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家族信託とは?必要ないって本当?制度の仕組みや手続き方法をわかりやすく解説

弁護士監修記事
遺産相続
2023年04月24日
2024年04月09日
家族信託とは?必要ないって本当?制度の仕組みや手続き方法をわかりやすく解説
この記事を監修した弁護士
黒井 新弁護士 (井澤・黒井・阿部法律事務所)
2002年 弁護士登録。15年以上の実績のなかで多くの相続問題に取り組み、その実績を活かし、相続分野における著書執筆や不動産の講演・セミナーへ登壇するなど、活動の幅は多岐に渡る。
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家族の認知症や病気などのリスクに備えて「家族信託」のニーズが高まっています。

家族信託を利用すれば、財産を持つ家族の判断力が低下したときや介護などが必要になったときに、家族が財産を管理できます。

しかし、家族信託は比較的新しくできた制度であり「どのような制度なのか」「メリット・デメリットは?」といった疑問を抱くケースもあるでしょう。

そこでこの記事では、

  • 家族信託の概要
  • 家族信託のメリットとデメリット
  • 家族信託の手続き方法

を詳しく解説します。

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目次

家族信託とは|どんな契約?

家族信託とは、認知症や介護などに備えて、本人の財産の管理・処分を家族に任せる財産管理の方法のことです。

次のように「委託者」「受託者」「受益者」の3者で構成されます。

  • 委託者:財産の管理や処分を委託する者(財産の本来の所有者)
  • 受託者:財産の管理や処分をおこなうもの(家族)
  • 受益者:財産の管理や処分で発生した利益を受け取る者(家族または第三者)

委託者と受益者は同一人物が担うケースが多く、受託者と受益者が同じというケースも少なくありません。

第三者(家族含む)が財産を管理する後見人制度よりも自由度が高く、近年注目を集めています。

認知症対策で注目を集める家族信託制度

「家族信託」は、2007年に施行された制度です。施行当初は利用者が少なかったものの、認知症対策として近年注目を集めています。

日本国内では、国内の平均年齢の高まりとともに認知症リスクは増大しています。

家族信託のメリット

ここからは、家族信託のメリットについて見ていきましょう。

家族内の財産管理がしやすくなる

家族内の財産管理がしやすくなる点はメリットといえます。

委託者が元気なうちから受託者が財産を管理できるため、本人と相談しながら不動産の運営や売却などをおこなうことが可能です。

制度として成年後見人よりもカバーできる範囲が広い

家族信託制度は成年後見人よりも柔軟性・自由度が高く、カバーできる範囲が広い点は魅力の1つです。

成年後見人はさまざまな制約や重い責任が課されますが、家族信託であれば契約上で事前に行使できる内容を定めておけます。

家族信託では、遺言では不可能となる「2次相続以降の資産承継先の指定」(後継ぎ遺贈型受益者連続信託)も可能です。

相続の負担の軽減が可能

家族信託を利用すれば、相続の負担軽減が可能です。

委託者が元気かつ判断力がある状態で「死後や相続」について、話し合いの場を設けられるという点もメリットの1つといえるでしょう。

障害のある子をもつ場合は、自分たちの死後「子どもの金銭的サポートを誰がおこなうのか」と不安を抱く毛ヘスもある想定されます。

事前に財産を管理者を指定できるため、スムーズに継続的な支援を準備できます。

現在保有する財産の扱いを事前に決めておくことができる

現在保有する財産の扱いを事前に決めておくことが可能です。委託者が元気なうちに財産管理について話し合いができます。

親族複数人による共有不動産がある場合は、家族信託によって紛争リスクの回避が期待できます。

委託者が共有者に管理処分権限を集約しておくことで、不動産の塩漬けといったリスクを予防可能です。

倒産隔離機能が活用できる

家族信託で、委任者・受託者となった場合は、倒産隔離機能を活用できます。「倒産隔離機能」とは、信託財産と受託者の財産を独立させるという機能です。

各財産が独立しているため、万が一委任者もしくは受託者が破産してもいずれかが差し押さえられることはありません。

ただし、受益者が強制執行を受ける場合は差し押さえられます。

家族信託のデメリット

ここでは、家族信託のデメリットをみていきましょう。

信託不動産であれば ほかの収支と合算できない

収益不動産(信託不動産)はほかの収支と損益通算ができません。信託不動産で生じる不動産所得にかかる損失は0でカウントされます。

そのため、信託財産以外の所得と純損失の繰り越しはできません。

遺言と比較して手間がかかる

家族信託には、遺言と比較して手間がかかります。遺言は財産を所有する本人が作成できます。

しかし、家族信託は委託者と受託者の合意がないと成立しない点は知っておきましょう。

身上監護権はない

「身上監護権」とは、医療や介護などに関する契約を第三者が代行する権利です。成年後見人制度には身上監護権があるのに対して、家族信託にはありません。

親族間のトラブルの発端になる可能性がある

家族信託は、親族のうち誰か一人を選出する制度です。

しかし、受託者や受益者に複数人が手を挙げた場合は、誰に信託財産を任せられるのかといったトラブルの発端になる可能性があります。

申告に手間が発生する

家族信託の契約を結ぶと、税関連の申告に手間が発生します。

信託契約中には「信託財産に係る収益の合計額」が一定以上になった場合も所定の手続きが必要となる点には注意が必要です。

家族信託の手続き方法

ここでは、家族信託の手続き方法をみていきましょう。

1.家族信託の目的、内容を策定する

家族信託の手続きをおこなう際は、次のように事前に目的と内容を策定しましょう。

  • なぜ家族信託の契約を結ぶ必要があるのか
  • 財産管理を任せる範囲はどこまでか
  • 遺言はどうするのか

2.信託契約書を作成し公正証書にする

話し合った内容をもとに信託契約書を作成し、公正証書にします。

信託契約書に記す内容は以下のとおりです。

  • 家族信託の主旨
  • 目的
  • 管理を任せる財産
  • 委託者の名前、受託者・受益者を誰が担うのか
  • 信託財産の管理方法

3.登記が必要なものは登記をおこなう

家族信託のなかに「不動産」が含まれる場合は、必要に応じて不動産移転登記をおこなう必要があります。

登記手続きによって、権利部(甲区欄)に受託者の住所や氏名、信託条項が記載されます。

4.家族信託用口座を開設する

家族信託で金銭の管理を受託する場合は、受託者の名義で家族信託用の口座を開設しましょう。開設するのは「信託口口座」がおすすめです。

信託財産の管理用として独立性があるため、受託者の死亡や破産による凍結や差押えを防げます。

家族信託の手続きは自分でできる?

家族信託の手続きは自分で可能です。しかし、家族信託の手続きには手間や時間がかかります。

また、信託契約の内容に不備があった場合は、後々トラブルの原因になる可能性があるため、慎重な対応が求められます。

「自分でやるにはリスクが高い」と感じる場合は、専門家である弁護士に相談・依頼しましょう。

家族信託の相談は家族信託とは?必要ないって本当?制度の仕組みや手続き方法をわかりやすく解説をご覧ください。

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家族信託にかかる費用

家族信託を自分でおこなう場合にかかる費用は、各種手続きで生じる実費のみです。

財産の額に応じて費用が異なるものもあるため、それぞれみていきましょう。

公正証書を作成する費用

公正証書を作成する費用は、信託財産の額によって次のように変動します。

  • 1,000万円〜3,000万円:23,000円
  • 3,000万円~5,000万円:29,000円

信託登記の登録免許税

信託の登録免除税は、登記対象が土地か建物かで異なります。

登録免許税においては、一定の要件を満たすことで軽減税率が適用されます。

  • 建物:固定資産税評価額の0.4%
  • 土地:固定資産税評価額の0.3%

戸籍謄本か抄本

家族信託を契約する際には、委託者だけでなく受託者や受益者など当事者全員の戸籍謄本または妙本が必要です。費用は1通あたり450円です。

固定資産税評価証明書

固定資産証明書とは、土地や建物などの固定資産の評価額を証明する書類です。市役所の担当課窓口や郵送で取得できます。

費用は自治体によって異なり、1通あたり200円〜400円となっています。

登記事項証明書

登記事項証明書は、不動産の登記事項を証明する書類です。法務局もしくはオンラインでも取得でき、費用は480円~600円となっています。

家族信託の手続きを弁護士に依頼する際にかかる費用

家族信託の手続きを弁護士に依頼する際の費用は、次のように信託財産の評価額ごとで異なります。

あくまでも目安であるため、手続き時に相談しましょう。

信託財産の評価額

費用

3,000万円以下

30万円

3,000万円超1億円以下

1%

1億円超3億円以下

0.3%

3億円超5億円以下

0.2%

10億円超

0.1%

家族信託の活用例

ここでは、家族信託の活用例をみていきましょう。

認知症に備えたい

家族信託は、認知症のリスクに備えたい家族にとって有効な手段の1つといえます。当事者の判断能力がある段階で準備できるため、家族が困らない財産管理の方法を共に策定可能です。

認知症が始まる前に不動産の扱いを決定したい

財産の所有者が認知症になってしまった場合は、不動産の売却ができません。家族信託は「所有者の判断能力があるうちに不動産の扱いを決定したい」という場合にも活用できます。

認知症後の相続トラブルを防ぎたい

事前に財産の扱いや相続に関する取り決めをおこなっていない場合、家族の認知症後の相続トラブルが起きる可能性もあります。

そのため、家族信託であらかじめ相続に関する決めごとを公正証書で残しておくことが大切です。

家族信託前に決めておくべき3つの項目

ここでは、家族信託前に決めておくべき3つの項目を解説します。

受託・受益者の決定

家族信託の契約を結ぶ前には、必ず受託者と受益者を決定しておまきしょう。委託者の気持ちを汲みつつ、信頼が置ける人物を受託者に任命しなければなりません。

受益者とそのほかの親族との間に不利益が生じないための配慮も必要です。

信託財産の詳細を決めておく

家族信託前には信託財産の詳細を決めておくことも重要です。

土地や建物、金銭など、具体的に「どの財産を信託するのか」をしっかり決めておかなければ後々トラブルの原因となります。

制限・期間を明確にする

家族信託前には、制限と期間を明確にしておく必要があります。

どの範囲までの権限を与えるのかといった制限、受託者が死亡するまでや受益者が満〇歳になるまでといった期間を設定することも可能です。

家族信託を弁護士に相談・依頼するメリット

ここでは、家族信託を弁護士に相談・依頼するメリットをみていきましょう。

家族信託に関する法律や税務上の知識のアドバイスを得られる

家族信託は、近年浸透し始めた制度であり、内容を明確に把握している方は多くないといえます。

しかし、弁護士であれば、法律や税務上の知識が豊富なため、明確なアドバイスを得られます。

状況に合わせて家族信託を作成できる

家族信託は、状況に応じて策定・作成する必要があります。弁護士に相談・依頼することで、委託者や家族、財産の状況に合わせた適切な家族信託の作成が可能です。

相続時のトラブルを減少させられる

家族信託を自分でおこなった場合は、相続トラブルのリスクがあります。内容の不十分さや書類の不備など、手続き上の対処は必須です。

弁護士に依頼すれば、手続きに関することを任せられるため、相続時のトラブルを減少させられます。

最後に|家族信託の相談先は弁護士がおすすめ

家族信託は、認知症や介護などに備え、財産の管理・処分を家族に任せる財産管理の方法をさす言葉です。

家族信託の手続きは、自分でおこなうことも可能ですが、相続トラブルを回避するためには弁護士に依頼しましょう。

法律や税務上のアドバイスだけでなく、各種手続きまで一貫して任せられます。 家族信託に対して悩みがある方は、弁護士に相談してみましょう。

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編集部
本記事はベンナビを運営する株式会社アシロが企画・編集をおこないました。
  • ※ベンナビに掲載されているコラムは、必ずしも弁護士が執筆したものではありません。
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