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残業の休憩時間が引かれるのは違法?|相談先と対処方法について解説

弁護士監修記事
労働問題
2023年05月15日
2024年04月22日
残業の休憩時間が引かれるのは違法?|相談先と対処方法について解説
この記事を監修した弁護士
玉真聡志弁護士 (たま法律事務所)
中央大学大学院法務研究科卒業。埼玉県内の法律事務所に入所後、千葉県内の法律事務所へ移籍。たま法律事務所を平成30年9月に松戸駅近くで開所。迅速・丁寧・的確な対応をモットーにしている。
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労働時間は会社が管理しなければならないものです。

しかし、残業時間から休憩時間分の給与が一方的に引かれて、給与が減っているケースも少なくありません。

そこで、法律上の労働時間と休憩時間、残業時間の取り扱いを詳しく知りたい方に向けて、本記事で解説します。

本記事では、

  • 労働基準法による休憩時間の扱い
  • 休憩時間を給与から引く行為の罰則
  • 残業代請求をおこなう場合の相談先

についてみていきましょう。

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労働基準法上の休憩時間

労働基準法上の休憩時間は、次の通りです。

使用者は、例を挙げると、農業や畜産・水産業従事者、管理監督者の地位にある者など、労基法で定められた業種以外の業種に就く従業員には、以下の休憩時間をとらせなければいけません。

労働基準法 第三十四条 

  1. 使用者は、労働時間が六時間を超える場合においては少くとも四十五分、八時間を超える場合においては少くとも一時間の休憩時間を労働時間の途中に与えなければならない。
  2. 前項の休憩時間は、一斉に与えなければならない。ただし、当該事業場に、労働者の過半数で組織する労働組合がある場合においてはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がない場合においては労働者の過半数を代表する者との書面による協定があるときは、この限りでない。
  3. 使用者は、第一項の休憩時間を自由に利用させなければならない。』

引用:e-Gov法令検索

つまり、使用者は、正社員・パート・アルバイトといった職種に関係なく、従業員に対し、その労働時間が6時間以内であれば休憩なし、6~8時間以内であれば45分の休憩、8時間以上であれば1時間の休憩を取らせることが必要です。

休憩時間内での労働は残業になり得る

仕事が終わらなかった際に、使用者が休憩時間内での労働を命じた場合、休憩時間内での労働は残業に該当する場合が有ります。

休憩時間は、労働組合等の協定がある場合を除いて従業員は一斉に取得することとされていますし、使用者は、従業員に休憩時間を自由に利用させなければならないと定められています。

そのため、使用者が、従業員に対し、休憩時間内での労働を命じることは、原則としてできません。この場合は、休憩時間内の労働は残業となり得ます。

例えば、休憩時間を0.5時間削って8.5時間労働をおこなわせたとすれば、使用者は、0.5時間分の残業代を支払う必要があります。

なお、従業員にその休憩時間内に労働させた場合、使用者には、6カ月以下の拘禁(改正前は懲役)又は30万円以下の罰金といった罰が科されるので、ご注意ください。

休憩時間内での本人の意思で労働した場合も残業になり得る

監督者が休憩を促したにもかかわらず、本人の意思で休憩時間内に労働をおこなった場合はどうでしょうか。

従業員は休憩時間を自由に利用することができるので、従業員自ら、休憩時間内に労働していた場合は残業に該当しないということも考えられそうです。

しかし、このような場合、後で、本人が自分の意思で休憩時間内に労働していたか否か、という点が争われることが多いです。

結果として、従業員に休憩時間を取らせず労働させていた、と判断される場合も多く、この場合、休憩時間内の労働は残業になります。

そのため、本人が休憩時間内の労働を希望したとしても、休憩時間内には労働させない方がよいでしょう。

残業したときの休憩時間の扱いと注意点

ここからは8時間以上労働して残業となった場合の休憩時間の扱いをみていきましょう。

まず、8時間以上の労働であれば、1時間の休憩時間が必要です。

しかし、残業をした場合、残業に対する休憩時間の明確なルールはありません。そのため、会社やケースごとに判断が分かれます。

たとえば、残業も含めて10時間の労働時間があった場合、休憩時間を1時間としても違法ではありません。

しかし、この場合に休憩時間を45分とすると、8時間以上の労働時間に対する1時間の休憩を取らせていないので、違法となります。

休憩時間が引かれているが実態がない場合は違法

休憩時間分の時給が給与から引かれた場合、休憩時間分の時給を差し引くことは違法です。

たとえば、6時間勤務で働いている従業員に対し、45分の休憩を与えていなかったにもかかわらず、45分の時給相当額を給与から差し引くことは、違法です。

そもそも、休憩時間は労働時間に含まれません。そのため、この場合には、勤務時間を6時間45分にすることが必要です。

残業から休憩時間が引かれた場合の相談先

残業代から休憩時間分の給与が引かれている場合、引かれた休憩時間分の給与を残業として請求する必要があります。

残業代請求を相談できる相談先をみていきましょう。

労働組合

残業代請求は、労働組合にも相談可能です。

労働組合は、会社ごと・業界ごとに設置されていることが多いです。

労働組合は会社との団体交渉を行えますが、労働組合に会社と残業代請求を交渉してもらうためには、労働組合に加入する必要があります。

労働基準監督署

労働環境に問題がある場合、労働基準監督署に申告することによって環境の改善を図ることも出来ます。

労働基準監督署は次のような流れで調査をおこないます。

  • 視察、立ち入り調査
  • 是正勧告
  • 再度の立ち入り後、処分を下す

しかし、労働基準監督署の調査対象は、あくまで労働基準法違反の事実のみです。

そのため、労基法に反しない問題には対処できませんし、残業代を請求することは、労基署の立ち入り調査にはそもそも含まれません。

労働基準監督署への相談は労働基準監督署にメール相談は効果的?|相談方法について解説をご覧ください。

総合労働相談コーナー

総合労働相談コーナーは、労働基準監督署や労働局の中に設置され、残業代も含めた労働問題を相談できます。

相談コーナーを通じて、労働基準監督署・労働局へ取り次いだり、労働問題の解決へ向けた次の手続きを案内してくれたりする場所です。

しかし、あくまで相談なので、個人の残業代請求をその場で行える手続ではありません。

この相談を通じて、都道府県労働局(紛争調整委員会)によるあっせんなどを実施できますが、都道府県労働局(紛争調整委員会)によるあっせんは法的強制力がないため、会社があっせんに応じなければ話合いが難しく、残業代を請求できません。

また残業代請求相談窓口の詳細は残業代請求の相談窓口|無料相談できる窓口や弁護士に相談するメリットを解説をご覧ください。

残業代を請求したいと思ったときの重要なポイント

ここでは、残業代を請求したいと思った時の重要なポイントをみていきましょう。

特に、相談のときには、残業代に関する証拠を持っていくとよいでしょう。

指示の記録や書面などの証拠を残しておく

上長から口頭で指示を出されるケースが多いため、証拠を確保するときには次のような点を意識しましょう。

  • 休憩時間内の労働をどのように指示されたのか
  • 休憩時間内に労働をするよう命じられたか
  • 休憩時間内で、実際にどの程度働かされたのか

書類に残されているケースはほとんどないので、ご自分で記録しておくとよいでしょう。

この場合、ご自分の記録したメモが証拠になることもあります。

メモには、休憩時間内の労働を命じられた日時、休憩時間内の労働を行った年月日とその時間などを、正確・具体的に記録しておきましょう。

雇用契約書を保管する

雇用契約書には労働時間が書かれていることが殆どです。

労働時間だけでなく、労働条件に関することが定められているので、雇用契約書は大事に保管しておきましょう。

次に、タイムカードや勤怠メールは、残業時間などの証拠になるので、定期的にコピー・保存しておくとよいでしょう。

会社の就業規則を保存・コピーしておく

会社の就業規則は、 所定労働時間や残業に関するルールが定められている大事なものです。

そのため、会社の就業規則を保存・コピーしておきましょう。

最後に

使用者が従業員に休憩を与えた実体がないのに、休憩時間分の時給を勝手に差し引いた場合、使用者のこの行為は法律に違反しています。

また、差し引いた休憩時間分の給与は請求できますし、差し引かれた休憩時間分が法定労働時間を超えている場合、残業代として請求できます。

このような場合には、弁護士へ相談することをおすすめします

編集部
本記事はベンナビを運営する株式会社アシロが企画・編集をおこないました。
  • ※ベンナビに掲載されているコラムは、必ずしも弁護士が執筆したものではありません。
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