弁護士なしで示談はできる?リスクや気を付けるべきポイントなども解説
弁護士なしで示談をする場合、「本当に自力で成功させられる?」「コストをかけても弁護士に依頼したほうがよいの?」など、さまざまな疑問を抱くことがあります。
そこで本記事では、弁護士なしで示談する場合のメリット・デメリットのほか、手続きの流れなどを解説します。
なお、自分だけでの示談交渉は不可能ではないものの、成功率が懸念点に挙げられます。
また、気になる弁護士費用の相場についてもまとめているので、ぜひ参考にしてください。
弁護士なしで示談するデメリット4つ
弁護士なしでも自分で示談の対応は可能です。
しかし、自分だけでの示談には次に挙げる4つのデメリットがあるので、事前に把握しておきましょう。
連絡・面談を拒否され、示談できない可能性がある
被害者のなかには加害者に対して恐怖や怒りを感じており、連絡や面談などで関わりたくないと考えるケースが少なくありません。
そのため、弁護士なしで示談しようと思った場合、連絡をとったり面談をしたりすることが難しいです。
弁護士を通さず自分で直接連絡すると、被害者から拒絶され、示談交渉の開始すらできず失敗する可能性があるため注意が必要です。
また被害者と何らかのやりとりができたとしても、謝罪をしてスムーズに示談金を受け取ってもらえる可能性は、弁護士に依頼したときと比べて低くなると考えられます。
また、被害者の連絡先がわからないケースでは、警察に聞いても被害者の連絡先は、二次被害防止などの観点から、教えてくれません。
一方、弁護士経由で被害者に打診すると、「弁護士とならやりとりをしてもよいかも」などの思いから、連絡先を教えてもらえる可能性が高まります。
適切な金額・支払期日がわからないまま示談をおこなってしまう
相手に提示された金額や支払期日を受け入れて示談金を支払う場合、不可能な条件を提示される可能性もあります。
被害者は加害者に対して怒りの感情がある、そして加害者は被害者に対して強く言えない立場であることをふまえると、適切な示談金交渉は難しいでしょう。
言われるがままに示談の条件を受け入れると、高額な示談金を支払ったり、現実的ではない期限で支払いに応じたりしなければならないなどの状況になりかねません。
また、提示された示談金の額が適切かどうかを判断する力も大切です。
正確な示談金は事件の内容や被害状況などを考慮して算出しますが、法的な知識がない当事者同士では、いくらくらいが妥当な示談金なのかを見極めることが困難になるケースが多いため、弁護士に依頼したほうが無難でしょう。
示談書を正しく作成できない
示談を成立させるには、適切な示談書が必要です。
次に挙げる項目を示談書に記載しないと、後にトラブルが発生する可能性が高まるため、ここで確認しておきましょう。
【示談書に記載すべき主な項目】
- 事件内容
- 謝罪の旨
- 示談金の金額・支払期日
- 宥恕条項
- 今後お互いが接触しない旨
- 示談書以外の支払義務がない旨
- 事件や示談について守秘義務がある旨
- 当事者の住所・氏名など
被害者が加害者を許すことを意味する「宥恕条項」の旨を記載していることに加え、被害届や告訴状を出さない旨も記載しておくと、示談成立後のトラブル発生リスクをおさえられます。
なお、法的な知識がないまま示談書を作成すると、有効な書類とみなされない可能性が高まります。
事件の内容や被害状況などで、示談書に記載すべき事項は変わるため、法的な知識がなしで正確な示談書を作成することは困難といえるでしょう。
適切な示談書を作成して確実に示談を成立させたい場合は、弁護士に相談することをおすすめします。
示談後に被害届、告訴状が提出される可能性がある
示談交渉は正しい手続きをしなければ成立とみなされず、示談後に被害届や告訴状を出されるリスクが高まるなどのデメリットが懸念されます。
示談金を支払ったり謝罪したりするだけでは十分な示談交渉といえず、法的に、未解決と判断される可能性があるのです。
例えば、被害者が友人や知人であったとしても、口約束だけでは証拠を残せないため、書面に残すことは必須といえます。
示談を弁護士に相談すべき理由3選
示談を弁護士に相談すると自力で対応する際のデメリットを回避できるだけでなく、次に挙げる3つのメリットがあります。
相手が示談交渉に応じてくれる可能性が高まる
直接加害者とは話したくないという被害者でも、弁護士経由なら交渉に応じてくれるケースがあります。
また、被害者の連絡先がわからなくても、弁護士なら捜査機関を通じて被害者の許可を得て、教えてもらえる可能性を高められます。
これらの理由から、被害者と連絡・面会できない場合は、できる限り早く弁護士へ依頼することをおすすめします。
示談が早期に成立する可能性がある
示談を得意とする弁護士であれば、どのような条件であれば被害者が示談を受け入れやすくなるかを熟知しているため、早期成立を期待できます。
示談交渉の経験が豊富な弁護士なら、適切な示談金額や支払期日を提示したうえで、被害者が納得できる説明ができるため、交渉が難航する可能性も低いでしょう。
示談が早期に成立すると、事件になって逮捕・起訴されるリスクが低くなります。
反対に、示談成立までの期間が長くなるほど、被害者が被害届や告訴状を出す可能性が高まり、民事から刑事事件に発展するかもしれません。
また、弁護士に依頼すると、仮に警察が、正式に事件として取り扱い、捜査を始める「事件化」がされたとしても示談交渉が可能です。
逮捕・勾留の間に弁護してもらうことで、起訴を免れたり、執行猶予を得られたりする可能性もあります。
弁護士の早期解決力は、事件前後にかかわらず、加害者の状況を改善するために有効といえるでしょう。
適正な内容で示談できる
弁護士は事件の背景や被害状況などを考慮して、適切な示談方法を提案できます。
例えば弁護士なら、示談金が高すぎる、支払期日が短すぎるなど、加害者に不利な条件を回避し、適切な内容で示談をまとめられるよう、被害者と交渉することができます。
また、弁護士なら必要事項を漏れなく記載した示談書を作成できるため、交渉後のトラブルやリスクも防げます。
当事者同士では示談書の不備によって示談後に訴訟となる可能性なども考えられますが、弁護士に依頼して適切に示談書を作ってもらえばトラブルやリスクを防げます。
弁護士なしで示談する方法は?
弁護士なしで示談する場合の方法は、大きくわけて4つの流れがあります。
スムーズに示談を進めるためにも、弁護士なしで対応する場合は事前に確認しておきましょう。
示談案を送る
いきなり示談を提案すると、「とりあえずお金を払って解決したがっているだけ」という印象を与えかねないため、被害者と連絡がとれた場合、まずは謝罪の意を真摯に伝えましょう。
そして被害者が示談に応じてくれる場合は、示談書を作成したいと伝えます。
被害者から示談書の作成に関する了承を得られたら、示談書の作成を進めましょう。
示談案を作成する際は、事件の内容や被害状況などをふまえて、適切な内容にすることが大切です。
ただし、被害状況は自分自身で正確に把握できない可能性があるため、注意しましょう。
器物破損や窃盗の場合は示談金を把握しやすいかもしれませんが、精神的・身体的な被害は、弁護士に適正な示談金を提示してもらう方が賢明です。
示談案の内容を交渉する
被害者に示談案を送ったら、次は相手に受け入れてもらうよう交渉します。
示談交渉をスムーズに進めるためには、被害者に対して申し訳ないという気持ちを伝え、相手が受け入れやすい条件を提示することが大切です。
また、交渉を聞き入れてもらえるよう、相手の感情に寄り添った態度で接することも心がけましょう。
合意したら示談書を作成して送る
被害者が示談の内容に合意したら、示談書を作成して送ります。示談書に必要な記載事項の例は、以下をご覧ください。
【示談書に記載すべき主な項目】
- 事件内容
- 謝罪の旨
- 示談金の金額・支払期日
- 宥恕条項
- 今後お互いが接触しない旨
- 示談書以外の支払い義務がない旨
- 事件や示談について守秘義務がある旨
- 当事者の住所・氏名など
ただし、上記の事項があれば必ずしも今後の事件化や訴訟を防げるわけではありません。
自分なりの言葉で書くだけでは双方の解釈に乖離が生まれ、予想外のトラブルが生じる可能性があります。
解釈の乖離を生まない正確な示談書を作成するためには、弁護士への依頼を検討しましょう。
示談書が返送されたら示談金を振り込む
被害者が示談書に合意し、返送したあとは、速やかに示談金を振り込みましょう。
その際、金額・支払期日・方法は示談書に従い、誤りがないよう注意してください。示談金を問題なく振り込めば、示談成立となります。
弁護士なしで示談するときに気を付けるべきポイント2つ
示談の成功率は、交渉の進め方によって、異なります。
そのため、弁護士なしで示談する際は次に挙げる2点に注意してください。
適切な謝罪文・示談書を作成する
示談を無事に成立させるためには、適切な謝罪文と示談書を作成することが大切です。
そもそも、誠実な謝罪がなければ示談内容を見てもらえる確率が下がると考えられるため、どのような内容で示談するかを提案する前に加害者として謝罪する気持ちをしっかり伝えられるよう、誠意をもって謝罪文を書きましょう。
示談金の相場を把握する
被害者から不利な立場である加害者に対し相場以上に高い示談金を提示されると、断りづらい状況が考えられます。
しかし、示談金には適切と考えられる相場があるので、被害者から提示された金額を言われるがまま支払う必要はありません。
例えば、窃盗の場合は盗んだものの金額に20万円~50万円程度を加えた額が、傷害の場合は怪我の程度によりますが、20万円~50万円程度が示談金の相場とされています。
ただし、これらはあくまで相場となるため、事件の内容や状況によって示談金が変わる可能性は十分にあります。
適切な金額を把握しづらい場合は、弁護士に相談することをおすすめします。
弁護士なしで示談するメリット2つ
弁護士なしで示談する場合、次に挙げる2つのメリットがあります。
ぜひ、デメリットと照らし合わせたうえで、弁護士に依頼するかどうかを検討してください。
費用を抑えられる
弁護士への依頼は数十万円~数百万円程度の費用が必要ですが、弁護士なしで示談する場合は弁護士費用を払わなくて済むというメリットがあります。
特に、示談交渉がスムーズに進まず逮捕や起訴に発展する場合、弁護士費用が高くなりやすいです。
そのため、弁護士に依頼する際は事前に見積もりを出してもらい、依頼するかどうかを決めましょう。
相手を不必要に構えさせない
被害者と面識がない場合、弁護士に依頼したほうが示談を進めやすいと考えられます。
しかし、被害者が友人や家族、知人の場合、弁護士が関与すると、不必要に構えさせてしまう可能性があります。
被害者との関係性によっては当事者同士で直接話し合ったほうがよいケースがあるため、弁護士に依頼するかどうかは、弁護士に相談する段階で判断しましょう。
なお、相談だけであれば無料もしくは数千円程度の出費で済む場合があるため、適切に示談交渉を進めるためにも、まずは弁護士の意見を聞いてみることをおすすめします。
示談を弁護士に相談するときの費用
弁護士に支払う費用は、大きくわけて次の4種類が挙げられます。
相談料|0円~1万円
相談料の相場は無料~1万円です。相談料とは弁護士に自分の状況や希望を伝えたり、どのようなサポートを受けられるかを質問したりする際の料金であり、この時点で正式な依頼とは確定していません。
「1時間まで無料、以降30分5,000円」というように、初回相談に制限時間を設定してる弁護士や、「借金に関する相談は何度でも無料」などの条件を設定している弁護士もいます。
コストをかけず自身が抱える問題に適した弁護士を見つけるためには、相談無料の事務所をうまく活用し、比較してから選びましょう。
着手金|0円~50万円
着手金の相場は無料~50万円です。
着手金とは正式な依頼が確定したタイミングで弁護士に支払う費用です。
着手金を無料としている弁護士事務所もあります。
着手金は事件の内容や状況によって高くなることがあるため、注意が必要です。
逮捕されていない段階であれば、比較的着手金は安くなる傾向がありますが、逮捕後や起訴後など不利な状況になるほど高くなるため、着手金を抑えたい場合は、できる限り早く弁護士へ相談することをおすすめします。
報酬金|30万円∼50万円
成功報酬金とも呼ばれる報酬金の相場は30万円~50万円程度で、弁護活動が成功に終わった際に支払う費用です。
つまり、弁護活動が成功しなかった場合は、報酬金を支払う必要がありません。
ただし、弁護士によって成功の定義が異なり、依頼者としては満足できない「一部成功」のような結果でも成功報酬が発生するケースがある点に注意が必要です。
また、事件内容や被害者数など状況によっては、相場より高額になる可能性もあるため、事前に確認しておきましょう。
念のため、弁護士に相談する段階で、報酬金が発生するタイミングや見積書などの確認をしておくことをおすすめします。
接見費用・実費・日当
そのほかの弁護士費用として、接見費用や実費・日当が挙げられます。
接見費用とは逮捕・勾留中に弁護士が加害者に会いにいくための費用です。
勾留中は家族の伝言・今後の流れの説明・打ち合わせなど、たびたび弁護士との面会が必要となります。
接触回数や勾留場所などによって異なるため、接見費用の相場は一概にはいえず、さまざまです。
例えば、接見場所までの交通費だけを設定している弁護士や、1回あたりの接見費用を固定で設定している弁護士のほか、着手金に接見費用を含めて提示している弁護士もいます。
実費とは業務中に弁護士が支払ったコストを精算するための費用です。
交通費や必要書類の郵送代、コピー代など数千円~数万円程度の費用がかかると想定されますが、依頼期間が長引くほど高額になるでしょう。
また、実費のなかには交通費も含まれるため、勾留中に弁護士へ依頼する場合は、できる限り近くにある事務所への依頼がおすすめです。
なお、実費は事件終了後に実費用のみ精算するケースと、あらかじめ一定額を支払う必要があるケースがあります。
そして、日当とは弁護士の出張に対して支払う費用です。
具体的には、警察・裁判所・被害者の家など、事務所以外へ行く場合に生じた費用が日当に該当します。
日当は半日もしくは1日あたりで固定の金額を設定する、あるいは出張先までの距離により設定している場合もあります。
原則として出張にかかる時間や距離が増えるほど日当は高くなる傾向にあるので、できる限り近い弁護士へ依頼するほうが、費用負担を抑えやすいと考えられます。
さいごに|示談をするときは弁護士に相談
本記事では、弁護士なしで示談する場合のメリット・デメリット、手続きの流れなどについて解説しました。弁護士なしでも示談交渉は可能ですが、被害者の連絡先すらわからないケースがあり、連絡先がわかっても被害者が話したくないと考えている場合があるなど、自力での交渉は難しいといえます。
これらの理由から、示談を希望する際には、弁護士への依頼がおすすめです。
弁護士経由であれば、示談交渉に応じてもらえる可能性が高くなるうえ、適切な示談金額の相場を提案できるため、よりよい条件で素早く示談を成立させてくれると期待できます。
また、弁護士に示談を依頼すれば、正しい内容の示談書の作成してもらえるため、あとから被害者が事件化したり、訴訟したりといったリスクも防げるでしょう。
ただし、弁護士への依頼は相談料や着手金などが必要となるケースがあるため、依頼することで得られるメリットとコストを照らし合わせて判断することをおすすめします。
相談料無料の法律事務所を利用してみるなど、うまく弁護士の力を借りて、コストを抑えながら、適切に問題を解決していきましょう。