながら対応することが大切です。
逮捕前の場合は自首を検討する
自分が受け子として詐欺に関与してしまった、あるいはその可能性があると感じた場合は、早めに自首を検討することが大切です。
自首とは、自ら警察に出頭して犯罪の事実を申告する行為を指します。
捜査機関に発覚する前に自首した場合は、起訴猶予や執行猶予付きの判決獲得の可能性が高まります。
ただし、自首をする際は、必ず弁護士に相談し、同行してもらうようにしてください。
弁護士が同行すれば、警察への説明内容を整理したうえで出頭でき、手続きがスムーズに進みます。
【関連記事】自首に弁護士が同行するメリット5つ|弁護士費用や自首の流れを解説
さいごに|詐欺の受け子で逮捕が不安なら弁護士に相談を!
詐欺の受け子は、犯罪組織の末端に位置づけられながらも、実際には最も逮捕されやすく、刑罰も重くなりやすい立場です。
高額報酬や「簡単に稼げる」といった甘い言葉に誘われて加担してしまうケースが多いものの、関与が発覚すれば厳しい処分を受ける可能性があります。
一度逮捕されてしまうと、長期間の勾留や裁判手続きなど、精神的にも経済的にも大きな負担を強いられます。
だからこそ、少しでも不安を感じた段階で、できるだけ早く弁護士に相談することが大切です。
弁護士は、捜査機関とのやり取りを代行し、取調べや示談交渉などを適切にサポートしてくれます。
家族が受け子として逮捕されてしまった場合も同様です。
弁護士を通じて正確な状況を把握し、今後の対応方針を早急に決めることで、取り返しのつかない結果を防ぐことができます。
詐欺の受け子に関わる事件は、早期の行動が何よりも重要です。
自分や家族を守るためにも、迷わず専門家に相談し、正しい対応をとるようにしましょう。
