任意整理とは?メリット・デメリット・相談先・弁護士に相談する際の流れ
任意整理を行うと、裁判所を通さない簡易・迅速・柔軟な手続きにより、債務の負担を軽減できる可能性があります。
任意整理は、自己破産や個人再生と並んで、複数存在する債務整理手続きの一つです。
債務などの状況によって、任意整理に向いている方もいればそうでない方もいるため、弁護士に相談しながら適切な手続きを選択してください。
この記事では、任意整理のメリット・デメリット・相談先・弁護士に相談する際の流れなどを解説します。
任意整理とは?
任意整理とは、借金などの債権者と交渉を行い、債務の減額や返済スケジュールの延長を認めてもらうことをいいます。
収入に比べて借金額が大きくなると、次第に返済が苦しくなり、期日どおりに返済が行われなくなりがちです。
このような状況に陥ると、債務者は遅かれ早かれ、自己破産や個人再生などの「倒産」に追い込まれるでしょう。
債務者が倒産すると、債権者は債権をほとんど回収できずに大損害を被ってしまいます。
任意整理によって契約上の債務の一部を免除したり、月々の返済額を減らしたりすれば、債務者が返済を再開できるようになる可能性があります。
債権者としては、ある程度妥協して任意整理に応じることで、債務者を倒産させるよりも多くの金額を回収できるのです。
このような事情から、借金などの返済に苦しむ債務者が交渉を打診し、債権者がそれに応じて任意整理が行われるケースがよく見られます。
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任意整理のメリット・デメリット
任意整理は、自己破産・個人再生などと並ぶ「債務整理」手続きの一つです。
債務整理を行う際には、債務者の状況に合った適切な手続きを選択することが重要になります。
任意整理には以下のメリット・デメリットが存在するので、本当に任意整理をすべきかどうかを、弁護士に相談しながらよく検討してください。
自己破産の手続きに関しては自己破産手続きの流れとは?適切な相談先についても紹介!をご覧ください。
任意整理のメリット
任意整理の主なメリットは、以下のとおりです。
①裁判所を通さない簡易・迅速・柔軟な手続き
任意整理は、自己破産や個人再生とは異なり、裁判所を通さずに行うことができます。
そのため書類の準備負担は少なく、手続きにかかる期間も比較的短いです。
また、任意整理による債務負担軽減の内容についても、債権者との合意により自由に定めることができます。
②財産を処分する必要がない
任意整理の場合、債務者が所有する財産を処分する必要はありません。
自由財産以外の財産が処分される自己破産や、担保権付きの財産が処分される個人再生と比較すると、任意整理の大きなメリットといえます。
③家族などに対して秘密にしやすい
任意整理は裁判所に通う必要がなく、また家にある財産が処分されることもないため、家族に秘密にしやすい利点があります。
さらに自己破産や個人再生とは異なり、官報公告もされないため、第三者に任意整理の事実が知れてしまうおそれもありません。
④任意整理の対象とする債務を選べる
任意整理の対象とする債務については、債務者が自由に選ぶことができます。
したがって、ある債務を任意整理する一方で、別の債務は任意整理しないことも可能です。
原則としてすべての債務が一律で整理対象となる自己破産や個人再生に比べると、任意整理は自由度が高い手続きといえます。
⑤取り立てがストップしている間に生活の再建が可能
任意整理を弁護士に依頼すると、貸金業者などからの取り立てはストップします。
取り立てが止まった後、任意整理の交渉が完了するまでの間は、月々の債務返済を行う必要がありません。
その間は自由になる収入が増えますので、別の債務の支払いに充てるなどして、生活再建へ基盤を整えることができます。
任意整理のデメリット
任意整理の主なデメリットは、以下のとおりです。
①元本のカットが原則として認められない
任意整理によって、どの程度債務負担が軽減されるかは、債権者との交渉次第です。
通常の場合、任意整理で支払いが免除されるのは利息・遅延損害金のみであり、元本のカットは認められない傾向にあります(過払い金が発生している場合を除く)。
そのため、自己破産や個人再生に比べると、債務の減額効果が小さいことが任意整理の弱点です。
②一定期間借り入れ等ができなくなる
任意整理をすると、個人信用情報機関のデータベースに事故情報が登録されます。
事故情報が登録された方は、5年間程度新規の借り入れ・クレジットカードの利用などができなくなります(いわゆる「ブラックリスト」入り)。
なお、ブラックリスト入りのデメリットは、自己破産や個人再生でも同様に発生します(自己破産・個人再生の方が、任意整理よりも事故情報の登録期間が長い場合があります)。
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信用情報を回復させることは可能?時効が過ぎたら弁護士に相談!
③債権者が同意しなければ成立しない
任意整理は、あくまでも債権者の交渉によって行うため、債権者の同意がなければ成立しません。
債権者の同意が一切不要の自己破産や、一部の債権者が反対していても実施可能な個人再生に比べると、任意整理は強制力に欠けるデメリットがあります。
任意整理について債権者の同意を得るには、返済計画などをきちんと説明して、債権者の納得を得る必要があるでしょう。
任意整理を行うのが適している人の特徴は?
上記の任意整理のメリット・デメリットを踏まえると、他の手続きに比べて任意整理を行うのが適している人の特徴は、以下のようにまとめられます。
安定した収入がある
任意整理を行うためには、安定した収入があることが事実上必須となります。
任意整理は、和解成立後も債務を返済し続ける必要があります。
債権者としても、返済を続けていけるだけの安定した収入を確認できなければ、任意整理に応じてくれる可能性は低いでしょう。
もし収入が不安定である場合や、無職で収入が全くない場合には、自己破産が第一の選択肢となります。
迷惑をかけたくない保証人がいる
前述のとおり、任意整理の対象とする債務は、債務者が自由に選ぶことができます。
このメリットが効果を発揮するのは、迷惑をかけたくない保証人がいる場合です。
保証人がいる債務を整理対象にしてしまうと、減額・免除された金額の支払いを保証人に対して請求されてしまいます。
もし迷惑をかけたくない保証人がいる場合には、保証の対象となっている債務を任意整理の対象から外すことで、保証人に対する請求を回避できるのです。
これに対して自己破産や個人再生の場合、原則としてすべての債務が、強制的に減額・免除の対象となります。
保証人に迷惑をかけずに債務整理をしたい場合は、任意整理の可能性を検討しましょう。
家族に借金の原因を隠している
家族に内緒で多額の借金を作ってしまい、秘密のまま債務整理をしたいという方もいらっしゃるかもしれません。
その場合は、裁判所に通う必要がなく、家にある財産が処分されない任意整理がもっとも無難です。
弁護士に任意整理を依頼すれば、職務上の守秘義務に基づき、家族にも情報が漏れないように配慮してくれます。
処分したくない財産がある
価値のある財産を所有しており、それを手放したくない場合には、任意整理が有力な選択肢となります。
まず自己破産については、価値のある財産は原則として処分されてしまう/b>ので、いったん候補から外すべきです。
次に個人再生の場合、多くの財産を手元に残すことができますが、担保権付きの財産は処分されてしまうという問題があります。
住宅の土地・建物であれば手元に残す方法がありますが、ローンが残っている車などについては、まず間違いなく処分されてしまうので注意が必要です。
このように、自己破産や個人再生では処分されてしまう財産を手元に残したい場合には、任意整理をご検討ください。
任意整理の相談先は?
任意整理は、返済負担に苦しむ債務者の方が、生活再建へと踏み出すための第一歩です。
債務の返済負担が重いと感じた場合には、速やかに専門家へ相談することをおすすめいたします。
【関連記事】
借金返済の無料相談先まとめ|状況に合わせた相談先と債務整理の解決事例
借金問題に関する主な相談窓口
任意整理を業務上取り扱うことができるのは、弁護士と認定司法書士です。
※認定司法書士:法務大臣所定の研修を修了し、簡裁訴訟代理等関係業務を行う能力の認定を受けた司法書士。
債権額が140万円以下の債権者との間で、任意整理の交渉を代理することができます。
よって、理を依頼する場合は、弁護士または認定司法書士に直接相談するのがよいでしょう。
依頼できる弁護士や認定司法書士に心当たりがない方は、以下の相談窓口から紹介を受けることも可能です。
借金問題に関しては借金の整理は弁護士に相談を|借金問題の解決に向けた弁護士のサービスを紹介をご覧ください。
①国民生活センター
②法テラス
③日本貸金業協会
④日本クレジットカウンセリング協会
参考:よくあるご質問|公益財団法人日本クレジットカウンセリング協会
⑤全国銀行協会
⑥市区町村役場の相談窓口
⑦金融庁
⑧弁護士会
⑨司法書士会
任意整理の相談先として、弁護士と認定司法書士の違いは?
弁護士は債権額にかかわらず、すべての任意整理案件を取り扱うことができます。
これに対して認定司法書士は、1社あたりの債権額が140万円以下の場合に限り、任意整理を取り扱うことが認められます。
このように、取り扱うことのできる任意整理の範囲を債権額によって制限されているかどうかが、弁護士と認定司法書士の大きな違いです。
比較的少額の債務であれば、弁護士・認定司法書士のどちらに任意整理を依頼しても問題ないでしょう。
一方、債務が多額に及んでいる場合には、当初から弁護士に依頼する方が二度手間を回避できます。
なお、認定司法書士の方が弁護士よりも依頼費用が安いと言われることがありますが、実際にはケースバイケースであることに注意しましょう。
弁護士費用・司法書士費用は、各弁護士・司法書士が自由に決めているので、事務所によってかなり差があるのが実情です。
費用だけに着目して依頼先を選ぶのは得策ではありませんが複数の弁護士・司法書士から相見積もりをとって比較すると、依頼先を選ぶ際の参考資料として活用できます。
【関連記事】弁護士に無料法律相談できるおすすめ相談窓口|24時間・電話相談OK
任意整理を弁護士に相談する際の流れ
弁護士に初めて任意整理を相談する場合、相談から任意整理が成立するまでの流れを、事前に頭に入れておくと安心です。
法律相談を利用する
任意整理を含む債務整理に関する法律相談は、多くの弁護士が無料で行っています。
債務の負担に苦しんでいる方は、まず弁護士の無料相談を利用してみましょう。
任意整理に関する法律相談では、まず弁護士に対して、債務などの状況を伝えます。
以下の項目については、債務整理の方針を決めるに当たって基本的なものになりますので、事前にある程度説明できるようにしておくとよいでしょう。
- 債務額
- 債権者の数
- 延滞の有無
- 収支バランス
- 資産の内容 など
債務者の状況を弁護士と共有したら、どの債務整理を利用すべきかについて、弁護士とともに検討を行います。
主に自己破産・個人再生・任意整理の3つの中から、債務者の状況に合った手続きを選択することになります。
委任契約書を締結する
任意整理を行うことが決まったら、弁護士と委任契約書を締結します。
特に弁護士費用(着手金・成功報酬・実費など)については、事前に弁護士から明確に説明を受けたうえで、委任契約書に正しくその内容が記載されていることを確認しましょう。
対象債権者に対して受任通知を発送する|取り立てがストップ
委任契約書を締結すると、弁護士は任意整理の対象となる債権者に対して「受任通知」を発送します。
受任通知は、弁護士が任意整理を受任したことを債権者に伝える通知です。
受任通知を受領した貸金業者などは、債務者に対する取り立てを禁止されます。
取り立てがストップすれば、生活の平穏を取り戻すことができるとともに、浮いた資金で生活の立て直しを図ることもできるでしょう。
任意整理の方針を具体的に検討する
受任通知の発送により取り立てがストップしたら、どのように任意整理を進めるかについて、腰を据えて検討を開始します。
たとえば以下の各点に関して、法律上のルールや債権者の態度などを踏まえたうえで、弁護士と相談しながら方針を決定します。
- どの程度の減額を目指すか
- 過払い金返還請求はできるか
- 返済計画をどのように立てるか
方針決定の際には、弁護士のアドバイスを求める一方で、債務者としての希望についても遠慮なく弁護士に伝えましょう。
任意整理の交渉を行う
任意整理の方針が決まったら、実際に債権者との交渉を行います。
債権者を説得するためには、きちんとした返済計画を示して、誠実な返済を約束することが大切です。
債権者から何らかの要求があった場合には、弁護士に相談しながら、対応を真摯に検討しましょう。
債権者と和解合意書を締結する
任意整理の交渉がまとまった段階で、債権者との間で和解合意書を締結します。
和解合意書には、債務の減額や変更後の返済スケジュールなどが規定されます。
締結後は、合意書の内容に従って、期日どおりに減額後の債務を返済していきましょう。
借金に苦しんでいる方は、早めに弁護士へ任意整理の相談を
借金の返済が苦しいと感じ始めた場合は、事態が深刻になる前に、弁護士への相談をお勧めいたします。
一度でも延滞が発生してしまうと、その後の資金繰りが一挙に苦しくなり、最終的に自己破産しか選択肢がなくなってしまいます。
自己破産に発展すると、財産の処分が避けられず、家族にも迷惑をかけてしまうことになりかねません。
弁護士に任意整理を依頼すれば、月々の返済負担を減らせる可能性があります。
また、依頼時点で受任通知が発送され、債権者からの取り立てが止まることも大きなメリットです。
弁護士への相談にハードルの高さを感じている方も、弁護士の無料法律相談を一度利用してみましょう。
また自己破産の相談については自己破産の無料相談窓口|弁護士費用や生活の影響も解説をご覧ください。
まとめ
任意整理を弁護士に相談すると、利息・遅延損害金のカットや返済スケジュールの変更により、月々の返済負担を軽減できます。
自己破産や個人再生などと比較して、債務者の状況に合わせて債務整理手続きを選択してください。
特に債務の延滞が発生した場合、対応せずに放置していると、債務負担はどんどん深刻化してしまいます。
傷口の浅いうちに、お早めに弁護士までご相談ください。
[ saimu_pdcta]