個人再生の履行テストとは?期間や積立額、失敗した場合のリスクを解説
- 「個人再生の履行テストって、どれだけの金額をいつまで積み立てるの?」
- 「積み立てたお金は返ってくるの?」
個人再生の手続きを進めるなかで、履行テストに不安を感じている方は多いのではないでしょうか。
履行テストとは、個人再生を申し立てたあと、毎月決まった金額を積み立てていく手続きをいいます。
積立額は認可後に債権者へ支払う予定の月額と同額以上、期間は3〜6ヵ月程度が目安です。
積み立てたお金は、認可決定が確定したあとに返還されるのが一般的ですが、履行テストに失敗すると、再生計画が認められないおそれがある点に注意しましょう。
本記事では、履行テストの概要や失敗した場合のリスク、支払いが難しいときの対処法を解説します。
個人再生の履行テストとは返済能力を確認するためのもの
履行テストは、再生計画どおりに返済を続けられるかを裁判所が判断するための、試験的な積立制度です。
積立先は、個人再生委員が指定する口座や代理人弁護士の口座になるのが一般的です。
裁判所によっては、本人名義の口座に積み立て、通帳のコピーを提出する運用も認められています。
裁判所は、積み立ての実績を履行可能性の判断材料として重視します。
入金の遅れや未入金があると、そのまま認可の可否に影響する点に注意しましょう。
なお、管轄の裁判所や個別の事情によっては、履行テストがおこなわれないケースもあります。
自分の手続きで必要になるかどうかは、依頼している弁護士に早めに確認しておくと安心です。
ここからは、履行テストの積立額やお金の返金時期、実施のタイミングや期間について解説します。
履行テストの積立額
履行テストの積立額は、個人再生が認可されたあと債権者に支払う予定の月額と同額以上に設定されます。
弁済総額は、借金の総額に応じて以下のとおり下限が決まっています。
| 借金総額 (住宅ローン以外) |
最低弁済額 | 月々の積立額の目安 (3年・36回) |
|---|---|---|
| 100万円〜500万円未満 | 100万円 | 2万8,000円程度 |
| 600万円 | 120万円 | 3万4,000円程度 |
| 800万円 | 160万円 | 4万5,000円程度 |
| 1,000万円 | 200万円 | 5万6,000円程度 |
| 1,500万円 | 300万円 | 8万4,000円程度 |
たとえば借金300万円なら、最低でも100万円は返済しなければなりません。
3年(36回)で返す計画なら、1ヵ月あたり2万7,778円です。
端数を切り上げて、2万8,000円に設定されることもあります。
なお、住宅資金特別条項を使って住宅を残す場合、住宅ローンは積立額の計算に含めません。
ただし、申立ての時点では計画弁済額がまだ確定していません。
所有している財産の総額(清算価値)が最低弁済額を上回るときは、そのぶん積立額も高くなります。
履行テストで積み立てたお金の返金時期
積み立てたお金は、認可決定が確定したあとに返金されるのが一般的です。
戻ってくる金額は、個人再生委員が選任されているかどうかで変わります。
なお、個人再生委員が選任されているケースでは、積立金から再生委員の報酬が差し引かれ、残額が返還されます。
再生委員の報酬額は裁判所ごとに決められており、たとえば東京地方裁判所なら原則15万円です。
個人再生委員が選任されていない場合は、原則として全額が返金対象です。
弁護士費用や実費に未払いがあるときは、積立金が充当されることもあります。
履行テストが実施されるタイミング
履行テストは、裁判所への申立て後に始まるのが一般的です。
初回の期日は申立てから1週間以内に設定されるケースが多く、以降は毎月同じ日が期日になります。
履行テスト開始後は、毎月期日までに指示された金額を指定の口座に入金しなければなりません。
あわせて、入金の実績を示す資料として通帳のコピーを提出します。
家計収支表の提出を求められることもあります。
履行テストが実施される期間
履行テストが実施される期間は、3〜6ヵ月程度が目安です。
ただし、なかには認可決定まで7〜8回程度続くケースもあります。
回数やスケジュールは、裁判所や個人再生委員の指示によって変わる点に注意しましょう。
特に気をつけたいのが、1回目の支払いです。
手続きを開始するかどうかの判断材料になる場合があるため、支払えないと開始決定が出ない可能性があります。
個人再生の履行テストに失敗した場合に考えられる2つのリスク
ここでは、履行テストに失敗した場合に考えられる2つのリスクについて解説します。
再生計画が不認可になるおそれがある
履行テストでつまずくと、再生計画が不認可になる可能性が高まります。
裁判所が見ているのは、個人再生後に3年間返済を続けられるかどうかです。
積み立てが滞れば、返済能力に不安があると判断されるでしょう。
また、毎月期日内に支払えるかどうかも重視されるため、遅れた分をあとからまとめて入金しても必ずしも履行実績として評価されるとは限りません。
不認可になれば、借金の減額は受けられず、止まっていた督促が再開し、残った借金の一括返済を求められるおそれがあります。
弁護士に辞任される場合がある
積み立てができない状態が続くと、依頼している弁護士から辞任される可能性もあります。
履行テストは、手続き後に始まる返済の予行練習のようなものです。
練習の時点で支払いが滞るようなら、少なくとも3年は続く返済期間を乗り切るのは難しいと判断されやすくなります。
弁護士と交わす委任契約書には、「入金が◯ヵ月滞ったときは辞任する」と定められているケースもあります。
一度、手元の契約書を確認しておきましょう。
弁護士に辞任されると、債権者からの督促が再開されます。
電話や督促状が届く生活に戻れば、精神的にも経済的にも追い詰められかねません。
新しい弁護士を探すにも、費用や時間がかかります。
積み立てが厳しくなったら、滞納する前に依頼した弁護士に相談することをおすすめします。
個人再生の履行テストの支払いが困難なときの対処法2つ
履行テストの支払いが難しいときは、放置せずすぐに行動することが大切です。
ここでは、2つの対処法について詳しく見ていきます。
1.滞納する前に弁護士や個人再生委員に連絡する
支払いが難しいとわかったら、すぐに代理人弁護士や個人再生委員に連絡してください。
病気や急な出費などやむを得ない事情がある場合は、事情を踏まえて対応が検討されることがあります。
支払えないまま放置するより、早めに相談することが大切です。
相談もなく滞納すると、誠実な対応をする気や返済の意思がないと受け取られ、不認可になるリスクを高めます。
2.返済の継続が難しい場合は自己破産を検討する
返済の継続が難しい場合は、自己破産への切り替えも選択肢になります。
一時的な出費でつまずいたケースであれば、立て直せる可能性があります。
しかし、転職や病気による収入減など今後も返済できる見込みが薄いなら、個人再生を続行するかどうかを見直したほうがよいでしょう。
自己破産で免責許可決定が確定すれば、税金や養育費などの非免責債権を除いて、借金の支払い義務が免除されます。
返済のプレッシャーから解放され、生活の立て直しに集中できます。
ただし、自己破産に切り替えた場合、マイホームや一定額以上の財産を手放す必要がある点に注意しましょう。
どちらの手続きが自分に向いているかは、弁護士と慎重に話し合ったうえで決めることをおすすめします。
自己破産のデメリットや費用については、以下の記事を参考にしてください。
【関連記事】自己破産したらどうなる?デメリットや費用・条件を弁護士がわかりやすく解説
個人再生の履行テストに関するよくある質問
さいごに、個人再生の履行テストに関するよくある質問に回答します。
弁護士費用の分割払いと履行テストは同時に支払う必要がありますか?
弁護士費用の分割払いと履行テストは、同時におこなわれないのが一般的です。
多くの場合、弁護士費用の分割払いが終わったあとに履行テストが始まります。
通常、弁護士は弁護士費用の支払いが完了してから裁判所への申立てをおこないます。
申立て後にスタートする履行テストとは、時期がずれる仕組みです。
とはいえ、毎月お金が出ていく状況は続きます。
運用や手続きの進み方は依頼する事務所によって異なるため、弁護士費用の支払い期間や履行テストの開始時期を事前に確認しておくとよいでしょう。
履行テストで返してもらったお金は何に使ってもいいですか?
返還されたお金の使い道には法律上の制限がないため、自由に使ってもかまいません。
たとえば、生活費や急な出費に充てても問題ありません。
ただし、認可後の返済に備えて手元に残しておくのがよいでしょう。
積み立てたお金が返還されたあとは、すぐに再生計画に基づく債権者への返済が始まるためです。
返済の予備費として確保しておけば、収入が減った月にも慌てず対応できます。
さいごに|個人再生の履行テストが不安なら弁護士に相談しよう
履行テストは、個人再生を認めてもらうための重要な工程です。
積立額や期間は裁判所ごとに運用が異なるため、自分のケースがどうなるかは弁護士に確認しながら進めましょう。
毎月の入金や通帳・家計収支表の提出なども、専門家のサポートがあれば迷わず対応できます。
途中で支払いが厳しくなったときは、弁護士や個人再生委員に相談しましょう。
黙って滞納すると、不認可のリスクが高まります。
支払い以外にも、不安なことがあれば弁護士に相談するのがおすすめです。
疑問や不安を解消しておけば、落ち着いて履行テストに臨めるでしょう。
