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相続放棄の期間は3ヵ月だけ?期限延長の方法や期限後も相続放棄できるケースとは

弁護士監修記事
遺産相続
2023年05月18日
2024年10月09日
相続放棄の期間は3ヵ月だけ?期限延長の方法や期限後も相続放棄できるケースとは
この記事を監修した弁護士
武藏 元弁護士 (法律事務所エムグレン)
弁護士歴10年以上にわたって多数の相続トラブル解決に尽力。多数のメディアに出演し監修を行うなど、豊富な経験・実績を持つ。
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相続放棄とは、相続人が相続財産を受け取らないことを意思表示する手続きのことです。

相続放棄をすると、相続財産だけでなく、相続財産に含まれる借金も負わなくて済みます。

しかし、相続放棄をするには「自己のために相続開始を知ってから3ヵ月」の期間内に手続きをしなければなりません(熟慮期間)。

この期間を過ぎてしまうと、原則として相続放棄はできなくなります。

また、期間内でも一定の行為をしてしまうと、相続放棄できなくなる場合があります。

本記事では、相続放棄の期間に関する重要なポイントを解説します。

相続放棄の手続きに不安がある方は、ぜひ参考にしてください。

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目次

相続放棄ができる期間は相続開始を知ってから3ヵ月

冒頭でも解説したように、相続放棄できる期間は自分のために相続が開始したことを知ってから3ヵ月以内です。

この章では、相続放棄ができる期間についてより具体的に解説します。

「相続開始を知ってから3ヵ月」とは具体的にいつからいつまで?

相続開始を知ったときとは、相続人が相続の発生事由(死亡や遺言の存在など)を知った時点を指します。

被相続人が亡くなったことは、その日のうちに配偶者や子どもに知らされるのが一般的です。

その場合は、その日から3ヵ月となります。

もしも、親子が疎遠になっていたなどの理由で、親が亡くなったことを相続人が知らなかった場合は、亡くなったことを知った日から起算することとなります。

3ヵ月の期間が過ぎたら、借金を含め原則として遺産を相続しなくてはならない

3ヵ月の期間が過ぎたら、借金を含め原則として遺産を相続しなくてはなりません。

相続放棄の期間内に、裁判所に相続放棄の届出をしなかった場合は、自動的に相続が成立します。

また、3ヵ月を過ぎるとプラスの財産だけ相続するという限定承認もおこなうことができなくなります

相続人は自分の責任で相続財産の把握や判断をおこない、必要に応じて速やかに相続放棄の手続きをおこなわなければなりません。

「知らなかった」「手続きの時間がなかった」などの言い訳は通用しない

「知らなかった」「手続きの時間がなかった」などの言い訳は通用しないというのは、法律上の原則です。

相続人は、自分で情報収集をおこない、期限内で判断しなければならないのです。

ただし、例外的に特別な事情がある場合は、3ヵ月の熟慮期間を超えても相続放棄ができる場合があります。

たとえば、熟慮期間内にマイナスの財産が判明しなかった場合などです。

この場合は3ヵ月を過ぎてしまっても、相続放棄ができることがあります。

しかし、このような場合も裁判所に認められるかどうかは個別に判断されるため、まずは弁護士へ相談することをおすすめします。

相続放棄の手続き方法

ここでは、相続放棄の手続き方法について詳しく解説します。

相続放棄手続きに必要な書類と費用

相続放棄に必要な書類は、以下のとおりです。

なお、全員共通の必要書類に関して下表では、「共通書類」と記載します。

相続人の立場

必要書類

全員共通

相続放棄申述書

被相続人の住民票除票もしくは戸籍附票

申述者の戸籍謄本

被相続人の配偶者

共通書類

被相続人の死亡の記載がある戸籍謄本

被相続人の子もしくは孫

共通書類

被相続人の死亡の記載がある戸籍謄本

本来の相続人の死亡の記載がある戸籍謄本(孫の場合のみ)

被相続人の両親もしくは祖父母(直系尊属)

共通書類

被相続人の出生時~死亡時までの全ての戸籍謄本

被相続人の子の死亡が記載された戸籍謄本

被相続人の直系尊属の死亡の記載がある戸籍謄本(祖父母の場合のみ)

被相続人の兄弟姉妹若しくは甥姪

共通書類

被相続人の死亡の記載がある戸籍謄本

被相続人の子の死亡が記載された戸籍謄本

被相続人の直系尊属の死亡の記載がある戸籍謄本

本来の相続人の死亡の記載がある戸籍謄本

必要な書類を集めたら、財務調査をおこないます。

財務調査は、被相続人の遺した財産や負債を全て洗い出して、相続するかどうかを判断する作業です。

相続放棄を決めたら、被相続人の住所を管轄する家庭裁判所に申し立てます。

相続放棄の申し立ては、原則として本人がおこないます。

相続放棄を自分でおこなう場合の費用は、以下のとおりです。

  • 申述人1人につき800円分の収入印紙
  • 連絡用の郵便切手(400円~500円程度)
  • 被相続人の住民票除票または戸籍附票:1通300円
  • 被相続人の死亡が記載された戸籍謄本:1通750円
  • 申述人の戸籍謄本:1通450円

相続放棄を弁護士や司法書士に依頼する場合は、別途相談料や手数料がかかります。

3ヵ月の期限内に手続きが間に合いそうにない場合の対処法

この章では、3ヵ月の期限内に手続きが間に合いそうにない場合の対処法について、詳しく解説します。

「相続放棄申述書」だけ先に提出する

期限に間に合いそうにない場合、「相続放棄申述書」だけ先に提出する方法があります。

相続放棄は、3ヵ月以内に受理されなければならないわけではありません。

3ヵ月以内に必要な書類をできるだけ集め、特に重要な「相続放棄申述書」を最優先で提出し、ほかの書類提出が遅れる旨を家庭裁判所へ伝えます。

相続放棄申述書の提出が間に合えば、期限内の手続きとして認められるでしょう。

相続放棄の期間伸長を申し立てる

もし、「相続放棄申述書」だけ先に提出するのも間に合わない場合は、相続放棄の期間伸長を申し立てる方法があります。

これは、相続放棄が遅れたことに対して正当な理由があることを家庭裁判所に対して証明して、相続放棄の期限を延長してもらう方法です。

たとえば、以下のような理由で期間伸長が認められた場合は、家庭裁判所が指定した期日までに相続放棄の手続きをおこないます。

  • 相続人が遠隔地に居住しており、書類が期限内に揃えられない
  • 何かしらの事情でほかの相続人と連絡がつかない
  • 財産調査に時間が必要である

ただし、正当と思われる理由があった場合でも判断を下すのはあくまでも家庭裁判所であり、必ずしも伸長の申し立てが認められるというわけではないので、注意が必要です。

相続放棄すべきか決めかねている場合は「限定承認」も検討する

相続放棄をすべきか悩んでいることが理由で、期間内の申し立てが難しい場合は、「限定承認」も検討するとよいでしょう。

限定承認とは、プラスの財産の範囲でマイナスの財産を引き継ぐ方法です。

プラスの財産よりもマイナスの財産のほうが少なければ、手元に財産が残ります。

一方、プラスの財産よりもマイナスの財産のほうが多い場合は、プラスマイナスゼロになる範囲で相続するという方法です。

この方法であれば、負債を背負う必要はなくなります。

判断に迷う場合、どうすればよいのかわからない場合は弁護士に相談する

以上のように、相続放棄の期限内に手続きが間に合わない場合や、相続放棄すべきかどうか決めかねていて答えが出ない場合は、弁護士に相談することをおすすめします。

弁護士は、相続人の立場や希望を考慮して、最適な方法を提案してくれます。

また、必要な手続きや書類作成も代行してくれます。

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3ヵ月の期限が経過してしまっても相続放棄ができる可能性がある

実は、特別な事情があれば、3ヵ月の期限経過後にも相続放棄が認められる可能性があります。

ここでは、3ヵ月の熟慮期間が経過しても相続できる条件などについて、詳しく解説します。

3ヵ月の期限経過後に相続放棄が認められる可能性が生じる3つの条件

3ヵ月の期限経過後にも相続放棄ができるかどうかは、裁判所の判断によります。

裁判所は、以下の3つの条件を総合的に考慮して、個別の事情に応じて判断します。

  • 期限を過ぎてから負債の存在が発覚した場合
  • 知らなかったことに正当な理由がある場合
  • 相続の事実を知ってから3ヵ月以内に相続放棄をおこなった場合

たとえば、海外にも資産があって財務調査に時間がかかる場合や、あとから負債が発覚した場合などの状況で、認められる可能性があります。

または、負債を証明する一切の資料が破棄されているなどの場合でも認められやすいでしょう。

手続きに不安な点があればあらかじめ弁護士に相談を

手続きに不安な点があれば、あらかじめ弁護士に相談することをおすすめします。

ただし、3ヵ月の期限経過後にも相続放棄ができるかどうかは、事例によって異なります

また、裁判所に申し立てをする際には、証拠や書類などの準備が必要です。

弁護士は、相続人の事情や希望に応じて、最適な方法や注意点をアドバイスしてくれます。

相続放棄は、一度すると取り消すことができません。

また、相続放棄をしないと、プラスの財産だけでなく債務も引き継がなければなりません。

そのため、慎重に判断することが大切です。

期間内でも相続放棄できなくなる「みなし単純承認」にあたる行為とは?

実は、3ヵ月の熟慮期間内でも、相続人が「みなし単純承認」と呼ばれる行為をした場合は、相続放棄できなくなります。

ここでは、みなし単純承認にあたる行為とはどのようなものか、詳しく解説します。

遺産分割前に相続財産を処分してしまう行為

まず、遺産分割前に相続財産を処分してしまう行為が挙げられます。

たとえば、相続人が遺産分割協議をせずに相続した不動産を売却したり、預金を引き出したりした場合は、みなし単純承認に該当します。

これは、相続人が自分の権利として相続財産を扱ったとみなされるからです。

老朽化した実家を取り壊す、などの事情があったとしても、相続放棄の手続きが終わる前に処分してはいけません

ただし、生活費や葬儀費などの必要経費の支払いや、遺言執行者の指示に従った処分は除外される可能性があります。

相続財産を隠したり消費したりしてしまう行為

相続財産を隠したり消費したりしてしまう行為も、「みなし単純承認」にあたる行為です。

たとえば、相続人が遺言書や預金通帳などの重要書類を隠匿したり、相続した現金や宝飾品などの財産を使い果たしたりした場合は、民法921条1号で定められている「処分」に該当する可能性があり、相続放棄は無効となります。

それだけでなく、この事実が財務調査で発覚した場合には、追徴課税の可能性もあります。

みなし単純承認にあたるか否か判断が難しいケース

みなし単純承認にあたるかどうか、中には判断が難しいケースもあります。

ここでは、それぞれの状況について詳しく解説します。

相続遺産から葬儀費用を支払った場合は?

相続財産から支払った葬儀費用が、一般的にみて高額でなければ、みなし単純承認にはあたりません

ただし、葬儀費用が法外な金額であったり、業者以外にも支払ったりした場合は、相続財産の一部を受け取ったとみなされる可能性があります。

自分が受取人の生命保険金を受け取った場合は?

生命保険金は、原則として被相続人の死亡時点で受取人に直接帰属するものであり、相続財産ではありません

したがって、自分が受取人の生命保険金を受け取った場合は、みなし単純承認にはあたりません。

保険の解約返戻金を受け取った場合は?

保険の解約返戻金は被相続人の財産ですので、受け取ってしまうと相続財産を処分したとみなされる可能性があるため、受け取らないほうほうが無難でしょう。

被相続人のスマートフォンやクレジットカードを解約した場合は?

スマートフォンやクレジットカードは、それ自体が相続財産というわけではありません。

したがって、スマートフォンやクレジットカードを解約した場合は、みなし単純承認にはあたりません

相続遺産から被相続人の入院費用を支払った場合は?

入院費用は、被相続人の債務として相続人が負担するものです。

したがって、相続遺産から入院費用を支払った場合は、みなし単純承認にはあたりません

ただし、入院費用が過剰に高額である場合は、相続財産の一部を受け取ったとみなされる可能性があります。

相続放棄の期間についてよくある質問

最後に、相続放棄の期間についてよくある質問に答えていきます。

「相続人であることを知った日」をどうやって証明すればよいですか?

相続人が死亡して自己が相続人であることを知った日が、すでに死後3ヵ月を経過していたなどの場合、相続人であることを知った日を証明する必要があります。

その証明の方法としては、相続開始の事実を直接知ったメールや証言を提出することが一般的です。

また、生前に交流がほとんどなかったり、葬式に出席していなかったりなどの事情も伝えることで、認められやすくなります。

証明する方法は一つに限らず、複数の方法を組み合わせることもできます。

相続人であることを知った日が不明確な場合は、裁判所の判断に委ねられることもありますので、早めに弁護士に相談することをおすすめします。

相続放棄の期限直前に借金があったことを知ったのですがどうすればいいですか?

相続放棄の期限直前に借金があったことを知った場合でも、適切な対応を取ることで相続放棄は可能です。

まずは相続放棄申述書のみを作成して提出し、あとから戸籍謄本などの書類を提出することも可能です。

もし、期限までに相続放棄をするかどうかの判断ができない場合は、期限の伸長申し立てをするという方法もあります。

いずれの場合も、相続放棄の期限直前に借金があったことを知った場合は、迅速かつ慎重に行動する必要があります。

相続放棄の期限後に借金が判明した場合、相続放棄はできませんか?

相続放棄の期限が過ぎてから借金が判明した場合は、相続放棄が認められる場合があります。

まずは、期限内に借金の存在を知り得なかったことについて、合理的な説明が必要です。

たとえば、関係書類が全て破棄されていたり、支払いの催促が最近になっておこなわれたりといった場合は、申し立てをおこなうことで認められる可能性があります。

まずは弁護士に相談し、対応についてアドバイスをもらうとよいでしょう。

相続順位が自分に回ってきた場合、相続放棄の期間はいつまでですか?

相続放棄の期間は、相続順位が回ってきたタイミングがいつであっても、「自己が相続人であることを知った日から3ヵ月」です。

相続順位とは、民法で定められている相続の優先順位の事で、法定相続人といいます。

配偶者を除いた法定相続人は、以下のように定められています。

順位

対象者

第一位【子ども】

被相続人の子が第一順位。すでに死亡している場合はその子(被相続人の孫)が第一順位になる。

第二位【親】

被相続人に子も孫もいない場合は親が相続人になる。親が死亡している場合に曾祖母が相続人となる。

第三位【兄弟姉妹】

被相続人に子も親もいない場合は、兄弟姉妹が相続人となる。

たとえば、自分が第二順位だった場合で考えてみます。

第一順位の相続人が相続放棄をし、自分が相続人になった場合、その事実を知った日から起算して3ヵ月が期限となります。

仮に第一順位の相続人が相続放棄をした事実を自分が半年間知り得なかった場合でも、あくまでもその事実を知ってから3ヵ月となります。

さいごに | 相続放棄の手続きに不安があれば弁護士へ速やかに相談を!

以上、本記事では相続放棄の期間について、詳しく解説してきました。

本記事で解説したように、相続放棄は3ヵ月間の熟慮期間内に手続きをしなければなりません。

相続放棄の手続きに不安がある場合は、弁護士に相談することをおすすめします。

弁護士は、相続財産や借金の調査や判断をサポートしてくれますし、相続放棄の手続きも代行してくれます。

また、弁護士は、相続放棄以外の選択肢も提案してくれます。

たとえば、「限定承認」や「遺産分割協議」などの方法で、借金だけを除外して遺産を受け取ることもできる場合があります。

ベンナビ相続では、相続問題に関する解決実績が豊富な弁護士を探すことが可能です。

ご自身の住んでいる地域から、相続についての経験が豊富な弁護士を探したいのであれば、ぜひベンナビ相続をご活用ください。

参考:手軽に医療保険やがん保険、死亡保険を資料請求|オリックス生命

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