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弁護士なしで示談はできる?リスクや気を付けるべきポイントなども解説

弁護士監修記事
法律相談
2025年12月18日
弁護士なしで示談はできる?リスクや気を付けるべきポイントなども解説

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この記事を監修した弁護士
加藤 惇弁護士 (東日本総合法律会計事務所)
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刑事事件を起こしてしまった方の中には「弁護士なしでも示談は成功させられるのか」「コストをかけても弁護士に依頼したほうがよいのか」などと悩んでいる方もいるでしょう。

刑事事件の示談交渉は弁護士なしでも可能ですが、基本的には弁護士に依頼することをおすすめします。

弁護士に依頼すれば、交渉対応の負担が軽減されるだけでなく、被害者が交渉に応じてくれる可能性が高まりますし、スムーズな示談成立が期待できるなどのメリットもあります。

本記事では、弁護士なしで示談交渉するメリット・デメリットや注意点、示談交渉の流れや弁護士の必要性、弁護士費用などについて解説します。

目次

【結論】弁護士なしでも示談交渉は可能

刑事事件の示談交渉は、当事者同士で直接おこなっても問題ありません。

ただし、刑事事件の被害者は、加害者に対して強い処罰感情や怒りを抱いていることもあり、連絡しても交渉に応じてくれないというケースも多々あります。

たとえ被害者が応じてくれたとしても、交渉が進むうちに感情的になってしまったりして余計に関係性が悪化することも珍しくありません。

また、そもそも被害者の連絡先を知らない場合は、捜査機関を通じて聞き出そうとしても被害者側が応じてくれず、連絡を取ることすらできないケースもあります。

少しでも示談成立の可能性を高めたいのであれば、速やかに弁護士にサポートを依頼することをおすすめします。

示談交渉を弁護士なしでおこなう際の流れ

弁護士なしで示談交渉する場合、大きくわけて4つのステップがあります。

ここでは、それぞれの手続きの流れについて解説します。

1.被害者と連絡を取って示談案を送る

いきなり示談交渉しようとすると「とりあえずお金を払って解決したがっているだけ」という印象を与えかねないため、被害者と連絡を取る際は、まず謝罪の気持ちを真摯に伝えましょう。

しっかり伝えたあとに示談交渉したい旨を伝え、被害者が応じてくれた場合は示談案を送りましょう。

示談案については、事件内容や被害状況などを踏まえて適切な内容にすることが大切です。

ただし、法律知識のない素人では適切に対応できないおそれがあるため、早い段階で弁護士にサポートしてもらうことをおすすめします。

2.被害者と示談交渉をおこなう

被害者に示談案を送ったあとは、被害者に受け入れてもらうように交渉を進めます。

示談交渉をスムーズに進めるためには、被害者に対して「申し訳ない」という気持ちを伝えたうえで、被害者が受け入れやすい条件を提示することが大切です。

また、交渉を聞き入れてもらえるよう、被害者側の感情に寄り添った態度で接することも心がけましょう。

3.示談書を作成する

示談交渉が成立すれば、合意内容をまとめた示談書を作成します。

示談書には、主に以下のような項目を記載します。

【示談書に記載すべき主な項目】

  • 事件内容
  • 謝罪の旨
  • 示談金の金額支払期日
  • 宥恕条項
  • 今後お互いが接触しない旨
  • 示談書の内容以外には支払い義務がない旨
  • 事件や示談について守秘義務がある旨
  • 当事者の住所氏名 など

状況に応じて記載すべき内容は異なり、上記の事項があれば必ずしも今後の事件化や訴訟を防げるわけではありません。

また、自分なりの言葉で書くだけでは双方の解釈に乖離が生まれ、予想外のトラブルが生じるおそれもあります。

適切な示談書を作成して示談成立後のトラブルを避けるためには、弁護士のサポートが必要不可欠です。

4.示談金を支払う

示談書の作成が完了したあとは、速やかに示談金を振り込みます。

金額・支払期日・支払方法などは示談書の記載内容に従い、誤りがないよう注意してください。

示談金の振り込みが完了すれば、手続きは終了となります。

示談交渉を弁護士なしでおこなう際の注意点2つ

示談交渉を弁護士なしでおこなう場合、以下のような点に注意しましょう。

1.謝罪文を渡すなどして謝罪の気持ちを伝える

示談交渉を無事に成立させるためには、まずは謝罪文を渡すなどして謝罪の気持ちを伝えることが大切です。

被害者に対する誠実な謝罪がないと、示談交渉や示談案の内容を検討してもらえずに終わってしまう可能性が高まります。

どのような内容で示談するかを提案する前に、加害者として謝罪の気持ちをしっかり伝えるためにも誠意をもって謝罪文を書いたりすることをおすすめします。

2.示談金の相場を把握しておく

刑事事件の示談金相場を把握しておくことも大切です。

たしかに加害者側には非があるものの、被害者からの提示額を言われるがまま支払う必要はありません。

示談金にはある程度の目安があり、たとえば窃盗事件では「盗んだものの金額+20万円~50万円程度」、傷害事件では「20万円~50万円程度」に収まるケースが一般的です。

ただし、事件内容や被害状況などによっても変わるため、場合によっては上記の範囲内に収まらないこともあります。

いくらが妥当かわからない場合は、弁護士に一度相談することをおすすめします。

示談交渉を弁護士なしでおこなう7つのデメリット

弁護士なしで示談交渉をおこなう場合、以下のような7つのデメリットがあるので事前に把握しておきましょう。

1.連絡や面談を拒否されて示談できない可能性がある

刑事事件の被害者の中には、加害者に対して恐怖や怒りを感じていて「直接連絡を取りたくない」「顔を合わせたくない」などと考えるケースが少なくありません。

弁護士を通さずに自分で直接連絡すると、被害者から拒絶されて示談交渉を始めることすらできずに失敗する可能性があるため注意が必要です。

被害者と何らかのやり取りができたとしても、謝罪をしてスムーズに示談金を受け取ってもらえる可能性は、弁護士に依頼した場合と比べると低くなると考えられます。

2.高額な示談金を支払うことになるおそれがある

場合によっては、被害者側が高額な示談金を請求してきたりすることもあります。

自分側に非があるからといって言われるがままに被害者側の主張を受け入れてしまうと、高額な示談金を支払うことになったり、現実的ではない期限で支払うことになったりするおそれがあります。

刑事事件の示談交渉では「提示された示談金額が適切かどうか」を判断することも大切です。

示談金額は、事件内容や被害状況などを総合的に考慮したうえで決定します。

ただし、法律知識のない素人では妥当額の判断は難しいため、弁護士に依頼したほうが無難でしょう。

3.適切な示談書を作成できずにトラブルになる可能性がある

弁護士のサポートがないと、適切な示談書を作成できずに紛争が蒸し返されるおそれがあります。

示談成立後は合意内容をまとめた「示談書」を作成するのが通常で、主に以下のような項目を記載します。

【示談書に記載すべき主な項目】

  • 事件内容
  • 謝罪の旨
  • 示談金の金額支払期日
  • 宥恕条項
  • 今後お互いが接触しない旨
  • 示談書の内容以外には支払義務がない旨
  • 事件や示談について守秘義務がある旨
  • 当事者の住所氏名 など

被害者が加害者を許すことを意味する「宥恕条項」に加え、被害届や告訴状を出さない旨なども記載しておくことで、示談成立後のトラブルのリスクを抑えられます。

ただし、法的な知識がない素人が示談書を作成してしまうと、有効な書類としてみなされないこともあります。

事件内容や被害状況などによって記載すべき事項も変わるため、素人が正確な示談書を作成するのは困難といえます。

確実に示談の手続きを済ませて余計なトラブルを回避したいのであれば、弁護士にサポートしてもらうことをおすすめします。

4.示談後に被害届や告訴状が提出されることもある

弁護士なしで示談交渉をおこなってしまうと、示談後に被害届や告訴状が提出されることもあります。

被害届や告訴状の提出を回避するためには、示談成立時に「被害届は提出しない」「加害者のことを告訴しない」という旨を示談書に明記しておく必要があります。

ただし、素人では適切な形式で作成できず、抜け漏れが発生したりするおそれがあります。

トラブルなくスムーズに済ませるためにも、弁護士のサポートが必要不可欠です。

5.被害者の連絡先を入手できない可能性が高い

「そもそも被害者の連絡先がわからない」というケースでは、捜査機関を通じて聞き出そうとしても、被害者側が開示を拒否することもよくあります。

弁護士なしで示談交渉をおこないたくても、被害者の連絡先すらわからずに何もできないというようなことも十分あり得ます。

弁護士経由で打診すれば、被害者側も恐怖心や抵抗感が和らいだりして、連絡先を教えてもらえる可能性が高まります。

6.逮捕・勾留されている場合、示談交渉ができない

すでに捜査機関によって逮捕・勾留されている場合、基本的に弁護士なしでは示談交渉はできません。

逮捕後は最大23日間の身柄拘束が続き、身柄拘束中に被害者と直接連絡を取ったりすることは原則として認められません。

逮捕・勾留中に被害者との示談交渉を進めたい場合は、弁護士に依頼して代理人として対応してもらうことになります。

7.相手が弁護士を立てた場合、交渉が不利に進む

被害者側が弁護士を立ててきた場合、弁護士なしで対応するのは避けたほうが安全です。

法律知識や交渉経験のない素人では、弁護士を相手に対等な形で交渉を進めるのは難しく、結果的に高額な示談金を支払うことになったりするおそれがあります。

少しでも不利な状況を回避するためにも、相手が弁護士を立ててきた場合はこちらも弁護士に依頼することをおすすめします。

示談交渉を弁護士なしでおこなう2つのメリット

弁護士なしで示談交渉する場合、以下で解説する2つのメリットがあります。

デメリットと照らし合わせたうえで、弁護士に依頼するかどうか検討してください。

1.弁護士費用を抑えられる

弁護士なしで示談交渉する場合、弁護士費用を支払わなくて済むというメリットがあります。

弁護士に刑事事件の示談交渉を依頼する場合、数十万円~数百万円程度かかるのが一般的です。

特に、なかなか妥協点が見つからなかったりして示談交渉が難航しているようなケースでは、弁護士費用も高額になりやすい傾向にあります。

弁護士費用は法律事務所によってもバラつきがあるので、事前に見積もりを出してもらっておおよその費用総額を確認したうえで、依頼するかどうか決めましょう。

2.不必要に構えさせずに済む

被害者とほとんど面識がないようなケースであれば、弁護士に依頼したほうが示談交渉がスムーズに進みやすいでしょう。

しかし、被害者が友人・家族・知人などの場合、弁護士が関与することで不必要に構えさせてしまうこともあります。

お互いの関係性によっては当事者同士で直接話し合ったほうがよいケースもあり、弁護士が必要かどうかも含めてまずは弁護士に相談してみることをおすすめします。

法律相談だけの利用であれば数千円~1万円程度の出費で済むため、適切に示談交渉を進めるためにも、まずは弁護士の意見を聞いてみましょう。

示談交渉を弁護士に依頼すべき3つの理由

刑事事件で示談交渉をおこなう際は、弁護士にサポートしてもらうのが有効です。

ここでは、弁護士に依頼すべき理由について解説します。

1.被害者が示談交渉に応じてくれる可能性が高まるから

被害者が「直接加害者とは話したくない」と考えていて交渉を拒否されたとしても、弁護士経由なら交渉に応じてくれる場合もあります。

そもそも被害者の連絡先がわからないようなケースでも、弁護士に依頼すれば捜査機関を通じて被害者の許可を得て、教えてもらえる可能性が高まります。

上記のような理由から、速やかに示談交渉を始めるためにも弁護士へ依頼することをおすすめします。

2.スムーズな示談成立が望めるから

刑事事件に注力している弁護士であれば、どのような条件であれば被害者が示談を受け入れやすくなるかを把握しているため、早期の示談成立が期待できます。

示談交渉の対応経験が豊富な弁護士なら、適切な示談金額や支払期日を提示したうえで、被害者側の心情にも寄り添いながら納得のいく説明をしてくれます。

事件発生から早い段階で示談成立することで、逮捕・勾留や事件化を回避できたりする可能性が高まり、できるだけ重い処分を回避するためにも弁護士のサポートが大切です。

3.適正な内容での示談成立が期待できるから

弁護士なら、事件の背景や被害状況などを総合的に考慮したうえで、適切な示談案を考えてくれます。

たとえば「示談金が高すぎる」「支払期日が短すぎる」というような不利な条件を提示されている場合でも、適切な内容でまとめられるよう交渉を進めてくれます。

また、弁護士なら必要事項を漏れなく記載した示談書も作成してくれるため、示談成立後のトラブル防止も望めます。

示談交渉を弁護士に依頼する場合の費用

刑事事件でかかる弁護士費用としては、相談料・着手金・報酬金・接見費用・実費・日当などがあります。

ここでは、各弁護士費用の相場について解説します。

1.相談料|1時間あたり5,000円~1万円程度

相談料とは、弁護士に法律相談する際にかかる費用のことです。

一般的な相場は1時間あたり5,000円~1万円程度ですが、法律事務所の中には初回相談無料のところもあります。

2.着手金|30万円~50万円程度

着手金とは、示談交渉などのサポートを依頼する際にかかる費用のことです。

一般的な相場は30万円~50万円程度ですが、事件内容や依頼状況によっては高額になることもあるため注意が必要です。

まだ逮捕されていない段階であれば比較的安価で済む可能性がありますが、逮捕後・起訴後などの不利な状況になるほど高額になりやすく、なるべく着手金を抑えたい場合は早い段階で弁護士に依頼することをおすすめします。

3.報酬金|30万円~50万円程度

報酬金とは、弁護活動によって一定の成果が得られた場合にかかる費用のことです。

依頼先によっても成功の定義は異なり、依頼者としては満足のいかない「一部成功」のような状態でも成功報酬が発生することもあるため注意が必要です。

一般的な相場は30万円~50万円程度ですが、事件内容や被害状況などによっては高額になる可能性もあるため、依頼前に確認しておきましょう。

4.接見費用|1回あたり3万円~5万円程度

接見費用とは、弁護士が逮捕・勾留されている加害者と面会する際にかかる費用のことです。

一般的な相場は1回あたり3万円~5万円程度ですが、法律事務所によっても料金体系は異なります。

一例として、接見場所までの交通費だけを設定している法律事務所・1回あたりの接見費用を固定で設定している法律事務所・着手金に接見費用を含めて提示している法律事務所などがあります。

5.実費|数千円~数万円程度

実費とは、弁護士が弁護活動をおこなっている際にかかった費用のことです。

たとえば、交通費・必要書類の郵送代・コピー代・通信費などが該当します。

一般的な相場は数千円~数万円程度ですが、依頼状況によっても変動します。

6.日当|3万円~10万円程度

日当とは、弁護士が法律事務所を離れる際にかかる費用のことです。

一般的な相場としては、半日程度の拘束であれば3万円~5万円程度、1日程度の拘束であれば5万円~10万円程度です。

ただし、各費用については法律事務所によっても金額設定が異なります。

正確な金額を知りたい方は、依頼先事務所に直接ご確認ください。

刑事事件の示談交渉に関するよくある質問

ここでは、刑事事件の示談交渉に関するよくある質問について解説します。

1.示談は個人でできますか?弁護士は必要?

刑事事件の示談交渉は個人でおこなうことも可能です。

ただし、被害者は加害者に対して強い処罰感情や怒りなどを抱いていることもあり、交渉がうまくいかないというケースも多々あります。

そもそも被害者の連絡先を知らない場合は、捜査機関を通じて聞き出そうとしても被害者側が応じてくれないこともよくあります。

少しでも示談成立の可能性を高めたいのであれば、速やかに弁護士にサポートを依頼することをおすすめします。

2.示談交渉の弁護士費用の相場はいくら?

弁護士に示談交渉を依頼した場合、着手金と報酬金で60万円~100万円程度かかるのが一般的です。

ただし、依頼状況や依頼先事務所によっても金額にはバラつきがあります。

場合によっては上記の範囲内に収まらないこともあるため、詳しい金額を知りたい場合は直接事務所にご確認ください。

【関連記事】【分野別】弁護士費用の相場はいくら?安く抑える方法・払えない場合の対処法を解説

3.刑事事件の示談金の相場はいくら?

刑事事件の示談金は、以下のように事件内容によって異なります。

事件内容 示談金目安
暴行事件・傷害事件 10万円~60万円程度
盗撮事件 10万円~50万円程度
痴漢事件・セクハラ 10万円~100万円程度
強姦事件(不同意性交等罪) 100万円~300万円程度
窃盗事件・強盗事件 5万円~50万円程度
風俗トラブル 5万円~50万円程度
名誉毀損・誹謗中傷 10万円~100万円程度
詐欺事件・横領事件 数十万円~数百万円程度
交通事故・死亡事故 数万円~1億円程度

 

ただし、実際のところは被害者と話し合いを重ねて決めることになります。

被害者側の処罰感情などによっても金額は変わるため、必ずしも上記の範囲内に収まるとはかぎりません。

【関連記事】示談金の相場はいくら?決め方や高すぎるときの対処法を解説

4.刑事事件で示談成立までにかかる期間は?

刑事事件で示談が成立するまでには、数週間~数ヵ月程度かかるのが一般的です。

被害者側の対応次第で大きく変わり、当事者同士でおこなうと感情的なトラブルに発展したり、なかなか妥協点が見つからなかったりして解決が長引く可能性があります。

なるべく速やかに示談成立させたいのであれば、弁護士にサポートしてもらうのが有効です。

さいごに|被害者と示談交渉をする際は、まずは弁護士に相談を

弁護士なしでも示談交渉は可能ですが、当事者同士では揉めたりして交渉決裂することもありますし、示談成立できても示談書の作成を誤ってしまうおそれもあります。

被害者との示談を希望する際は、弁護士に依頼しましょう。

弁護士経由であれば示談交渉に応じてもらえる可能性が高くなるうえ、交渉時は適切な示談金額を提示してくれるなど、より良い条件でのスムーズな示談成立が期待できます。

また、弁護士なら示談成立後に漏れなく適切な内容の示談書を作成してくれるため、示談成立後の思わぬトラブルも防止できます。

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