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労働基準監督署に通報するとどうなる?|対応内容やメリットを解説

弁護士監修記事
労働問題
2023年04月27日
2024年04月09日
労働基準監督署に通報するとどうなる?|対応内容やメリットを解説
この記事を監修した弁護士
原 千広弁護士 (日暮里中央法律会計事務所)
東京大学法科大学院修了。東京弁護士会所属。離婚・相続等の家族案件から労働・国際案件まで幅広く携わり、Yahoo!ニュース等の記事監修も手がける。(※本コラムにおける、法理論に関する部分のみを監修)
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長時間労働を強いられている、賃金が未払になっているなどの問題は労働基準監督署に通報することで解決できる場合があります。

しかし、労働基準監督署に通報しても効果があるのかわからない不安や、相談する方法がわからないといった悩みを抱えている方もいるかもしれません。

この記事では、労働基準監督署に通報することで解決が期待できる問題とそうでない問題、そして通報後に労働基準監督署が取る対応について説明していきます。

また、労働基準監督署の管轄外の労働トラブルの相談先も紹介していきます。 現在、労働トラブルで悩んでいる場合は、この記事を参考にして解決へ向けて行動してみてください。

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労働基準監督署に通報したら対応してもらえる内容

労働基準監督署は、労働者の権利を守るためにさまざまな問題に対応しています。ここでは、労働基準監督署が対応する各種のトラブルについて簡潔に説明します。

賃金や残業代・各種手当ての未払

労働基準監督署は、賃金、残業代、休日手当、深夜手当などの未払に対応します。未払が発生した場合、労働者は権利を主張し、労働基準監督署に通報できます。

長時間残業

長時間残業が問題となる場合、労働基準監督署に通報できます。例えば、1ヵ月に100時間を超えるような長時間残業がある場合です。

労働基準監督署は、違法な残業状況を調査し、労働者の健康を守るために法的措置を講じることがあります。

会社都合による有給取得の妨害

労働者には有給休暇を取得する権利があります。 会社都合で取得ができない状況が続いている場合は労働基準監督署に通報することで改善が期待できます。

労働基準監督署は、有給休暇取得を妨害している会社に対して適切な対応をするよう指示します。

労働基準監督署に通報した後に起こること

労働基準監督署に通報した後、企業には法律に基づいた対応が求められます。

対応の内容としては、法律をもとにした企業制度への対応のアドバイスを提供し改善を促すことです。

また、労働関係法令違反が疑われる場合に限り、さらに厳しい対応が取られます。

法律をもとにした企業制度への対応のアドバイス

労働基準監督署は、通報に応じ、違反事項に対する法的な制度に対応するためのアドバイスを行います。

具体的には、企業が遵守すべき労働法や労働条件に関する法令を明確にし、企業がその法令に沿った制度を整備するための具体的な指針を示します。

企業が労働基準監督署からの指導やアドバイスに従うことで、問題解決が期待できます。

労働関係法令違反の場合が疑われる場合のみ違法状態の是正

労働基準監督署は、通報された内容に基づいて労働関係法令違反が疑われる場合に限り、違法状態の是正を求めます。違法状態の是正を求めるプロセスは以下のとおりです。

事実関係の調査

労働基準監督署は、通報された事案に関して、違反があるかどうかを調査します。調査により、労働法令違反が疑われる事実が明らかになる場合があります。

違反の判断

調査結果をもとに、違反があるかどうかを判断します。違反が認められた場合、企業に対して法令に基づく是正措置を命じます。

是正措置の実施

労働基準監督署からの指導に従って、企業は違法状態を是正し、労働者の権利が保護されるような環境を整備する義務があります。

具体的な是正措置としては、賃金の支払、労働時間の調整、休暇の取得などが含まれます。

是正措置の確認

労働基準監督署は、企業が適切な是正措置を実施したかどうかを確認し、企業が指導に従わない場合や違反内容が悪質な場合には、事業主を逮捕する可能性もあります。

労働基準監督署ではハラスメントや不当解雇への対応は難しい

労働基準監督署が対応できるのは、労働基準法や労働安全衛生法等の特定の法令の範囲内に限られます。

そのため、労働基準法違反か判断が難しいハラスメントの場合、労働基準監督署への通報では解決が難しいでしょう。

また、不当解雇についても、労働契約法上の問題として、基本的に対応してもらえないでしょう。

ハラスメントの被害を受けている場合は、企業内での相談窓口やハラスメント対策窓口に相談してください。

勤めている会社に適切な窓口や対策が整備されていない場合は、総合労働相談コーナーや労働問題を専門にしている弁護士への相談をおすすめします。

不当解雇については、弁護士に相談してみましょう。

また不当解雇の相談は不当解雇に関するおすすめ相談先5選|無料でよいアドバイスをもらうコツをご覧ください。

労働基準監督署に通報するメリットや期待できること

労働基準監督署への通報は、労働者の権利を守り、違法な労働状況の改善を促すための重要な手段です。ここでは、通報を行った労働者への対応や、通用により期待できることについて解説します。

労働基準法をもとにした具体的な立回りのアドバイス

自分の働いている会社の法令違反を労働基準監督署に通報することについて、多くの方がためらいを感じることでしょう。

「自分が通報したのが会社にバレたら…」と心配で、通報を諦める方も多くいます。

しかし、通報したことによって解雇されたり不利益な取扱いを会社内で受けたりすることは、労働基準法で禁止されています(労働基準法104条2項)。

これにより、労働者は自身の権利を守ることができます。しかしながら、表向きには他の理由をつけられ、実質的には通報したことへの報復として、通報者が減給等の不利益な処分を受けてしまうケースもあります。

その場合は、労働基準法に違反するとして、処分の効力を裁判所で争うことができます。

企業への労働環境の改善指示

労働基準監督署は、通報を受けた事業者に対して労働環境の改善を指示することがあります。たとえば、労働時間の適正化や賃金の支払、または安全に関する是正措置を企業に求めることができます。

これにより、労働環境の改善が期待できます。

企業経営者の逮捕や送致

労働基準法に対する重大な違反や労働状況が極めて悪質である場合、労働基準監督署は企業経営者を刑事立件する場合があります。

実際に、過労死や労働者の身体的・精神的損害を招くような労働環境であったとして、経営者が逮捕され、法的な責任を問われた事例もあります。

このような厳しい措置により、他の企業に対する抑止効果が生じ、労働者の権利がより一層守られることが期待できます。

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労働基準監督署を動かすためになすべき準備

労働基準監督署に通報し実際に行動を起こしてもらうには、事前に適切な準備を行うことが重要です。ここでは、労働基準監督署を効果的に動かすためになすべき準備について説明します。

通報内容に合わせた証拠の確保

労働基準監督署に通報する際には、通報内容に応じた証拠の確保が不可欠です。

労働環境に関する文書やメール、労働時間の記録、給与明細など、問題となっている事象を裏付ける証拠を用意することが重要です。

これにより、労働基準監督署が調査をより迅速かつ的確に進めることができます。

どんな証拠が必要であるかがわからない場合は、通報の前に労働基準監督署に電話相談し、法テラスや労働問題を専門にしている弁護士にアドバイスを受けることをおすすめします。

窓口に直接相談で通報

労働基準監督署への通報は、主にメール・電話・窓口という3つの方法が用意されています。その中で、もっとも効果があるのは、労働基準監督署に直接足を運び、窓口で相談することでしょう。

窓口で相談することで、あなたの置かれている状況や問題点を具体的に伝えることができ、適切な対応が期待できます。窓口では専門の相談員が対応し、労働者の権利を守るためのアドバイスを提供してくれるでしょう。

また、問題が深刻な場合にはあらかじめ労働問題を専門にしている弁護士に相談し、窓口へ同伴してもらうことも効果的です。法律の専門家としての観点から、あなたにとって不利がないように話を進めるためにも弁護士の同伴はおすすめです。

労働基準監督署が動かない場合の相談先

労働基準監督署に通報しても適切な対応をしてもらえない場合や、労働基準監督署の管轄外のトラブルの場合には以下のような相談先があります。

トラブルの内容に合わせて、適切な機関に相談してください。

紛争調整委員会によるあっせんを受けられる労働局

「紛争調整委員会」は、個別労働紛争解決促進法に基づき労働局に設置されています。賃金の未払や解雇などの個別労使関係紛争について、中立的な立場からあっせんや調停を行います。

紛争調整委員会への相談は無料で秘密も厳守されますが、あっせん案が出されたとしても、それを受諾するかどうかは当事者の自由です。

また、あっせんが成立したとして、それに基づく債務が履行されない場合でも、直ちに強制執行を申し立てることができるわけではありません

パワハラ等による労働局への相談はパワハラは労働局に相談できる?労働局の活用方法やその他の解決方法も紹介をご覧ください。

企業への強制力はないが個々の問題解決に強い労働委員会

労働委員会は、労働組合法に基づいて設置された機関であり、労働関係の公正な調整を図るのが目的です。

労働委員会の特徴は、公益の代表者、労働者の代表者、使用者の代表者の三者から構成されていることです。 企業への強制力はありませんが、個々の労働問題の解決に強い役割を果たします。

労働委員会では、労働者が働く環境を向上させるためのアドバイスや、問題の解決策を提案します。しかし、最終的な解決は労働者と事業主の間で合意が必要です。

労働審判や民事訴訟などの法的手段の選択肢が広がる弁護士

労働基準監督署やその他の機関で労働問題が解決しない場合、弁護士を通じた労働審判や民事訴訟などの法的手段も検討してみてください。

弁護士は、労働者の権利を守るために適切な法的措置を提案してくれるでしょう。特に、労働問題を専門にしている弁護士は労働問題に関する専門知識や実績があり、労働者にとって最善の解決策を提案してくれることを期待できます。

たとえば、長時間労働や賃金の未払だけでなく、加えてパワハラや嫌がらせを受けているなど、複合的な問題を抱えている場合には、早めに弁護士への相談をおすすめします。

労働基準監督署と同時に弁護士に相談して動き方を明確にしよう

労働問題に直面した際、労働基準監督署に通報することは解決へ向けての一つの方法です。しかし、労働問題の多くはさまざまなトラブルを含んでいるのが一般的です。

たとえば、長時間労働の背後には、会社からの圧力や上司からのパワハラが根底にある場合もあります。その場合、労働基準監督署だけでは対応が難しくなります。

また、労働基準監督署は法の遵守を目的にしていますので、必ずしも通報者に有利な判断をするわけではありません。

そのため、労働基準監督署に通報する際には労働問題を専門に扱う弁護士にも相談してアドバイスを受けることをおすすめします。

弁護士に相談し、あなたにとって最適な方法での問題の解決を模索するのがよいでしょう。

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編集部
本記事はベンナビを運営する株式会社アシロが企画・編集をおこないました。
  • ※ベンナビに掲載されているコラムは、必ずしも弁護士が執筆したものではありません。
  • ※本記事の目的及び執筆体制についてはコラム記事ガイドラインをご覧ください。
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