交通事故の加害者が外国人だったら?損害賠償請求の流れやポイントなどについて解説


近年、訪日外国人の数は増えており、それに伴い日本人と外国人の交通事故も増加しています。
日本国内で外国人との交通事故が生じた場合、原則として日本の法律に基づいて損害賠償請求をおこないます。
しかし、加害者が外国人の場合には、保険、帰国、言語などの面でトラブルになりやすいため注意が必要です。
本記事では、外国人との交通事故に巻き込まれた被害者の方に向けて、以下の内容について説明します。
- 日本国内での交通事故で適用される法律
- 外国人に対して損害賠償を請求する際の流れ
- 外国人に対して賠償金を請求できない場合の対処法
- 加害者である外国人と示談交渉をする場合の注意点 など
本記事を参考に、外国人との交通事故に巻き込まれても安心して対応できるようになりましょう。
日本国内の交通事故では相手が外国人であっても日本法が適用される
法の適用に関する通則法第17条では、不法行為に対して適用する法律について以下のように定めています。
(不法行為)
第十七条 不法行為によって生ずる債権の成立及び効力は、加害行為の結果が発生した地の法による。
ただし、その地における結果の発生が通常予見することのできないものであったときは、加害行為が行われた地の法による。
上記の条文からもわかるとおり、交通事故の相手が外国人であっても原則として日本法が適用されます。
そのため、基本的には日本人が加害者の場合と同じように損害賠償請求の手続きをおこなえばよいでしょう。
加害者である外国人に対して直接損害賠償を請求する際の流れ
交通事故の加害者が外国人であった場合に直接損害賠償を請求する際の流れは、以下のとおりです。
- 事故後に連絡先の交換などをする
- 医療機関を受診して通院・治療をする
- 治療が終わったら示談交渉をおこなう
ここでは、交通事故の加害者が外国人であった場合の損害賠償請求の流れについて説明します。
1.事故後に連絡先の交換などをする
事故直後は、通常の交通事故と同じように以下のような対応を取りましょう。
- 救護活動をする
- 警察に通報する
- 事故現場の記録をする
- 加害者と連絡先を交換する
- 自分の保険会社に連絡する
なお、加害者が外国人の場合は勤務先や保険の有無、レンタカー会社などを確認しておくべきです。
なぜなら、雇用主や保険会社、レンタカー会社などに対して、損害賠償を請求できる可能性があるからです。
2.医療機関を受診して通院・治療をする
交通事故の被害に遭ったら、医療機関を受診して通院・治療を受けましょう。
けがで通院・治療が必要なときは、医師の指示に従って続けることがポイントになります。
3.治療が終わったら示談交渉をおこなう
以下のタイミングになったら、示談交渉を開始しましょう。
- けがが完治したとき
- 症状固定の診断を受けて後遺障害等級認定の手続きを終えたとき
示談交渉をするにあたり、まずは治療費や慰謝料などの合計額を計算します。
その後、加害者に対して損害賠償請求をおこない、示談交渉を始めることになります。
話し合いがまとまったら示談書を作成・締結し、支払期限までに加害者から示談金が振り込まれたら完了です。
加害者である外国人に対して賠償金を請求できない場合の対処法
交通事故の加害者である外国人に対して賠償金を請求できない場合は、以下のような対処法があります。
- 雇用主やレンタカー会社などに請求する
- 被害者が加入している任意保険を利用する
- 仕事中・通勤中の場合は労災保険を利用する
ここでは、交通事故の加害者である外国人に対して賠償金を請求できない場合の対処法について説明します。
1.雇用主やレンタカー会社などに請求する
加害者の状況次第では、被害者は以下の対象者に対して損害賠償請求をすることができます。
- 加害者が仕事中の場合:雇用主
- 加害者がレンタカーを借りていた場合:レンタカー会社
加害者が仕事中の場合は、その雇用主に対して使用者責任を追及できる可能性があります(民法第715条1項)。
また、レンタカーを借りていたときは、そのレンタカー会社に対して運行供用者責任を追及できる可能性があるでしょう(自動車損害賠償保障法第3条)。
2.被害者が加入している任意保険を利用する
交通事故の被害者は、以下のような任意保険が使える場合があります。
- 人身傷害保険:交通事故でけがをした場合に利用できる保険
- 車両保険:交通事故で自動車の修理・買換えが必要な場合に利用できる保険
利用できる保険の種類は、ご自身の保険の契約内容によって異なります。
手元にある保険証券の内容を確認したり、代理店などに問い合わせたりしてみましょう。
3.仕事中・通勤中の場合は労災保険を利用する
仕事中や通勤中に交通事故の被害に遭った場合は、労災保険によって補償を受けられます。
労災指定医療機関を受診した場合は窓口で手続きができますが、そうでない場合は立替払いが必要になります。
労災保険を利用したい場合は、勤務先に交通事故の被害に遭ったことを報告して指示を受けるようにしましょう。
加害者が外国人である場合に示談交渉をする際の2つの注意点
交通事故の加害者が外国人である場合は、以下の点に注意すべきでしょう。
- 帰国されると事実上請求するのが難しくなる
- 日本語でのやり取りが難しいことがある
ここでは、加害者が外国人であった場合の示談交渉の注意点について説明します。
1.帰国されると事実上請求するのが難しくなる
加害者である外国人が帰国した場合、以下のような理由から本人への損害賠償請求は困難になります。
- 音信不通になり連絡が取れなくなるから
- 住所地がわからず訴訟を起こせなくなるから
- 日本に財産がなければ強制執行ができないから
特に加害者が観光客などの場合、示談や訴訟が終わるまで日本に無理やり滞在させることは難しいです。
レンタカー会社などに請求したり、自身の任意保険を利用したりすることを検討しましょう。
2.日本語でのやり取りが難しいことがある
加害者が外国人の場合は、言語の違いからやり取りに時間がかかることがあります。
また、日本人と外国人との間で損害賠償の考え方が異なり、示談が長引く可能性もあるでしょう。
もし当事者同士での解決が難しいなら、英語などで示談交渉ができる弁護士に依頼するのもおすすめです。
さいごに|外国人との交通事故の被害に遭ったら早めに弁護士に相談を!
交通事故の加害者が外国人であった場合でも、原則として日本の法律で損害賠償請求などをおこなえます。
しかし、帰国されると回収が困難になったり、やり取りに時間がかかったりする点には注意が必要でしょう。
もし交通事故の加害者が外国人だとわかったら、できる限り早めに弁護士に相談・依頼するのがおすすめです。
弁護士に相談・依頼をすれば「誰に請求すればいいか」「今後どうなるのか」などをアドバイスしてもらえます。
このような弁護士のアドバイスやサポートを受けつつ、しっかりと交通事故の補償を受けられるようにしましょう。