個人再生を申し立てれば競売は止められる?条件と手続きの流れを解説


住宅ローンの返済を長期間にわたり滞納していると、ローン支払い中の自宅を差し押さえられて競売にかけられてしまうケースがあります。
ローンの滞納により自宅を競売にかけられた場合は、個人再生手続きによって競売を止めることが可能です。
本記事では、個人再生により競売を止められる理由や競売手続きが中止されるまでの流れについて詳しく解説します。
また、個人再生による競売を止めるうえでのポイントや注意点も紹介するので、ぜひ参考にしてください。
個人再生をすることで自宅の競売は止められる!
個人再生とは、所管の地方裁判所に申し立てることにより、各種ローンやリボ払いなどの全ての債務を最大で10分の1にまで減額してもらう手続きです。
個人再生には「住宅ローン特則」という決まりがあり、ローンを返済中の自宅は手元に残しながら借金を大幅に減額することができます。
また、ローンの支払いが滞ったことにより、住宅ローンの債権者である銀行や保証会社によって住宅が差し押さえられている場合でも、個人再生の手続きを開始すると抵当権の実行手続きを裁判所命令により中止してもらえる可能性があります。
(抵当権の実行手続の中止命令等)
第百九十七条 裁判所は、再生手続開始の申立てがあった場合において、住宅資金特別条項を定めた再生計画の認可の見込みがあると認めるときは、再生債務者の申立てにより、相当の期間を定めて、住宅又は再生債務者が有する住宅の敷地に設定されている前条第三号に規定する抵当権の実行手続の中止を命ずることができる。
抵当権の実行手続きを中止するには、個人再生によって減額されたあとの借金を計画通り返済していけることを認めてもらう必要があります。
そのため、弁護士などの専門家のサポートを受けて手続きを進めるのがよいでしょう。
個人再生により競売を止められる2つの理由
ここでは、抵当権を行使されて差し押さえられた住宅の競売について、個人再生がなぜ有効なのかを解説します。
1.個人再生中は裁判所が担保権実行手続中止命令を出してくれるから
個人再生手続きの開始決定が裁判所で認められた際、裁判所に申し立てれば担保権実行手続中止命令を出してもらえる可能性があります。
担保権とは、抵当権のように債務の不履行があった場合に債権を回収するための権利の総称であり、住宅の抵当権も担保権の一種です。
担保権実行手続中止命令が出されると、住宅ローンの抵当権が実行されて住宅が競売にかけられた場合でも、競売手続きの進行が法的に制限され、競売を止められることができます。
2.個人再生後は「巻き戻し」によって代位弁済前の状態に戻せるから
住宅の抵当権が実行された段階では、保証会社によって住宅ローンが代位弁済されており、住宅ローンの債権者がローンを組んだ銀行などの金融機関から保証会社に代わっているケースが一般的です。
代位弁済がおこなわれると、債権者が保証会社に代わった以上、自宅の所有権も保証会社に移り、これからは代位弁済してくれた保証会社に対して支払いをしていかなくてはいけないはずです。
しかし、保証会社による代位弁済から6ヵ月以内であれば、個人再生の手続きを進めることによって「住宅ローンの巻き戻し」を起こせます。
巻き戻しとは、個人再生の住宅ローン特則が適用される場合に、代位弁済がおこなわれたとしても、その効果を取り消し、元の債権関係に戻すことができる仕組みです。
具体的には、保証会社が住宅ローンを代位弁済していた場合でも、その代位弁済が巻き戻され、債務者は引き続き銀行などの金融機関に対して住宅ローンを返済する形で住宅を守ることが可能になります。
個人再生により進行中の競売手続が中止されるまでの大まかな流れ
個人再生の手続きによって進行中の競売手続が中止されるまでの流れは、以下のとおりです。
- 裁判所に個人再生の申立てをする
- 裁判所に競売中止命令の申立てをする
- 裁判所が競売申立人に対して聴取をする
- 裁判所から執行停止文書の謄本が交付される
- 競売手続をしている裁判所へ執行停止文書の謄本を提出する
- 執行停止文書の謄本を受け取った裁判所が競売手続を中止させる
競売手続きが中止されたあとは、裁判所から認可された再生計画にしたがって返済を続けていくことで、一度は差し押さえられた住宅も手元に残しながら借金の返済負担を大幅に軽減できます。
個人再生の手続きにより競売を止めるための3つのポイント
個人再生によって自宅の競売を止めるためには、以下の3つのポイントを押さえておきましょう。
- 差し押さえをされたらすぐに申立てをする
- 履行できる見込みがある再生計画を作成する
- 個人再生の手続きが得意な弁護士に相談・依頼する
それぞれのポイントについて、以下で詳しく解説します。
1.差し押さえをされたらすぐに申立てをする
自宅が競売にかけられそうな場合、差し押さえの通知が届いた段階で迅速に個人再生手続きの申立てをおこなうことが重要です。
競売を中止するためには、保証会社による代位弁済を巻き戻す必要がありますが、住宅ローンの巻き戻しは「代位弁済後6ヵ月以内」でないと認められません。
個人再生を裁判所に申し立てるためには、債務や財産・収入などに関するさまざまな書類を用意する必要があるため、少しでも早く行動を開始しないと、巻き戻しが間に合わなくなる可能性があります。
そのため、自宅が競売にかけられた場合は速やかに弁護士に相談して適切な対処をとってもらうべきといえます。
2.履行できる見込みがある再生計画を作成する
個人再生手続きにおいては、裁判所の命令によって住宅に対する抵当権の実行を中止してもらえます。
しかし、そのためには裁判所から「再生計画が履行できる見込みがある」と認められることが必須です。
再生計画には、債務者の収入、支出、財産状況を詳細に記載したうえで、減額後の債務の返済スケジュールを明示しましょう。
とはいえ、素人だけで返済見込みを明確に示す再生計画を作成するのは困難です、
裁判所から認められる再生計画を作成するためには、弁護士などの専門家による助力が不可欠といえるでしょう。
3.個人再生の手続きが得意な弁護士に相談・依頼する
弁護士は法律の全てに精通しているように思えますが、弁護士にも得意分野・不得意分野が存在します。
個人再生を依頼する場合は、必ず個人再生を得意としている事務所に依頼するようにしましょう。
個人再生は非常に複雑な手続きで、書類作成の手間や裁判所とのやり取りも多いため、専門知識を持つ弁護士に相談・依頼することが重要です。
とくに、自宅が競売にかけられており競売を止めたい場合は、迅速かつ正確な対応が求められるため、経験豊富な弁護士を選ぶことが成功の鍵といえるでしょう。
個人再生の実績が豊富な弁護士は、債務者の財務状況を分析し、抵当権の実行を中止するために不可欠な「履行の見込みがある再生計画」を作成するサポートもしてくれます。
また、裁判所や債権者との交渉も代行してくれるため、債務者が直接対応する負担を軽減できます。
さらに、住宅ローン特則を活用する際の手続きについても専門的なアドバイスを受けられるため、競売中止の成功率が大幅に向上するはずです。
個人再生による競売中止に関する注意点
個人再生の効力によって競売の中止を考えている方は、以下の3点に注意しましょう。
- 競売中止命令の申立てもおこなう必要がある
- 個人再生中に競売が中止される期間は3〜4ヵ月程度である
- 個人再生が許可されたあとは差押抹消の手続きが必要になる
それぞれの注意点について、以下で詳しく解説します。
1.競売中止命令の申立てもおこなう必要がある
個人再生手続きを開始しても、自動的に競売が中止されるわけではありません。
すでに自宅の競売が開始されている場合、競売を止めるためには「競売中止命令」の申し立てを別途おこなう必要があります。
競売中止命令の申立てが遅れると、競売が進行してしまい、最悪の場合には競売結果が確定して自宅を失ってしまう可能性もあります。
そうなると、そもそも個人再生をするメリットがなくなってしまうでしょう。
そのため、競売の通知を受けた段階で迅速に弁護士に相談をして、個人再生と競売中止命令の両方を申し立てることが重要です。
2.個人再生中に競売が中止される期間は3~4か月程度である
競売中止命令が認められると競売手続きは一時的に停止されますが、その期間は無制限ではなく、通常3ヵ月~4ヵ月程度に限られます。
この期間中に、債務者は個人再生手続きを進め、再生計画案を裁判所に提出して承認を得る必要があります。
もしこの期間内に計画案が承認されない場合や、債務者が計画案の提出を怠った場合、競売手続きが再開されることになるでしょう。
そのため、競売中止命令が認められたあと3ヵ月以上経過しても個人再生の認可決定がおりない場合は、再度中止命令を申し立てる必要があります。
競売の再開を防ぐには、個人再生の実績が豊富な弁護士に相談して、中止命令の期限を確実に管理してもらうようにしましょう。
3.個人再生が許可されたあとは差押抹消の手続きが必要になる
個人再生手続きが裁判所に認められたあとは、一度差し押さえを受けた住宅について、登記上の差押抹消の手続きが必要になります。
競売が中止されていたとしても、登記事項として差押えが残ったままだと、所有権や取引に制限がかかる可能性があるからです。
差押抹消手続きについては、個人再生を依頼した弁護士に相談して進めるようにしましょう。
さいごに|自宅が競売にかけられてしまったら早めに弁護士に相談を
本記事では、自宅が競売にかけられた場合に個人再生で競売を中止する方法について詳しく解説しました。
個人再生を申し立てると、差し押さえられた自宅の競売を中止できますが、競売を止めるためには保証会社の代位弁済から6ヵ月以内に申し立てる必要があります。
個人再生の申し立てにはさまざまな書類の準備が必要となるため、自宅が競売にかけられた場合は少しでも早く弁護士に相談して手続きを進めましょう。
ベンナビ債務整理では、個人再生をはじめとした債務整理の実績が豊富な弁護士を多数紹介しています。
初回の相談は無料で受けてくれる事務所も多いので、まずは話だけでも聞いてもらうのがおすすめです。