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示談書のテンプレートと書き方|損をしないための示談書作成時の注意点

弁護士監修記事
交通事故
2024年11月18日
2024年12月05日
示談書のテンプレートと書き方|損をしないための示談書作成時の注意点
この記事を監修した弁護士
梅澤 康二弁護士 (弁護士法人プラム綜合法律事務所)
アンダーソン・毛利・友常法律事務所を経て2014年8月にプラム綜合法律事務所を設立。企業法務から一般民事、刑事事件まで総合的なリーガルサービスを提供している。

示談書(じだんしょ)とは、主に交通事故などの民事上の紛争において、加害者と被害者が紛争を解決するために示談した際の内容を記載した文書です。

示談は契約の一種で、交通事故の等の紛争の際に加害者と被害者が双方話し合って解決について合意する法律行為です。

示談自体は口頭でも成立しますが、示談内容を書面に残しておかなければ「思っていた示談内容と違う」「もっと慰謝料を増額してほしい」などと将来的に紛争が起こってしまう可能性がありますし、後々示談の事実を証明することもできません。

そのため、示談の内容については書面で明確化して、将来の紛争を予防する必要があるのです。

交通事故においては、加害者が任意保険に加入している場合任意保険会社が示談について交渉し、最終的な書面作成を行うことが一般的です。

ただし加害者が任意保険に加入していない場合などは、ご自身で示談書を作成しなければなりません。

また、示談書は一度作成してしまうと、基本的には後日内容を変更することができません。

内容を把握せずに安易に示談書の作成を行うと、被害者にとって不利な条件で示談が成立してしまい、これを後日争うこともできないという状態になってしまう可能性もあります。

今回は、示談を作成する際の記載内容や注意点、さらに示談金が支払われない際の対策を記載したいと思います。

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示談書の記載内容

まずは、示談書に記載される内容について確認しておきましょう。

示談書には決まったフォーマット等がある訳ではありませんが、示談内容を記載し双方の署名と捺印があれば成立します。

しかし記載するべき一般的な内容は決まっていますので、ここで紹介しておきます。

示談書はパソコンでも手書きでも、どちらで作成していただいても大丈夫です。

ただし少なくとも被害者・加害者用に2部以上必要になることと、記載途中に修正することもありますのでパソコンで作成する方が便利かもしれません。

では示談書の記載内容を確認していきましょう。

事故の事実を記載する

事故の内容や状況等について記載する必要があります。

この事故の事実の内容は交通事故の加害者と被害者双方が納得できるようにする必要があります。

事故の発生年月日や場所のほか、そして具体的な事故の状況や被害者の負った怪我の状況などは、警察の出した交通事故証明書に基づいて明記するようにしてください。

事故の事実として記載する内容は以下の通りです。

  • 交通事故の発生日時
  • 交通事故の発生場所
  • 当事者(被害者と加害者)の氏名と住所
  • 交通事故証明書番号、登録車両番号
  • 交通事故の概況

交通事故証明書とは

交通事故証明書とは交通事故を発生したことを証明するもので、自動車安全運転センターが発行しています。発行のためには事故の際に警察への届出が行われていることが必要になりますので、必ず交通事故の被害になってしまった際には警察へ届け出るようにして下さい。交通事故証明書は自動車安全センターの各都道府県にある事務所で直接受け取るか、郵送で取り寄せるか、同センターのホームページからダウンロードするかのいずれかで入手することができます。

示談金額・金支払い方法を記載する

示談書の内容において最も重要になるのが示談金の金額と示談金の支払い方法です。

示談書は一度作成すると後から内容を変更することが出来ませんので、示談金に関しては納得いく額を記載するようにしましょう。

また示談金の支払い方法も記載してください。

示談金は一括で支払われることが一般的ですが、分割にすることもできます。

また示談金の支払い期限についても記載しておきましょう。

示談金の内訳・示談金の根拠を記載する

示談金額の内訳や根拠を記載するようにして下さい。

示談金の支払対象となる損害には、物的損害、傷害損害、後遺症損害という項目があり、これら損害項目について積極損害や消極損害があります。

また、これら損害とは別の精神損害として、慰謝料の項目もあります。

示談金はこれら損害項目をすべて含むものとして算定する必要があります。

示談金の金額の妥当性を担保するためには、それぞれの損害項目について根拠に基づいて算定する必要があります。

根拠となるのは、修理見積書、診断書、診療報酬明細書、後遺障害認定通知書等なので、これら客観的資料を踏まえながら示談金を計算して下さい。

また、これら損害は常にその全額が補填されるわけではありません。

被害者側に一定程度過失がある場合は、当該過失割合に基づいて損害額が減額されます(過失相殺といいます)。

示談の際に、被害者において一定程度過失が認められる場合、当該過失相殺についても損害算定の上で考慮する必要があります(場合によっては、示談書において過失割合について明記しても良いかもしれません。)。

示談金が支払われない場合について記載する

仮に加害者自身で示談金を支払わなければならない場合に、資力がなく期日までに示談金が支払われない可能性もあります。

その際には違約金や遅延損害金の金利を設定しておくと効果的です。

清算条項を記載する

清算条項とは、この示談書をもって紛争の全てを終了するという意味です。

示談書には、交通事故の紛争において問題が解決したことを示し、示談書に記載された内容以外の金銭は一切請求しない旨を記載しておきましょう。

示談書作成時の日時・被害者・加害者の氏名を記載・捺印する

最後に、作成時の日時と被害者・加害者双方の氏名を記載して捺印します。

示談書の記載例

示談書の記載例を表示しておきます。

示談書制作の際に参考にしてください

また近年ではテンプレートをサイトや保険会社のホームページ等からダウンロードすることも可能です。

示談書の記載例

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示談書作成時の注意事項

示談書の作成には注意点がありますので、確認しておきましょう。

示談は口約束でも成立する

示談は口約束でも成立します。

また題名として示談書等の記載がなくても同様です。

そのため事故現場にて「○円払うからそれで示談にしてくれないか」などと加害者から交渉されることがありますが、決して事故現場等において口約束等で示談を行わないようにして下さい(もっとも、口約束で示談をしても確定的な合意があったと評価することは難しいかもしれませんね)。

示談書作成は受傷治癒後・後遺障害等級認定後に行う

示談書の作成は基本的には交通事故によって負った受傷が治ゆしたあと、もしくは症状固定(医師の治療をおこなっても受傷の様態が回復しない状態)後に行うようにして下さい。

受傷が治ゆもしくは症状固定に至るまでは正確な損害額の算定は困難です。

また、治癒もしくは症状固定時に後遺症状があれば、これについて後遺障害等級認定を受けるべきかどうかも判断しなければなりません(結果、後遺障害等級認定を受ければこれも含めて損害額を算定することになります)。

例えば、怪我で通院している途中で保険会社や加害者が、治療費の打ち切りや示談交渉及び示談書交渉について打診してくる場合がありますが、安易に相手の提案を受け入れると妥当な示談金を獲得できなくなる可能性があるため注意してください。

この場合は担当医(場合によっては弁護士)に相談して下さい。

署名捺印は必ず行う

示談書が効力を持つためには署名と捺印を行っている必要があります

捺印とはハンコを押すこと、署名とは自分の名前を記載することをいいます。

この時署名は自筆で行い、捺印はシャチハタは避けるようにして下さい(もっとも、シャチハタでも法的には有効です)。

署名捺印を行う目的としては以下のことが挙げられます。

  1. 示談書の作成者が加害者と被害者本人である確認
  2. 加害者と被害者の双方ともに、示談書の内容に合意した事の確認

さらに、日本の法意識として、重要な文書においては作成者が署名の上捺印を行って文書の作成を完成させるという慣行があります。

重要な文書については作成者が署名した上その名下に押印することによって文書の作成を完結させるという我が国の慣行ないし法意識に照らして文書の完成を担保することにあると解されるところ

引用元:文献番号 1989WLJPCA02160001 事件番号 昭62(オ)1137号

    裁判年月日 平成元年 2月16日 裁判所名 最高裁第一小法廷 

また、万が一後日、加害者が示談書の署名や押印を自分のものであることを否定したとしても署名・捺印の両方があった場合は当事者の意思に基づくものであるとの推定を受けることになりますので、立証面でより安全となります。

後日賠償を追加する条件も付与しておく

場合により示談成立後に後遺障害が発生する可能性もあります。

その際には加害者に対して後遺障害逸失利益や後遺障害慰謝料などを請求することができますので、後日後遺障害が発生する可能性も考え、追加して示談金を請求できる旨を記載しておくと良いでしょう。

示談はやり直しがきかない

一度示談を行った場合には、やり直すことはできません。

示談というのは、加害者が被害者に対して損害賠償を行うことを約束し、被害者はその損害賠償に納得し、それ以上加害者に対して損害賠償の請求を行わないことを確定的に約束することです。

そのため、一度示談が成立すると示談書に記載のない損害賠償については加害者に対して請求することが出来ませんので、示談書作成の際には内容を良く把握しておくようにして下さい。

相手の保険会社の言われるがままに、忙しいからと示談をすぐに済ませてしまって、実際に獲得できる金額より少ない金額になってしまうケースが後を絶ちません。

また、示談交渉において第三者を介入させずにやり取りするとトラブルが発生しがちです。

仮に相手方の保険会社が介入してきた場合も、被害者にとって不利な示談金交渉を行ってくる可能性が高いため、適切な判断が出来ないことに繋がります。

示談を公正証書にしておくメリット

公正証書とは、裁判官、検察官、弁護士あるいは法務局長や司法書士など長年法律関係の仕事をしていた人の中から法務大臣に任命された公証人が作成する公文書のことを言います。

示談書が公正証書でない場合は、示談内容が履行されなかった場合、加害者に支払を強制するためには民事訴訟を起こさなければなりません。

しかし公正証書については執行受諾文言が付されていれば、示談金の支払について裁判手続きを行うことなく強制執行を行うことができます。

加害者の資力によっては、示談内容が必ず履行されるとも限りませんので、不安要素を失くすためにも示談書は公正証書にしておくようにしましょう。

示談書を公正証書にしておくメリット

示談書を公正証書にしておくメリットは以下のようなものがあります。

証拠能力としての価値が高い

公正証書は、公証人が内容を確認して作成を行います。

そのため文書としての正確性や信用度が高く、示談の内容に関して後に加害者と争ったり、偽造や紛失などがおこる可能性が低減できます

裁判所の判決を待たずに強制執行を行うことが出来る

公正証書においては執行受諾条項を追加することができます。

そうすると加害者が示談金の支払いをしなかったり、支払ったとしても合意した示談金の金額と違う場合には民事裁判の判決を待たずに不動産、銀行預金、給料などの財産をすぐに差し押さえることができます。

示談書の内容に誤りが発生する可能性がない

公正証書を作成する公証人は法律の専門家です。

そのため加害者・被害者が作成する示談書に比べて内容が不正確となる可能性が低く、確実性が高くなります

公正証書作成の手順

公正証書を作成するには、まず被害者と加害者で示談の内容をまとめます

公証人が示談案を提示することはありません。

示談内容が決まったら、被害者と加害者双方が公証役場に行き、公証人に作成を依頼します。

公正証書作成時の持ち物

公正役場に行く際には以下の物を持参してください。

  • 示談書
  • 本人の身分確認ができる証明書(運転免許証、パスポート、顔写真付き住民基本台帳カードなど)
  • 認印または、印鑑証明書と実印
  • 代理人が認証を受ける場合は、依頼人の署名と実印が押してある委任状、依頼した方の印鑑証明書(3カ月以内のもの)、代理人の印鑑証明書

公正証書を作成する際の費用

公正証書を作成する際には、示談金の金額に応じて費用がかかります。

作成の際の費用を一覧で記載しておきます。

表:示談金別公正証書作成費用

示談金

費用

100万円以下

5,000円

100万円を超え200万円以下

7,000円

200万円を超え500万円以下

11,000円

500万円を超え1,000万円以下

17,000円

1,000万円を超え3,000万円以下

23,000円

3,000万円を超え5,000万円以下

29,000円

5,000万円を超え1億円以下

43,000円

1億円を超え3億円以下

43,000円
※5,000万円までごとに、13,000円を加算

3億円を超え10億円以下

95,000円
※5,000万円までごとに、11,000円を加算

10億円を超える場合

249,000円
※5,000万円までごとに、8,000円を加算

参考「日本公証人連合会 手数料

示談書作成を弁護士に依頼するメリット

最後に、示談書の作成を弁護士に依頼するメリットを確認しておきましょう。

弁護士示談書作成の際には、法律の専門家という立場から、示談書の意味や内容その影響などを的確に判断して被害者に対してアドバイスを行うことが出来ます。

更に保険会社から示談書を提示された場合には、示談書の内容を検討し、被害者にとって有利な条件を追加することも可能になります。

また、公正証書を作る際には、メリットもありますが、手間と心理的な負担や費用が掛かると言ったデメリットも発生します。

場合により公正証書にする必要がない可能性もありますので、弁護士に依頼することで公正証書の必要性を判断してくれます。

まとめ

示談書は後日内容を変更できませんので慎重に内容を検討する必要があります。

もし不明な点があれば一度弁護士に相談することをおすすめします

また、弁護士に示談交渉の依頼を行うことにより慰謝料などの示談金が増額する可能性があります。

示談内容に不明な点がある場合や、納得がいかない場合には弁護士に一度相談することを強くおすすめします

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編集部
本記事はベンナビを運営する株式会社アシロが企画・編集をおこないました。
  • ※ベンナビに掲載されているコラムは、必ずしも弁護士が執筆したものではありません。
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