退職後に給料が振り込まれない場合はどうする?請求方法や請求のポイントを解説
退職後でも、在職中に働いた分については給料を受け取る権利があります。
しかし、退職後の給料が振り込まれないというケースは少なくありません。
今回は、退職後の給料が振り込まれない方に向けて、次のような問題を解説します。
- ●退職後の給料を請求する権利はあるのか
- ●給料が振り込まれないときの請求方法
- ●給料が振り込まれないときの相談先
- ●弁護士に相談するメリット・注意点
退職後の給料が振り込まれずに、どのように行動すべきかお悩みの方はぜひ参考にしてみてください。
退職後に給料が振り込まれないのは違法
たとえ退職後であっても、会社と労働者の労働契約に従い、会社は労働者に給料を支払う義務があります。
退職者に給料を支払わない会社は、労働基準法第24条違反となります。
そして同法第120条には同法第24条に違反したものは、30万円以下の罰金に処せられることも規定されています。
退職後でも給料を請求できるのか?
先ほど述べたように、退職者であっても給料を受け取る権利はあるため、退職後に会社に対して未払いの給料を請求することができます。
次の項目から、具体的な請求方法について解説していくので確認しておきましょう。
退職後の給料が振り込まれない場合の請求方法
会社から退職後に給料が支払われない場合、慌てて請求するのではなく、まずは以下の手順を確認しながら進めるようにしてください。
給料の支払日を確認する
まずは給料の支払日を再度確認しましょう。
それによって、本当に会社側が意図的に振り込んでいないのか、単に支払日前のため、まだ支払われていないのかが分かります。
また、振込日であっても金融機関の振り込み時間が遅い場合、ただ単に振り込みが反映されていないだけという場合もあります。
その場合は、何時以降に反映されるのかなどを確認しておくとよいでしょう。
上記以外にも、ほかの理由で会社が給料を支払っていない、もしくは支払えないケースがあります。
以下の例を確認してみましょう。
給料が支払われないケース
給料が支払われないケースには、以下のケースも考えられます。
- ●振込日が祝祭日と被っている
- ●給与の支払いにミスがある
- ●会社が経営不振に陥っている
振り込み日が祝祭日と被っている場合、支払日は前後します。
ほとんどの会社では前倒しで支払うことが多いですが、中には祝祭日明けに支払う会社もあります。
振り込み日が祝祭日と被っているのであれば慌てずに、翌営業日まで待ってみるとよいでしょう。
上記の理由に該当しない場合、会社側で支払いの手配漏れがある可能性があります。
その場合は、問い合わせて確認し、いつまでに支払ってもらいたいのかを伝えて交渉してください。
最後に、給料の未払いは会社の倒産が原因という場合、未払賃金立替払制度を利用しましょう。
この制度の利用には以下の要件を満たしている必要があります。
- 会社が1年以上の事業活動をしていたこと
- 会社が法律上の倒産、または中小企業の場合、労働基準監督署へ認定申請し、事実上倒産していること
- 法律上の倒産または事実上の倒産の日の6ヵ月前から、2年以内に労働者が退職していること
制度を利用すれば、退職者の年齢によって上限が設定されていますが、未払い給料全体の80%を受け取ることができます。
給料の金額を計算する
次に未払い給料はいくらなのか、計算する必要があります。
基本的には、締め日を退職日とする場合「支払額=総支給額-控除額」という計算方法で求めることになります。
締め日より前に退職した場合は「基本給を日割り計算」をすることになります。
また、計算のためには手元に計算の根拠となる証拠が必要となります。
未払い給料の請求には欠かせないので、以下を確認しておきましょう。
- 支払い状況を証明するもの
- ●給料明細書
- ●源泉徴収票
- ●銀行口座の通帳など
- 給料に関する契約内容を証明するもの
- ●雇用契約書
- ●労働条件通知書
- ●給与規定など
- 勤務状況を証明するもの
- ●シフト表
- ●タイムカード
- ●業務日誌
- ●パソコンのログイン・ログオフに関する履歴
- ●業務上のやり取りを示すメール
- ●メモで勤務時間を記録したものなど
上記のものは、できるだけ多く保管しておくようにしましょう。
会社に給料を請求する
支払われていない給料が明確になったら、最終的に会社への請求をおこないます。
請求には以下のような方法があります。
- ●自分で会社や担当部署に問い合わせる
- ●労働基準監督署に相談する
- ●労働審判をおこなう、もしくは裁判を起こす
自分で対応できる方法としては、会社に電話やメールで問い合わせをする方法があります。
ことを大きくしたくない場合や、あまり時間やお金をかけたくない人に向いている方法です。
もうひとつの請求方法としては、会社に内容証明郵便を送る方法があります。
内容証明郵便は、給料を請求した事実を証明するために役立ちます。
会社側が「請求など来ていない」と知らないふりをすることを避けるため、証拠として残しておくと安心です。
内容証明郵便は、あとで労働審判や裁判をおこなう場合にも役立ちます。
以下で、自分で請求する以外の方法について詳しく解説していきます。
給料が支払われない際の相談先
自分で請求する以外の方法を利用したい場合、以下の相談先に相談するようにしましょう。
労働基準監督署
労働基準監督署は、給料を支払わない会社に対して行政指導をおこなうことができます。
ただし、指導には強制力がない点に注意しましょう。
相談したからといって必ずしも給料を受けとれるとは限りませんが、相談は無料でできるので、ひとまず労働基準監督署に指導してもらって給料を支払うように働きかけるのも一つの方法です。
労働組合
会社に労働組合がある場合は、未払い給料があることに関して相談してみましょう。
組合によっては会社側に未払いの給料を請求してくれる可能性もあります。
ただし、そもそも会社に組合がない場合もあります。
労働組合は同じ会社の労働者同士で組織された団体なので、気軽に相談したいという場合は利用を検討するとよいでしょう。
弁護士
確実に給料を回収したいという場合、弁護士に相談するのがおすすめです。
相談する場合は、労働問題に強い弁護士を選ぶようにしましょう。
弁護士に相談すると、会社との交渉や訴訟などあらゆる面において全面的にサポートをしてくれます。
法律事務所の中には初回相談を無料にしているところもあります。
弁護士に相談する際はできるだけ証拠を集めてから相談してみるとよいでしょう。
法的手段を活用して給料を請求する際の流れ
ここからは、弁護士に法的手段をもって給料の回収してもらう際の流れを解説します。
給与の未払い額の確認や証拠の準備
弁護士に給料未払いを相談すれば、証拠を集めるためのアドバイスをもらえます。
業種や業態によって証拠となるものは異なるので、証拠がないと思っていても弁護士に相談することで証拠として使えるものが出てくることもあります。
また未払い額も弁護士が正確に計算してくれるので、会社も請求に応じやすくなります。
いずれにしても、まずは弁護士の判断を仰ぎましょう。
内容証明を送付する
先ほど自分で請求する方法でも解説しましたが、弁護士に内容証明郵便を送ってもらい、請求した証拠を残しておきましょう。
労働審判を申し立てる
法的に未払いの給料を回収する方法として、労働審判というものがあります。
労働審判は、通常の裁判とは異なり、裁判官に加え、労働審判員2人が審理に加わって、原則として話し合いにより解決を目指します。
話し合いによる解決ができなくても、裁判所が審判を行い、それが確定した場合は、未払いの給料が会社から支払われることになります。
ただし、審判に異議申し立てがあった場合は、通常裁判に移行することになります。
民事訴訟を提起する
民事訴訟を提起する場合、以下のように金額で管轄の裁判所がわかれます。
- ●訴額が140万円以下の場合は簡易裁判所
- ●訴額が140万円を超える場合は地方裁判所
また、訴額が60万円以下の場合は少額訴訟という、1回の審理で判決が出る裁判を選択することもできます。
短期間で解決したい場合に有効な手段ですが、異議申し立てがあった場合は通常裁判に移行することや原告が敗訴しても控訴ができないことなどのデメリットがあります。
いずれの方法で解決するべきなのか、しっかりと弁護士と話し合うようにしましょう。
退職後の給料を請求する際のポイント・注意点
未払いの給料を自分で請求する場合と、弁護士に依頼する場合の注意点を以下にまとめました。
それぞれ確認しておきましょう。
給料の計算方法・控除額に注意
自分で計算して会社に請求する場合、労働契約の内容をよく確認してミスのないように計算する必要があります。
大まかな計算はネット上にある計算アプリなどを利用して算出できるかもしれませんが、自信がないときは弁護士などの専門家に相談して正確な額を算出するようにしてください。
給料の請求は3年で時効になる
給料を支払わないのは会社に責任がありますが、実は給料の請求権には時効があります。
本来支給されるはずの日から3年を経過すると請求権が消滅します。
なお、2020年3月31日までに発生している未払い給料については、旧民法が適用されるので2年で時効になります。
そのため、給料の請求はいつまでもできるわけではない点に注意して、早めに解決を図るようにしましょう。
弁護士に依頼する際は時間と費用に注意する
弁護士に依頼すれば未払いの給料の回収率も高められるため、得られるメリットは大きいといえます。
ただし、依頼してもすぐに回収できるわけではないうえに、依頼する際の費用もかかります。
また、費用倒れが起きて損をしてしまう場合もあるので、弁護士に依頼する際は正確な費用の説明をお願いしましょう。
退職後の給料が振り込まれない場合のよくある質問
退職後に給料が支払われない労働者の方が疑問に持つ点を以下にまとめました。
それぞれ解説しますので確認しておきましょう。
退職が自己都合でも給料を請求できる?
はい。自己都合退職であっても、未払いの給料を請求することが可能です。
退職者から請求があった場合、7日以内に賃金を支払う旨が労働基準法にも記されています。
会社が倒産してしまった場合はどうなる?
給料が支払われないケースでも紹介した通り、会社が倒産している場合は「未払賃金立替払制度」を利用しましょう。
法律上の倒産の場合
法律上の倒産の場合、裁判所などから証明書を交付してもらい、請求書に必要事項を記入して労働者健康安全機構に提出してください。
事実上の倒産の場合
事実上の倒産の場合、まずは労働基準監督署に倒産の事実を確認してもらって、認定申請書を提出する必要があります。
認定申請書は、直接労働基準監督署に行って受け取るか、以下のホームページからもダウンロード可能です。
認定申請書の提出先は、会社所在地を管轄する労働基準監督署なので間違えないようにしましょう。
認定通知書が届いたら、労働基準監督署に「確認申請書」を提出します。
確認申請書を提出したら、確認通知書が交付されるので必要事項を記入し「労働者健康安全機構」に提出しましょう。
さいごに|退職後でも会社は給料を支払う義務がある
会社は、退職後であっても給料を支払う義務があります。
そのため、支払いがないと確信した場合は、会社に請求するようにしましょう。
ただし、請求をするためには、未払い額を正確に計算したり、証拠を集めたりする必要があります。
自分だけでの対応は難しい場合もあるので、確実に賃金を回収したい場合は弁護士に相談することをおすすめします。