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発信者情報開示請求とは|投稿者特定の手続き・注意点・弁護士費用などを解説

弁護士監修記事
ITトラブル
2023年04月18日
2024年04月22日
発信者情報開示請求とは|投稿者特定の手続き・注意点・弁護士費用などを解説
この記事を監修した弁護士
阿部 由羅弁護士 (ゆら総合法律事務所)
ゆら総合法律事務所の代表弁護士。不動産・金融・中小企業向けをはじめとした契約法務を得意としている。その他、一般民事から企業法務まで幅広く取り扱う。

インターネット上で誹謗中傷やプライバシー権侵害の投稿を発見したら、投稿者に対する損害賠償請求などを検討しましょう。

投稿者が匿名の場合に活用すべきなのが「発信者情報開示請求」です。サイト管理者やインターネット接続業者から、投稿者に関する情報の開示を受けられる可能性があります。

発信者情報開示請求には迅速な対応が求められるので、信頼できる弁護士に依頼することが大切です。

今回は発信者情報開示請求について、手続き・注意点・弁護士費用などを解説します。

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発信者情報開示請求とは

「発信者情報開示請求」とは、インターネット上に流通する情報によって権利を侵害された者が、発信者(投稿者)に関する情報の開示を求めることをいいます。

プロバイダ責任制限法によって、発信者情報開示請求が認められています。

発信者情報開示請求の要件

発信者情報開示請求が認められるためには、特定発信者情報以外の発信者情報については以下の①及び②と特定発信者情報については以下の①~③をすべて満たす必要があります(プロバイダ責任制限法5条1項)。

1:侵害情報の流通によって、請求者の権利が侵害されたことが明らかであること

2:損害賠償請求権の行使など、発信者情報の開示を受けるべき正当な理由があること

3:以下のいずれかの事情があること

  • 相手方のプロバイダが特定発信者情報しか保有していない
  • 相手方のプロバイダが保有する特定発信者情報以外の発信者情報が、プロバイダ責任制限法施行規則4条に定めるものに限定されている
  • 特定発信者情報の開示を受けないと、発信者を特定できない

発信者情報開示請求によって得られる情報

発信者情報開示請求によって得られるのは、発信者に関する以下の情報です(プロバイダ責任制限法施行規則2条、3条)。

<特定発信者情報以外の発信者情報>

  1. 氏名・名称
  2. 住所
  3. 電話番号
  4. 電子メールアドレス
  5. 侵害情報の送信に係るIPアドレス
  6. 侵害情報の送信に係る移動端末設備からのインターネット接続サービス利用者識別符号
  7. 侵害情報の送信に係るSIM識別番号
  8. 侵害情報が送信された年月日・時刻
  9. 利用管理符号

<特定発信者情報>

  1. 専ら侵害関連通信に係るIPアドレス、ポート番号
  2. 専ら侵害関連通信に係る移動端末設備からのインターネット接続サービス利用者識別符号
  3. 専ら侵害関連通信に係るSIM識別番号
  4. 専ら侵害関連通信に係るSMS電話番号
  5. 侵害情報が行われた年月日・時刻

※侵害情報:請求者が権利侵害を受けていると主張するインターネット上の情報

※侵害関連通信:侵害情報と相当の関連性を有する符号の電気通信による送信

発信者情報開示請求を行うべき場合の例

特に以下の場合には、投稿者に対する損害賠償請求を行うため、発信者情報開示請求によって投稿者を特定することを検討すべきです。

匿名で誹謗中傷を受けた場合

SNSや匿名掲示板では、著名人・一般人を問わず誹謗中傷の投稿が相次いでいます。

誹謗中傷の投稿が、被害者に対して与える精神的損害は甚大です。

軽い気持ちで誹謗中傷を書き込む投稿者を懲らしめる意味でも、発信者情報開示請求および損害賠償請求を検討すべきでしょう。

誹謗中傷の慰謝料については誹謗中傷の慰謝料請求ガイド|高額な損害賠償金を獲得するコツももご覧ください。

匿名で個人情報を晒された場合

住所や家族・交友関係に関する情報など、プライベートな情報を匿名で晒す行為も、誹謗中傷と並んできわめて悪質です。

プライバシー権侵害に当たる投稿がなされると、被害者の生活の平穏が大きく害されてしまいます。

1日も早く被害を食い止めるべく削除請求を行うとともに、発信者情報開示請求によって匿名投稿者を特定し、損害賠償を請求しましょう。

住所を晒された場合はネットに住所を晒された場合の対処方法|削除依頼や特定の流れを解説をご覧ください。

発信者情報開示請求の相手方となる2種類のプロバイダ

発信者情報開示請求の相手方となるのは、「コンテンツ・プロバイダ」または「アクセス・プロバイダ」です。

両方に対して発信者情報開示請求を行うべき場合もあります。

コンテンツ・プロバイダ

「コンテンツ・プロバイダ」とは、デジタルコンテンツをユーザーに提供する事業者です。

ウェブサイトの運営者などがコンテンツ・プロバイダに当たります。

誹謗中傷やプライバシー権侵害の投稿は、SNSや匿名掲示板などに書き込まれがちですが、SNSや匿名掲示板の運営会社もコンテンツ・プロバイダです。

コンテンツ・プロバイダは、投稿者の個人情報を保有している可能性があります。

投稿者の個人情報を保有していなくても、問題の投稿に紐づいたIPアドレスなどを一定期間保存しています。

匿名投稿に関しては、IPアドレスなどの開示を目指すため、コンテンツ・プロバイダに対する発信者情報開示請求を行うケースが多いです。

アクセス・プロバイダ

「アクセス・プロバイダ」とは、インターネット接続サービスをユーザーに提供する事業者です。

誹謗中傷やプライバシー権侵害の投稿に用いられた端末(PC・スマートフォンなど)は、アクセス・プロバイダのサービスによってインターネットに接続されています。

アクセス・プロバイダは、端末所有者に関する個人情報を保有しているので、発信者情報開示請求を行えば投稿者の情報の開示を受けられる可能性があります。

発信者情報開示請求の手続き

発信者情報開示請求の手続きは、以下の流れで進行します。

  1. 裁判所に対する各種の申立て
  2. コンテンツ・プロバイダに対する通知
  3. プロバイダの投稿者に対する意見照会
  4. 裁判所による当事者の陳述の聴取
  5. 発信者情報の開示

裁判所に対する各種の申立て

発信者情報開示請求は、裁判所に対して発信者情報開示命令などを申し立てて行うのが一般的です。

申立先は原則として、相手方の住所または居所がある地を管轄する地方裁判所です(プロバイダ責任制限法10条1項)。

ただし、以下の裁判所にも発信者情報開示命令などを申し立てることができます(同条3項)。

(a)東京高等裁判所、名古屋高等裁判所、仙台高等裁判所、札幌高等裁判所の管轄区域内に所在する地方裁判所が管轄権を有する場合

→東京地方裁判所

(b)大阪高等裁判所、広島高等裁判所、福岡高等裁判所、高松高等裁判所の管轄区域内に所在する地方裁判所が管轄権を有する場合

→大阪地方裁判所

裁判所に対して行うべき申立ての種類は、以下のとおりです。

  1. コンテンツ・プロバイダに対する発信者情報開示命令の申立て
  2. 提供命令の申立て
  3. アクセス・プロバイダに対する発信者情報開示命令の申立て
  4. 消去禁止命令の申立て

コンテンツ・プロバイダに対する発信者情報開示命令の申立て

まずコンテンツ・プロバイダを相手方として、発信者情報開示命令を申し立てましょう(プロバイダ責任制限法8条)。

誹謗中傷やプライバシー権侵害の投稿に関しては、投稿先のサイトの管理者がコンテンツ・プロバイダとなります。

提供命令の申立て

コンテンツ・プロバイダに対する発信者情報開示命令の申立てを本案(メイン)としつつ、併せてコンテンツ・プロバイダに対し、アクセス・プロバイダ(インターネット接続業者)に関する情報の提供を求める「提供命令」を申し立てましょう(プロバイダ責任制限法15条1項1号)。

裁判所によって提供命令が発せられれば、コンテンツ・プロバイダによってアクセス・プロバイダの名称などの情報が開示されます。

アクセス・プロバイダに対する発信者情報開示命令の申立て

提供命令によってアクセス・プロバイダの名称などが判明したら、アクセス・プロバイダに対して発信者情報開示命令を申し立てましょう(プロバイダ責任制限法8条)。

後述のとおり、コンテンツ・プロバイダとアクセス・プロバイダに対する各申立ては1つの手続きが審理されることになります。

消去禁止命令の申立て

侵害情報に紐づいている発信者情報は、永久に保存されるものではなく、プロバイダによって消去される可能性があります。

発信者情報の消去が懸念される場合には、発信者情報開示命令と併せて「消去禁止命令」を申し立てましょう(プロバイダ責任制限法16条1項)。

コンテンツ・プロバイダに対する通知

アクセス・プロバイダを相手方として発信者情報開示命令を申し立てた旨をコンテンツ・プロバイダに通知すると、コンテンツ・プロバイダからアクセス・プロバイダに対して、侵害情報に紐づくIPアドレスなどが提供されます(プロバイダ責任制限法15条1項2号)。

コンテンツ・プロバイダは、IPアドレスなどをアクセス・プロバイダに提供した事実を裁判所に通知します。

この段階で裁判所は、コンテンツ・プロバイダとアクセス・プロバイダに対する各申立て(事件)を併合し、一つの手続きで審理します。

プロバイダの投稿者に対する意見照会

発信者情報開示命令の申立てを受けたプロバイダは、連絡をとれないなど特別の事情がある場合を除き、発信者情報を開示してよいかどうかについて投稿者本人の意見を聴くことが義務付けられています(プロバイダ責任制限法6条1項)。

開示請求に応じるべきでない旨の意見を述べた投稿者に対しては、後にプロバイダが発信者情報開示命令を受けた場合、プロバイダは原則としてその旨を通知しなければなりません(同条2項)。

裁判所による当事者の陳述の聴取

裁判所が発信者情報開示命令の申立てについて決定をする際には、不適法または理由がないことが明らかであるとして却下する場合を除き、当事者の陳述を聴かなければなりません(プロバイダ責任制限法11条3項)。

裁判所による当事者の陳述聴取は、裁判所において期日を開催して行われます。

発信者情報の開示

裁判所は、提出された資料や当事者の陳述を踏まえて、発信者情報開示請求の要件(本記事の冒頭をご参照)を満たしているか否かを検討します。

要件を満たしていると判断した場合、裁判所は各プロバイダに対して発信者情報開示命令を発令します。

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発信者情報開示請求を行う際の注意点

匿名投稿者を特定するために発信者情報開示請求を行う際には、以下の各点に十分ご注意ください。

  1. ログが消去されることもある|迅速な対応が必要
  2. 発信者情報開示請求だけでは、投稿者を特定できない場合がある

ログが消去されることもある|迅速な対応が必要

プロバイダが保存している発信者情報は、数か月程度で消去されてしまう場合があります。

発信者情報が消去されると、投稿者の特定ができなくなる可能性があるので、迅速に発信者情報開示請求の準備を進めましょう。

発信者情報開示請求だけでは、投稿者を特定できない場合がある

誹謗中傷やプライバシー権侵害などの投稿が、投稿者本人のものではない端末を用いて行われた場合、発信者情報開示請求だけでは投稿者の特定に至らない可能性があります。

この場合、店舗の利用履歴や防犯カメラ映像などを合わせて検証すれば、投稿者を特定できる可能性があります。

効果的な方法は状況次第で異なるので、弁護士のアドバイスを受けましょう。

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発信者情報開示請求にかかる費用

発信者情報開示請求(発信者情報開示命令の申立て)を行う際には、一定の費用がかかります。

特に弁護士に依頼する場合はまとまった費用を要しますが、発信者情報開示請求の手続きは非常に複雑なので、弁護士への依頼がおすすめです。

自分で対応する場合の費用

裁判所に対して発信者情報開示命令を申し立てるには、申立て1件当たり1000円の収入印紙を貼付する必要があります。

(例)

コンテンツ・プロバイダに対する以下の申立て

  • 発信者情報開示命令
  • 消去禁止命令
  • 提供命令

アクセス・プロバイダに対する以下の申立て

  • 発信者情報開示命令
  • 消去禁止命令

→計5000円

また、数千円分程度の郵便切手の納付が必要です。実際の納付額は、申立先の裁判所にご確認ください。

その他、証拠書類の印刷費や交通費などの実費が発生します。

弁護士に依頼する場合の費用

発信者情報開示請求を弁護士に依頼する場合は、上記に加えて弁護士費用がかかります。弁護士費用の主な内訳は以下のとおりです。

  • 相談料
  • 着手金
  • 報酬金
  • 日当
  • 実費

各弁護士費用について、「日本弁護士連合会弁護士報酬基準」(現在は廃止)を参考にした目安額を紹介します(いずれも税込)。

※発信者情報開示請求については同基準に記載がないため、筆者の私見による参考値を記載しています。

実際の弁護士費用は依頼先によって異なるので、弁護士へ個別にご確認ください。

相談料

弁護士へ正式に依頼する前の相談料は、30分当たり5,500円程度が標準的です。

ただし弁護士によっては、無料相談を受け付けている場合もあります。

相談料の有無や金額については、相談先の弁護士へ事前にお問い合わせください。

着手金

着手金は、弁護士へ正式に依頼する際に支払う初期費用です。

原則として一括で支払いますが、弁護士に相談すれば分割払いが認められることもあります。

<発信者情報開示請求に関する着手金額の目安>

22万円~44万円

<発信者情報開示後の損害賠償請求に関する着手金額の目安>

経済的利益の額が300万円以下の場合

経済的利益の額の8.8%

300万円を超え3,000万円以下の場合

経済的利益の額の5.5%+9万9,000円

3,000万円を超え3億円以下の場合

経済的利益の額の3.3%+75万円9,000円

3億円を超える場合

経済的利益の額の2.2%+405万9,000円

※請求額を経済的利益として計算

報酬金

報酬金は、弁護士の事件処理によって一定の成果が得られた場合に支払います(発信者情報の開示、損害賠償の獲得など)。

<発信者情報開示請求に関する報酬金額の目安>

22万円~44万円

<発信者情報開示後の損害賠償請求に関する報酬金額の目安>

経済的利益の額が300万円以下の場合

経済的利益の額の17.6%

300万円を超え3,000万円以下の場合

経済的利益の額の11%+19万8,000円

3,000万円を超え3億円以下の場合

経済的利益の額の6.6%+151万円8,000円

3億円を超える場合

経済的利益の額の4.4%+811万8,000円

※獲得額を経済的利益として計算

日当

日当は、弁護士が出張した場合に発生します。

発信者情報開示請求について日当が発生するのは、裁判所における陳述聴取の期日に弁護士が出席する場合などです。

<発信者情報開示請求に関する日当額の目安>

半日(往復2時間超4時間以内)

3万3,000円以上5万5,000円以下

一日(往復4時間超)

5万5,000円以上11万円以下

実費

発信者情報開示請求の対応につき、弁護士が支出した費用の実費相当額は依頼者負担となります。

<発信者情報開示請求に関する実費の例>

  • 郵送費
  • 印刷費
  • 公的書類の取得費
  • 弁護士の交通費
  • 発信者情報開示命令の申立費用
  • 訴訟費用(訴訟対応を引き続き依頼する場合)など

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編集部
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