相続放棄は自分でできる!4つのステップや手続きのポイントなどをやさしく解説
相続放棄とは、被相続人に属する権利義務の承継を一切放棄する旨の意思表示のことです。
被相続人が借金だらけの場合や、相続人同士の関係性がうまくいっておらず遺産分割協議に参加する負担が大きい場合には、相続放棄が有力な選択肢になります。
相続放棄をするには家庭裁判所の申述手続きが必要ですが、相続人が自分で手続きを済ませることも可能です。
この記事では、相続放棄を自分でするときの流れ、自分で相続放棄をするときの注意点やデメリット、相続放棄をする前に弁護士に相談するべき理由などについて、わかりやすく解説します。
相続放棄の手続きは自分でできる?実際に経験した人の声3選
まずは、相続放棄を自分で経験した人の実際の声を紹介します。
もう手続き終わった。相続放棄の手続きめっちゃ簡単やった。余裕で自分で出来る。一つ賢くなった
— みき@娘と息子 (@mikix999) August 6, 2025
今日は相続放棄のために家裁へ。
— 大路ゆみえ(おおじゆみえ)@文章と占いで心を射止めるライター (@oojiyumie) August 4, 2025
手続きにあたって、自分の戸籍とったり父の本籍地で戸籍とったり。
他にも収入印紙や郵便切手を購入して家裁に提出。
お金をもらうために手間暇かけるのはわかるけど、放棄するのにこんなに手間とお金がかかるのはモヤモヤ
いつかこのことを文章にまとめよう。
相続放棄を自分でやったことあるけど、ツイッターをちょっと検索するといっぱい出てくる「自分で簡単にできますよ」って体験談をあまり真に受けない方がいい
— へびめろ(旧やぎ) (@kabaodaisuki) November 17, 2024
簡単と言ってるのはたぶん、事務作業がそんなに苦にならない人だし、亡くなった人の最後の居住地や生年月日が分かってる場合の話なので
自分だけで相続放棄の手続きができたという声もあれば、自分だけでは相当苦労したという感想もあります。
相続放棄の手続きの難易度は、被相続人とあなたとの関係性や、相続財産調査の大変さなどの個別事情によって左右されます。
そのため、相続放棄をするのが適切か不安だ、ミスなく円滑に相続放棄手続きを進めたいなどの場合には、自分だけで判断するのではなく、念のために一度は弁護士に相談しておくと安心です。
相続放棄はたった4ステップ!自分で手続きをする際の流れ
相続放棄を自分でするときの4つのステップについて解説します。
- 相続放棄に必要な書類を準備する
- 家庭裁判所に相続放棄の申述をする
- 家庭裁判所から届いた照会書を返送する
- 家庭裁判所から相続放棄申述受理証明書が届く
それぞれのステップについて、見ていきましょう。
1.相続放棄に必要な書類を準備する
まずは、相続放棄手続きの必要書類を準備してください。
相続放棄手続きでは、相続放棄の申述書と申立添付書類が必要です。
相続放棄の審理に必要だと判断された場合には、さらに追加書類の提出を求められることがあるので、家庭裁判所からの指示に従ってください。
申立添付書類の種類・内容は、申述人が被相続人とどのような関係にあるかによって、以下のように区分されます。
| 書類の種類 | 書類 |
|---|---|
| 全ての申述人に共通する申立添付書類 | ・被相続人の住民票除票または戸籍附票 ・申述人の戸籍謄本 |
| 申述人が、被相続人の配偶者の場合 | ・被相続人の死亡の記載がある戸籍(除籍、改製原戸籍)謄本 |
| 申述人が、被相続人の子どもまたはその代襲者(第一順位相続人)の場合 | ・被相続人の死亡の記載がある戸籍(除籍、改製原戸籍)謄本 ・申述人が代襲相続人の場合、被代襲者の死亡の記載がある戸籍(除籍、改製原戸籍)謄本 |
| 申述人が、被相続人の父母・祖父母などの直系尊属(第二順位相続人)の場合 | ・被相続人の出生時から死亡時までの全ての戸籍(除籍、改製原戸籍)謄本 ・被相続人の子ども及びその代襲者で死亡している人がいる場合、その子ども及びその代襲者の出生時から死亡時までの全ての戸籍(除籍、改製原戸籍)謄本 ・被相続人の直系尊属に死亡している人(相続人より下の代の直系尊属に限る)がいる場合、その直系尊属の死亡の記載のある戸籍(除籍、改製原戸籍)謄本 |
| 申述人が、被相続人の兄弟姉妹及びその代襲者(第三順位相続人)の場合 | ・被相続人の出生時から死亡時までの全ての戸籍(除籍、改製原戸籍)謄本 ・被相続人の子ども及びその代襲者で死亡している人がいる場合、その子ども及びその代襲者の出生時から死亡時までの全ての戸籍(除籍、改製原戸籍)謄本 ・被相続人の直系尊属の死亡の記載のある戸籍(除籍、改製原戸籍)謄本 ・申述人が代襲相続人の場合、被代襲者の死亡の記載がある戸籍(除籍、改製原戸籍)謄本 |
同じ書類は1通で足り、複数用意する必要はありません。
また、同一の被相続人について、相続の承認・放棄の期間伸長事件や相続放棄申述受理事件が先行している場合には、その事件で提出済みの書類は重複して提出しなくてよいとされています。
さらに、家庭裁判所によっては、戸籍などに代えて、法定相続情報一覧図の写しで代用できる場合があります。
なお、申述前に入手が不可能な戸籍などがある場合には、申述後に追加提出することも可能です。
また、相続放棄の申述をする際には、収入印紙800円分、連絡用切手分の費用負担が発生します。
相続放棄申述書は記入例を見て作成しよう
相続放棄をする際には、相続放棄申述書に必要事項を記入しなければいけません。
裁判所のホームページで公開されている相続放棄申述書の記入例を参考に、ミスのないように作成をしてください。
2.家庭裁判所に相続放棄の申述をする
必要書類の準備が終わったら、相続放棄の申述をしてください。
相続放棄の申述は、家庭裁判所を訪問、もしくは郵送によって必要書類を提出することでおこないます。
相続放棄の申述の管轄裁判所は、被相続人の最後の住所地の家庭裁判所です。
管轄裁判所がどこかを調べたい人は、「申立書提出先一覧(家庭裁判所)|裁判所HP」から確認をしてください。
3.家庭裁判所から届いた照会書を返送する
相続放棄の申述をすると、申述日から2週間程度で、家庭裁判所から相続放棄照会書・相続放棄回答書が届きます。
相続放棄の申述が本当に本人の意思に基づくのか、どのような事情・理由で相続放棄をしたのかについて確認されるので、必要事項を記入したうえで、所定の期日までに相続放棄回答書を返送しましょう。
また、相続放棄の申述の内容次第では、家庭裁判所から呼び出されて面談が実施されることもあるので、指示通りに対応をしてください。
4.家庭裁判所から相続放棄申述受理証明書が届く
回答書を受け取った家庭裁判所は、相続放棄を認めるべきかどうかの審理をおこないます。
相続放棄の申述が受理された場合には、家庭裁判所から相続放棄申述受理通知書が送付されます。
これによって、相続放棄が法的に有効なものと認められます。
必要があれば相続放棄申述受理証明書を取得する
相続放棄をした事実を第三者に証明する必要があるケースに備えて、相続放棄申述受理証明書を取得しておくことをおすすめします。
たとえば、ほかの相続人の遺産分割手続きにおいて、あなたが相続放棄をした事実を示す証拠を求められることがあります。
または、相続放棄をしたとしても、その事情を知らない被相続人の債権者から督促状が届くケースも少なくありません。
相続放棄申述受理証明書を取得しておけば、これらの事態にもスムーズに対応できるでしょう。
相続放棄申述受理証明書の発行には、1通につき150円分の収入印紙が必要です。
また、身分証明書やその他疏明資料の提出を求められることもあるので、詳細については管轄裁判所に確認をしてください。
相続放棄を自分でやる場合も一度は弁護士に相談しておこう
相続放棄をする際には、自分で手続きを進めようと思っている場合でも、念のために一度は弁護士に相談するのがおすすめです。
というのも、遺産相続問題への対応が得意な弁護士に相談することで、以下3つのメリットを得られるからです。
- 相続放棄が適切かどうかを判断してくれる
- 相続放棄の注意点を整理してくれる
- 相続手続きの流れを教えてくれる
それぞれのメリットについて、詳しく解説します。
1.相続放棄が適しているか教えてもらえる
弁護士に相談すれば、本当に相続放棄をするべき状況なのか、相続放棄が適切な判断なのかを判断してくれます。
そもそも、相続放棄は預貯金や不動産などのプラスの財産だけではなく、借金などのマイナスの財産も全て放棄する意思表示のことです。
一部の財産だけを取捨選択して相続放棄することは許されず、相続放棄をすると、最初から相続人ではなかったと扱われます。
たとえば、ほかの相続人との関係性が悪化しており、遺産分割協議に参加をするのさえ面倒な場合や、引き継ぐべきプラスの財産が存在せず遺産に負債しかない場合などでは、相続放棄をするのが合理的である可能性が高いでしょう。
しかし、相続人には相続放棄だけではなく、単純承認・限定承認という選択肢が与えられている点を忘れてはいけません。
相続財産の内容次第では相続放棄よりも限定承認が適している場合もありますし、弁護士に依頼することで単純承認の可能性も見えてくるケースも少なくありません。
単純承認・限定承認・相続財産のいずれが適切かは事案によって異なります。
遺産相続トラブルの経験豊富な弁護士に確認してもらえば、相続放棄の適否が判明するでしょう。
【関連記事】
相続の単純承認とは?みなされる条件や相続放棄の注意点をわかりやすく解説
限定承認とは?メリット・デメリットや手続きの流れを詳しく解説
2.相続放棄をする際の注意点を教えてもらえる
弁護士に相談すれば、相続放棄の注意点を整理してくれます。
たとえば、相続放棄の意思表示は原則として撤回不可です。
「新しい遺産が見つかったから相続放棄を撤回したい」ということは認められません。
そのため、相続放棄をする際には、本当に全ての遺産を放棄してよいかを判断するために、入念な相続財産調査が必要です。
また、相続放棄の申述はいつまでもできるというわけではなく、原則として相続の開始があったことを知ったときから3ヵ月以内の熟慮期間が定められています。
熟慮期間を過ぎると単純承認したとみなされるため、被相続人が死亡したあと、できるだけ早いタイミングで相続財産調査を尽くして相続放棄をするべきかについて判断しなければいけません。
熟慮期間内に相続財産調査が終わらない場合には、速やかに家庭裁判所に熟慮期間の伸長を申し立てる必要があります。
さらに、相続放棄をすると、プラスの財産・マイナスの財産の全てを放棄しなければいけません。
たとえば、どうしても承継したい財産がある場合には限定承認という手段も考えられるので、相続放棄と限定承認のメリット・デメリットを比較したうえで、適切な判断を下す必要があります。
弁護士に相談すれば、これらの相続放棄の注意点を教えてくれますし、相談者の状況に応じて適切なアドバイスを提供してくれるでしょう。
3.相続放棄をする際の流れなどを教えてもらえる
相続放棄をする際には、家庭裁判所の申述手続きが必要です。
弁護士に相談すれば、収集するべき資料の内容を整理したり、申述書の作成方法についてアドバイスをしてくれたりするでしょう。
また、相続放棄業務を依頼すれば、書類の準備や裁判所の申述手続きを代理して進めてくれるので、依頼者自身は特別な対応をする必要がなくなります。
相続放棄の手続きを自分でやる際に知っておくべき3つの注意点
相続放棄の手続きを自分で進めるときの注意点を3つ紹介します。
- 不備があると受理されない可能性がある
- 想像しているよりも手続き負担が重い
- 間違った行動をすると単純承認したと判断されかねない
それぞれの注意点について、詳しく見ていきましょう。
1.不備があると受理されない可能性がある
相続放棄申述書や申立添付書類に不備があると、申述が却下されたり、裁判所から呼び出しをされたりする可能性があります。
理屈上、相続放棄の再申述をすることは可能ですが、一度却下された申述を認めてもらうには、裁判所に対する丁寧な説明を求められますし、その準備に相当の時間を要します。
そして、相続放棄は熟慮期間内に申述をしなければいけないので、不備があって手続きが順調に進まないと、相続放棄が認められないリスクにも晒されます。
2.思ったよりも手続きに負担がかかってしまう
相続放棄の申述手続きは、想像以上に負担が大きいです。
たとえば、申立添付書類としてさまざまな人の戸籍謄本などを用意する必要がありますが、遠方の戸籍謄本を集めるには相当の労力・時間がかかります。
また、相続放棄は被相続人の最後の住所地の家庭裁判所で申述しなければいけないので、申述のために遠方の家庭裁判所への訪問を強いられるケースもあります。
弁護士に依頼をすれば書類の手配や家庭裁判所への出頭も代理してくれるので、あなた自身は時間・労力をかけずに済むでしょう。
3.間違って単純承認に該当する行動をしてしまう
民法では、以下のような法定単純承認事由を定めています。
(法定単純承認)
第九百二十一条 次に掲げる場合には、相続人は、単純承認をしたものとみなす。
一 相続人が相続財産の全部又は一部を処分したとき。ただし、保存行為及び第六百二条に定める期間を超えない賃貸をすることは、この限りでない。
二 相続人が第九百十五条第一項の期間内に限定承認又は相続の放棄をしなかったとき。
三 相続人が、限定承認又は相続の放棄をした後であっても、相続財産の全部若しくは一部を隠匿し、私にこれを消費し、又は悪意でこれを相続財産の目録中に記載しなかったとき。ただし、その相続人が相続の放棄をしたことによって相続人となった者が相続の承認をした後は、この限りでない。
引用元:民法|e-Gov法令検索
相続放棄をする前に相続財産の全部または一部を勝手に処分すると、単純承認をしたとみなされるので、相続放棄をすることはできません。
たとえば、被相続人の財産を無断で売却したり、預貯金を引き出して生活費などに使ったりする場合が挙げられます。
被相続人が死亡してからの行動次第では単純承認をしたと判断されかねないので、将来的に相続放棄を検討しているのなら、できるだけ早いタイミングで弁護士に相談をして、やってはいけない行動リストについてアドバイスをもらうとよいでしょう。
【理由別】相続放棄を自分でやろうと思っている人へのアドバイス
さいごに、相続放棄を自分でしようと考える理由ごとに、チェックしておくべきポイントを紹介します。
1.お金をかけたくない|法テラスの制度を使うと安く抑えられる
「相続放棄にお金をかけたくない」「専門家に相談したいがお金がない」という理由で相続放棄を自分でしようと考えている人は、法テラスの利用を検討してください。
法テラス(日本司法支援センター)とは、国が設立した法的トラブル解決のための総合案内所です。
経済的な理由で弁護士や司法書士に相談できない人のために、無料の法律相談や、弁護士費用・司法書士費用の立て替えサービスを提供しています。
近くの法テラスに問い合わせをすれば、法テラスの支援制度を利用できる要件を満たしているかなどについても教えてもらえます。
無料相談にも対応しているので、経済的理由が原因で専門家への相談を躊躇しているなら、早めに近くの法テラス事務局まで連絡してみましょう。
【関連記事】法テラスで無料相談できる内容はどこまで?利用するための条件や注意点も解説
2.弁護士を探すのが面倒|ポータルサイトで簡単に見つけられる
「相続放棄について弁護士に相談したいが、弁護士を探すのが面倒だ」「どの弁護士に相談すればいいかがわからない」という人も少なくはないでしょう。
しかし、弁護士を見つけるのは難しいことではありません。
たとえば、「⚪︎⚪︎(今お住まいの地域名) 相続放棄 弁護士」「⚪︎⚪︎(今お住まいの地域名) 遺産相続 法律事務所」などのワードで検索をすれば、近くの法律事務所がすぐに見つかります。
また、ベンナビ相続などのポータルサイトを活用すれば、希望条件を満たした弁護士を無料で比較できます。
3.弁護士とのやり取りが大変|オンラインで対応できる弁護士も多い
「弁護士に相談したいが、わざわざ法律事務所まで訪問するのは面倒」「弁護士とやり取りをするのは緊張する」という人も多いです。
弁護士によっては、メールやオンラインでの相談にも対応してくれる場合があります。
たとえば、ベンナビ相続で「オンライン相談可」の項目にチェックを入れて法律事務所を検索すれば、手軽にアクセスできる弁護士が見つかるでしょう。
さいごに|自分でできるかよく確認してから相続放棄をおこなおう!
相続放棄は、相続人が自分だけで手続きを進めることも可能です。
しかし、相続方法に関する判断や相続放棄手続きの進めかたは思っているよりも複雑です。
慎重に判断することなく安易に相続放棄を選択したために後悔するケースは少なくありません。
ですから、相続が発生して相続放棄するかどうかの判断に迫られたときには、念のために一度は弁護士の話を聞くことを強くおすすめします。
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