内容証明郵便とは?利用シーンや書き方・送り方について解説!
内容証明郵便は、慰謝料の請求などの郵送内容を証拠として用いる際に有効な手段です。
しかしほとんどの方は、内容証明郵便を送るのが初めてのため、具体的にどういったメリットがあるのかや、どうやって発送したらいいのかがわからず悩んでしまうこともあるでしょう。
本記事では、内容証明郵便のメリットやデメリット、郵送方法や具体的な文例などについて解説します。
書き方やルールも細かく解説しているので、実際に内容証明郵便の作成を検討している方はぜひ参考にしてください。
あわせて、万が一相手が内容証明郵便を受け取らない場合の対処法についても紹介します。
内容証明郵便とは
内容証明郵便とは、誰が・誰宛てに・いつ・どのような内容の郵便を送ったのかを、謄本によって郵便局が証明・保管する制度です。
まずは、内容証明郵便の概要やメリット・デメリットなどについて解説します。
内容証明郵便を使うシーンも併せて紹介するので、具体例を知りたい方もチェックしてください。
内容証明郵便の効力・メリット
内容証明郵便は、裁判での証拠として活用できます。
たとえば、相手が訴訟内容について知らないと主張しても、内容証明郵便によって証明し主張を覆せることがあります。
また、内容証明郵便自体が心的プレッシャーとなるケースもあり、口頭やメールなどの連絡では応じない相手に緊急性や重要性を伝えられる点でも有効でしょう。
裁判より労力・時間を抑えて慰謝料を請求できることもあるなど、できる限り簡潔に相手の行動を促したい場合に内容証明郵便の利用がおすすめです。
内容証明郵便はどんな時に使う?
内容証明郵便を送るシーンとして、次のようなケースがあります。
- 滞納された料金を回収するとき
- SNSなどで誹謗中傷を受けたとき
- ハラスメントを受けているとき
- 退職した社員がルール違反しているとき
- 従業員と連絡が取れないとき
- 従業員に解雇通知するとき
内容証明郵便は、支払うべき料金を滞納している場合に請求元から送られてくることがありますが、それ以外にも何かトラブルに発展した際に使われるケースがあります。
たとえば、SNSでの誹謗中傷は掲示板の運用者に削除依頼をすれば済むケースもありますが、内容が悪質な場合は裁判や損害賠償になる可能性が十分にあります。
誹謗中傷した相手に和解案を提案したり、重大性を知らせたりする際にも送るといいでしょう。
ハラスメントも同様で、相手にハラスメントの内容を具体的に知らせたうえで、損害賠償の請求に繋げやすくする目的があります。
仮に裁判になった場合でも、ハラスメントの内容を客観的な証拠として残せます。
そして、退職した社員がルール違反をしている場合も、重要性や法的措置をとる意思が強いことなどを内容証明郵便によって伝えられるでしょう。
従業員と連絡が取れない場合でも、期限以内に返事をしなければ法的手段を取るという旨を記載し送ることで、相手と連絡がとれる可能性が高まります。
損害賠償請求に関しては損害賠償請求の裁判に掛かる費用の種類や金額を徹底解説をご覧ください。
内容証明郵便にデメリットはある?
内容証明郵便は客観的なデータを残せる点や相手にプレッシャーを与えられることなどのメリットがありますが、デメリットになる一面もあるので注意しましょう。
たとえば、内容証明郵便の内容に誤りや脅しのような表現があった場合、裁判ではかえって自分が不利になるケースも珍しくありません。
また、内容証明郵便を送ることで、相手が緊張・萎縮して連絡に応じなくなる場合もあります。
交通事故などで被害者が加害者に損害賠償請求をする場合は、直接話し合ったほうがスムーズに進むこともあるでしょう。
内容証明郵便は法的効力がないため、記載内容や指示に従うかは相手によって異なります。
相手が無視する可能性は十分にあり、結果として裁判や強制執行などの事態に備える必要があります。
内容証明郵便の書き方
内容証明郵便の書き方にミスがあると、場合によっては無効または不利になってしまうリスクもあるため注意が必要です。
ここからは、具体的な内容証明書の書き方について解説します。
レイアウト
内容証明郵便には特に決まったレイアウトはありません。
縦書きでも横書きでも問題ありませんが、それぞれ字数や行数が異なります。
文字数・行数の制限
縦書きの場合、1行20文字以内・1枚26行以内です。
横書きの場合は3パターンあるので、それぞれ混同しないように気をつけましょう。横書きの場合、次の3パターンが考えられます。
- 1行20字以内、1枚26行以内
- 1行13字以内、1枚40行以内
- 1行26字以内、1枚20行以内
文字数制限に反して無効化しないように慎重に作成しましょう。
特に手書きで作成する場合は、文字数や凝集を数え間違えやすいので注意が必要です。
たとえば、かっこなどの記号はひとつ1字としてカウントされます。
文字に関する制限
内容証明郵便で使える文字には制限があります。
次の7種類以外の文字は受け付けられない可能性もあるため、十分に注意しましょう。
- 仮名
- 漢字
- 数字
- 英字(固有名詞のみ)
- かっこ
- 句読点
- そのほか一般に記号として使用されるもの
たとえば、外字や旧字体などは使えない可能性もあります。
記載しなければならない内容
内容証明郵便には、差出人と受取人の住所・氏名を記載しなければなりません。
また、相手にどのようなアクションを求めているのかも明記する必要があります。
たとえば、ハラスメントや違反行為など訴えたい内容を具体的に書き、裁判の証拠として残すことを意識してください。
内容証明郵便の文例
ここでは次のケース別に内容証明郵便の文例を紹介します。
SNSで誹謗中傷された場合
飲食店に対する誹謗中傷の場合、次のような文例が挙げられます。
貴殿は2024年1月1日、貴殿アカウント(@xxx)に、当法人が運用する飲食店「〇〇」に関し、「賞味期限切れの食材を使っている」「食中毒事故を起こした」などと投稿しています。 しかしながら、このような事実はありません。 貴殿のアカウントは誰でもいつでも閲覧できるもので、このような投稿は名誉棄損罪(刑法230条1項)に該当する可能性があり、すぐに削除するよう通知します。 速やかに対応しない場合は、刑事告訴・民事訴訟を含めた法的手段に進む可能性もあるため、あらかじめご了承ください。 |
退職した社員がルール違反している場合
退職者が在籍中に知った情報を利用しないというルールに違反し、顧客に対して勧誘行為をしている場合は、次のような文例が挙げられます。
貴殿は2024年1月31日付で、当法人を退職しました。退職の誓約書では在籍中に知り得た情報を利用しないという旨に同意したにもかかわらず、顧客に直接架電し、当法人の契約から貴殿のプランへ変更してほしいと伝えています。 貴殿の行為は退職にあたってのルールに反しており、ただちにやめるように、本書をもって警告します。 貴殿が現在有している顧客の連絡先についてはただちに削除し、今後一切接触・連絡しないように、重ねて通知します。 仮に、今後も顧客への連絡や勧誘行為があった場合は、法的措置をとる可能性もあるため、あらかじめご承知ください。 |
内容証明郵便の送り方
内容証明郵便は、郵便局から発送する必要があります。
ポストに投函しただけではただの手紙として扱われ、郵便局にデータを保管できないため注意してください。
また、内容証明郵便を発送できる郵便局は、内容証明の取り扱いがあるところに限ります。
各地の郵便局のWebサイトで、取扱い内容の内容証明に〇が付いているかをチェックしてください。
ここからは内容証明郵便の送り方について解説します。
送り方を間違えて内容証明郵便が届かないという事態にならないように、事前に確認しましょう。
内容証明郵便の発送で持参するもの
内容証明郵便を送るため郵便局にいく際には、次の4点を持参しましょう。
- 内容文書
- 謄本2通
- 封筒(差出人と受取人の住所・氏名記載)
- 内容証明郵便に必要な料金
さらに、書留・特定記録郵便物等差出票があると、内容文書の予備としても利用できます。
この持参物を郵便認証司の資格をもつ職員に提出し、不備がない状態で認証印をもらい、料金を支払って郵送手続きは完了です。
内容証明郵便の手続きは通常の郵送手続きよりも時間がかかり、対応できる郵便局も限りがあるため、時間に余裕をもって提出しましょう。
内容証明郵便にかかる費用
内容証明郵便で発送する際、次の料金が必要です。
郵便物の料金 |
定形郵便物 ・25グラムまで:84円 ・50グラムまで:94円 定形外郵便 ・50グラムまで:120円 ・100グラムまで:140円 ・150グラムまで:210円 ・250グラムまで:250円 規格外 ・50グラムまで:200円 ・100グラムまで:220円 ・150グラムまで:300円 ・250グラムまで:350円 |
内容証明の加算料金 |
1枚440円(2枚目以降は1枚あたり260円) |
一般書留の加算料金 |
損害要償額が10万円以内:435円 10万円以上:10万円を超える5万円までごとに21円加算 |
配達証明の加算料金 |
差出時:320円 差出後:440円 |
必要な料金はこの4種類ですが、郵送物の大きさや重さ、内容によって金額が異なります。
料金についてより詳しく知りたい場合は、郵便局サイトにある国内の料金表のページを確認してください。
内容証明郵便を発送したあとにすべきこと
内容証明郵便は、発送して終わりではありません。発行後には次の2つのことをしましょう。
相手が受け取るまでは配達状況を確認しておく
内容証明郵便は相手が受け取らなければ意味がありません。
相手がしっかり受け取ったかは、郵便局の追跡サービスを利用して配達状況を確認しましょう。
内容証明郵便を送ってから7日間までは、相手が不在で受け取らなくても郵便局に保管されます。
7日経過すると、郵便局から内容証明郵便が返送されます。
配達証明書は保管しておく
相手が内容証明郵便を受け取ると、配達証明書という葉書が郵便局から送られてきます。
配達証明書は、相手が内容証明郵便を確実に受け取ったという証拠になり、裁判を有利に進める際などに有効です。
配達証明書を受け取ったら、内容証明郵便の控えと一緒に大切に保管しましょう。
【理由別】内容証明郵便が返送されてきたときの対処法
ここからは、内容証明郵便が返送されてきたときの対処法について解説します。
返送されるパターンは2つあるため、それぞれに応じて対応しましょう。
受取拒否・保管期間経過によって返送された場合
内容証明郵便の受取拒否や保管期間経過によって返送された場合、特定記録郵便を再度相手の住所に送りましょう。
特定記録郵便はポストに投函されるため、相手が直接受け取るかどうかは関係ありません。
ただし、特定記録郵便は郵便を出した記録になりますが、その郵便物の内容証明とはならない点に注意が必要です。
また、特定記録郵便だけで相手のアクションを促せない場合は、裁判などの手段を講じる可能性も考えられます。
宛先に相手が住んでいなかった場合
相手が引越しなどで宛先住所に住んでいない場合は、転居先不明で内容証明郵便が返送されます。
その場合は、正しい住所を調べ再度郵送する必要があります。
相手が法人の場合はWebサイトなどで調べられますが、個人の場合は調べられない可能性もあります。
相手の住所がわからない場合、弁護士に依頼したほうがスムーズかもしれません。
内容証明郵便を弁護士に依頼するメリット
内容証明郵便を弁護士に依頼するメリットには次のようなものが挙げられます。
- 適切な形式・書き方・郵送方法で発送できる
- 受け取り拒否などがあった場合の対応を任せられる
- 弁護士名義で内容証明郵便を送ることで希望を実現しやすい
- 裁判を見据えた内容で、内容証明郵便を発送できる
内容証明郵便は形式や内容が正しくないと、効力を発揮できない場合があります。
適切に作成するには、弁護士の力を借りると効果的でしょう。
そして、弁護士からの郵送というだけで、相手はプレッシャーや重大性を感じ、要求に応じやすくなる点もメリットです。
また、受取拒否や音信不通などによって裁判に進むことを見据えた対応ができるため、万が一裁判となってもスムーズに対応できるでしょう。
まとめ
本記事では、内容証明郵便について解説しました。
内容証明郵便はいつ・誰が・誰に・どのような内容で郵便物を出したか証明する際に有効です。
しかし、法的な強制力があるわけではないため、相手が応じないリスクもあります。
また、正確に作成しなければ無効・自分が不利な状況になる可能性もあるので、慎重に作成してください。
万が一相手が受取拒否・転居先不明などで返送された場合は、弁護士に依頼するとスムーズに対応してもらえるためおすすめです。