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不動産は相続放棄できる?全員が相続放棄するとどうなるかも解説

弁護士監修記事
遺産相続 労働問題
2023年10月19日
2024年04月22日
不動産は相続放棄できる?全員が相続放棄するとどうなるかも解説
この記事を監修した弁護士
阿部 由羅弁護士 (ゆら総合法律事務所)
ゆら総合法律事務所の代表弁護士。不動産・金融・中小企業向けをはじめとした契約法務を得意としている。その他、一般民事から企業法務まで幅広く取り扱う。

遠方に所在する不動産や、極度に老朽化した建物などは、管理が難しいため相続したくないと考える方もいらっしゃいます。

また、被相続人が多額の借金を負っている場合には、不動産を含む遺産を相続放棄せざるを得ないケースもあるでしょう。

相続放棄した不動産は、他の相続人がいればその人に、誰も相続人がいなくなった場合は相続財産清算人に管理を引き継ぎます。

管理を引き継ぐまでは、不動産を適切に保存しなければなりません。

そのほか、不動産の相続放棄に関する注意点を理解したうえで、トラブルが生じないように手続きを進めましょう。

本記事では不動産の相続放棄について、メリット・デメリット・保存義務・注意点などを解説します。

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相続放棄された不動産はどうなる?

被相続人が生前に所有していた不動産は、相続の対象となります。

しかし、相続放棄をした人は相続権を失うため、不動産を相続することはできません。

この場合、不動産は他の相続人が相続するか、または相続財産清算人の管理・処分に委ねられることになります。

パターン①|他の相続人が相続する場合

相続放棄をしていない他の相続人がいる場合には、そのうちの誰かが不動産を相続します。

相続放棄をしていない他の相続人が1人の場合は、その人が不動産を相続します。

これに対して、相続放棄をしていない他の相続人が複数人いる場合は、遺産分割協議をおこなって不動産を相続する人を決めます

相続放棄をした人は相続権を失うため、不動産に関する遺産分割協議に参加できません。

ただし、相続放棄をした時点で現に占有している相続不動産については、他の相続人に引き渡すまで保存義務を負います(後述)。

パターン②|相続人全員が相続放棄する場合

相続人全員が相続放棄をした場合、相続人は誰もいなくなります。

この場合、相続財産全体が法人となり、相続財産清算人の管理・処分に委ねられます民法951条、952条1項)。

相続財産清算人は、相続債権者および受遺者に対して、相続財産を用いて被相続人が負っていた債務を弁済します(民法957条2項、929条、930条、931条)。

その際、相続財産を売却する必要がある場合は、競売をおこないます(民法957条2項、932条)。

不動産についても、相続債権者または受遺者への弁済に充てるために競売されることがあります。

競売されなかった相続不動産は、特別縁故者に対して分与される場合があります。

特別縁故者に対する財産分与の可否および内容は、家庭裁判所が審判によって決定します。

※特別縁故者:被相続人と生計を同じくしていた者、被相続人の療養看護に努めた者その他被相続人と特別の縁故があった者(民法958条の2

最後まで残った相続不動産は、国庫に帰属します(民法959条)。

相続財産清算人は、相続不動産を国庫へ帰属させるための手続き(登記など)をおこないます。

不動産を相続放棄することのメリット・デメリット

不動産を含む遺産を相続放棄することには、メリット・デメリットの両面があります。

実際に相続放棄をするかどうかは、具体的な事情に応じて、メリット・デメリットのどちらが上回るかを考慮したうえで適切に判断しましょう。

不動産を相続放棄することのメリット

不動産を含む遺産を相続放棄することの主なメリットは、以下のとおりです。

①不動産の管理から解放される

不動産が遠方や山間部などに所在する場合、相続人が自ら管理することは困難でしょう。

相続放棄をすれば、管理が難しい不動産を管理する必要がなくなります。

ただし、相続放棄の時点で現に占有している相続不動産については、他の相続人または相続財産清算人に引き継ぐまで保存義務を負う点に注意が必要です(後述)。

②被相続人の債務を支払わずに済む

相続放棄をすれば、被相続人が生前負っていた債務(借金など)を支払わずに済みます。

資産と債務を比較した結果、相続財産全体の価値がマイナスである場合は、相続放棄を検討しましょう。

③遺産分割協議への参加が不要となる

相続放棄をすると、遺産分割協議への参加が不要となります。

親族間の関係性が思わしくなく、相続トラブルが懸念されるケースでは、遺産相続に関わりたくないと考える方が少なくありません。

そのような方にとっては、相続放棄が有力な選択肢です。

不動産を相続放棄することのデメリット

これに対して、不動産を含む遺産を相続放棄することの主なデメリットは、以下のとおりです。

①他の遺産も相続できなくなる

相続放棄をすると、不動産以外の遺産も相続できなくなります。

現金・預貯金や高価な形見の品など、手元に残しておきたい遺産がある場合は、できる限り相続放棄を避けるべきです。

②相続権が移動することがある

相続放棄によって同順位の相続人がいなくなると、後順位相続人へ相続権が移動します。

相続権の移動が原因となり、新たな相続トラブルが発生することもあるので注意が必要です。

たとえば被相続人の配偶者と子が相続人のケースにおいて、子全員が相続放棄をした結果、被相続人の兄弟姉妹へ相続権が移ったとします。

この場合、被相続人の配偶者と兄弟姉妹の関係性が悪いと、相続トラブルのリスクが高まってしまうでしょう。

このように、相続権の移動により相続トラブルのリスクが増す場合には、相続放棄をすべきかどうかについて特に慎重な検討が必要です。

状況によっては、相続放棄をせずに遺産分割協議で調整する方法も検討しましょう。

相続放棄後の不動産の保存義務について

相続放棄をした後でも、相続財産である不動産の保存義務を負うケースがあります。

相続放棄後の保存義務は、不動産を他の相続人または相続財産清算人に引き渡すまで続きます。

相続放棄後に不動産の保存義務を負うケース

相続放棄後の保存義務の対象となるのは、相続放棄をした時点で現に占有している相続財産です(民法940条)。

したがって相続不動産についても、相続放棄の時点で現に占有していれば、相続放棄後も保存義務を負います

たとえば相続した建物に住んでいる場合や、相続放棄の直前まで相続物件から収益を得ていた場合などが保存義務の対象です。

相続放棄後の保存義務の内容

相続放棄後の保存義務者は、対象となる相続不動産について以下の対応をおこなわなければなりません。

  • 故意または重大な過失により、相続不動産が滅失または損傷しないようにする(=自己の財産におけるのと同一の注意義務)
  • 他の相続人または相続財産清算人の請求に応じて、相続不動産の保存状況を報告する(民法645条
  • 他の相続人または相続財産清算人に相続不動産を引き渡した後、それまでの保存の経過および結果を遅滞なく報告する(
  • 相続不動産を保存する過程で受け取った金銭その他の物(賃料など)を、他の相続人または相続財産清算人に引き渡す(民法646条1項
  • 相続不動産に関して、自己の名で取得した権利を他の相続人または相続財産清算人に移転する(同条2項

上記の保存義務を怠ると、他の相続人や相続財産清算人から損害賠償を請求されるおそれがあるので注意が必要です。

相続放棄後の保存義務はいつまで続くのか?

相続放棄後の保存義務は、対象となる相続財産を他の相続人または相続財産清算人に引き渡した時点で消滅します。

相続不動産を他の相続人または相続財産清算人に引き渡す際には、引渡しを証する書面(=受領書)を交付してもらいましょう。

なお相続財産清算人は、相続人がいなくなった状況において、家庭裁判所に申立てをおこなえば選任されます。

相続財産清算人の選任申立ての手続きについては、裁判所ウェブサイトをご参照ください。

【参考】相続財産清算人の選任|裁判所

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不動産を相続放棄する際の注意点

不動産を含む遺産を相続放棄する際には、トラブルなくスムーズに手続きを完了するため、以下の各点に十分ご注意ください。

  1. 相続放棄には期限がある|相続の開始を知った時から3か月以内
  2. 相続財産を処分・隠匿すると、相続放棄が認められない
  3. 相続放棄をすると、相続権が移動することがある
  4. 遠方の不動産は近隣トラブルに要注意

相続放棄には期限がある|相続の開始を知った時から3か月以内

相続放棄をする際には、原則として自己のために相続が開始したことを知った時から3か月以内に、家庭裁判所に対して申述書等を提出しなければなりません(=熟慮期間。民法915条1項)。

熟慮期間が経過すると、原則として相続放棄が認められなくなってしまいます民法921条2号)。

相続開始後時間が経ってから借金の存在が判明したなど、相続放棄の申述が遅れたことについて合理的な理由があれば、熟慮期間経過後の相続放棄が認められる余地はあります。

しかし、何ら合理的な理由がないにもかかわらず手続きが遅れてしまうと、相続放棄が却下される可能性が高くなります。

確実に相続放棄をするためには、熟慮期間内に手続きを完了することが大切です。

早い段階で弁護士に相談して、相続放棄に関する検討や準備を進めましょう

不動産相続の相談は不動産の相続に関する無料相談|専門家の種類と窓口、利用するタイミングとポイントをご覧ください。

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相続財産を処分・隠匿すると、相続放棄が認められない

相続財産の全部または一部を処分(消費)したり、他の相続人や債権者に対して隠したりすると、相続放棄が認められなくなるほか、すでにした相続放棄も無効になってしまいます(=法定単純承認。民法921条1号、3号)。

法定単純承認によって相続放棄が認められなくなると、予期せず被相続人の借金を相続するなど、大きな不利益を被ってしまうおそれがあります。

このような事態を避けるため、相続放棄をする際には、その前後で相続財産に手を付けないように十分ご注意ください。

認められない事例について詳しくは相続放棄が認められない事例とは?対処法と失敗を防ぐためのポイントをご覧ください。

相続放棄をすると、相続権が移動することがある

相続放棄による効果の中で特に注意すべき場合があるのが、相続権の移動です。

特に被相続人の子全員が相続放棄をした結果、代わりに相続権を得た被相続人の両親や兄弟姉妹が、被相続人の配偶者と対立するケースはよくあります。

このような事態が懸念される場合は、被相続人の子が相続放棄せずに相続人として残り、被相続人の配偶者との間で遺産分割協議をおこなった方がよいかもしれません。

被相続人に多額の借金があるなど、相続放棄が避けられない場合は仕方がありません。

これに対して、相続放棄をするかどうかについて選択の余地がある場合は、相続権の移動によるトラブルのリスクも考慮に入れて判断するのがよいでしょう。

遠方の不動産は近隣トラブルに要注意

相続人の居住地から見て遠方に所在する相続不動産は、管理が難しいことが大きな懸念材料です。

相続不動産の管理が行き届いていないと、土砂崩れ・腐敗・樹木の越境などによる近隣トラブルが生じる事態になりかねません

自ら管理することが難しい場合は、管理人を置くなどの対応をとるのが望ましいでしょう。

それが難しくても、相続発生後は早めに相続不動産の現地確認をおこない、今後の対応について検討することをおすすめします。

なお、相続放棄をした人自身が保存義務を負うのは、放棄の時点で現に占有する相続財産に限られます。

したがって、保存義務の対象となる相続財産がなければ、相続財産の管理等は他の相続人に任せればよいでしょう。

これに対して、保存義務の対象となる相続財産がある場合は、他の相続人または相続財産清算人に引き渡すまで保存を続けなければなりません。

特に相続人が誰もいない場合は、家庭裁判所に対して早めに相続財産清算人の選任を申し立てましょう。

まとめ|不動産の相続放棄は弁護士へ相談を

不動産を含む遺産を相続放棄するに当たっては、相続放棄の期限(熟慮期間)や法定単純承認、相続放棄後の保存義務などに注意が必要です。

トラブルなくスムーズに相続放棄を完了するためには、弁護士への相談をおすすめします。

弁護士に相談すれば、相続放棄に関して幅広いサポートとアドバイスを受けられます。

必要書類の作成・取得や実際の申述手続き、家庭裁判所からの照会への対応などは、大部分を弁護士に任せることができます。

また相続財産の処分など、相続放棄が無効にならないようにやってはいけないことについても、具体的な状況に応じてアドバイスを受けられます。

相続放棄後の保存義務を負う場合にも、弁護士に相談しながら対応すれば、トラブルのリスクを最小限に抑えられるでしょう。

不動産の相続放棄については、お早めに弁護士へご相談ください。

弁護士へ相談する場合は相続を弁護士に無料電話相談する方法|弁護士の選び方や費用の相場も解説をご覧ください。

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編集部
本記事はベンナビを運営する株式会社アシロが企画・編集をおこないました。
  • ※ベンナビに掲載されているコラムは、必ずしも弁護士が執筆したものではありません。
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