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退職後にパワハラを訴えても可能だが時効に注意!相談先や慰謝料の相場を解説

弁護士監修記事
労働問題
2024年05月14日
2024年05月14日
退職後にパワハラを訴えても可能だが時効に注意!相談先や慰謝料の相場を解説
この記事を監修した弁護士
(アシロ 社内弁護士)
この記事は、株式会社アシロの『ベンナビ編集部』が執筆、社内弁護士が監修しました。

退職後にパワハラ被害を訴えようと考えている方にとって、在籍していなくても訴訟は可能か、相談はどこにすればいいかなど疑問に感じることは少なくないですよね。

本記事では退職後のパワハラ被害における相談先や費用、準備すべきことなどを解説します。

なお、退職後の訴訟は可能ですが、時効や準備すべきことを把握していなければ泣き寝入りになりかねないため注意しましょう。

そして、弁護士に依頼した場合の訴訟の流れや費用の相場についても触れているので、相談を視野に入れている方はぜひ参考にしてください。

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目次

退職後にパワハラを訴えることは可能!しかし時効がある

退職後でも、パワハラを訴えることは可能です。

在籍中に比べると退職後はパワハラの証拠を集めにくい点はデメリットですが、心身的な被害などは年月を経て表れるケースもあります。退職したからといって訴えを諦めることはありません。

ただし、パワハラの訴訟には時効があるため、できる限り早めにアクションを起こす必要があります。

パワハラの時効は企業側(使用者)や行為者(パワハラの加害者)に対して不法行為を訴える場合、被害または加害者を知ってから3年です。

そして、不法行為を知ってから20年と定められているので、時効切れにならないよう早めに訴えたほうがいいでしょう。

また、不法行為によって心身的なダメージを負った場合は、被害または加害者を知ってから5年、かつ不法行為が起こってから20年です。

損害の内容によってもパワハラの訴訟の時効は異なるので、事前に確認しておいてください。

退職後にパワハラ被害を訴えたいときの相談先5つ

退職後にパワハラ被害を訴える際、5つの相談先が挙げられます。

労力やコストなどがそれぞれ異なるので、自分のニーズに応じて適した機関を選んでください。

1.労働基準監督署|アドバイスがもらえるが解決しないことも

労働基準監査署とは労働基準を順守させるために運営している機関です。パワハラでの相談も可能で、解決に向けたアドバイスを受けられます。

しかし、労働基準監査署はあくまでも労働基準への違反に対してのみ行動を起こすため、パワハラは管轄ではありません。

そのため、労働基準監査署で根本的なパワハラの解決を図ることは困難でしょう

【参考】労働基準監督署に相談した時の対応について詳しく知る

2.労働組合|加害者に法的罰は与えられない

労働組合とは労働者を守ることを目的とした機関で、自分と会社の仲介役となりパワハラの解決を図ってくれます。

しかし、労働組合は和解が目的なため、加害者に対して法的罰を与えられません。コストや労力をかけたくない、訴訟ではなく和解を目的としている方におすすめです。

3.社労士|企業に対して働きかけてもらうことができる

社労士は個人よりも企業を顧客として職場トラブルの和解を目的とする機関で、裁判外紛争解決手続きによって企業との和解を目指します。

裁判を起こさず企業と話し合いによる和解を求める方は、ぜひ活用してください

4.司法書士|民事訴訟であれば司法書士でも申し立てをおこなうことが可能

司法書士への相談は、社外機関の法的な手段でパワハラを訴えたい方におすすめです。

法的な手段を使える点は弁護士と同じですが、司法書士は民事訴訟や140万円以内の損害賠償までしか対応できないなど制限があります。

コストを抑えて民事訴訟を起こしたい、請求額が140万円以内の方などは相談を検討してみましょう

5.弁護士|企業がパワハラを認めないときに依頼

企業がパワハラを認めない、あるいは刑事事件として訴えたいときなどは弁護士への相談がおすすめです。

訴訟は自分だけでも対応できますが、ただでさえ時間や労力、専門的な知識などが求められるうえ、パワハラでダメージを受けた心身では対応が困難と考えられます。

弁護士は訴訟に関するアドバイスをくれるうえ、裁判の際は代理で出廷してくれるなどのメリットもあります。

【参考】パワハラ問題を弁護士に相談するメリット・デメリットについて詳しく知る

退職後にパワハラ被害を訴える場合にかかる費用

退職後にパワハラ被害を訴える場合、状況に応じて必要なコストが変動します。

ここでは、弁護士に依頼した場合と労働審判・訴訟を起こした場合の2パターンの費用相場について解説します。

1.弁護士に対応を依頼する場合の費用

弁護士にパワハラ被害の訴えの対応を依頼する際にも費用が発生し、対応段階では大きく着手金と報酬金にわけられます。

着手金とは弁護士への正式な依頼が決まったときに支払うコストで、事務所によって相場が異なるので事前にチェックしておきましょう。

報酬金とはパワハラ被害の慰謝料を回収できた際などに支払うコストで、固定額だけでなく獲得金額の数パーセントを上乗せして支払うケースもあります。

また、着手金と報酬金はいずれも請求額が大きくなるほど弁護士への支払い額も比例して大きくなるので、予算オーバーにならないよう事前に見積もりを依頼しておきましょう

2.労働審判の申立て・訴訟の提起にかかる費用

会社や加害者との和解が成立せず、万が一労働審判の申し立てや訴訟が必要となった場合は裁判費用がかかります。

裁判費用は大きく収入印紙代と郵便切手代にわけられます

収入印紙は損害賠償額に応じて裁判所に定められているので、裁判所が発行している早見表でチェックしてください。

郵便切手代は数千円から数十万円と幅があり、損害賠償額が大きくなるほど高くなります。

パワハラ訴訟の慰謝料の相場は50万〜100万円

弁護士や訴訟のために費用を支払っても、パワハラ訴訟の慰謝料相場は50万円から100万円程度です。

弁護士への依頼費用や訴訟費用に加えパワハラが原因での心身の不調に対する治療費を考慮すると、費用倒れになる可能性が高いでしょう。

コストと慰謝料のバランスを事前に見積もり、それから訴訟を起こすか検討してください

退職後にパワハラを訴える際の注意点3つ

退職後でもパワハラを許せず、訴えたいという方は少なくないでしょう。

しかし、退職後にパワハラを訴える場合は3つの注意点があります。事前に注意点を把握し、きちんと検討したうえで訴えるかを決めてください。

1.解決まで時間と労力がかかる

パワハラの訴えが解決する段階として内容証明郵便での示談・労働審判・訴訟にわけられます。

これらを自分で対応するにはかなりの労力がかかるため、最初から弁護士へ依頼した方が無難です。

しかし、弁護士への依頼は自分で対応するよりもコストがかかり、段階が進むほど高額になります。

また、パワハラ被害を受けた会社や行為者を相手に訴訟を起こすことは心身ともに大きな負担となる、かつ訴訟まで進むと1年以上の時間がかかる可能性もあります。

退職後にパワハラ被害を訴える場合は、解決までの時間や労力を踏まえてから検討しましょう

2.費用倒れになる可能がある

費用倒れとは、せっかく相手から慰謝料を請求できても訴えるためにかけたコストと同額、もしくはマイナスになってしまうことです。

パワハラ被害を訴えたい場合、相手に反省してほしいのか、お金を得たいのかを事前に明確にしておきましょう。

お金を得たい場合は費用倒れによりマイナスとなるリスクもあります。

3.労災保険給付を請求することが可能

パワハラで金銭的な損害があった場合、会社や行為者からの慰謝料のほかに労災保険給付で補う手段があります

労災保険は損害賠償の一部をカバーする制度で、条件を満たしていれば給付の対象です。

ただし、本来相手から受け取れる慰謝料よりも労災保険のほうが少ないケースはゼロではありません。

慰謝料より労災保険のほうが安い場合は、会社に差額を請求する必要があります

退職後にパワハラ被害を訴えるためにしておくための準備3つ

退職後にパワハラ被害を訴える場合には3つの準備が必要です。

スムーズかつ有利に訴訟を進めるためにも、事前に把握しておいてください。

1.証拠があれば集めておく

弁護士に相談する際だけでなく、裁判を起こす際にも客観的な証拠は必要不可欠です。

パワハラの内容によって被害を示せるデータが異なるので、被害内容によって必要な証拠をチェックしておいてください。

精神的な攻撃をされた

精神的な攻撃とは、暴言や人格否定などが該当します。精神的な攻撃には次の証拠が効果的です。

  • 発言を記録したデータ(メモ・録音・録画など)
  • 同僚の証言

身体的な攻撃をされた

身体的な攻撃とは、殴る・蹴るなどの暴行です。身体的攻撃を受けた場合、次の証拠を集めておきましょう。

  • 暴行現場を記録したデータ(メモ・録音・録画など)
  • 同僚の証言
  • 医師の診断書

なお、医師の診断書は暴行を受けた箇所と一致しているかも大切です。

過小な要求をされた

誰にでもできる単純作業だけ与えたり、まったく仕事を与えなかったりすることは、過小要求としてパワハラに該当します。

次の証拠があれば、パワハラの立証に役立つでしょう。

  • 仕事内容がわかるデータ(メモ・録音・録画など)
  • 同僚の証言

過大な要求をされた

常識的に考えて達成できないようなノルマを課したり、不要な雑用で残業を強いたりする行為はパワハラとみなされます。

会社でどのような仕事をしていたかがわかるものを、証拠として集めておきましょう

  • 仕事内容がわかるデータ(メモ・録音・録画など)
  • 同僚の証言

人間関係から切り離された

同僚と話をさせない、一人だけ別の部屋に追い出すなどの行為は人間関係の切り離しとしてパワハラに該当します。

一人で業務を担当したなど、できる限り切り離しがわかる証拠を集めておきましょう

  • 所属部署や異動経緯がわかるデータ(メモ・録音・録画など)
  • 同僚の証言
  • 仲間外れを示す発言や言動のメモ

プライバシーを侵害された

プライバシーの侵害とは、個人の予定を無理やり聞き出す・付きまとうなどの行為が挙げられます。

プライベートについてしつこく聞かれ気分を害した場合は次のものを証拠に、パワハラとして考えましょう。

  • 質問内容や付きまとわれた日時がわかるデータ(メモ・録音・録画など)
  • 同僚の証言
  • 警察への相談記録

2.パワハラの被害を時系列でまとめておく

集めた証拠の信憑性を高め客観的にもパワハラ被害を立証しやすいよう、パワハラ被害を時系列でまとめておきましょう

時系列でまとめておくことで、弁護士や裁判官に詳しい事情を尋ねられたときスムーズに経緯を伝えられます。

また、パワハラ被害の経緯は在籍中だけでなく退職後も整理しておきましょう

たとえば、退職後にパワハラが原因で心身の不調を患い通院していることや、現在の生活がままならないことなども裁判で必要な情報となります。

3.自分の希望を明確にしておく

自分がどのような結果を求めているか、訴えを起こす前に希望を決めておくことが大切です。

必要最小限のお金だけ受け取り和解をしたいのか、会社や加害者を許せず裁判を起こしたいかなどで弁護士の動きは変わってきます。

また、慰謝料と訴訟にかける労力のバランスも考える必要があるでしょう。高額な慰謝料を求めるほど証拠集めがたいへんになり、加害者も素直に応じづらくなります。

最初に自分の希望を明確にし、最小限のコストや労力でベストな結果を求めることをおすすめします。

退職後にパワハラ被害を裁判所に訴えるまでの流れ

最後に、退職後にパワハラ被害を裁判所に訴えるまでの流れについて解説します。

なお、自分一人で会社を相手に戦うことは困難なため、弁護士への依頼もおすすめです。

  1. 弁護士を通して会社へ交渉
  2. 弁護士を通し内容証明や損害賠償請求書を会社に送付
  3. 会社や行為者と示談交渉
  4. 交渉がうまくいかない場合は労働審判を申し立てる
  5. 労働審判で解決できないときには訴訟

1.弁護士を通して会社へ交渉

パワハラや労働問題を取り扱っている法律事務所に相談し、ニーズに合っていれば依頼をしましょう。依頼後は弁護士が代理で会社に交渉を進めます。

また、弁護士は証拠集めもサポートしてくれるため、在籍中に十分な証拠が集められなかった場合でも相談してみましょう

2.弁護士を通し内容証明や損害賠償請求書を会社に送付

パワハラを立証できる証拠が集まったら、弁護士が内容証明や損害賠償請求書を会社に送付します。

内容証明書は会社や被害者にプレッシャーを与え請求に応じさせやすくするだけでなく、時効を6ヵ月間先延ばしにする効果もあります

書類に記載する金額や内容は弁護士と相談して、慎重に決めましょう。

3.会社や行為者と示談交渉

内容証明郵便が会社や行為者に届き、相手が納得すれば和解となります。

和解が成立すれば示談となり、決められた条件を満たして完了です。

示談交渉は最もコストや時間がかからない手段なので、労働審判や訴訟を避けたい場合はこの時点での妥協も検討しましょう。

4.交渉がうまくいかない場合は労働審判を申し立てる

会社や行為者が和解に応じず示談が成立しない場合は、弁護士が労働審判を申し立てます。

労働審判とは労働に関する紛争の早期解決を目的とした方法で、裁判に比べると労力もコストも抑えられるため、できる限りこの時点での解決を目指しましょう

なお、労働審判には正確かつ客観的なパワハラの証拠が必要となり、十分な証拠がない場合は相手が異議申し立てをして訴訟になる可能性が高まります。

5.労働審判で解決できないときには訴訟

万が一労働審判でも会社や行為者が納得せず解決しない場合は、最終手段である訴訟へと進みます。

訴訟は相手に対して有罪判決を下すこともあるため、パワハラの立証にも慎重になり時間やコストがかさむ傾向にあります。

立証には多くの知識や経験が必要となるため、弁護士へ代理出廷を依頼するメリットが大きいといえるでしょう。

まとめ

本記事では、退職後のパワハラ被害の相談先や費用、必要な準備などについて解説しました。

退職後でもパワハラ被害を訴えることは可能ですが、在職中・退職後にかかわらずパワハラの訴訟には時効があるため、できる限り早めにアクションを起こすことをおすすめします。

なお、相談先としては労働組合や社労士のほかに司法書士や弁護士などが挙げられます。

パワハラの加害者や企業に対して訴訟を起こしたい、対応を代理で依頼したい場合は弁護士へ相談しましょう。

弁護士は自分と会社との仲介役となり、和解や訴訟など希望の結果になるようサポートしてくれます。

ただし、弁護士に依頼すれば必ずしも望む結果になるとは限らないので、パワハラの証拠集めや時系列の整理は慎重におこなってください。

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本記事はベンナビを運営する株式会社アシロが企画・編集をおこないました。
  • ※ベンナビに掲載されているコラムは、必ずしも弁護士が執筆したものではありません。
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