労災(労働災害)の弁護士費用の相場は?弁護士の探し方や選び方を解説


業務中または通勤中のけがや業務に起因した疾病は、労働災害として労災保険の給付対象になることは知っていても、実際に訴訟を起こすとどうなるのかわからない方は少なくないですよね。
仮に労災による被害を受けた場合、労働基準監督署への労災申請や会社との交渉、裁判手続きなどの法的対応が必要です。
しかし、これらを全て自分自身でおこなうことは時間と労力がかかります。
特に労災による治療が必要な場合は大きな負担になるでしょう。
そして、損害賠償の請求を求めて裁判による解決を目指す場合は、弁護士への依頼を検討することが必要です。
そこで本記事では、労災の弁護士費用の相場について解説します。
弁護士費用の内訳や注意すべきこと、できるだけ安く抑えるコツなども紹介するので、ぜひ参考にしてください。
労災(労働災害)とは業務が原因で生じたケガ・疾病のこと
労災とは従業員や社員、アルバイトなどの労働者が業務に従事したことにより被ったけがや疾病のことです。
業務委託社員なども労災認定を受けられるケースがありますが、個々の事情により判断されます。
労災と聞くと作業中のけがや死亡を思い浮かべる方が多いかもしれません。
職場における荷重負荷により脳や心臓疾患が原因となった過労死・過労自殺、セクハラやパワハラなどの心理的負荷による精神障害も労災と判断される場合があります。
会社に雇用されている方が業務災害や通勤災害と認められた際は、労災保険が支給されます。
場合によっては業務委託社員等も労災保険が支給されます。
業務災害は業務上の負傷・疾病・障害・死亡のことで、その事故が業務上であるかが判断のポイントです。
業務と負傷結果との間に因果関係が認められ、かつ当該業務の危険が現実化したものと経験則上認められた場合に認定されます。
通勤災害は通勤による負傷・疾病・障害・死亡のことで、その事故が通勤途中であるかが判断のポイントです。
仮に通勤途中にどこかへ立ち寄った、あるいは生活の本拠点がほかにもある際の事故といった場合は、その事故が通勤災害と認められるか否かは具体的な事情により判断されます。
通勤の間にプライベートな用事を入れると通勤災害とはいえなくなる可能性が高いです。
労災と認められると療養補償給付・休業補償給付・障害補償給付・遺族補償給付に加えて、葬祭料や傷病補償年金、介護補償給付なども支払われます。
労災が発生した際、労災認定を受けるために労働者がおこなわなければならない手続きは、労働保険の給付申請です。
基本的に、労災が発生した場合は会社が責任を負うため、会社が労災手続きをおこなう必要があります。しかし、なかなか会社が手続きを進めてくれないケースは少なくないでしょう。
仮に会社が手続きを進めてくれない場合は、労働者やその家族が労働基準監督署で手続きができます。
労災問題を相談・依頼した場合の弁護士費用の内訳
労災の申請をするうえで、会社が非協力的である、損害賠償を請求したい、労災認定や手続きに不安があるなどの場合は弁護士への依頼をおすすめします。
しかし、弁護士へ依頼を検討した場合、費用面が気になるところです。ここからは、労災問題を相談・依頼した場合の弁護士費用の内訳や概要について解説します。
1. 相談料|30分5,000円が相場だが無料相談をしているところも
一般的な相場として、相談料は30分5,000円から1万円程度です。
初回のみ無料相談を受け付けている弁護士もいるので、費用を抑えたい場合は活用しましょう。
無料相談は1時間までというように、時間制限を設けている法律事務所もあります。
無料で相談できる範囲に関しては事前に弁護士から説明があるため、まずは気負わずに相談してみてください。
弁護士への無料相談を活用するメリットとしては、第三者に話すことで冷静になれる、専門家のアドバイスを踏まえてそのあとの行動ができるなどが挙げられます。
トラブルの本質を踏まえて解決策を提案してくれるので、まずは法律のプロである弁護士に相談してみてください。
2. 着手金|数十万円が相場
着手金は弁護士に交渉や裁判の手続きを依頼したとき最初に払う費用で、一般的な相場は数十万円程度です。
この着手金は、受任範囲をどのようなものにするのかで大きな開きがありますので、無料相談をされる弁護士に確認されてください。
着手金とは、弁護士が手続きを進めるために必要ないわゆるファイトマネーで、弁護士に着手金を支払うことで正式に依頼が成立します。
着手金は弁護士に依頼を引き受けてもらう対価として支払うため、最終的に希望どおりの結果にならなかったとしても返金されません。
着手金が無料で完全成功報酬型を採用している弁護士もいるため、依頼すべきか迷った場合はまず相談してみましょう。
3.成功報酬|獲得金額の10〜30%が相場
一般的な成功報酬の相場は獲得金額の10%から30%です。
依頼主が「経済的利益」を獲得できた際に発生し、事件が最終的に解決した際に支払います。
事件解決により成功した度合いや依頼者が得た利益によって金額は変動し、結果的に依頼主に何の利益がない場合においては、成功報酬は発生しません。
また、労災の場合は損害賠償金や給付金などの金額に応じて変動し、経済的利益以外の結果が得られた場合は給料〇ヵ月分や定額によって決まります。
4. その他の費用(実費)|交通費・郵送費・印刷費など
その他の費用である実費は事件処理のため実際に出費されるもので、交通費・郵送費・印刷費などが挙げられます。
たとえば、弁護士が出張を要する場合、どの交通手段でどの等級を使うのか、宿泊がともなうかなどを事前に確認しておかなければなりません。
裁判を起こす場合に裁判所へ収める印刷代・切手代・記録謄写費用などをはじめ、事件によっては保証金や鑑定料も実費に含まれます。
労災問題の弁護士費用について注意すべき2つのこと
労災問題を弁護士に依頼する場合、法律事務所の料金体系と期待できる利益から適切な費用を判断しなければなりません。
ここからは、労災問題の弁護士費用について注意すべき2つのことを紹介します。
1. 労災手続きと損害賠償請求のそれぞれに弁護士費用がかかるケースもある
労災の場合は申請の手続き代行費用、交渉や労働審査、裁判などを含めた損害賠償請求費用のそれぞれに弁護士費用がかかるケースがあります。
一般的に、弁護士費用が決められる要素はタイムチャージ制、固定額制、着手金・報酬金制です。
損害賠償請求は着手金・報酬金、労災申請の代行はタイムチャージ制として算出されるなど、依頼内容によって料金を定めている場合があります。
2. 労働審判に発展すると弁護士費用が高くなる可能性がある
仮に依頼内容が労働審判に発展した場合、弁護士費用が高くなる可能性には注意してください。
労働審判とは裁判所で裁判官と労働審判委員会の立ち会いのもとおこなわれる紛争解決手続きです。
手続きをすることで通常の裁判よりも早い、かつ安く問題解決に繋がる可能性に期待できます。
労働審判の着手金の一般的な相場は数十万円程度で、成功報酬は経済的利益の10%から30%です。
労働審判をおこなう場合は実費が必要になることを忘れてはいけません。
また、請求する損害賠償金が高ければ高いほど、それだけの印紙代も必要になります。
労災問題の弁護士費用をできるだけ安く抑えるコツ
弁護士費用は決して安いとはいい難いものですが、できるだけ安く抑えることができます。
ここからは、弁護士費用を安く抑える3つのコツを紹介するので、ぜひ参考にしてください。
1. 無料相談を利用して費用の相見積もりをおこなう
弁護士費用に不安がある場合、まずは法律事務所の無料相談を活用しましょう。
無料相談のみで問題を解決することは難しいものの、プロの視点から客観的にトラブルを見て、今取るべき行動や適切な対策、そして法的なアドバイスを受けられます。
特に、労災問題は状況証拠や証拠保全などが重要になるためスピードが大切です。
時間が経てば経つほど問題解決が難しくなってしまう傾向にあるため、できるだけ早い段階で弁護士に相談することをおすすめします。
また、複数の法律事務所から相見積もりを取ることもおすすめです。
法律事務所によって料金体系が異なるため、相見積もりを取ることで比較しやすく、より安い弁護士を見つけられます。
2. 法テラスと提携している弁護士に依頼する
弁護士費用を抑えたい場合、国によって設立された日本司法支援センターである法テラスを利用してください。
ご自身の資産状況によっては法テラスを利用できないこともありますが、資力要件を満たす場合には利用できます。
法テラスは法的トラブル解決のため、経済的余裕がない方でも必要な情報やサービスの提供を受けられる、かつ速やかに司法手続きが利用できることを目的とした機関です。
法テラスと連携している弁護士に依頼することで、弁護士費用を大幅に節約できる可能性があります。
法テラスの費用は一般的相場よりも安く設定されており、トラブルの内容によって弁護士費用が一律で定められています。
それでも支払うことが難しい場合は、規定の条件を満たすと弁護士費用を一時立て替えてもらえる制度が利用できます。
依頼後に無理のないペースで返済できるため、まとまったお金が用意できない場合におすすめです。
3. ケースによっては勤務先に弁護士費用を請求できる
労災の場合、ケースによっては勤務先に弁護士費用を請求できます。
不法行為や安全配慮義務違反により損害賠償請求が認められた場合、弁護士費用の何割かは勤務先の負担となるのです。
そもそも、不法行為がなく勤務先がきちんと安全配慮義務を果たしていれば、労災が発生することはなく弁護士費用の内相当額を支払う必要はなかったと判断されます。
この場合は損害賠償金額に弁護士費用を上乗せして請求可能です。
ただし、労災が発生した場合は速やかに労働基準監督署へ報告をしなければいけません。
なかには報告を怠ったりトラブルを隠蔽したりする悪質な企業があるので注意してください。
また、全ての企業は従業員が安全な環境で業務をおこなえるよう、配慮する義務を負っています。
そのため、労災事故が起きた場合に義務違反が認められると、安全配慮義務違反として損害賠償を請求可能です。
労災の内容が不法行為や安全配慮義務違反に当たるか否かは自身で判断することが難しい場合があるため、少しでも疑問に思うことがあれば弁護士に詳しく説明し判断してもらいましょう。
まとめ
本記事では、労災の弁護士費用の相場について解説しました。
仕事中や通勤中のけがや病気は、労働者である全ての方に起こりえるトラブルです。
仮に労災と判断された場合は弁護士への依頼が望ましいですが、弁護士費用はトラブル内容や請求金額、解決手段によって異なるため高額となるケースは珍しくありません。
数多くの法律事務所が登録されているベンナビ労働問題で無料相談に対応している弁護士を探し、費用面も含めて相談することをおすすめします。
労働者は立場が弱いことが考えられます。
不利な立場に立たされてしまわないよう、労災について少しでも不安があれば弁護士に相談してください。