不当解雇されたらどうする?労基署に相談するだけではダメな理由
会社を不当解雇された場合に、まず思いつくのが労働基準監督署(労基署)への相談ではないでしょうか。
実は、労働基準監督署に相談しただけでは解雇を撤回できるわけではありません。
これは、労働基準監督署は原則として、労働基準法等に違反している会社を監督・指導するための機関であるためです。
つまり、不当解雇を撤回させたいのであれば、弁護士へ相談するなどして不動解雇の撤回を申し立てるのが一番の近道といえるでしょう。
本記事では、不当解雇された人が労働基準監督署に相談すべきかどうか、また撤回したい場合にやるべきことなどについて詳しく解説します。
不当解雇されたら労働基準監督署(労基署)に相談すると解決できる?
不当解雇を撤回したい場合は、労働基準監督署に相談しても解決することは難しいでしょう。
この章では、労働基準監督署の役割について詳しく解説します。
労働基準監督署の役割
労働基準監督署は、労働基準法や労働安全衛生法等に基づいて、会社の監督指導等をおこなうほか、労働者災害補償保険法に基づいて労災保険の支給の調査をおこなう行政機関です。
労働者の権利を守るために、労働基準法等に違反する違法な労働環境や賃金未払いなどの問題に対して、是正勧告や是正命令、罰則などの措置をとることができます。
労働基準監督署の主な部署と役割は、それぞれ以下のとおりです。
- 監督課:法令に関する各種届出の受付や相談対応、監督指導
- 安全衛生課:職場の安全や健康の確保に関する技術的な指導
- 労災課:仕事に関する負傷などに対する労災保険給付
このうち、監督課では会社に対して監督・指導をおこなう部署であるとともに、不当解雇などで悩む労働者の相談や申告にも応じています。
労働基準監督署は解雇が不当かどうかを調べてくれるわけではない
不当解雇は、労働契約法第16条の要件を満たさない解雇や労働基準法違反の解雇のことをいいます。
労働基準監督署は、労働基準法違反の解雇(業務上負傷等で休業する場合の解雇など)については対応をしてくれますが、労働契約法違反の解雇については、解雇が不当であるかどうかを調べてくれるわけではありません。
通常の不当解雇は、労働契約法違反の解雇であることが多いため、労働基準監督署が相談に応じないケースが多いといえるでしょう。
以下は、厚生労働省が公開している「労働基準監督署の役割」の一部を抜粋したものです。
◆監督指導
計画的に、あるいは働く人からの申告などを契機として、労働基準法などの法律に基づいて、労働基準監督官が事業場(工場や事務所など)に立ち入り、機械・設備や帳簿などを検査して関係労働者の労働条件について確認を行います。その結果、 法違反が認められた場合には事業主などに対しその是正を指導します。引用元:労働基準監督署の役割|厚生労働省
このように、多くの場合、労働基準監督署は個人の解雇が不当かどうかを調査して、是正する役割がないということは覚えておく必要があるでしょう。
不当解雇を解決したい場合の相談窓口
では、不当解雇に遭った場合、どこに相談すればよいのでしょうか。
以下に、不当解雇を解決するための主な相談窓口を紹介します。
弁護士
弁護士は、法律の専門家です。
弁護士に依頼することで、不当解雇の事実や法的根拠を確認し、労働者の立場から最善の解決策を提案してくれます。
また、不当解雇の撤回や損害賠償などの交渉や訴訟を代行してくれます。
弁護士に相談するメリットは、専門的な知識や経験を持つプロが労働者の権利を最大限に守ってくれることです。
しかし、弁護士に依頼する場合は、弁護士費用や裁判費用などの経済的な負担がかかります。
また、裁判所に訴える場合は、時間や手間もかかります。
そのため、弁護士に依頼する前には、ご自身の状況や目的に応じて、メリット・デメリットをよく考える必要があります。
メリット・デメリットの詳細については不当解雇は裁判で解決できる!メリット・デメリットや実際の裁判例も解説をご覧ください。
労働組合
不当解雇された場合、労働組合に相談することもひとつの選択肢になりえます。
労働組合に相談することで、組合から企業に対して抗議や交渉をおこなってくれる可能性があります。
社内に労働組合がない場合や、相談しても力になってくれない場合には、社外の合同労働組合に頼るという方法もあります。
合同労働組合とは、会社の枠を超えて個人で加入できる組合で、社外の合同労組でも会社と団体交渉することが可能です。
ただし、不当解雇について社内外の労働組合が必ず対応してくれるとは限らないため、注意が必要です。
労働局や労働基準監督署の総合労働相談コーナー
都道府県労働局や労働基準監督署内の総合労働相談コーナーは、国が設置した無料の相談窓口です。
不当解雇だけでなく、賃金や休日などの労働条件や労災などの問題についても相談できます。
総合労働相談コーナーでは個別に対応し、法律や制度の説明やアドバイス、労働局や労働基準監督署への取り次ぎをおこないます。
また、相談内容によっては、「助言・指導」や「あっせん」の案内をしてもらえることがあります。
費用がかからないことや、中立的な立場で対応してくれることがメリットとして挙げられる一方、総合労働相談コーナー自体は問題を解決する機関ではない点には注意しましょう。
また相談窓口の詳細は不当解雇に関するおすすめ相談先5選|無料でよいアドバイスをもらうコツをご覧ください。
不当解雇された場合にやるべき対処法
この章では、不当解雇された場合にやるべき3つの対処法について詳しく解説します。
不当解雇の撤回を申し立てる
まず、不当解雇の撤回を申し立てることが、ひとつの選択肢として挙げられます。
法律上の要件を満たさない解雇であれば、申し立てをすることで撤回される可能性があります。
不当解雇の撤回を申し立てるには、会社に対して解雇の無効を主張することが必要です。
その際、解雇理由証明書などの書面を請求し、会社が示した解雇理由が正当なものかどうかを判断します。
また、就業規則や契約書などの文書も確認し、会社が遵守しているかどうかをチェックしましょう。
さらに、不当解雇の事実や経緯を証明するために、同僚や上司などの証言やメールなどの記録をできるだけ集めておきます。
そして、会社に対して退職に応じないことを伝え、復職を求めます。
もし会社が拒否したり、無視したりした場合には、弁護士に相談して裁判を起こすことも検討しましょう。
未払いの賃金を請求する
未払いの賃金は請求するようにしましょう。
適法な解雇の場合は、解雇日をもって労働契約が終了します。
そのため、解雇後に企業が給与を支払う必要はありません。
しかし、不当解雇の場合は申し立てや裁判をおこなっている間の雇用は継続していることになります。
つまり、その期間に事実上解雇の状態で労働をしていなかったとしても、労働契約は終了しないため賃金が発生するのです。
このことに関しては、民法第536条に記載があります。
(債務者の危険負担等)
第五百三十六条
2 債権者の責めに帰すべき事由によって債務を履行することができなくなったときは、債権者は、反対給付の履行を拒むことができない。この場合において、債務者は、自己の債務を免れたことによって利益を得たときは、これを債権者に償還しなければならない。引用元:民法536条|e-Gov法令検索
これにより、不当解雇の申し立てが認められると、未払いの賃金も請求できます。
不当解雇の申し立てをおこなう場合には、未払いの賃金も請求するようにしましょう。
解決金を受け取って退職する
復職を望まないのであれば、解決金を受け取って退職するという方法も検討しましょう。
不当解雇された場合には、会社と和解することもひとつの選択肢です。
和解とは、双方が互いに譲歩して争いを終了させることです。
和解は、時間や費用がかからずにすむことや、自分で条件を決められますが、この場合もはじめから退職を前提にしないほうがよいでしょう。
復職の意思を見せることで、未払い賃金が獲得できる可能性があります。
不当解雇の撤回を申し立てる場合にやっておくべきこと
この章では、不当解雇の撤回を申し立てる場合にやっておくべきことについて解説します。
解雇通知書・解雇理由証明書を請求する
不当解雇の撤回を申し立てる場合には、まず会社に対して解雇通知書や解雇理由証明書などの書面を請求することが必要です。
これらの書面は、会社が解雇した理由や時期などを明記したもので、不当解雇の有無を判断するための重要な証拠となります。
もし会社がこれらの書面を渡さない場合には、労働基準監督署や弁護士に相談してみましょう。
労働基準監督署へのメール相談は労働基準監督署にメール相談は効果的?|相談方法について解説をご覧ください。
就業規則を確認する
不当解雇の撤回を申し立てる場合には、就業規則を確認することも必要です。
就労規則には会社と労働者の間のルールや約束を定めたもので、解雇の正当性を判断できる可能性があります。
もし会社が就業規則の規定に違反して解雇した場合には、不当解雇となります。
証拠をできるだけ集めておく
不当解雇の撤回を申し立てる場合には、最後に証拠をできるだけ集めておくことが必要です。
不当解雇の事実や経緯を示す証拠としては、同僚や上司などからのメールや音声データなどの記録などが一例として挙げられます。
これらの証拠は、会社と交渉したり、裁判を起こしたりする際に有利に働きます。
そのため、不当解雇されたと感じたら、すぐに証拠を探して保存しておくようにしましょう。
退職に応じない
退職の意思がないのであれば、退職に応じないということが重要です。
不当解雇された場合には、会社から退職金受領書などの書類にサインするように求められることがあります。
しかし、これらの書類にサインすると、自ら退職したことになり、不当解雇の撤回を申し立てることができなくなる可能性があります。
もしも退職の意思がないのであれば、退職に応じないことを伝え、退職を前提として作成された書類にサインしないようにしましょう。
退職後の仕事を探しておく
申し立てをおこなう場合にも、長期化に備えて退職後の仕事を探しておくことをおすすめします。
不当解雇の撤回を申し立てる場合、裁判所での争いが長期化する可能性があります。
その間、収入が途絶えることも考えられます。
そのため、不当解雇にあった場合は、仕事を探しておくことも必要です。
まとめ|不当解雇なら弁護士へ相談して解決を目指そう
以上、本記事では不当解雇で労働基準監督署に相談した場合に解決できるのか、実際に不当解雇された場合の相談先や対処法について詳しく解説してきました。
結論としては、多くの場合、労働基準監督署へ相談したとしても不当解雇を解決することはできません。
具体的に動くのであれば、弁護士へ相談して撤回を申し立てることが一番の近道といえます。
不当解雇されたと感じたら、ぜひ一度弁護士へ相談してみてください。