勾留とは?逮捕との違いや期間、勾留の流れや回避する方法を解説
刑事事件を起こして逮捕・送致された場合、90%以上の確率で勾留請求をされます(令和5年版犯罪白書)。
また、勾留請求をされた場合はほぼ間違いなく勾留決定が出され、長期間にわたり身柄を拘束されるでしょう。
本記事では、刑事事件における勾留について知りたい方に向けて以下の内容を解説します。
- 勾留がどのような手続きなのか
- 勾留が認められるための2つの要件
- 逮捕から勾留までの大まかな6つの流れ
- 逮捕された場合に弁護士に相談するメリット
本記事で勾留の意味や刑事手続きの流れなどについて詳しくなりましょう。
勾留とは|被疑者・被告人を身柄拘束するための手続きのこと
勾留とは、被疑者・被告人の身柄を拘束する手続きのことを指します。
勾留には、大きく以下の2種類があります。
- 被疑者勾留:起訴される前の被害者の身柄を拘束する手続きのこと
- 被告人勾留:起訴されたあとの被告人の身柄を拘束する手続きのこと
勾留中は必要に応じて取調べなどがおこなわれますが、本を読んだりできる自由時間もあります。
逮捕と勾留の違い
逮捕と勾留はいずれも被疑者・被告人の身柄を拘束する手続きですが、以下のように異なる点も多くあります。
項目 |
逮捕 |
勾留 |
拘束期間 |
最大72時間 |
起訴前:原則10日間(最大20日間) 起訴後:原則2ヵ月間(以降1ヵ月ごとの更新が可能) |
拘束場所 |
留置場 |
留置場や拘置所 |
手続きの主体 |
警察官 |
検察官・裁判官 |
必要な手続き |
逮捕状 (例外:現行犯逮捕、緊急逮捕) |
勾留状 |
面会の可否 |
不可(弁護士は可能) |
可能 |
刑事事件の大まかな流れとしては、まず警察に逮捕されます。
その後、警察から検察に送致され、検察による勾留請求を裁判官が認めた場合は勾留されます。
勾留期間は起訴前で最大20日間、起訴後で原則2ヵ月間
被疑者勾留と被告人勾留の期間は、それぞれ以下のようになっています。
- 被疑者勾留:原則10日間(最大20日間)
- 被告人勾留:原則2ヵ月間(1ヵ月ごとの更新可能)
勾留が決定した場合は、長期間にわたり捜査機関に身柄を拘束されてしまうでしょう。
勾留される場所は警察署の留置場や拘置所
被疑者と被告人の勾留場所は、それぞれ以下のようになっています。
- 被疑者:留置場
- 被告人:拘置所
本来、被疑者も被告人も勾留決定後は、拘置所に身柄を拘束されることになっています。
しかし、捜査の利便性や拘置所の数などの関係から、起訴前は警察署内にある留置場に身柄を拘束されることが多いです。
勾留が認められる要件|勾留する理由と必要性を満たさなければならない
勾留は被疑者・被告人の身体の自由を奪う手続きであることから、簡単にできてしまうと人権侵害に繋がります。
そこで、被疑者・被告人を勾留するためには、以下のような要件を満たす必要があります。
- 勾留する理由がある
- 勾留する必要性がある
ここでは、勾留が認められる要件について説明します。
1.勾留する理由があるか
勾留する理由には、大きく以下の2つがあります(刑事訴訟法第60条1項)。
- 罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由があること
- 住居がない、証拠を隠匿する疑いがある、逃亡またはその疑いがあること
わかりやすく説明すると、捜査機関は被疑者・被告人が犯罪をしたという証拠などを確保している必要があります。
また、身柄を拘束しておかないと、証拠を隠したり、逃亡したりする可能性がある場合に勾留が認められるのです。
2.勾留する必要性があるか
勾留するためには、勾留する必要性を満たす必要もあります(刑事訴訟法第87条1項)。
たとえば、以下のような場合は勾留する必要性は低いと考えられます。
- 事件が軽微である
- 身元引受人がいる
- 健康状態が非常に悪い など
仮に勾留する理由があったとしても、これらの勾留する必要性が認められなければ、勾留はおこなわれません。
逮捕から勾留までの大まかな流れ|6ステップ
警察に逮捕されたあとの流れは、以下のようになっています。
- 警察の取調べを受ける
- 逮捕後48時間以内に検察官へ送致される
- 検察の取調べを受ける
- 送致から24時間以内に勾留請求がされる
- 裁判官との勾留質問がおこなわれる
- 勾留決定が出されて勾留が始まる
ここでは、逮捕から勾留までの流れを解説します。
1.逮捕後に警察の取調べを受ける
逮捕後は、まず警察から取調べを受けます。
通常、警察での取調べは取調室でおこなわれます。
事件に関することはもちろん、身辺や経歴などについても確認されます。
2.逮捕後48時間以内に検察へ送致される
逮捕後、48時間以内に警察から検察へ事件が送致されます。
なお、微罪処分と判断された場合は、警察限りで事件は終了となります。
3.検察の取調べを受ける
送致後は、事件を引き継いだ検察官から取り調べを受けます。
検察での取調べは、検察官の執務室でおこなわれることが多いようです。
警察の場合と異なり、取調べでは主に事件に関することを確認されます。
4.送致から24時間以内に勾留請求がされる
検察官は、送致から24時間以内に勾留請求をするかどうか決定します。
勾留が必要と判断した場合は、検察から裁判所に対して勾留請求書が提出されます。
5.裁判官との勾留質問がおこなわれる
勾留請求を受けたら、裁判官との勾留質問がおこなわれます。
勾留質問とは、裁判官が被疑者を勾留するかどうか判断するための手続きのことです。
この手続きでは、事件の内容について確認されたり、言い分を伝えたりすることができます。
6.勾留決定が出されて勾留が始まる
裁判官が勾留請求を許可したら、勾留状が出されます。
勾留が決定したら、その後は留置場で生活することになります。
勾留されるとどうなる?家族や仕事への影響は?
逮捕・勾留された場合、以下のようなリスクがあります。
- 解雇されるリスクが高まる
- 家族にはほぼ確実にバレる
ここでは、勾留された場合に考えられる影響について説明します。
解雇されるリスクが高まる
一般的に逮捕・勾留は、懲戒解雇の要件として認められていません。
しかし、逮捕・勾留により無断欠勤が続いた場合は、普通解雇の要件を満たしてしまう可能性があります。
家族にはほぼ確実にバレる
基本的に、警察から被疑者の家族に対して連絡はありません。
しかし、逮捕・勾留されると数日間は家に帰れないため、同居している家族にほぼ間違いなく知られてしまうでしょう。
勾留を防ぐためには弁護士に相談・依頼することが重要
逮捕後に弁護士に依頼した場合は、以下のような対応をしてくれるでしょう。
- 検察官や裁判官に対して働きかけをしてくれる
- 被害者がいる事件では早期の示談成立を目指すことができる
- 勾留決定が出されたあとに準抗告や勾留取消請求をしてくれる
ここでは、勾留を防ぐために弁護士がしてくれる対応について説明します。
1.検察官や裁判官に対して働きかけをしてくれる
弁護士は、検察官や裁判官に対して勾留阻止に向けた働きかけをしてくれます。
具体的には、証拠を隠したり、逃亡したりする恐れがないことの説得をおこないます。
一般的には書面でおこなわれますが、電話や対面などで説得をおこなってくれる場合もあります。
2.被害者がいる事件では早期の示談成立を目指すことができる
被害者がいる事件の場合は、できる限り早く示談を成立させることが重要です。
示談が成立した場合、証拠隠滅や逃亡の恐れがないと判断される可能性が高まるからです。
被疑者本人が交渉をすることは困難なので、弁護士を通じて被害者と示談交渉を進める必要があるでしょう。
3.勾留決定が出されたあとに準抗告や勾留取消請求をしてくれる
弁護士に依頼している場合は、勾留決定後に準抗告や勾留取消請求による身柄の解放を目指してくれるでしょう。
- 勾留決定に対する準抗告:裁判所が出した勾留決定に対して不服を申し立てる手続きのこと
- 勾留取消請求:勾留の必要性がなくなったため裁判所に対して勾留の取消しを求める手続きのこと
これらの準抗告や勾留取消請求が認められた場合は、すぐに身柄が解放されることになります。
勾留に関するよくある質問
最後に、勾留に関するよくある質問に回答します。
Q.逮捕後に家族と連絡を取れますか?
逮捕直後から勾留決定までの3日間は家族や友人などと連絡を取ることができません。
また、勾留決定後も接見禁止命令が出された場合は、引き続き連絡は取れません。
なお、弁護士であれば逮捕直後から拘束中の被疑者と接見することができます。
Q.勾留と拘留の違いは何ですか?
勾留と間違えやすい用語に「拘留」があります。
この拘留とは刑罰の一種であり、1日以上30日未満の間、刑事施設に収監するというものです。
勾留と拘留はいずれも「こうりゅう」と読みますが、意味は異なるため間違わないようにしてください。
さいごに|勾留を避けるには逮捕後すぐに弁護士に相談を
捜査機関に逮捕された場合は、高い確率で送致や勾留がおこなわれます。
逮捕後に長期間身柄を拘束されると、仕事や人間関係などにも影響が出てしまうでしょう。
そのため、もし捜査機関に逮捕されたら、できる限り早く弁護士に相談・依頼することが重要です。
刑事事件の場合は当番弁護士という制度があり、1回だけ被疑者のもとに弁護士が駆けつけてくれます。
そのような制度を利用して弁護士と相談し、できる限り勾留を回避できるように目指してください。