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国選弁護人とはどんな制度か?基礎知識、利用条件、利用手続きを紹介

弁護士監修記事
刑事事件
2023年02月16日
2023年06月09日
国選弁護人とはどんな制度か?基礎知識、利用条件、利用手続きを紹介
この記事を監修した弁護士
春田 藤麿 弁護士 (弁護士法人春田法律事務所)
「お客様の期待を上回る結果を目指す」「生涯にわたり、お客様のパートナーとなる」ことを理念とし、2016年に設立。現在は全国にオフィスを構え、個人・法人を問わず、ニーズに合わせたサポートを提供。
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刑事事件で適切な捜査や裁判を受けるためには、弁護人(弁護士)によるサポートが欠かせません。

しかし、私選弁護人に依頼しようと思っても、貧困などの経済的な理由から依頼できないというケースもあるでしょう。

そのような場合は、被疑者や被告人のために国が弁護人を選任してくれる「国選弁護人制度」を利用するのがおすすめです。

この記事では、貧困などが原因で私選弁護人へ依頼できない方に向けて、国選弁護人制度の基礎知識、利用条件や利用手続き、メリット・デメリットなどを解説します。

また、私選弁護人との違いや国選弁護人がおすすめの方などについても紹介します。

刑事事件で弁護士を付けるためにも、ぜひこの記事を参考にしてください。

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国選弁護人に関する基礎知識

刑事事件における弁護人は、被疑者・被告人などによって選任される「私選弁護人」と、国によって選任される「国選弁護人」に分けることができます。

それぞれの位置付けは、私選弁護人が原則であり、国選弁護人が補完的なものとなっています。

ここでは、国選弁護人の基礎知識について確認しましょう。

国選弁護人とは?

国選弁護人とは、貧困などが理由で自ら弁護士を選任できない被疑者・被告人のために、被疑者・被告人の請求によって裁判所が選任する弁護士のことです。

この国選弁護人制度は大きく、勾留決定後から起訴前まで利用できる「被疑者国選弁護制度」と、起訴後に利用できる「被告人国選弁護制度」に分けられます。

なお、「国選弁護士」と言われることもありますが、正しくは「国選弁護人」となります。

被疑者国選弁護制度

被疑者国選弁護制度は、刑事事件で検察に勾留されてから起訴されるまでの間に被疑者が利用できる制度です。

刑事訴訟法第37条の2には「勾留状が発せられている被疑者が貧困その他の理由で弁護人を選任できないときに、裁判官はその請求により被疑者のために弁護士を付さなければならない」と規定されています。

当初は一部の刑事事件だけに限られていましたが、現在は「被疑者が勾留されている全ての刑事事件」で利用できるようになっています。

第三十七条の二 被疑者に対して勾留状が発せられている場合において、被疑者が貧困その他の事由により弁護人を選任することができないときは、裁判官は、その請求により、被疑者のため弁護人を付さなければならない。ただし、被疑者以外の者が選任した弁護人がある場合又は被疑者が釈放された場合は、この限りでない。

引用元:刑事訴訟法 | e-Gov法令検索

被告人国選弁護制度

被告人国選弁護制度は、刑事事件で検察に起訴された被告人が利用できる制度です。

刑事訴訟法第36条には「被告人が貧困その他の理由で弁護人を選任できないときに、裁判所はその請求により被告人のために弁護人を付さなければならない」と規定されています。

特に「死刑、無期懲役、3年以上の懲役または禁錮にあたる事件」といった「必要的弁護事件」の場合、弁護人がいないと開廷できないため、裁判所によって国選弁護人が選任されます

第三十六条 被告人が貧困その他の事由により弁護人を選任することができないときは、裁判所は、その請求により、被告人のため弁護人を附しなければならない。但し、被告人以外の者が選任した弁護人がある場合は、この限りでない。

引用元:刑事訴訟法 | e-Gov法令検索

国選弁護人制度で受けられる主なサポート

国選弁護人制度で受けられる主なサポートには、以下のようなものがあります。

  • 取り調べに関する助言
  • 刑事事件に関する証拠収集
  • 被害者への謝罪、被害者との示談交渉
  • 不起訴処分を獲得するための働きかけ
  • 裁判所に対する保釈請求
  • 公判における弁護活動 など

国選弁護人に認められている権限は、基本的に私選弁護人と同じです。

しかし、国選弁護人は勾留決定後に選任されることから、「供述調書に関するアドバイス」や「勾留阻止に向けた働きかけ」といった、逮捕直後から勾留前までの弁護活動は受けられません。

国選弁護人によるサポートは、勾留決定後のものに限られることを理解しておきましょう。

国選弁護人制度の利用条件と利用手続き

国選弁護人を利用するためには一定の条件を満たしたうえで、勾留質問の際に「国選弁護人制度を利用したい」という旨を裁判官に伝える必要があります。

ここでは、国選弁護人の利用条件と利用手続きについて確認しましょう。

国選弁護人制度を利用するための条件

国選弁護人制度を利用するには、以下の条件を満たしている必要があります。

  • 資力要件を満たしていること
  • 勾留状が発せられていること
  • 弁護士がついていないこと

資力が50万円を下回っているか

国選弁護人制度を利用するには、現金や預金などの合計額が50万円未満でなければなりません。

これを一般的に、国選弁護人制度の資力要件といいます。

なお、現金や預金の合計額が50万円以上の方が本制度を利用したい場合は、事前に「私選弁護人選任申出」という弁護士会に弁護士の紹介を申し出る手続きが必要になります。

(法第三十六条の三第一項の基準額)

第二条 法第三十六条の三第一項に規定する政令で定める額は、五十万円とする。

引用元:刑事訴訟法第三十六条の二の資産及び同法第三十六条の三第一項の基準額を定める政令 | e-Gov法令検索

勾留状が発せられているかどうか

国選弁護人制度が利用できるのは、勾留状が発せられている事件に限られます。

刑事事件には、被疑者の身柄を拘束した状態で捜査を続ける「身柄事件」と、被疑者の身柄を解放した状態で捜査を続ける「在宅事件」があります。

在宅事件のように勾留状が発せられていないケースでは、国選弁護人制度を利用することができません。

弁護士がついているかどうか

国選弁護人制度は、被疑者・被告人に弁護人が選任されていない場合に限り利用できます。

仮に、家族が被疑者・被告人のために私選弁護人を選任した場合、すでに選任されていた国選弁護人は解任されるでしょう。

国選弁護人制度を利用するための手続き

裁判官が被疑者を勾留するかどうかを判断する勾留質問では、裁判官から「被疑者は弁護人を選出できる」という説明がおこなわれます。

その際に「国選弁護人制度を利用したい」という旨を伝え、資力申告書などの必要書類を提出すれば、裁判所や法テラス(日本司法支援センター)が被疑者のために国選弁護人を選任してくれます。

在宅事件になっていた被疑者が起訴された場合は、起訴状とともに弁護人選任に関する回答書や資力申告書が自宅に送られてきます。

国選弁護人を利用したい場合は、「弁護人選任に関する回答書」に利用したい旨を記入して提出しましょう。

なお、私選弁護人を選任したい場合や弁護人に依頼したくない場合も、回答書の提出は必要となります。

一定の事件では必ず弁護人が選任される

刑事事件は、開廷するために必ず弁護人が必要になる必要的弁護事件と、弁護人がいなくても開廷できる任意的弁護事件があります。

「死刑、無期懲役、3年以上の懲役または禁錮にあたる事件」といった必要的弁護事件に該当する場合は、被疑者・被告人が弁護士の選任を拒否していても、裁判長は職権で弁護人を選任しなければならないことになっています。

第二百八十九条 死刑又は無期若しくは長期三年を超える懲役若しくは禁錮にあたる事件を審理する場合には、弁護人がなければ開廷することはできない。

② 弁護人がなければ開廷することができない場合において、弁護人が出頭しないとき若しくは在廷しなくなつたとき、又は弁護人がないときは、裁判長は、職権で弁護人を付さなければならない。

引用元:刑事訴訟法 | e-Gov法令検索

私選弁護人や当番弁護士との違い

刑事事件では国選弁護人のほかに、私選弁護人や当番弁護士などが関わることがあります。

ここでは、私選弁護人や当番弁護士の特徴や国選弁護人との違いなどについて確認しましょう。

私選弁護人|被疑者・被告人が自ら選んだ弁護人のこと

私選弁護人とは、国が弁護人を選任する国選弁護人と異なり、被疑者・被告人自身やその家族が任意で契約・依頼をする刑事弁護人のことです。

私選弁護人と国選弁護人の権限に大きな差はありませんが、勾留後から選任される国選弁護人と違って、私選弁護人であれば逮捕前後からサポートを受けることができます。

なお、資力がある被疑者・被告人が弁護人を選任する場合は、原則として私選弁護人に依頼する必要があります。

当番弁護士|逮捕後に1回だけ無料相談できる弁護士のこと

当番弁護士とは、逮捕されている被疑者やその家族、友人が依頼することで、被疑者が留置・勾留している場所に無料で1回だけ接見に来てくれる弁護士のことです。

接見に来てくれた弁護士は、被疑者の疑問や質問に答えてくれたり、取り調べに関するアドバイスなどをくれたりします。

当番弁護士とは直接的な契約がないため弁護活動を受けることはできませんが、その弁護士と契約を締結することで私選弁護人としてサポートしてもらうことが可能です。

国選弁護人と私選弁護人のメリット・デメリット

国選弁護人と私選弁護人の権限には、特別な差はありません。

しかし、弁護人の選任方法、選任時期、費用の有無などが異なるため、それぞれにメリットとデメリットがあります。

以下に、国選弁護人と私選弁護人のそれぞれのメリット・デメリットをまとめておくので、自分に合う弁護人を選ぶためにも確認しておきましょう。

弁護人の種類

メリット

デメリット

国選弁護人

弁護士費用を負担する必要がない
弁護人を探すという手間が省ける

弁護人を自分で選任できない
必ずしも経験豊富とは限らない
逮捕直後のサポートは受けられない
自由に変更・解任することができない

私選弁護人

逮捕前後からサポートを受けられる
刑事事件が得意な弁護士に依頼できる
報告義務があるため状況が把握できる
いつでも自由に解任することができる

 


国選弁護人に依頼すべき方と私選弁護人に依頼すべき方

国選弁護人には「弁護人費用を負担する必要がない」など、私選弁護人には「逮捕前後から早期のサポートを受けられる」などのメリットがあり、それぞれどのような人が適しているかが異なります。

ここではそれぞれのメリット・デメリットなどを踏まえて、国選弁護人が適しているケースと私選弁護人が適しているケースを確認しましょう。

国選弁護人が適しているケース

以下のようなケースでは国選弁護人の利用が適しているでしょう。

弁護人に依頼するだけの経済的余裕がない

私選弁護人に依頼するだけの経済的な余裕がない方は、国選弁護人に依頼するのがおすすめです。

被疑者・被害者の財産が50万円以下しかない場合は、請求により直ちに国選弁護人を派遣してくれます。

このときの国選弁護人の報酬は国が負担してくれるため、実質無料で弁護人によるサポートを受けられます。

なお、事前に資力申告書を提出する必要がありますが、虚偽の申告をすると「10万円以下の過料」という処分を受ける可能性があるので注意しましょう。

第三十八条の四 裁判所又は裁判官の判断を誤らせる目的で、その資力について虚偽の記載のある資力申告書を提出した者は、十万円以下の過料に処する。

引用元:刑事訴訟法 | e-Gov法令検索

弁護士会に紹介されなかったため派遣してほしい

原則として、一定の財産がある被疑者・被告人は私選弁護人に依頼しなければなりません。

しかし、弁護士会に私選弁護人選任申出をおこなったのに「弁護士会から紹介が得られなかった」「紹介された弁護士に拒否された」などの事情が生じることもあります。

このような場合には、例外として国選弁護人制度を利用することができます。

私選弁護人が適しているケース

以下のようなケースでは私選弁護人の利用が適しているでしょう。

長期拘束や前科などを回避したい

私選弁護人に依頼した場合は、逮捕前後からサポートを受けられます。

早期にサポートを受けることで勾留を回避できる可能性が高まり、被害者に謝罪し示談を成立させることで告訴の取り下げや不起訴処分の獲得などが目指しやすくなります。

「できる限り事件を穏便に終わらせたい」などの要望がある場合は私選弁護人に依頼をしましょう。

国選弁護人の活動に納得できていない

国選弁護人制度の場合は、被疑者・被告人が弁護人を選ぶことができません。

また、任意で変更することも認められていません。

国選弁護人の権限は私選弁護人と同じですが、「相性が良くない」「信頼できない」といった問題が生じる可能性はあります。

このような不満がある場合は、私選弁護人に変更するのもひとつの方法でしょう。

私選弁護人を探すなら「ベンナビ刑事事件」がおすすめ

刑事事件のサポートをしてくれる私選弁護人を探すなら、刑事事件が得意な弁護士事務所だけが掲載されている「ベンナビ刑事事件」を利用するのがおすすめです。

ベンナビ刑事事件では、地域と事件から弁護士事務所を絞り込むことができ、それぞれの弁事務所の特徴や強みを比較しながら選ぶことが可能です。

「19時以降の相談可能」「オンライン相談可能」「初回相談無料」などに対応している弁護士事務所も見つけられるでしょう。

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まとめ|経済的に余裕がない場合は国選弁護人制度の利用を!

国選弁護人制度は、貧困などが原因で私選弁護人を選任できない被疑者・被告人でも、弁護人によるサポートを受けられる制度です。

国選弁護人の報酬は基本的に国が負担するため、被疑者・被告人は実質無料で弁護人を付けることができます。

弁護人を付けることで、被害者との示談交渉や、不起訴処分の獲得に向けた働きかけなどをしてくれます。

国選弁護人制度の存在を覚えておき、万が一の際には本制度の利用を検討するとよいでしょう。

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編集部
本記事はベンナビを運営する株式会社アシロが企画・編集をおこないました。
  • ※ベンナビに掲載されているコラムは、必ずしも弁護士が執筆したものではありません。
  • ※本記事の目的及び執筆体制についてはコラム記事ガイドラインをご覧ください。
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