自己破産で借金をゼロにする方法|破産後の生活ガイド


「自己破産をしたら家や車は没収される?」「家族に迷惑がかかりそう」「仕事は今まで通り続けられるのか」など、自己破産を検討している方のなかには不安や疑問を抱いている方も多いでしょう。
自己破産をすれば借金が0円になるという大きなメリットがある反面、財産を処分されたり、一定期間クレジットカードを発行できなくなったりするなどのデメリットもあります。
自己破産に対してネガティブなイメージが強い方もいるかもしれませんが、正しい知識を身に付けることで考え方が変わることもあります。
自力での借金返済が困難な方にとって、自己破産は効果的な手段ですので、どのような手続きなのか正しく把握しましょう。
この記事では、自己破産のメリット・デメリット、手続きの流れ、自己破産後の生活について知っておくべきことなどを解説します。
自己破産を検討している方は参考にしてください。
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自己破産とは|自己破産で借金をゼロにできる?
ここでは、自己破産で借金がゼロになる理由や条件など、自己破産の基礎知識についてご紹介します。
【関連記事】自己破産するには何が必要?満たすべき条件や費用などを徹底解説
自己破産とは
自己破産とは、『破産手続開始決定(破産宣告)』と『免責許可』から成り立ち、この2つを受けることで借金をゼロにすることができる手続きのことです。
破産手続開始決定(破産宣告)とは
自己破産の申立てがされると、裁判官が申立人(債務者)から話を聞き、申立人の現時点の収入や財産等をもってその負債を支払うことができない状態(=支払不能状態)かどうかを判断します。
認められた場合、破産手続開始決定(破産宣告)を受け、破産手続が開始されます。
この時点で申立人は破産者となります。
破産手続開始決定(破産宣言)が認められる条件
かつては、破産手続が開始されることを「破産宣言」と呼んでいましたが、現在では「破産手続開始決定」とされています。
破産手続開始決定が認められるには、裁判所から「支払能力がない」とみなされる必要があります。
具体的には、以下の項目に当てはまっていないと破産手続開始決定が認められることは難しいでしょう。
- 支払い能力がない
- 借金返済に充てるための財産を有していない
- 借金返済に充てる金銭を調達することが難しい
- すでに履行期にある返済が滞っている
- 継続的かつ客観的に弁済能力がない
免責許可とは
破産宣告だけでは申立人の債務(借金)は消えません。
残った借金の返済義務をゼロにする制度のことを「免責」といいます。
免責許可とは、文字の通り免責を許可することをさし、免責の許可が下りれば借金がゼロになる制度です。
ただし、自己破産することを前提に借金をした場合など、返済する気が元々ない借金に関しては免責が下りないこともあり得ます。
免責許可が確定しても、滞納した税金など一部の滞納金に関しての支払義務まで免除されるわけではありません。
また免責の効果は、破産者の支払義務を免除するだけで、保証人の支払義務まで消えるものではないので、保証人がいる場合は注意が必要です。
免責許可がおりないことがあるケース
- 過去7年以内に免責を受けていた
- 浪費やギャンブルなどによって著しく財産を減少させた
- クレジットカードで商品を購入後、すぐに売却、現金化した
- 免責申立人が財産を隠したり、財産価値を減少させたりした
- 返済不能にも関わらず、新たに金銭を借り入れた
- 自己破産費用として金銭の借入れ
- 自己破産手続中に新たな借金をした
- 免責許可で確実に借金をゼロにしたい方へ
- 自己破産は免責許可が下りて初めて借金がゼロになります。
一方、ギャンブルや浪費が借金原因のため、免責許可が下りないかもしれないとお考えの方もいるかと思います。
このような不安がある人は、弁護士への無料相談で、事前に免責許可がおりるか判断してもらいましょう。
【関連記事】自己破産を弁護士に無料相談できる窓口4選|相談の流れや弁護士の選び方も解説
自己破産の特徴|メリットとデメリット
自己破産というと、財産や社会的地位など、何もかもを失うという暗いイメージがあるかもしれません。
もちろん、デメリットがゼロというわけではありませんが、元々の制度趣旨としては返済目処の立たない債務に苦しむ人を救済して経済的再生の機会を与えるためのものですから、大きなメリットもあります。
ここでは、自己破産のメリットとデメリットについて整理しましょう。
1.自己破産のメリット
①借金が免除される|返済義務が無くなる
破産手続開始決定の後免責許可がおりると、債務の支払義務が免除されます。
つまり、借金を含む負債が0円になります。
ただし、滞納していた税金などの支払義務は免除されません。
税金や保険料、罰金、婚姻費用、養育費など免責が確定しても免責されない「非免責債権」には注意が必要です。
何といっても、自己破産の大きなメリットは免責です。
免責が認められると、全ての借金を含む負債の返済義務が無くなります。
まさに借金をリセットするような制度で、借金を含む負債でどうしようもできない状態の方の救済措置となっています。
②誰でも手続きが可能
上記の破産宣言の条件に該当しており、客観的に支払いが困難であれば、誰でも破産手続が可能です。
借金が大きく膨らみすぎてどうしようもない状態に陥っていても、自殺や夜逃げなどを考えないでください。
自己破産によって救われる可能性が残されています。
③貸金業者からの取り立てが止まる
破産申立ての後は貸金業者からの取立てがストップします。
自己破産を考えるほど借金が膨らんでいるということは、毎日のように催促の電話や取立てに悩まされているのかもしれません。
それがストップするだけでも大きなメリットです。
④手元に残せる財産もある
自己破産手続をしたとしても、裁判所で定める基準を超えない財産(99万円以下の現金や20万円以下の預貯金など)は、手元に残すことができます。
また、洗濯機やテレビなど比較的安い家電などの財産も手元に残すことができ、一般の方がイメージするような、自己破産によって身ぐるみを剝がされるようなことはありません。
⑤家族に迷惑はかからない
自己破産をしたとしても、家族が保証人になっていない限り、家族に迷惑がかかることはありません。
家族がローンを組むときに悪影響はありませんし、子どもの進学に影響もなく、奨学金制度を利用することもできます。
2.自己破産のデメリット
①信用情報(ブラックリスト)に載る
債権者である金融機関が、信用情報機関に事故情報を登録します。
このため、破産後新しい借入れやローンの申込み、クレジットカードの新規発行が約5年~10年間できなくなります。
事故情報は、自己破産の手続が完了しても、そこから5年~7年間は抹消されません。
自己破産をすると、しばらくは借入れを含む信用行為ができなくなることに注意してください。
【関連記事】
債務整理後にクレジットカードが作れるのはいつ?どうしても利用したい場合の対処法
信用情報を回復させることは可能?時効が過ぎたら弁護士に相談!
②財産が処分される
自己名義の財産を所有している場合、これを処分して債権者に配当する必要があります。
ただし、生活必需品や99万円以下の現金については、当面の生活費として処分の対象外とすることができます。
実務上は、住宅・保険・貴金属・自動車などが差し押さえられるケースが多いです。
自動車については、初年度登録から7年を経過しており処分価格が20万円以内なら処分対象外となる可能性はあります。
ただし、ローンの残債があり債権者から所有権留保をつけられている場合は、自己破産手続とは別に原則自動車の引揚げに応じなければなりませんので注意が必要です。
【関連記事】差し押さえの意味とは|範囲や対象となる財産・回避する方法を紹介
③職業制限がある
免責決定を受けるまでの3か月~半年間程度は、生命保険募集人や警備員など、一部就けない職業があります。
免責決定後はこの制限はなくなります。
自己破産によって就けなくなる職業については後述いたします。
④借金が免除されない場合がある
破産法252条の事情などに該当する場合、借金が免除されないことがあります。
これは上記でご説明した「免責許可がおりないことがあるケース」に該当した場合です。
⑤官報等に記載される
住所氏名が国の発行する「官報」という機関誌に掲載されます。
もっとも、官報は市販されていないので、一般の人が見る可能性は低いです。
また、管財人が選定されている場合には本籍地の「破産者名簿」にも記載されますが、自己破産宣告後手続きが完了したら削除されます。
また、官報に記載されることにより、違法な貸金業者(いわゆる「闇金」など)から頻繁に連絡されることがあります。
要するに、自己破産によって貸金業登録をしている貸金業者からの借入れができなくなった人に対して貸付けをしてこようとするのですが、相手にしなければ何の害もありませんので、無視するようにして下さい。
⑥保証人への取り立て
自己破産免責決定を受けても、保証人の保証債務まで免責されるわけではありません。
むしろ主たる債務者が免責されてしまったのですから、保証人は債権者から保証債務についての追及を受けることになります。
場合によっては、保証人も債務整理の必要が出てきますので、事前に保証人に話しておくと良いかもしれません。
とはいえ、そのような法的義務があるわけではありません。
自己破産に関する不安や疑問
自己破産とはどういうものかがおおよそ分かってきたでしょうか。
自己破産というとネガティブなイメージがつきまとい、そこから実際には起こり得ない心配がされています。
しかし、「実際にはそのようなことはない」ということをこちらではご紹介していきましょう。
【関連記事】自己破産するとどうなる?自己破産のデメリットと自己破産後の影響
財産をすべて失うわけではない
上記でも述べましたが、自己破産は財産によっては売却しなくてはならないものもあります。
住宅や車、保険などの高額な財産が当てはまるのですが、それ以外の財産をすべて失うようなことはありません。
99万円以下の現金、20万円以下の預貯金、生活に必要になる家財道具は、自己破産をしてもそのまま残されることが原則です。
ですので、自己破産をしたからと言って、裸一貫の再スタートというようにはなりません。
公的制度の制限を受けることはない
自己破産をしたことにより、家族名義の財産も売却したり、家族に職業制限が課されたりと心配している方がいるかもしれません。
しかし、自己破産したとしても家族に直接的な迷惑をかけることはありません。
家族が借入等の保証人になっていた場合は、保証人に請求がされてしまいます。
しかし、これは家族だから請求されるというよりも、保証人という立場であることを理由に請求されるにすぎません。
また、申告者名義の家や車を売却することになれば、一緒に住んでいる家族にも何かしらの不便をかけてしまいます。
自己所有名義の家に住んでいて、同居のご家族がおられる方は、自己破産の手続を行う前に家族間で話し合っておくとよいでしょう。
家族に直接的な迷惑はかけない
自己破産をしたことにより、家族の財産も売却したり、職業制限が規制されたりと心配しているかもしれませんが、家族に直接的な迷惑をかけることはありません。
ただ、家族が保証人になっていた場合は、保証人に請求がされてしまいます。
また、申告者名義の家や車を売却することになれば、一緒に住んでいる家族にも何かしらの不便をかけてしまうことが考えられます。
特に一緒に住んでいるご家族がおられる方は、家族間で話し合ったうえで申請するようにしましょう。
引っ越し・旅行等に制限は出ない
後述する管財事件で自己破産をおこなうと、自己破産の手続期間中は住所の変更や長期間の旅行などが制限されます。
しかし、これは一定期間の話であり、さらに自己破産事件の一定割合は同時廃止事件(こちらも後述)になりますので、そこまで心配することはありません。
自己破産をした事実がパスポートに載ってしまうこともありませんし、住民票などに記載されることもありません。
自己破産後の収入や貯金を没収されることはない
自己破産をしたからと言って、自己破産後の収入や貯金を没収されるようなことはありません。
自己破産前の財産は換価・処分の対象になるものもありますが、自己破産後に積み上げた財産はあなたの財産です。
戸籍や住民票などに自己破産の事実を記載されることはない
自己破産をしたことが戸籍や住民票などに記載されることはありません。
したがって、自己破産をした事実を職場や知人などに戸籍や住民票から知られる心配もありません。
自己破産による選挙権剥奪はない
自己破産をしたからと言って、選挙権を剥奪されるようなことはありません。
選挙権は国民の権利です。
自己破産したからと言って、国民としての権利を失うこともありませんし、過度に後ろめたさを感じる必要もありません。
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自己破産の手続き方法と流れ
自己破産は、裁判所での手続が必要になります。
代理人を付けずにご自身でも行うことはできますが、金融や法律についての知識が必要ですし、ご自身での申立ての場合は不利になる要素があります。
また、申立てのための費用もかかります。
一般的に司法書士や弁護士などの専門家に依頼することが多いですが、依頼したらすぐに自己破産できるわけではなく、ある程度の期間や準備が必要です。
ここでは、自己破産の手続についてご説明いたします。
【関連記事】自己破産手続きを自分で進める際の注意点は?弁護士に依頼するメリット・費用の工面方法
(1)書類の提出
自己破産をするためには、まず手続に必要な書類を準備して、管轄する地方裁判所に提出します。
必要な書類は意外と多いのですが、専門家に依頼した場合には漏れがないかをチェックしてもらえます。
- 破産申立書
- 免責申立書
- 陳述書
- 債権者一覧表
- 保有している資産の目録
- 家計の状況が分かる書類…家計簿など
- 所得証明書…源泉徴収票や課税証明書など
- 戸籍謄本、住民票
- 賃貸借契約書や登記簿謄本
- 給与明細書
- クレジットカード
- 車を持っている場合は車検証の写しや査定書
(2)破産の審尋
書類を提出したら(自己破産申立てをしたら)、その後は裁判所で破産の審尋(審問)がおこなわれます。 このとき裁判官から免責不許可事由に該当しないか質問を受けることになります。
(3)破産の手続・免責決定
審尋を行って数日してから破産の手続が開始されます。
自己破産には、財産や免責不許可事由の有無等によって、「同時廃止事件」と「管財事件」の2つに分かれます。
※免責不許可事由があっても、必ずしも管財事件になるわけではありません。
(4)同時廃止
自己破産をする際に価値のある財産を持っていない場合は、同時廃止となります。
同時廃止の場合は比較的短期間で手続が終了します。
しかし、価値のある財産を持っている場合(例外もあります)や換価できる財産を持っている場合は管財事件となり、破産管財人が選任されます。
(5)管財事件
管財事件となると、裁判所に納める予納金が増え、裁判所によって選任された破産管財人が自己破産を申し立てた人の財産を管理・処分することになります。
この場合は手続が済むまで半年から1年というように比較的長い期間がかかります。
基本的に破産するとなると借入理由や財産の調査が必要なので、原則は管財事件とされています。
しかし、個人が破産する場合には、配当すべき財産を有していない場合が多くありますので、実際は多くの事件が同時廃止事件として処理されています。
(6)自己破産の免責が認められないケース
しかし、自己破産においてすべての免責が認められるとは限りません。
そのことは破産法252条に明記されています。
免責不許可になると、自己破産は成立したものの借金はそのままという最悪の事態になってしまいます。
例えば「浪費やギャンブルが原因で大きな借金をしたこと」は、破産法で免責不許可事由とされています(破産法252条1項4号)。
また「破産申し立てにあたって財産があるのに隠したこと」も免責不許可事由とされています(同法252条1項1号)。
その他の免責不許可事由も破産法252条に規定されています。
分かりやすく一例を説明すると、下記のようになります。
- 免責許可の決定が確定した日から7年以内に、免責許可の申立をした場合
- クレジットカードで商品を購入後、すぐに業者などに売却したり質入れしたりして現金化した場合
- 既に返済不能であるにもかかわらず、そうではないようにふるまって債権者から金銭を借り入れたりしていた場合
- 自己破産をするための費用として金銭の借入れをしたり、自己破産や免責の申し立て中に新たな借金をしたりした場合
- 裁判所に対して、財産状態の嘘の陳述をした場合
もっとも免責不許可事由がある場合でも、その事実を正直に申告すれば、裁判官が裁量で免責を認めてくれる場合がほとんどです(「裁量免責」といいます)。
この裁量免責という制度があるおかげで、免責不許可事由があっても、実際に免責が不許可となるケースはごく少数にとどまります。
自己破産の法的効果
自己破産を申し立てると、破産手続開始決定後から免責決定がおりるまでの間、「破産者」となり、以下のような制限を受けます。
①一定の職業に就けない
自己破産の手続が済むまでの間は一定の職業に就けなくなるなど、生活をする上で制限があります。 例えば、弁護士・司法書士・税理士などの資格や会社の役員の資格を失うことになります。
- 弁護士、司法書士、行政書士、公認会計士、税理士などの士業
- 質屋、古物商
- 生命保険外交員
- 宅地建物取引主任者
- 警備員
②財産管理業務の禁止
また、保険や証券の外交員など他人の財産を預かり、管理する業務を一定の資格の下に行っている場合、自己破産をすることで業務を禁止される場合があります。
ただし、この資格制限も免責決定と同時に復権しますので、自己破産をしたからといって永久に資格制限がされるというわけではありません。
③名義変更や新たな借り入れの禁止
生活の上での制限としては、転居・長期の旅行の制限、自己破産を予定している人名義の財産を他の家族名義に変更することや新たな借金・現在の借金の返済などが禁止されるほか、本籍地の市区町村が発行する身分証明書に自己破産をしたことが記載されることになります。
ただし、こちらも免責決定がおりれば抹消されますので、その後の支障はありません。
自己破産後の生活について知っておくべきこと
自己破産後の生活について、不安を抱える方も多くいます。
就職のことや生活費のこと、医療費のこと、子どものことなど、実際のところはどうなるのでしょうか。
ここでは、自己破産申立てから免責を受けるまでの間と、免責後の生活についてご説明します。
1.自己破産手続開始決定後から免責許可決定を得られるまでの生活
自己破産の申立てをし、開始決定後は、所有資産の処分や転居・旅行の制限など生活上の制限、債権債務の調査のため本人宛の郵便物が管財人に配達されるなどの制限があります。
転居や移動の制限は管財事件の場合の制限です。 破産者の逃走や財産隠匿行為を防止するためなので、一時的な外出は問題なく、相当長期にわたり居住場所を離れる際に裁判所の許可が必要になります。
当然、合理的な理由があれば問題なく許可が出されます。
また、手続が完了するまで就ける職業に制限があります。
手続が完了した後は復権するので永久の制限ではありません。
官報・公的名簿への記載もこの間になされます。
これら制限の多くは、処分する財産がある場合(管財事件の場合)に課されています。
免責許可決定を得られるまでの間に、自己破産を予定している人名義の財産を他の家族名義に変更したり、新たな借金をしたり、現在ある借金の返済をおこなうことは厳禁です。
裁判所から免責不許可と判断される可能性があります。
2.自己破産後の仕事や就職
(1)在職中の場合
自己破産をしても会社を辞める必要はありません。公務員の場合も同様です。
したがって、免責決定までの手続中の職業制限にかかる場合でなければ、そのまま働くことができます。
(2)離職中の場合
負債をゼロにするというのは手段にしかすぎません。
自己破産の目的は、生活の立て直しを行うことです。
仕事をするなどして生活の原資がなければ、立て直しは図れません。
したがって、何らかの事情があって離職中の場合は、就職活動を行う必要があります。
生活費として必要な現金は処分対象外ですが、生活の基盤となる収入を得るには就職するのが良いでしょう。
自己破産したからといって、再就職に不利になるようなことはほとんどありません。
官報には掲載されますが、就職予定の企業の側が官報を読んでいて、自己破産したことを企業側が知っていることはまずないといえます。
免責までの間は職業制限がありますが、免責後は復権といって職業制限がなくなります。
心身の不調によって就職できない期間が続く場合は、失業手当や傷病手当、生活保護の受給も検討する必要があります。
3.自己破産後の住居について
(1)持ち家の場合
自宅を所有している場合、処分が必要となります。
といっても、直ちに引越しをしなければならないわけではなく、任意に売却を行うまで、若しくは破産管財人が住宅を処分するまでの数か月間は従来通り住み続けることができます。
専門家に手続きを依頼すると、任意売却をするか競売処分するかの選択を促されますが、可能であれば任意売却がお勧めです。
どちらを選択しても自宅を手放すことに変わりありませんが、任意売却の方が転居費用の負担を交渉しやすくなります。
競売でも落札者が転居費用を出してくれる場合もありますが、競売の場合は強制執行という手段があるため、転居費用を出してもらえる可能性は低いです。
落札者によっては叩き出されるような状況もあり得るので、競売に服するぐらいであれば任意売却を選択してなるべく転居費用を多く負担してもらえるよう交渉するのが得策です。
ただし、競売に付されるまでは時間がかかりますし、その間に住宅ローンなどの住宅費の支払いを止め、管財人の処分に委ねるという方法もあります。
浮いた住宅費を貯めておいて転居費用を賄うという手段です。
住宅ローンの債権者側が引越代を認めない場合でも、購入者側が転居費用を負担してくれる場合も多いので、事前にこのような条件で自宅の売却を進めてくれる不動産会社を選ぶと良いでしょう。
自宅を処分すると引越しが必要になりますが、自己破産をすると保証会社の利用が難しくなります。
したがって、保証人がいない場合は公営住宅などの利用がお勧めです。
(2)賃貸の場合
賃貸住宅の場合、自己破産に伴う転居の必要はありません。
破産が賃貸借契約の解除事由になるかどうかは、民法621条や判例を検討すると、土地の賃貸借の場合は借地権に相当の財産的価値があり破産したといえども、解約申し入れについてはそれ以外の正当な理由が必要であるとされており、建物の賃貸借の場合にはそこまでの必要がないとしています。
つまり、土地の賃貸借では解除に破産以外の正当な理由が必要となります。
逆にアパート等を借りている場合には解除されてもやむを得ないことになりますが、現実には家賃を滞納でもしていない限り、賃貸借契約を解除されることはまずないと考えて良いでしょう。
4.どの範囲まで差押えが行われるか
自己破産は、破産宣告して所有する財産を処分することと引換えに免責を受ける制度なので、財産の処分が前提となります。
しかし実際は、自己破産の申立てによって債権者からは取立行為ができなくなるので、差押えを受けることはほとんどありません。
差押えは自己破産者の所有資産に対して行われるので、家族の資産などは没収されません。
ただし、手続中に自己破産者の資産の名義変更は厳禁なので注意してください。
(1)差押えを受けないもの
- 99万円以下の現金と20万円以内の預金 当面の生活費用として、99万円以下の現金は処分の対象外となります。また、20万円以下の預金も同様となります。
- 生活必需品 家具、衣類、調理器具、自転車などは生活必需品として処分の対象外になります。家電などは差押えの対象になりますが、最新の大型テレビなどの高価なものでなければ、実際に処分されることはないでしょう。
- 差押禁止債権 生活保護、年金、小規模企業共済受給権、中小企業退職金共済受給権は差押禁止債権となります。
(2)差押えを受ける可能性があるもの
20万円以上の残高のある口座や資産価値のあるものは差押えの対象となりますが、その他にも下記のようなものが差押えの対象となります。
①家電
最新の大型テレビなど高価な家電は、差押えの対象になります。
その他の家電ももちろん対象になりますが、数千円程度にしかならないものは手続き費用で赤字になってしまうので、処分されることはないでしょう。
②保険(解約返戻金など)
還付金や保険解約返戻金がある場合は差押えの対象になります。
掛け捨ての保険は対象になりません。
満期時に返金されるタイプの保険は財産とみなされることが多く、差押えの対象となります。
破産した本人が子どもや家族にかけていた保険については、差押財産とはならず、対象外となることが多いです。
ただし、学資保険は基本的に差押えの対象になります。生命保険と同じで20万円を超えるものが対象になりますが、自由財産の拡張をすると維持できる場合もあります。
③自動車
自動車に関しては裁判所によって扱いが異なりますが、ローン残債がなく、古い車両(初年度登録から7年以上経過)で処分価格が20万円以内なら処分対象外となる可能性はあります。
④給料・退職金
給料は、手取りの額によって差押えの範囲が異なります。
法律で、手取りが44万円以下の場合はその4分の1を超えて差し押さえられることはありませんし、44万円を超える場合は33万円を超える差押えはできません。
給料全額が差し押さえられることはないので、安心して新生活が送れるでしょう。
退職金に関しては、将来もらえるであろう見込額の4分の1~8分の1程度の金額を債権者の配当に回すように指示されます。したがって、一定額は財産とみなされることになります。
【関連記事】給料差押えを受けるとどうなる?滞納から給料差押えまでの流れと解決方法
⑤貴金属やブランド品、美術品
換価可能なこれらの品は差押えの対象となります。
5.ブラックリストの効果
デメリットの中でも触れましたが、破産申立てを行うといわゆるブラックリストに登録されます。
新規の借入れやクレジットカードの発行、各種ローンを組むことができなくなるわけですが、身近なところだと携帯電話の割賦購入が難しくなることになります。
また、自己破産の際に借金をしていた会社からは再び借金をするのが難しくなる場合があります。
もっとも、デビットカードがクレジットカードの代替として活用できます。
デビットカードは銀行のキャッシュカードを使って銀行口座にあるお金をリアルタイム決済する仕組みなので、銀行口座残高の範囲内であれば普通のクレジットカードと同じように決済ができます。
カード会社にお金を借りるのではなく自分の銀行口座のお金を使うだけなので、基本的に無審査で発行できます。
銀行口座の開設や口座振替など、借金以外の金融取引にはブラックリストの影響はありませんので、このような手段も便利です。
6.自己破産後も残る債務
自己破産をして免責許可がおりても、すべての債務が帳消しになるわけではありません。
非免責債権として、以下のようなものがあります。
①税金
国税、地方税、年金、健康保険料など公共の義務は免責されません。
②罰金、過料、追徴金、刑事訴訟費用
これらの費用は制裁的な意味合いを持っているため、免責されません。
③不法行為に基づく損害賠償請求権
横領事件や傷害事件を起こすなど、不法行為を行った結果責めを負うことになった債務は免責されません。
④婚姻費用、離婚時の養育費
婚姻に関わる分担金や扶養の義務、離婚時の養育費用などは保護性が高いため、免責を認められません。
⑤従業員の給料など労働債権の請求権
雇い主が破産しても、未払給与、退職金、社内預金、身元保証預り金などは、労働者の権利保護に関わる費用なので免責を認められません。
これらの債務については免責が確定しても帳消しにはなりません。したがって、自己破産を検討している場合は、こういった非免責債権を優先して支払っておくと、その後の生活が楽になります。
まとめ
自己破産に関しては、根も葉もない噂や、意外と知られていない知識が沢山あります。
自己破産手続は非常に専門性が高い分野のため、専門家に相談の上、手続を進めていくことをおすすめします。
自己破産手続は、いくつかある債務整理手続の一手段という位置づけです。
他にも、個人再生や任意整理という手続があります。
個々人の方の置かれている立場によってどの手続を選択すべきかは異なります。 多額の負債という重い負担に苦しんでいらっしゃる方は、ぜひお近くの法律専門家にご相談されてみてください。
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