相続放棄と代襲相続の関係をわかりやすく解説|実際の3つのケースで確認してみよう
代襲相続とは、本来相続人である人が死亡している場合などに、その子どもが相続人となる仕組みのことです。
そのため、遺産に多額の借金などが含まれる相続において、相続放棄を検討する際に「自分が相続放棄をしたら、子どもが借金を返すことになってしまうのでは」と心配する方は少なくありません。
そこで本記事では、相続放棄と代襲相続の関係や知っておくべき基本知識、相談窓口について解説します。
最後まで読めば、相続放棄と代襲相続の関係が理解でき、自分が相続放棄をしても問題ないのかどうか判断できるようになるでしょう。
相続放棄をしたら代襲相続は発生しない!
結論からお伝えすると、相続放棄をした場合、その子どもに代襲相続は発生しません。
なぜなら、相続放棄をすると、その人ははじめから相続人ではなかったことになるためです。
代襲相続が発生するのは、例えば以下のようなケースです。
ただし、相続放棄の効力はその相続にしか影響しない点に注意しましょう。
例えば、同時期に複数の相続が重なった場合は、それぞれの相続ごとに相続放棄をするかどうかを判断する必要があります。
相続放棄と代襲相続の関係性|具体例でチェックしてみよう
相続放棄と代襲相続の関係は複雑で、ケースによって対応が変わってきます。
ここでは、実際の相続で遭遇しやすい3つのケースを紹介します。
自分のケースがどれに当てはまるのかを確認することで、相続放棄と代襲相続の関係性が理解しやすくなるでしょう。
1.子どもが相続放棄をした場合|孫やひ孫は代襲相続できない
まず、祖父が亡くなり、その子どもである父が相続放棄をしたケースを想定してみましょう。
このとき、父が相続放棄をすると、その子ども(祖父から見て孫)は代襲相続人にはなりません。
また、孫に子(ひ孫)がいても再代襲相続は生じません。
なぜなら、父は法律上はじめから相続人ではなかったことになるためです。
相続権は父で止まり、下の世代に引き継がれなくなります。
2.兄弟姉妹が相続放棄をした場合|甥・姪は代襲相続できない
次に、叔父が借金を残して亡くなり、その兄弟である父が相続放棄をしたケースを考えてみましょう。
この場合、父が相続放棄をすると、父の子ども(叔父から見て甥・姪)は相続権を引き継ぎません。
父ははじめから相続人ではなかったことになり、代襲相続が起こらないためです。
3.相続放棄後に代襲相続が生じた場合|代襲相続される可能性がある
相続放棄後に別の相続が発生したときは、代襲相続が生じる可能性があります。
例えば、父が亡くなり、その子どもが相続放棄をしたとしましょう。
その後、祖父が亡くなった場合、子どもは改めて相続放棄をしなければ祖父の代襲相続人になります。
なぜなら、子どもが放棄したのは父の相続であり、祖父の相続とは関係がないためです。
祖父が亡くなった時点で、子どもは父に代わって祖父の相続権を得ます。
複数の相続に関わる場合、相続ごとに相続するかどうかを決める必要があることを覚えておきましょう。
一度、相続放棄をしたからといって、ほかの相続でも自動的に相続を放棄できるわけではありません。
相続放棄の基本知識|代襲相続以外のポイントも理解しよう
ここからは、相続放棄の基本知識を確認しておきましょう。
- 相続放棄をすると相続権を失う
- 後順位の相続人に相続権が移る
- 全員が相続放棄をすると財産は最終的に国のものになる
それぞれのポイントについて、詳しく解説します。
1.相続放棄をすると相続権を失う
相続放棄をすると、被相続人の全ての財産に対する相続権を失います。
つまり、預金や不動産などのプラスの財産も、借金やローンなどのマイナスの財産も何ひとつ相続しません。
また、一度相続放棄の申述手続きをおこなうと、原則として撤回できません。
後日新たな相続財産が見つかっても相続できないため、事前に被相続人の財産を漏れなく調査することが重要です。
被相続人の財産は、金融機関・証券会社への照会や名寄帳の取得、借金は信用情報機関への開示請求などで調査できます。
見落としがないよう、弁護士などの専門家に相談しながら進めるとよいでしょう。
なお、相続放棄には自己のために相続が開始されたことを知ったときから3ヵ月以内という期限(熟慮期間)があります。
この期間内に相続放棄するかどうかを決めなければなりません。
【関連記事】相続放棄の期限は3か月|期限を過ぎたときの対処法とは?
2.相続放棄をすると後順位の相続人に相続権が移る
相続放棄をして同順位の相続人がいなくなると、相続権は後順位の相続人に移ります。
ここでいう「順位」とは、誰が優先的に相続するかを定めた法律上の優先順位のことです。
各相続人の順位は、以下のとおりです。
| 相続順位 | 該当者 |
| 第1順位 | 子どもや孫などの直系卑属 |
| 第2順位 | 父母や祖父母などの直系尊属 |
| 第3順位 | 兄弟姉妹や甥・姪 |
例えば、第1順位である子どもが相続放棄すると、相続権は第2順位の父母に移ります。
さらに父母も相続放棄すると、第3順位の兄弟姉妹に移ります。
一方で、配偶者は常に相続人になり、相続放棄してもほかの相続人の順位には関係ありません。
また、相続放棄をしてもまだ同順位の相続人がいるときは、相続放棄者の分が同順位の相続人たちに配分されるだけで後順位には移りません。
なお、相続放棄をしても家庭裁判所や役所から後順位の相続人に通知がいかない点にも注意が必要です。
相続放棄した旨を後順位の相続人に伝える義務はありませんが、トラブルを避けたいなら伝えておいたほうがよいでしょう。
3.全員が相続放棄をすると財産は国のものになる
相続人全員が相続放棄をして相続人がいなくなると、相続財産は相続財産法人として扱われ、最終的に国のものとなります。
相続人が居なくなったあとの具体的な流れは、以下のとおりです。
- 利害関係者が「相続財産清算人」の選任を申し立てる
- 家庭裁判所が相続財産清算人を選任する
- 家庭裁判所が相続人を捜索し、不存在が確認される
- 相続財産清算人が被相続人の債務の弁済・財産の清算をおこなう
- 特別縁故者がいる場合は財産を分与する(申立てが認められた場合)
- 残った財産が国庫に帰属する
なお、ここでの「特別縁故者」とは、以下のいずれかに該当する人のことをいいます。
- 内縁の夫・妻など
- 被相続人の療養看護に尽力した人
- 被相続人と家族同然の交流があったなど、特別の縁故があった人
また、相続放棄者が被相続人の不動産を占有していた場合は、相続財産清算人が選任されるまでその不動産を管理しなければなりません。
相続財産清算人の権限や必要となるケースについては、以下の記事も参考にしてください。
【関連記事】相続財産清算人(相続財産管理人)の権限と役割、必要となるケースまとめ
相続放棄と代襲相続の関係がわからない場合の相談窓口3選
相続放棄と代襲相続の関係について、疑問や不安がある場合は以下の窓口に相談することをおすすめします。
- 法律事務所|初回無料相談に応じている弁護士も多い
- 弁護士会|原則有料だが法律相談センターで相談できる
- 市区町村|住民を対象にした法律相談会を定期的に開催している
相談窓口ごとに特徴やメリット・デメリットが異なるため、自分の状況や希望に合わせて選択するとよいでしょう。
ここからは、それぞれの相談窓口について詳しく解説します。
1.法律事務所|初回無料相談に応じている弁護士も多い
法律事務所では、相続全般に関する相談が可能です。
弁護士に財産状況を伝えれば、相続放棄が適切かどうか判断してもらえるほか、ケースによってはほかの解決方法を提案してもらえる場合もあります。
また、相談後にそのまま手続きを依頼すれば、相続放棄の3ヵ月という期限内に確実に手続きを完了できるでしょう。
なお、法律相談料が有料の場合は、30分あたり5,000円~1万円程度が相場です。
最近では初回無料で相談できる事務所も多いため、まずは無料相談を実施している事務所に気軽に相談してみるとよいでしょう。
ただし、法律事務所ならどこでもよいというわけではありません。
事務所によって得意とする分野が異なるため、相続に注力している事務所を選ぶことが重要です。
2.弁護士会|原則有料だが法律相談センターで相談できる
各地域の弁護士会では、法律相談センターという相談窓口が設けられており、相続問題に特化した相談が可能です。
相談は基本的に有料ですが、地域によっては無料で相談に応じているケースもあります。
弁護士会を通じて弁護士に相談するメリットは、弁護士を自分で探す手間がかからない点です。
ただし、自分で弁護士を選べないため、どのような弁護士に当たるかわからないといったデメリットがあります。
また、相談の予約が先になる可能性があるため、相続放棄の期限が迫っているときは法律事務所に直接相談するほうがスムーズでしょう。
法律相談の詳しい予約方法や対応状況については、各弁護士会のホームページを確認してください。
【参考】弁護士会の法律相談センター
3.市区町村|住民を対象にした法律相談会を定期的に開催している
市区町村では、地域住民を対象とした無料の法律相談会が定期的に開催されています。
相続放棄などの相続問題についても無料で弁護士に相談できるため、相談費用を抑えたい場合に適しています。
具体的な対応状況や横断内容は地域によって異なりますが、例えば東京都世田谷区では以下のような内容で実施されています。
| 条件 | 区内在住、在勤、在学の方 |
| 予約方法 | 相談日の1週間前から電話にて予約 |
| 相談日 | 月曜日~金曜日(相談場所は曜日によって異なる) |
| 相談時間 | 1人につき25分 |
| 相談方法 | 電話または面談 |
※内容は変更される可能性があるため、事前に区役所に確認してください。
ただし、市区町村の法律相談は相談時間が限られているほか、どのような弁護士に当たるかわからないというデメリットもあります。
また、具体的な相談というよりは一般的なアドバイスが基本で、相談に乗ってくれた専門家にそのまま依頼できません。
「とりあえず話を聞いてほしい」というような場合であればおすすめできますが、依頼を前提とした相談なら直接法律事務所に相談するか弁護士会を通して相談したほうがよいでしょう。
さいごに|相続放棄をすると代襲相続は発生しないと理解しておこう
相続放棄と代襲相続の関係について、基本的な考え方から複雑なケースまで解説しました。
相続放棄すると法律上はじめから相続人ではなかったことになり、その子どもに権利が引き継がれることはありません。
ただし、相続放棄の影響は、その相続に限った話である点に注意が必要です。
複数の相続に関わるときは、相続ごとに放棄するか判断しなければなりません。
また、後順位の相続人に権利が移ることや、全員が相続放棄したときは最終的に相続財産が国庫に帰属することなど、知っておくべき基礎知識も多くあります。
相続放棄と代襲相続の関係で判断に迷ったら、弁護士に相談することをおすすめします。
相続放棄には3ヵ月の期限が設けられているため、早めの相談が重要です。
