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解雇理由に納得できないときの対処法|不当解雇に該当するケースもわかりやすく解説

弁護士監修記事
労働問題
2024年05月22日
2024年05月22日
解雇理由に納得できないときの対処法|不当解雇に該当するケースもわかりやすく解説
この記事を監修した弁護士
藤田 大輔弁護士 (梅田日輪法律事務所)
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ある日突然会社から解雇を告げられ、誰に相談したらいいかわからず困っている方もいらっしゃるのではないでしょうか。

中には、以下のようなお悩みを抱えていらっしゃる方もいらっしゃるはずです。

  • ●会社側から告げられた解雇理由に納得がいかない
  • ●仕事がなくなれば、これからどうしたらいいのだろう
  • ●不当解雇だとしても、受け入れるしかないのだろうか?

上記のように悩まれている方は多く、厚生労働省の発表する「令和3年度個別労働紛争解決制度の施行状況」によると、解雇に関する相談が3万件以上も寄せられていることがわかります。

本記事では、解雇理由の種類や不当解雇に該当するケースをわかりやすく解説します。

【参考元】令和3年度個別労働紛争解決制度の施行状況

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解雇理由とは?種類や重要性

会社が社員を解雇する場合、能力不足や病気・けがなどの解雇理由があります。

合理性のない解雇は認められないので、正当な理由で解雇できるケースや、解雇理由の種類は以下を参考にしてください。

会社が社員を解雇するには正当な理由が必要

社員の解雇は労働契約の解消になりますが、合理的な理由がなければ労働契約法に違反します。

会社の都合で一方的に解雇雇されると、社員は収入が途絶えてしまい、生活が不安定になるため、合理的な理由のない解雇は認められません。

また、社員から解雇の理由を求められた場合、会社は書面で解雇理由を説明する義務があります。

会社から解雇を言い渡されたときは、必ず解雇理由を確認しておきましょう。

なお、会社と社員が退職に合意していれば合意退職、社員が一方的に退職を申し出た場合は辞職の扱いになります。

解雇理由の種類

主な解雇理由には主に以下の種類があります。

  • ●能力不足
  • ●成績不良
  • ●協調性の欠如
  • ●遅刻や欠勤の連続
  • ●業務命令違反
  • ●素行不良
  • ●職務怠慢
  • ●犯罪行為
  • ●業務が困難な病気やけが

会社は利益を維持・拡大しなければならないため、正常な業務運行の確保や、健全な労働環境の整備が欠かせません。

利益の維持や拡大を妨げる社員がいる場合、会社が解雇を考えることは当然といえるでしょう。

ただし、業務命令が適切であったかどうか、適材適所の配置であったかどうかなど、会社側の努力も問われます

【種類別】解雇理由が不当解雇に該当するケース

解雇には普通解雇や整理解雇など、形態別の種類もあります。

それぞれ正当解雇や不当解雇になると考えられる条件が異なるので、以下を参考にしてください。

普通解雇の場合

普通解雇とは、能力不足や病気などの理由により、社員が労働契約どおりの労務を提供できないときの解雇です。

普通解雇の場合、正当な解雇と不当な解雇の例は以下のように分類されます。

解雇理由

正当な解雇になる可能性があるケース

不当な解雇になる可能性があるケース

能力不足

採用時に想定されていた能力を有しておらず、指導しても改善されない

適切な指導や訓練、配置転換などをおこなっていない

成績不良

適切な指導をおこない、配置転換等もしたが成績が伴わない

社員育成の指導が不十分、または成績基準が不明確

協調性の欠如

注意指導や面談を頻繁におこなったがなおらない

指導が不十分で面談などもおこなっていない

遅刻や欠勤の連続

正当理由がない遅刻や欠勤の繰り返し

正当な理由があっての遅刻や欠勤、または重大な影響がない程度の遅刻や欠勤

病気やけが

休職期間から復職しても十分な労働能力まで回復していない

休職を認めていない、または業務負担を軽くする措置を取っていない

整理解雇の場合

整理解雇とは、業績不振などの理由により人員削減が必要とされる場合の解雇です。

整理解雇の場合、正当な解雇と不当な解雇は以下のように分類されます。

解雇理由

正当な解雇になる可能性があるケース

不当な解雇になる可能性があるケース

人員削減の必要性

コスト増などによる利益減少で赤字回復の見込みがない

社員を解雇する一方で新規採用をおこなっている

解雇対象の人選

解雇基準をもとに対象者が公正に選ばれている

解雇基準が不明確、恣意的な人選になっている

社員説明や協議

人員削減の必要性を説明し、代表社員や労働組合と協議している

説明や協議をおこなっていない、または説明内容などが不十分

解雇の回避努力

赤字解消に向け、資産売却や役員報酬の減額などをおこなっている

キャッシュフロー改善の努力がみられない

懲戒解雇の場合

懲戒解雇とは、素行不良や犯罪行為などにより、会社に重大な悪影響を及ぼす社員を解雇するケースです。

会社が社員を懲戒解雇する場合、合理的な解雇事由を就業規則に定めており、解雇が適切と認められる場合は正な当解雇ですが、以下のように不当な解雇になる場合もあります。

解雇理由

正当な解雇になる可能性があるケース

不当な解雇になる可能性があるケース

経歴詐称

採用時に学歴や職歴を虚偽申告した

学歴詐称があったものの、採用時に重要視していなかった場合

会社の信用を損なわせる行為

SNSなどに根拠のない誹謗中傷を書き込み、会社に実害を発生させた

根拠に基づく不正行為などの告発

機密情報などの漏えい

目的外の理由で社外秘情報や機密情報などを外部に漏らし、会社に損害を与えた

機密情報などの取り扱いルールを定めていない、または情報漏えいによる損害が発生していない

 

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パートやアルバイトの解雇理由

パートやアルバイトであっても解雇する場合には正社員と同じく合理的な理由がなければ労働契約法に違反します。

解雇理由に納得できないときの対処法

会社から解雇を言い渡されても、理由に納得できないときは以下のように対処してください。

不当解雇は無効になるので、まず解雇理由の正当性を確認しておく必要があります。

就業規則を確認する

解雇理由に納得できないときは、必ず就業規則を確認してください。

就業規則には解雇理由を定めることになっており、雇用契約を解除するときは労使間で正当性を確認しなければなりません。

職務怠慢などに関するルールを定めていないにも関わらず、数回程度の遅刻を解雇理由にした場合、不当解雇に該当する可能性があるでしょう。

また、解雇に相当する理由があっても、就業規則に定めた手順を飛ばし、社員に弁明の機会を与えていなければ、不当解雇になるケースがあります。

就業規則は入社時に手渡されますが、内容の変更は周知だけになっている場合が多いので、必ず最新版を確認しておきましょう。

会社に解雇撤回を求める

会社に解雇撤回を求めるときは、内容証明郵便を利用する方がよいでしょう。

配達証明付きの内容証明郵便を送付すると、いつ・誰から誰に・どのような内容の文面が送付(配達)されたか郵便局が証明してくれます。

文面には以下の内容を記載し、会社の代表者あてに送付しておきましょう。

  • ●解雇が不当である理由
  • ●解雇日以降も働く意思があること
  • ●復職の希望や未払い賃金の請求
  • ●振込先の口座情報
  • ●会社が解雇撤回に応じないときの措置

口頭や一般的な手紙で解雇撤回を求めた場合には、「聞いた覚えがない」「届いていない」などといわれる可能性があるので要注意です。

退職の意思表示をしない

解雇理由に納得できないときは、退職の意思表示に注意してください。

退職の意思表示をすると合意退職や辞職となる可能性があるため、会社側から「ひとまず預かるだけ」などといわれても、退職届を提出してはなりません

退職を強要された場合もきっぱりと断り、就労の意思を明確にしておきましょう。

解雇理由証明書を請求する

会社から解雇を告げられたときは、解雇理由証明書と解雇通知書を請求してください。

労働者が解雇理由証明書を請求した場合、会社は解雇理由や就業規則との関連性などを記載しなければなりません。

解雇理由証明書には「社会常識に反している」など、具体性のない理由を記載するケースが多いので、不当解雇の追及材料になる場合があります。

会社が解雇理由証明書の請求に応じないときは、労働基準法違反になる旨を主張しておきましょう。

未払い賃金を請求する

不当解雇は賃金の未払いが発生しているケースもあるので、会社に請求することがよいでしょう。

未払い賃金を請求するときは、以下の証拠を集めておきましょう。

  • ●就業規則や賃金規定
  • ●給与や賞与の明細書
  • ●源泉徴収票
  • ●超過勤務命令簿
  • ●シフト表
  • ●パソコンのログイン・ログオフのデータ
  • ●タイムカードの打刻データ
  • ●入退室時刻のデータ
  • ●給与振込口座の取引履歴:賃金未払いが発生している期間の履歴

給与計算の担当者に証拠を提出すると、「○年○月分・○○円」などの具体的な金額を計算してもらえます。

金額が確定したら、支払期日・支払方法・支払いに応じなかったときの措置を書面に記載し、代表者あてに送付してください。

法的措置をとる

解雇理由に正当性がなく、会社と協議しても解決しないときは、法的措置を検討しましょう。

法的措置には以下の種類があり、いずれも裁判所を介した解決手段です。

労働審判

まずは話し合いによる解決を試み会社側と交渉します。

双方の合意が形成できなかったときは、労働審判員会が申立人の請求を認めるか判断します。

審判は裁判所で一定の結論が提示されるので、解雇を撤回してもらえる可能性があるでしょう。

ただし、会社から異議申し立てがあると労働審判は無効となるため、通常訴訟で不当解雇を争うことになります。

民事訴訟

民事訴訟は裁判官の判決が下されるため、勝訴できれば解雇は無効になります。

ただし、解雇の正当性は会社側が立証する必要がありますが、自分でも反論できるよう主張や証拠を準備しましょう。

なお、会社と労働者に和解の見込みがある場合、裁判官が和解案を提示するケースがあり、双方がこれに合意した場合は和解により訴訟の終結となります。

不当解雇されたときの相談窓口

会社から不当解雇されたときは、以下の相談窓口を利用してください。

公的機関の介入は会社も無視できないため、解雇を撤回してもらえる可能性があります。

各都道府県の総合労働相談コーナー

各都道府県の労働局や、労働基準監督署内には総合労働相談コーナーが設置されています。

総合労働相談コーナーでは不当解雇の相談を受け付けており、解雇理由に問題があれば会社を指導してくれるケースがあります。

また、専門家のあっせんも利用できるので、弁護士や社会保険労務士などを介して、会社側と和解できる可能性もあるでしょう。

また、不当解雇の相談窓口は労働基準監督署と思われがちですが、相談には乗ってもらえるものの解雇の正当性の判断や是正指導などはしてもらえないので注意してください。

【参考元】総合労働相談コーナーのご案内

さいごに|解雇理由に納得できないときは法的措置も検討しましょう

会社が社員を解雇する理由はさまざまですが、解雇の理由に合理性があるかどうか、が問われます

「気に入らないからクビにする」などの解雇は認められないので、解雇理由に納得できないときは必ず会社と協議してください。

会社と協議しても解決できないときは、法的措置も検討しておくべきでしょう(この際には証拠の保全を十分に行って下さい)。

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編集部
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