借用書なしで貸したお金を取り返すことはできる?条件や注意点を解説
お金を貸したものの返してもらっていないときに、「借用書がないけど、お金を返してもらえるの?」と悩んでいる方は少なくないでしょう。
「友人だから大丈夫だと思って借用書なしでお金を貸してしまった」「借用書が必要だなんて知らなかった」という場合でも、お金を取り返せるケースはありますが、そのためにはいくつかの条件をクリアする必要があります。
本記事では、借用書なしで貸したお金を取り返せるかについて解説します。お金を取り返せずに困っている方は、ぜひ参考にしてください。
借用書なしでも貸したお金を取り返すことはできる?
結論からいうと、借用書がなくても貸金の回収は可能です。ここでは借用書の意味や用意できていない場合の対応について解説します。
借用書を用意する意味
借用書とは貸したお金をいつまでにいくら返すかを記載した書類です。確実にお金を返してほしい場合は、必ず用意しておきましょう。
たとえば、消費者金融や銀行からお金を借りる際は必ず金銭消費貸借契約書が用意されます。
個人間のお金のやり取りでは、金銭消費貸借契約書が作成されることはあまり多くないと思われますが、借用書さえ用意されないケースも珍しくありません。
なお、お金の貸し借りは法的には金銭消費賃借契約といいますが、必ずしも借用書は必要ではありません。
しかし、口約束のようにお金を借りたという証拠を残さない方法では、万が一相手が返済を渋ってしまうと回収に手間取るリスクが懸念されます。
そのため、個人間でのお金の貸し借りでも、客観的な証拠である借用書を用意しておくほうが賢明です。
借用書がない場合でも事実を証明できればよい
借用書なしでお金を貸してしまった場合でも、お金のやり取りがあった事実及び返済の約束があった事実の両方を証明できれば問題ありません。
たとえば、友人や知人を相手とした場合、信頼関係のもと借用書なしでお金を貸してしまうケースは大いに考えられます。
その際、借用書があればお金を請求しやすいですが、たとえ用意していない場合でも貸金の回収は不可能ではありません。
きちんと返済してもらうため、今までのお金のやり取りで発生したデータを遡り、客観的な証明ができるか確認してみてください。
借用書なしでお金を取り返す際に証拠になるもの
借用書なしでお金を取り返す際、証拠になるものとしては以下3つが挙げられます。
- 振り込みの明細書
- 督促のメール・LINEなど
- その他の証拠となるもの
それぞれ具体的にどのような内容である必要があるか、詳しく解説します。
振り込みの明細書
銀行から相手の口座にお金を振り込んだ場合、振込みの明細書が証拠になります。
また、少額でも現金は手渡しではなく、できる限り銀行振込で客観的なデータを残しておいてください。
督促のメール・LINEなど
現金を手渡しして銀行振込のデータが残っていない場合は、督促のメールやLINEを残しておきましょう。
お金を借りるまでのやり取りに加え返済の督促や相手の返答なども、証拠として保管することをおすすめします。
なお、相手に返済の意思が見られる証拠があれば、時効が更新されるため、時効切れのリスクの対策にもなります。
その他の証拠となるもの
原則、お金を貸した証拠の形は自由です。そのため、銀行振込・メール・LINE以外でも、お金のやり取りをした内容がわかるものであれば証拠となります。
証拠がない状況に陥らないためにも、お金を貸した際の領収書や電話のやり取りの録音などが残っていないかをチェックしましょう。
また、銀行口座の出金記録が証拠となる可能性もあります。
ただし、出金記録だけでは用途不明でお金を貸したという確実な証拠とはいいにくいため、相手へ振り込むほうが証拠としての価値は高いです。
借用書なしで貸したお金を取り返す際に注意すべき点
借用書なしでもお金を取り返せる可能性はありますが、必ず取り返せるとは限りません。
ここでは、借用書なしで貸したお金を取り返す際の注意点を2つ紹介します。
時効が成立しないように注意する
時効制度は令和2年4月1日施行改正民法によってそれまでの内容が改正され、返済期日が令和2年3月31日までの金融機関等の商人から借りた場合は5年、個人間では10年で時効となります。
一方で、返済期日が令和2年4月1日以降の場合は金融機関・個人間ともに5年となります。
金融機関の場合はいずれも5年と時効は同じですが、個人間は異なるため注意してください。
また、返済日を決めていなかった場合の時効は、お金を貸した日(貸付日)を起算日とし、令和2年3月31日までの場合は10年、令和2年4月1日以降は5年となります。
時効成立を止める方法
時効成立を止めなければ、お金を取り返せないリスクがあります。特に注意しなければならないのは、返済日が曖昧なケースです。
借用書なしでお金を貸した場合、返済日を客観的に判断できません。
仮に返済日を決めていない場合は、お金を貸した日(貸付日)からカウントがスタートします。
令和2年3月31日までに貸したお金の時効は10年間ですが、それ以降に貸したお金は5年です。
つまり、何もアクションを起こさないまま時効を迎えるとお金は回収できません。
そこで、内容証明郵便を送付する、訴訟提起するといった時効中断措置を講じることにより時効の完成が猶予されるため(ただし、内容証明郵便の場合は送付後6ヶ月以内に提訴する事が必要)、お金を貸した日から5年が経過するまでに必要な法的手続きを講じましょう。
督促の方法に注意する
督促の方法にも注意しなければ、お金を貸した側が不利益を被るリスクがあります。
たとえば、相手の家に何度も訪問したり連絡したりするうちに、ストーカーとして通報されてしまう可能性は否めません。
また、個人間でのやり取りは暴力事件などのトラブルに発展するリスクも十分にあり得ます。
特に、借用書なしでの返済要求はお金を貸した証拠を示しづらく、貸したこと自体を嘘といわれてしまうケースはゼロではありません。
借用書なしでのスムーズな回収は個人間では難しいため、できる限り専門家に依頼をして法的手段を取ってもらうほうがいいでしょう。
借用書なしで貸したお金を返してもらう方法
借用書なしで貸したお金を返してもらう方法に、以下5つが挙げられます。
- 口頭・メールで督促する
- 内容証明郵便にて督促状を送る
- 支払督促を簡易裁判所に申し立てる
- 調停・訴訟・強制執行等の法的手続きを講じる
- 弁護士に依頼し法的対応を委任する
それぞれの方法について詳しく解説します。
口頭・メールで督促する
唐突に知人や友人に法的書類を送る、あるいは裁判を起こすことに対し気が引ける場合、まずは個人間で返済してほしい旨を催促しましょう。
頻繁に連絡することで返済を意識させられるため、少額ずつでもお金が返ってくる可能性があります。
仮に少額でも返済があった場合はお金のやり取りをしたという証拠になるため、時効の更新に繋がります。
過去のデータが残っていない場合にも、口頭やメールでの連絡は効果的といえるでしょう。
また、全額もしくは一部の返済が無かったとしても、お金の返済についてのやり取りが発生した時点で時効の更新が成立する可能性もあります。
証拠を残すだけでなく時効成立をストップする手段としても、定期的に口頭やメールで督促しましょう。
内容証明郵便にて督促状を送る
お金を回収する法的手段の第一歩として、内容証明郵便での督促状郵送は効果的です。
督促状にはお金を返してほしいという旨だけでなく、返済を無視し続けるデメリットや和解策なども記載し、相手が応じやすい内容にすることが大切です。
また、脅迫文にならないよう注意する必要があるため、弁護士などに作成を依頼したほうが無難でしょう。
内容証明書郵便とは郵便局に督促状の控えを保管できる方法です。
そのため、督促状を確かに送ったという証拠になると同時に、郵送した日付を残すことができるというメリットもあります。
内容証明郵便での督促状の郵送はコストや手間がかかりますが、はがきや普通郵便よりも緊急性や重要性が高いことを相手に伝えることができるため、効果が見込めるでしょう。
また内容証明郵便についての詳細は内容証明郵便とは?利用シーンや書き方・送り方について解説!をご覧ください。
支払督促を簡易裁判所に申し立てる
メール・LINEでの督促や内容証明郵便での督促状郵送にも相手が応じない場合は、支払督促を簡易裁判所に申し立てましょう。
法的措置には段階があり、最も簡易な法的措置は支払督促となります。支払督促とは裁判所の簡易な書類審査を通過すると、相手に支払いの命令を出す制度です。
支払督促に相手が応じた場合はこの時点で終了しますが、異議申し立てがあれば通常訴訟へ移行します。
したがって相手が支払督促に対して異議申立てをする可能性が高い場合は、最初から通常訴訟を起こしたほうがよいでしょう。
特に、借用書なしの状態であれば相手が素直に応じない可能性があります。
調停・訴訟・強制執行等の法的措置を講じる
支払督促にも応じない場合は、調停・訴訟を検討します。訴訟の段階になると、借用書のような客観的証拠を求められるため、事前に必要なものは揃えておきましょう。
なお、通常訴訟で判決が出たにもかかわらず相手が支払いを拒否した場合は、強制執行に進み相手の財産が差し押さえることが可能となります。
その後、差し押さえた財産を換金し、そこで得たお金を返済に充てるという流れです。
しかし、差し押さえの対象となる財産がなければ返済金を回収できません。強制執行は、相手に資力がなければ費用倒れになる可能性もあります。
弁護士に依頼し法的対応を委任する
相手と直接やり取りしたくない、返済交渉に自信がないなどの場合は、弁護士に依頼をして手続きを進めたほうがいいでしょう。
弁護士はお金を貸した側の代理人という立場で、自分の代わりに相手とやり取りをしてくれます。
内容証明郵便での督促状郵送、支払督促申立の内容やタイミングなども、現実的な返済の可能性を踏まえて対応してくれるでしょう。
確実に返済を求めたい方は弁護士への依頼をおすすめしますが、返済金から弁護士費用を差し引くとマイナスになるケースがあります。
そのため、弁護士へ依頼をする場合は回収できるお金と弁護士費用を照らし合わせて検討してください。
【借用書なしもOK】貸したお金を取り返す際に弁護士に依頼するメリット
ここでは、借用書なしで貸したお金を取り返すにあたって、弁護士に依頼をするメリットを4つ紹介します。
内容証明郵便のみでの解決に期待できる
内容証明郵便自体が、相手に緊急性や重大性を知らせるうえで効果的です。また、弁護士からの送付であれば一層効力を期待できます。
仮に自分で送った内容証明郵便では返済に応じない場合でも、弁護士の名前があれば解決できる可能性があります。
裁判や強制執行などを避けて内容証明郵便だけで解決が期待できる点は、弁護士に依頼するメリットです。
適切な回収方法でお金を取り返すことができる
弁護士は法律の知識が豊富なだけでなく、相手の態度や経済状況などによって返済に応じやすい方策を検討する知識・経験があります。
感情任せに返済を求めても、督促方法によっては相手が返済に応じなくなる可能性はゼロではありません。
その点、弁護士であれば適切な回収方法でお金を取り返すことが期待できるため、回収の戦略や交渉などを一任したい方は依頼をおすすめします。
借用書の代わりになる証拠集めをサポートしてもらえる
お金のやり取りをした履歴でも貸し借りの証拠になるとはいっても、最も確実なものは借用書、金銭消費貸借契約書です。
万が一借用書がない、ほかに証拠になるものがあるかわからないといった場合でも、弁護士から必要なサポートを受けることが期待できます。
調停・訴訟の際に代理人として対応してもらえる
万が一裁判となっても、弁護士が自分の代理人として出頭します。
自分で裁判を起こして裁判所に出向く場合は、土日の閉庁日を避けて平日の時間を使わなければなりません。
裁判が長引くほど仕事やプライベートの時間を犠牲にしなければならないため、ストレスが大きくなるでしょう。
裁判に関する時間や労力をかけたくない場合は、代理人として動いてくれる弁護士がいると心強いです。
調停や訴訟の際に代理人として対応してくれる点も、弁護士に依頼するメリットのひとつに挙げられます。
まとめ
今回の記事では、借用書なしで貸したお金を取り返せるかについて解説しました。借用書がないと貸したお金を取り返せないというわけではありません。
その際、借用書の代わりの証拠となる連絡履歴や銀行振込データなどがあれば、お金を貸したことを証明できます。
しかし、証拠を用意しても相手が返済に応じない可能性はゼロではありません。
そのような状況に陥った場合は、内容証明郵便や支払督促などの法的措置を講じることによって、返済を受けられる可能性があります。
それでも応じない場合は訴訟やその後の強制執行に進むことが考えられます。法的書類作成や裁判手続きは、十分な時間や知識がなければできません。
そのため、自力で完遂する自信がない方は、弁護士への依頼を検討してみてください。
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