交通事故の裁判費用はどのくらい?誰が払うかや相手に請求できるかも解説


- 「交通事故について裁判を起こすとどれくらい費用がかかる?」
- 「弁護士に依頼するとかかる費用は?」
交通事故について加害者ともめてしまい、裁判になったときの費用が心配な方も多いでしょう。
裁判を起こすには、裁判所に支払う費用に加えて弁護士費用も必要になるため、事前に相場を理解しておくことが大切です。
そこで本記事では、交通事故の裁判でかかる費用について詳しく解説します。
また、裁判費用や弁護士費用を相手に請求できるケースや、裁判費用を抑える方法も紹介するので、ぜひ参考にしてください。
交通事故の裁判費用はどのくらい?内訳と相場
交通事故の裁判を起こすには、申立手数料・郵便代・弁護士費用などがかかります。
まずはそれぞれの内容や相場を確認しましょう。
申立手数料 | 裁判を起こすときにかかる手数料
交通事故について裁判を起こす際、裁判所に対して申立手数料を支払う必要があります。
申立手数料は、訴額に応じて以下のように異なります。
なお、訴額とは交通事故の加害者に請求する金額のことです。
訴額 | 申立手数料 |
~100万円までの分 | 10万円ごとに1,000円 |
100万円~500万円までの分 | 20万円ごとに1,000円 |
500万円~1,000万円までの分 | 50万円ごとに2,000円 |
1,000万円~10億円までの分 | 100万円ごとに3,000円 |
10億円~50億円までの分 | 500万円ごとに1万円 |
50億円以上の分 | 1,000万円ごとに1万円 |
上記の表に当てはまると、訴額が70万円の場合の申立手数料は7,000円です。
この際、申立手数料は訴額に応じて段階的に計算される点に注意してください。
たとえば、訴額が160万円の場合は、以下のように計算します。
- 最初の100万円までの分: 10万円ごとに1,000円=1万円
- 100万~160万円までの分(残りの60万円分):20万円ごとに1,000円=3,000円
- ①+②=1万円+3,000円=1万3,000円
詳しい計算方法がわからない場合は、裁判所に直接確認するとよいでしょう。
なお、申立手数料は訴状や申立書に収入印紙を貼り付ける形で納付します。
収入印紙は、裁判所内の売店や郵便局で購入可能です。
控訴・上告をするときは手数料が上がる
裁判は三審制であるため、控訴・上告が可能です。
裁判の三審制であるため、一審の結果に不服があれば、控訴を申し立てることができます。
控訴の結果にも不服があれば、もう一度審理するよう上告を申し立てることも可能です。
ただし、控訴・上告の際は、別途申立手数料が発生します。
控訴・上告にかかる申立手数料は、次のとおりです。
- 控訴の場合…初審の基準の1.5倍
- 上告の場合…初審の基準の2倍
郵便代 | 裁判所から当事者へ書類を郵送するための費用
裁判所から当事者へ書類を送付するために、郵便代も納付する必要があります。
金額は裁判所ごとに異なり、納付方法は郵便切手または現金です。
切手の場合は、訴状や申立書とともに納付します。
切手は、郵便局はもちろん裁判所内の売店でも購入可能です。
また、現金納付の場合は、次の3つの納付方法から選択することになります。
窓口納付 | 訴状を提出したあと、受付窓口で保管金提出書をもらいましょう。 保管金提出書を記入し、印鑑と現金を準備して裁判所の担当部署で手続きします。 |
銀行振込 | 訴状を提出したあと、受付窓口で保管金提出書と裁判所保管金振込依頼書をもらいましょう。 任意の銀行で振込をしたら、必要事項を記入して裁判所の担当部署へ提出します。 |
電子納付 | 裁判所のホームページで電子納付利用者登録申請書をダウンロードし、必要事項を記入して裁判所の担当部署へ担当部署に提出します。 受付窓口で保管金提出書の交付を受け、ATMで納付します。 |
郵便代が余ったときの還付を考慮して現金納付を推奨する裁判所が多い一方で、現金納付には対応していない裁判所もあります。
事前に確認しましょう。
郵便代の具体的な金額
郵便代は裁判所ごとに設定されています。
たとえば、東京地方裁判所では、原告と被告がそれぞれ一人ずつの場合の郵便代は6,000円に設定されています。
一人増えるごとの追加代金は2,440円です。
ただし、原告や被告が複数人いても、弁護士が共通していて一人しかいないようなときは、代表者として弁護士に書類を郵送すればよいため、追加費用はかからないことがあります。
なお、控訴・上告の際は控訴先や上告先の裁判所が定める金額を準備する必要があります。
弁護士費用 | 弁護士に依頼する場合
裁判を起こすためには、裁判所に納める費用とは別で弁護士に費用を支払う必要があります。
交通事故の裁判を弁護士に依頼する際にかかる費用の内訳は、法律相談料・着手金・報酬金・弁護士日当・実費などです。
具体的には、次のような費用がかかります。
費用項目 | 内容 |
法律相談料 | 弁護士に相談し、適切な解決策についてアドバイスをもらう際にかかる費用です。 初回相談は無料にしている法律事務所も少なくありません。 |
着手金 | 弁護活動を開始する際にかかる費用です。 着手金の支払いが完了したあとから弁護士は業務を開始します。 |
報酬金 | 事件が解決し、弁護活動した成果に応じて支払う費用です。 通常、経済的利益の価格によって決められます。 経済的利益とは、相手にいくらの損害賠償金額が請求できたかやいくらの支払いを免れることができたかという価格を指します。 |
弁護士日当 | 弁護士が所属する法律事務所以外の場所で弁護活動をしなければならない際に支払う費用です。 距離や時間によって価格が設定されているケースが多いです。 |
実費 | 交通費や通信費など、実際にかかった費用です。 |
弁護士費用は、法律事務所ごとに自由に決めることができるため、費用体系はさまざまです。
しかし、多くの法律事務所が「(旧)日本弁護士連合会報酬等基準」を参考に価格を決定しています。
「(旧)日本弁護士連合会報酬等基準」とは、2004年に廃止された、弁護士会が定めていた報酬基準のことです。
廃止されたあとも、引き続き基準に則っている法律事務所が多いため参考するとよいでしょう。
たとえば、着手金や報酬金には次のような基準が定められています。
経済的利益 | 着手金 | 報酬金 |
300万円以下 | 経済的利益の8% | 経済的利益の16% |
300万円超え3,000万円以下 | 経済的利益の5%+9万円 | 経済的利益の10%+18万円 |
3,000万円超え3億円以下 | 経済的利益の3%+69万円 | 経済的利益の6%+138万円 |
3億円超え | 経済的利益の2%+369万円 | 経済的利益の4%+738万円 |
ただし、「(旧)日本弁護士連合会報酬等基準」はあくまでも目安です。
具体的な料金体系や費用については、依頼を検討している法律事務所に直接問合わせて確認しましょう。
そのほかにかかる可能性がある費用
交通事故について裁判をすると、けがに関する診断書・後遺障害診断書・休業損害証明書・源泉徴収票など、さまざまな書類を提出することになります。
裁判では損害の発生を証明しなければならないためです。
たとえば、診断書の発行には、医療機関や記載内容によって異なりますが1,000円〜10,000円程度の費用がかかります。
診断書の作成は医療保険の適応外なので、全額自己負担です。
また、源泉徴収票は基本的には無料で発行してもらえますが、事務手数料として数百円がかかることもあります。
交通事故の裁判費用例
交通事故の裁判には費用が発生しますが、裁判を通じて加害者に対して賠償金を請求するため、基本的に損をすることはありません。
裁判をしないよりも裁判をするほうが受け取れる賠償金が増額することも多く、裁判費用自体も相手に請求できる可能性も十分にあります。
獲得できる賠償金額はケースによって異なりますが、以下で目安をシミュレーションしてみましょう。
たとえば、5,500万円の賠償金を一人の加害者に対して請求したとします。
そのうち2,500万円が裁判で支払いを認められた金額だとしましょう。
その場合の裁判費用の内訳と合計は、以下のとおりです。
申立て手数料 | 18万5,000円 |
郵便切手代 | 5,000円 |
弁護士費用 | 402万円 |
そのほかの費用 | 1万円 |
合計 | 422万円 |
表を見てもわかるとおり、受け取れる賠償金額が2,500万円なのに対して、裁判にかかる費用は422万円と約1/6程度です。
費用がかかる分裁判をためらってしまう方も多いですが、損害賠償を請求できれば実質プラスになることがほとんどといえるでしょう。
一度弁護士に相談し、受け取れる賠償額や裁判費用について確認してみるのがおすすめです。
交通事故裁判の費用は誰が払う?加害者に請求できる?
交通事故の裁判にかかる費用は、被害者が支払わなければならないのでしょうか。
ここからは、申立手数料や弁護士費用の支払いについて、加害者に請求できるかどうかについて解説します。
申立手数料と郵便代は敗訴した側が支払う
民事訴訟法第61条には、訴訟費用は敗訴した側が負担すると規定されています。
そのため、勝訴した側は敗訴した側に対して、申立手数料や交通費、訴状副本・口頭弁論期日呼出状・判決正本・訴訟費用確定処分正本などの郵便代を請求することが可能です。
ただし、弁護士費用や公共交通機関で出廷できるにもかかわらずタクシーを利用したような場合の交通費を全て請求できるわけではありません。
裁判を起こす側は、まず自費で裁判費用を支払わなくてはならない
訴訟費用は敗訴した側が負担しますが、判決が決まるまでのあいだは裁判を提起する側が裁判所に費用を支払わなければなりません。
支払ったお金は勝訴すれば戻ってきますが、裁判が終わるまでかかる費用は準備しておく必要があるでしょう。
裁判に勝訴すれば弁護士費用の10%程度を加害者側に請求できる
交通事故をはじめ、相手の不法行為についての損害賠償を請求する場合であれば、裁判に勝訴すれば損害額から既払金等を差し引いた金額の10%程度を「弁護士費用」として加算請求することができます。
ただし、訴訟上の和解での解決となる場合、この「弁護士費用」はカットされることが多いので注意が必要です。
また、「弁護士費用」といっても、被害者が実際に弁護士に支払った費用とは異なるものであることには注意が必要です。
そもそも裁判は原告だけで起こすことができ、弁護士に依頼するかどうかは被害者の判断によります。
そのため、弁護士費用は原則としては本人が負担しなければならないのです。
とはいえ、弁護士をつけずに裁判をおこなうのは困難です。
「弁護士費用」として、総損害から既払金等を差し引いた金額に加算できる10%程度加算請求できることを踏まえたうえで、認められるであろう損害賠償金額の予測を弁護士に立ててもらい、裁判すべきかを判断するのがよいでしょう。
弁護士費用を相手へ請求するためには「訴状」にその旨を記載する
弁護士費用を相手に請求する場合は、裁判所に提出する訴状にその旨を記載する必要があります。
損害額やすでに支払われている既払額とは別で、弁護士費用として項目を記載する必要があるのです。
損害額から既払額を差し引いた額、つまり実際に請求する賠償金額の10%程度を弁護士費用として訴状に記載しましょう。
交通事故裁判をしないほうがよい主なケース
交通事故に遭い、スムーズに示談交渉が進まない場合であっても、裁判をしないほうがよいケースもあります。
基本的には裁判をすべきかどうかは個別の事情によるため、弁護士に相談するのが一番ですが、ここでは交通事故で裁判をしないほうがよいケースを紹介します。
賠償金額が低額で費用倒れになる恐れがあるケース
賠償金額が低額な場合、裁判をすると裁判にかかる費用のほうが高くなってしまう可能性があります。
弁護士費用も含めると、賠償金額を上回ってしまうことがあります。
このようなケースを「費用倒れ」といいますが、誠実な弁護士であれば交通事故について相談をした時点で、費用倒れになるリスクがあることを説明してくれるはずです。
説明がなく不安な場合は、率直に聞いてみましょう。
被害者側の主張を裏付ける証拠や根拠が十分でないケース
証拠や根拠が十分でない場合も、裁判は避けるのが賢明です。
被害者側の主張を裏付けるだけの証拠が揃っていなければ、裁判所は主張を認めることができません。
そのため、裁判費用を支払っても希望する賠償金額が得られず、損をしてしまう可能性があるでしょう。
なお、ある程度の証拠や根拠がある場合は、それが裁判で争えるだけのものかどうかを弁護士に確認してもらうことが大切です。
また、弁護士に相談すれば、どんなものが証拠になるのかアドバイスをもらえるでしょう。
示談交渉で合意ができそうなケース
裁判は、示談交渉や調停がうまくいかないときの最終的な手段として考えられています。
なぜなら、弁護士費用を含む裁判費用がかかることに加え、長い時間を要する分当事者にも大きな負担がかかるからです。
もちろん裁判が適しているケースもありますが、示談交渉がまとまる可能性があるなら裁判は避けるほうが賢明です。
示談交渉であれば、数日から数週間で解決することも少なくありません。
たとえ数ヵ月かかるケースでも、経済的・時間的・精神的なストレスを踏まえると、合意できる余地があるなら裁判を避けて示談交渉を進めるのがおすすめです。
加害者の支払い能力に不安があるケース
加害者に資力がない場合は、賠償金額を回収することができません。
たとえ勝訴したとしても、相手に支払い能力がなければ払ってもらうことはできず、裁判費用が無駄になってしまいます。
とくに、任意保険に加入していない加害者は、資力が乏しい疑いがあるため注意が必要です。
しかし、加害者が「お金がない」と主張していたとしても、鵜呑みにするのはやめましょう。
加害者の資力に不安があるときは、弁護士に調査してもらうのが一番です。
裁判を検討するなら、まずは弁護士に相談しましょう。
交通事故裁判を起こすことを検討すべきケース
ここからは、交通事故で裁判を検討すべき主なケースについて紹介します。
相手方の保険会社が提示した賠償金額に不満がある場合
加害者が任意保険に加入していれば、その保険会社から賠償金額が提示されます。
相手方の保険会社が提示してきた賠償金額に不満がある場合は、裁判を起こすかどうかを検討することになるでしょう。
基本的に、相手方の保険会社から提示される賠償金額は、裁判を起こしたときに認められる金額よりも低いと考えて差し支えありません。
賠償金額の算定基準には3つの種類あり、相手方の保険会社が提示してくるのは、なかでも最も低価格の基準額であるのが通常だからです。
被害者本人が相手方の保険会社の担当者と交渉しても、裁判で認められる金額を上乗せできることはほとんどありません。
また、弁護士が交渉することで増額できる可能性もありますが、裁判を起こすほうが確実なケースも少なくないでしょう。
相手方との示談交渉が難航している場合
相手方との示談交渉がなかなか進まない場合も、裁判を検討すべきです。
とくに、弁護士に依頼をしていても交渉が難航するようなケースでは、相手方は十分な賠償金額を支払うつもりがないと考えられます。
時間をかけたからといって、交渉がまとまる見込みは低いでしょう。
裁判を起こすデメリットは時間がかかることですが、示談交渉があまりに難航するようなら裁判を起こしたほうが早く解決できる可能性もあります。
どの時点で裁判に踏み切るかは、弁護士と相談しましょう。
過失割合で相手方と争っている場合
交通事故は、加害者だけに過失があるとは限りません。
「絶対に相手が悪い」と思っていても、自分の過失を相手から主張され、争いになるケースも多いのです。
過失割合について話し合いがまとまらない場合は、適正な過失割合を判断してもらうためにも裁判を検討すべきでしょう。
後遺障害等級認定の結果に不満がある場合
事故が原因で後遺障害が残ってしまった場合、後遺障害等級認定の手続きをおこなうことになります。
後遺障害等級が認定されれば、その分損害賠償を多く請求できます。
等級によっても金額は大きく異なるため、適切な認定を受けることが重要です。
しかし、後遺障害認定のハードルは決して低くなく、希望する認定が下りないケースもあります。
後遺障害等級認定の結果に不満がある場合は、裁判によって後遺障害等級を求めることが可能です得。
損害賠償請求権の時効が迫っている場合
損害賠償請求権には時効があります。
事故は、物損事故であれば3年、人身事故であれば5年とそこまで長くありません。
そのため、相手側保険会社との示談交渉が長期化し、時効が迫ってしまうケースもあります。
時効が完成してしまえば、損害賠償請求権は消滅してしまい、損害賠償を受け取ることはできません。
そのため、時効が迫っている場合は裁判を提起しましょう。
裁判を提起すれば、時効をストップすることができます。
裁判を提起したのが時効直前だったとしても、裁判で確定判決が出たり、和解をしたりすれば時効期間が更新されます。
交通事故裁判を起こすデメリットとメリット
交通事故の被害者が裁判を起こすには、デメリットもあればメリットもあります。
どちらもよく検討し、裁判をするメリットのほうが大きい場合に訴訟を起こすことが大切です。
交通事故裁判を起こすデメリットとしては、次のようなことがあげられます。
- 被害者自身がおこなうのは難しい
- 判決が出るまで1年近くかかる
- 訴訟費用がかかる
- 裁判所に出廷しなければならない
- 資料を準備する手間がかかる
- 打ち合せの時間を確保しなければならない など
一方、メリットとしては次のようなことがあげられます。
- 直接やりとりするよりも高い賠償金額が得られる
- 弁護士費用も相手に請求できる
- 遅延損害金も相手に請求できる
- 支払いを拒否されたとしても強制回収できる など
結局、どんな基準で裁判を起こすか決めればよいの?
相手方の保険会社が提示した賠償金額に不満がある場合や、過失割合で相手方と争っている場合は、裁判を検討することになります。
しかし、裁判を起こすべきかどうかは、さまざまな事情を総合的に判断しなければなりません。
まずは、解決までに時間をかけてでも裁判を選択して判決を出してもらう必要があるかを考えましょう。
裁判は、時間だけでなく労力やストレスもかかるものです。
また、確実に結果が保証されているものでもありません。
なるべく早く、なるべく労力を抑えて解決をしたいなら、裁判外で示談交渉を進めるべきかもしれません。
ただし、相手方との示談交渉が難航しているなら、裁判をするのと変わらない時間や労力を要する可能性があるため、早々に裁判に切り替えるのもよいでしょう。
次に、時間をかけてでも解決したい場合、弁護士費用も踏まえたうえで、トータルで得られる金額が増える可能性があるのかを検討すべきです。
裁判をしたときに見込める損害賠償の金額はもちろん、示談交渉で済ませるよりも裁判で不利な判断がなされてしまうリスクはないか、証拠や根拠をよく精査して考えなければなりません。
裁判をする場合の損害賠償金額が最大と最小でいくら程度になるのか、依頼する弁護士に見込みを確認しましょう。
交通事故の裁判費用を抑える方法6選
交通事故の裁判を提起したいけれど、費用が不安という方も多いでしょう。
ここでは、裁判費用を抑えるためのポイントを紹介します。
交通事故裁判で弁護士費用特約を利用する
自動車保険などに弁護士費用特約が付帯していれば、事故対応を弁護士に依頼した場合の費用を保険会社が負担してくれます。
保険会社によって補償範囲や補償される価格は異なりますが、一般的には弁護士費用は最大300万円まで、法律相談であれば10万円までの補償を受けられるケースが多いです。
また、弁護士費用特約は、自分が加入していなくても適用できる可能性があります。
対象となる可能性があるのは次の人たちです。
- 加入者本人
- 同乗者
- 配偶者
- 同居中の親族
- 別居している未婚の子ども
- 契約車の所有者
まずは、自身や家族が加入している保険会社に弁護士費用特約が利用できるか確認しましょう。
法テラスの民事法律扶助を利用する
法テラスで民事法律扶助を利用することで、裁判費用を抑えられる可能性があります。
民事法律扶助とは、法テラスが弁護士費用を立て替えてくれる制度です。
相談料・着手金・実費などが対象で、裁判が終わったら1ヵ月に5,000円~1万円程度を分割で返済していく仕組みです。
なお、生活保護を受けている場合は返済が免除されるケースもあります。
ただし、民事法律扶助を利用するには法テラスで審査を受ける必要があります。
審査基準は以下のとおりです。
- 多少なりとも勝訴の見込みがあること
- 収入と資産が法テラスの定める資力の基準以下であること
- 民事法律扶助の趣旨に適した法的な解決を必要としていること
法テラスの定める資力の基準については、法テラスのホームページを参照してください。
訴訟救助の申立てをする
裁判所の制度である「訴訟救助」を活用するのもよいでしょう。
訴訟救助とは、申し立て費用などの裁判所に納める費用の支払いを、一時的に猶予してもらえる制度です。
裁判費用を支払う資力がない方や、支払ってしまうと生活に著しい支障が生じる方が利用できますが、利用には収支状況などがわかる資料を提出する必要があります。
訴訟救助は、訴状と一緒に申し立てをおこないます。
印紙を貼らずに訴状を提出し、そのあと1週間以内に生活保護受給証明書や源泉徴収票など必要な資料を提出しなければなりません。
なお、弁護士が代理人を務める場合は、損害賠償請求に加えて訴訟救助の申し立ても弁護士に任せることができます。
相談料や着手金が無料の弁護士に依頼する
法律事務所の中には、相談料や着手金を無料に設定しているところもあります。
相談料や着手金が無料の法律事務所を選べば、費用を抑えることができます。
各事務所のホームページを確認したり、法律事務所を探せるポータサイト「ベンナビ」などを活用して探してみましょう。
ただし、相談料や着手金が安い分、報酬額が高く設定されているケースもあります。
費用を確認する際は、必ず総額でいくらくらいになるかをチェックするようにしてください。
完全成功報酬制の弁護士に依頼する
完全成功報酬制を採用している弁護士を選ぶのも、初期費用を抑えるコツのひとつです。
示談交渉や裁判を通じて損害賠償金が支払われることが確定してはじめて報酬を払えばよいため、初期費用がかかりません。
ただし、ほぼ確実に勝訴できる場合のみ受け付けているなど、依頼条件が厳しい可能性もあります。
また、実費については事前に支払わなければならないなど細かな条件が設定されていることもあるので、事前に確認しましょう。
複数の弁護士に見積もりをもらって比較する
費用を抑えるために、複数の弁護士に相談して意見を聞いたり、見積もりもらったりして比較するのもよいでしょう。
弁護士に相談したからといって、必ず契約しなければならないわけではありません。
弁護士選びは金額だけが重要なわけではないため、相性や任せれば大丈夫だという安心感と、金額のバランスを考えて依頼するのがよいでしょう。
交通事故裁判によって賠償金の増額に成功した事例
交通事故で裁判を起こしても、実際に賠償金を増額できるのか不安な方もいるでしょう。
ここでは、賠償金の増額に成功した事例を紹介します。
交通事故裁判によって、賠償金が約770万円増額した事例
こちらの事例では、加害者が一時停止線で停車する義務を怠っていたにもかかわらず、相手側の任意保険会社が提示してきた賠償金額は430万円でした。
到底、被害者が納得できるものではなく、示談交渉もまとまらなかったことから裁判を提起することになりました。
裁判では、弁護士基準に基づいて治療費・後遺障害の慰謝料・逸失利益・休業損害などを請求し、最終的に損害賠償金として1,200万円の支払いが認められています。
すでに加害者から約300万円が支払われていたため、結果的に1,500万円の損害賠償金を受け取ることができました。
【参考】保険会社提示金430万円が1200万円に|ベンナビ交通事故
被害者の無過失をドライブレコーダーで立証し、1億円の賠償金を獲得した事例
こちらは、被害者がバイクに乗って信号待ちで停車していた際、後方に停車していたダンプカーが被害者に気付かず発進してきたことで追突した事件です。
被害者女性は亡くなってしまいましたが、ダンプカーの運転者は追突ではないと主張し、左折しようとしたところに被害者がバイクですり抜けようとしてきたといいます。
しかし、刑事裁判で提出されたドライブレコーダーの証拠映像から、被害者のすり抜けではなく追突事故だったことが証明されました。
さらに、亡くなった被害者女性の家族が起こした民事裁判でも、刑事裁判で提出されたドライブレコーダーのデータを提出し、家族の処罰感情も主張したうえで1億円の賠償金を得るに至っています。
【参考】被害者の無過失を工学鑑定により立証した事件 | ベンナビ交通事故
交通事故の賠償金は弁護士に依頼することでどのくらい増額できる?
交通事故の賠償金は、弁護士に依頼することで大幅に増額できる可能性があります。
なぜなら、交通事故の慰謝料には、複数の算定方法があるためです。
慰謝料の算定方法は、自賠責基準・任意保険基準・弁護士基準の3種類で、弁護士基準が最も高額です。
それぞれの概要は以下のとおりです。
算定基準 | 内容 |
自賠責基準 | 自賠責保険が設定している基準です。 交通事故で入通院が必要になった被害者が、法令で定められた最低限の補償を受けられます。 |
任意保険基準 | 任意の自動車保険会社がそれぞれ独自に設定している基準です。 多くの保険会社が対外的には公表していません。 しかし、自賠責基準と同じ程度または少し高く設定しているところが多いです。 |
弁護士基準 | 弁護士や裁判所が採用する、これまでの裁判例などを参考にした基準です。 自賠責基準や任意保険基準に比べて高額な慰謝料が設定されています。 |
上記のように、保険会社が採用している基準では、最低限の補償やそれより少し高い補償にしかなりません。
一方、弁護士基準では、過去の判例などを元にして賠償額が算定されるため、ほかの基準よりも高額な傾向があります。
自賠責基準や任意保険基準で保険会社から慰謝料を提示されたら、弁護士基準で計算しなおしてみましょう。
ベンナビでは、慰謝料を簡単に計算できるシミュレーターを提供しているので、ぜひご活用ください。
さいごに | 交通事故裁判の費用でお悩みならまず弁護士へ相談を!
交通事故に遭って裁判を起こす場合、申立手数料・郵便代・弁護士費用などさまざまな費用がかかります。
しかし、勝訴すれば裁判費用は相手方に請求可能です。
ただし、ケースによっては支払う費用のほうが大きくなってしまうリスクもあるため、慎重に検討しなければなりません。
裁判をするかどうかは、賠償金額や証拠の状況などを踏まえて、総合的に判断しましょう。
とはいえ、裁判してもよいかを判断するには、専門的な知識が必要です。
裁判を考えはじめたら、迷わず弁護士に相談してください。
初回相談を無料で受け付けている法律事務所も多いので、相談時点での費用の心配は不要です。
また、自分に合った弁護士を探す際は、ぜひ「ベンナビ交通事故」を利用してください。
ベンナビ交通事故は、弁護士を探すことができるポータルサイトです。
全国の交通事故トラブルに詳しい法律事務所が多数登録しています。
各事務所の強みや特徴がわかる詳細ページを参考に、信頼できる弁護士をぜひ見つけてください。