調停調書と公正証書の違いとは?作成すべきケースについて解説!
離婚で必要な書類の違いや効力などが気になる方のため、本記事では、離婚の調停調書と公正証書の概要や相違点のほか、必要となるケースなどを解説します。
調停調書と公正証書はどちらも離婚の際に必要ですが、それぞれの違いを把握していなければ、離婚後のトラブルに発展する可能性があります。
適切な書類を作成し、離婚後も問題なく財産分与や慰謝料、養育費などを受け取れるよう準備しましょう。
調停調書と公正証書のどちらを作成するかは離婚方法で決まる
調停調書と公正証書のどちらを作成するかは、離婚方法で決まります。
次の項目から、どのようなシーンで調停調書や公正証書を作成するのかについて解説していきます。
離婚調停調書は「離婚調停」で離婚する場合に作成する
離婚調停調書は離婚調停で離婚する場合に作成します。
離婚調停とは家庭裁判所に申し立て、調停委員会が仲介して離婚について話し合う方法です。
夫婦間だけで話し合いが決着しない場合に離婚調停へ進むという流れで、裁判離婚に比べて手続きに要する手間暇や費用は少なめといえます。
双方が合意して調停離婚が成立すると、約束事をまとめた離婚調停調書が作成されます。
離婚調停調書の作成後は変更できないため、裁判官が内容を読み上げて最終確認する際に不備や間違いがないか確認しましょう。
離婚協議公正証書は「離婚協議」で離婚する場合に作成する
離婚協議公正証書は離婚協議(協議離婚)で離婚する場合に作成します。
協議離婚とは夫婦間だけでの話し合いで離婚することで、離婚調停のように裁判所を利用しません。
協議離婚は夫婦間の話し合いで決着することから、離婚調停と比べてコストや時間を節約できる、かつ離婚理由に縛りがないなどのメリットがあります。
しかし、協議離婚は口約束だけでも成立するため、離婚後のトラブルを防ぐためにも離婚協議公正証書を作ることをおすすめします。
離婚協議公正証書を作る流れは、夫婦間で話し合った内容を離婚協議書にまとめ、公正役場で手続きをして公正証書にします。
なお、離婚協議公正証書に記載する主な項目は、以下のとおりです。
- 離婚に合意した旨
- 養育費の支払い方法・期間
- 慰謝料の支払い方法
- 財産分与の方法
- 子どもの親権・面会交流の方法
- 清算条項 など
公正証書を作成して内容に不備・誤りがないことを確認してから、離婚届を提出しましょう。
離婚協議書の書き方や公正証書にする方法などの詳細は、以下の記事で解説しています。
調停調書と公正証書の違い
調停調書と公正証書は離婚の際に作成する書類という共通点がありますが、以下のとおり作成場所や時効などが異なります。
項目 |
調停調書 |
公正証書 |
離婚方法 |
離婚調停 |
協議離婚 |
作成する人・場所 |
家庭裁判所 |
公証役場の公証人 |
時効 |
対象となる権利義務全て同期間 |
対象となる権利義務によって異なる |
強制執行できる範囲 |
調書に記載された権利義務全て |
慰謝料・財産分与・養育費の金銭債務(記載がある場合のみ) |
強制執行の許諾文言 |
不要 |
必要(記載がない場合は別途調停や裁判が必要となる) |
作成費用の目安 |
3,200~4,200円 |
5,000~23,000円 |
次の項目から、調停調書と公正証書の違いについて解説していきます。
作成する場所や人が異なる
離婚調書は調停が成立した際に、家庭裁判所が作成する書類です。
一方、公正証書は公正証書の公証人が作成します。
なお、協議離婚の場合は夫婦間の口約束・離婚協議書でも離婚が成立するため、離婚協議公正証書は必須ではありませんが、養育費の支払いや子どもとの面会交流などのトラブルを防止するためにも、離婚協議公正証書を作成しておくことをおすすめします。
時効が異なる
対象となる権利義務 |
調停調書 |
公正証書 |
財産分与 |
10年 |
2年 |
慰謝料 |
10年 |
3年 |
養育費 |
10年 |
5年 |
時効とは書類に記載した権利義務を守らなければならない期間のことです。
原則として調停証書の場合、時効は各権利義務が10年、公正証書の場合は財産分与2年・慰謝料3年・養育費5年と定められています。
つまり、公正証書であれば離婚成立から3年経つと慰謝料は請求できません。
時効は長いほうが有利なため、中断方法を把握しておけば、本来の時効より請求期間を延ばせる可能性があります。
たとえば、元配偶者に内容証明郵便を送ると、その時点から時効のカウントが0日目から数え直しです。ほかにも、支払督促や裁判申し立てなどのアクションも、時効中断の理由となります。
離婚後に相手の不貞行為を知った場合などを考慮すると、時効が長い調停証書のほうが有効といえるでしょう。
ただし、諸事情によって不貞をした相手との婚姻関係を継続しなければならない場合など、時効を過ぎても慰謝料請求ができる可能性はあります。
慰謝料請求が可能か否か、誰から貰えるかなどを把握したい場合は、弁護士への相談がおすすめです。
強制執行ができる範囲が異なる
強制執行とは財産分与・慰謝料・養育費など、約束した金銭の支払いが滞った場合、裁判を通さず財産差押えができる制度です。
調停調書は判決と同じ効力をもつため、記載されている権利義務の全てを訴訟手続なしで強制執行できます。
一方、公正証書は強制執行できる範囲に限りがあり、文言によっては訴訟手続が必要です。
公正証書で強制執行できる金銭債務は、財産分与・慰謝料・養育費です。
なお、子どもの面会交流や不動産の引き渡しなどは、公正証書だけでは成立せず、別途所定の手続きをしなければなりません。
強制執行のために書類内に記載が必要かどうかが異なる
公正証書は財産分与・慰謝料・養育費などにおける強制執行の対象ですが、必ず執行できるとは限りません。
強制執行に関する公正証書の内容に不備があれば、財産分与・慰謝料・養育費も強制執行の対象外となります。
たとえば、慰謝料を支払う旨が書いてあった場合でも、金額・期間・支払方法などの詳細が記載されていない場合は、強制執行の対象にはなりません。
つまり、公正証書を見れば誰もが支払いについての情報を同じように把握できることが、強制執行可能な公正証書の特徴といえます。
公証人は、どのような内容を記載すれば、強制執行可能な公正証書を作成できるのかを把握しているため、基本的には養育費の支払いが強制執行の対象になるように作ってくれるでしょう。
ただし、離婚条件は夫婦の合意で決めるため、話し合いをもとに公正証書を作成します。
このような点から、公証人が書類の内容や条件を変更できないため、夫婦間で正確に条件を決めておく必要があるのです。
そのため条件面などに不備があると、公正証書を作成しても強制執行不可になる可能性があります。
また、強制執行の対象になる公正証書を作成できたとしても、相手の資力が不足している場合はお金を回収できません。
そのため、公正証書を作成する際は相手の支払能力と回収すべきお金のバランスを考慮する必要があります。
「無事にお金を回収できる」「万が一の際は強制執行ができる」という内容の公正証書を作成するためには、夫婦間ではなく弁護士などの専門家に相談しながら作成することをおすすめします。
作成にかかる費用が異なる
調停調書と公正証書の作成には費用がかかり、それぞれ金額が異なります。
調停調書の作成費用は次のとおりです。
- 収入印紙:1,200円
- 郵送料:2,000~3,000円
- 夫婦の戸籍謄本の取得費用:450円
調停調書の作成費用は、合計3,650円~4,650円程度で、調停費用は別途発生します。
収入印紙は離婚調停の申立書に、手数料として貼る必要があります。
婚姻費用や面会交流など、調停が複数に及ぶ場合、収入印紙は調停ごとに必要となります。
郵送料とは申立書と一緒に裁判所に納める費用で、裁判所からの通知書などの郵送費として使用されます。
金額は裁判所によって異なりますが、数千円程度となるでしょう。
なお、郵送料も収入印紙代と同様、調停ごとに支払う必要があります。
離婚調停の申立て時は、夫婦の戸籍謄本も必要となるため、本籍地の市区町村で取得する際、450円の手数料がかかります。
なお、夫婦の戸籍謄本はコピーでもよいとされています。
上記の費用以外にも住民票や交付手数料などが必要なケースもあるため、数千円程度の追加費用がかかることもあるでしょう。
また、弁護士に依頼する場合は別途数十万円以上がかかるケースが多いため、事前に必要費用の総額を調べておきましょう。
一方、公正証書の作成に必要な費用は慰謝料や財産分与、養育費などの金額によって異なり、手数料は公証人手数料令によって次のように定められています。
- 100万円以下:5,000円
- 100~200万円以下:7,000円
- 200~500万円以下:11,000円
- 500~1,000万円以下:17,000円
- 1,000~3,000万円以下:23,000円
- 3,000~5,000万円以下:29,000円
- 5,000万~1億円以下:43,000円
- 1~3億円:43,000円+5000万円ごとに13,000円を加算
- 3~10億円:95,000円+5000万円ごとに11,000円を加算
- 10億円以上:249,000円+5000万円ごとに8,000円を加算
また、法務省令で定める縦書きの証書が4枚(横書きの場合は3枚)を超えると、1枚ごとに250円の費用が別途必要です。
調停調書と公正証書、どちらを作成すべき?
調停証書と公正証書のどちらを作成すべきかは、調停離婚・協議離婚のどちらを選ぶかによって異なります。
そこで次の項目からは、離婚調停すべきケース・協議離婚すべきケースについて解説します。
離婚調停調書を作成すべきケース
調停離婚すべき例は、以下のとおりです。
- 夫婦間だけで話し合いが決着しない
- 配偶者と顔を合わせず第三者を介して話し合いたい
- 時間やお金をかけてでも納得できる形で離婚したい
- 強制執行の範囲を制限したくない・効力をもたせたい
- 金銭債務以外にも取り決めるべきことがある
調停離婚とは家庭裁判所の調停委員を仲介役として離婚を成立させる方法です。
調停委員が夫婦の間に入ってそれぞれの言い分を個別に聴取し、お互いが納得できる離婚条件を模索します。
調停離婚には第三者がいるという安心感はありますが、話し合いの時間や場所は家庭裁判所と調整しなければなりません。
夫婦間だけで話し合って離婚を成立させる協議離婚と異なり、条件に納得できない場合やDV・モラハラによって顔を合わせられない場合などには調停離婚は有効といえます。
ただし、調停離婚で離婚が成立せず、裁判離婚をすることになり、より時間やお金がかかるリスクもあります。
スムーズに調停離婚を成立させたい場合、弁護士に相談することをおすすめします。
離婚協議公正証書を作成すべきケース
協議離婚すべき例として、次のようなケースが挙げられます。
- 夫婦間だけで条件を決めたい
- できる限り早急に離婚したい
- 時間やお金を節約したい
- 冷静な話し合いが可能
- 離婚後にトラブルが生じる可能性が低い
- 強制執行の範囲や執行力に制限があっても問題ない
- 金銭債務以外に取り決めごとがない
協議離婚とは夫婦だけで話し合いを終結させて離婚する方法です。
夫婦仲がそれほど悪くなく、条件次第で歩み寄って離婚を成立させられそうな場合は、協議離婚がおすすめです。
協議離婚なら、調停離婚のような申し立てに関する手続きや費用が不要なうえ、話し合いのタイミングや場所は夫婦だけで決められるため、早く離婚できる可能性があります。
ただし、調停離婚に比べて協議離婚は取り決めに対する強制力に制限がある点に注意してください。
たとえば、強制執行の範囲は慰謝料・財産分与・養育費に限られるうえ、公正証書に適切な文言がなければ無効になるリスクがあります。
協議離婚は夫婦間だけで完結できるからこそ、離婚後のトラブルに発展しやすいといえるでしょう。
口約束だけでは合意の有無や離婚条件に関する証拠を残せないため、協議離婚の際は公正証書を作成しましょう。
内容に不備があり、強制執行ができない事態を避けるためには、弁護士にサポートしてもらうことをおすすめします。
さいごに|離婚方法で悩んだら弁護士に相談を
本記事では、離婚の調停調書と公正証書の違いや概要、必要なケースなどについて解説しました。
どちらの書類を作成するかは離婚方法によって決まるため、調停離婚・協議離婚のどちらで話を進めるかがポイントとなります。
「調停離婚と協議離婚のどちらを選べばいいかわからない」「適切な調停調書・公正証書を作成してスムーズに離婚したい」という場合、弁護士に相談してみましょう。
どちらの方法を選ぶにしても、弁護士のサポートがあれば自分に有利な条件で離婚を進めるようサポートしてくれます。
また、代理人として話し合いを進めてくれたり離婚後のトラブルを防ぐために対応してくれたりと、弁護士への依頼にはさまざまなメリットがあります。
弁護士への問い合わせとして、まずは無料相談サービスを活用すれば気軽に不明点を解決できるでしょう。
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