個人再生は公務員でもできる?懲戒処分の心配がないなど選択するメリットは多い


借金の返済が難しくなり、個人再生を考えている公務員の方もいるでしょう。
しかし、公務員でも個人再生ができるのか、手続きによって懲戒処分など仕事に影響が出てしまわないか、不安を感じている方も多いはずです。
本記事では、公務員の個人再生について、利用できる条件・メリット・注意点・手続きの流れなどを具体的に紹介します。
公務員でも安心して借金問題を解決するために、ぜひ参考にしてください。
原則として公務員であっても個人再生の手続きはできる!
結論からお伝えすると、公務員であっても個人再生の手続きは問題なくおこなうことができます。
個人再生は、借金をしている方が利用できる法的に認められた救済措置です。
個人再生の利用に職業や職種による制限はありません。
ただし、公務員が個人再生をおこなう際、ほかの職業とは異なる注意点があります。
本記事を参考に、弁護士と対応を検討するのがおすすめです。
公務員が個人再生を選択する2つのメリット
公務員が個人再生をすることには、ほかの職業の方が個人再生をするのとは異なるメリットがあります。
- 安定的な収入があると判断されやすい
- 懲戒や免職などの不利益は発生しない
それぞれのメリットについて、詳しく見ていきましょう。
1.安定的な収入があると判断されやすい
個人再生をおこなう際は、職業にかかわらず安定的な収入があると裁判所に認められる必要があります。
なぜなら、個人再生は自己破産と違って、借金を免除してもらう手続きではないからです。
借金を減額したあとは、計画に沿って引き続き借金を返済しなければなりません。
その点、公務員は毎月十分な給与受け取れる職業であるため、安定的な収入があると判断されやすいといえます。
2.懲戒や免職などの不利益は発生しない
公務員が個人再生をしても、懲戒免職などの懲戒処分が下されることはありません。
公務員に懲戒処分が下されるケースは、地方公務員法や国家公務員法に明記されており、個人再生を含む債務整理はそれにあたらないからです。
公務員が個人再生を理由に仕事を失うことはないので、安心して借金問題を解決できるでしょう。
公務員が個人再生で借金問題を解決する際の大まかな流れ
公務員が個人再生を利用して借金問題を解決する際、どのような流れで手続きが進むのでしょうか。
ここでは、書類準備から個人再生の手続きを完了し、返済が開始するまでの流れを説明します。
1.個人再生の必要書類を準備する
個人再生をおこなうには、地方裁判所への申立てが必要です。
そのため、まずは申立てのために必要な提出書類を準備します。
個人再生の必要書類は、具体的には以下のとおりです。
- 再生手続開始申立書
- 住民票
- 債権者一覧表
- 通帳のコピー
- 車検証のコピー
- 給与明細
- 源泉徴収票
- 退職金証明書
- 財産目録
- 家計収支表
- 清算価値算出シート
- 弁済期間延長に関する上申書 など
個人再生に必要な書類は多く、複雑です。
そのため、弁護士や司法書士のサポートを得ることをおすすめします。
なお、弁護士や司法書士に委託する場合は委任状も必要です。
2.裁判所に個人再生の申立てをする
書類が準備できたら、裁判所へ申立てをおこないましょう。
裁判所へ申立てをすると、財産や収入の状況などを踏まえて、個人再生委員が選出されるかどうかが決まります。
個人再生委員が選出されると、1〜2週間後に個人再生委員との面談が実施され、個人再生の利用条件・収支の状況・財産の有無・返済の見込みなどを確認されるのが一般的です。
そして、裁判所が個人再生委員の調査結果を踏まえて個人再生手続きを開始するかどうかを決定します。
個人再生委員が選出されないケースにおいては、裁判官との面談によって質疑応答がおこなわれて、手続きが開始するかどうかが決まります。
3.再生計画案を作成し裁判所に提出する
個人再生手続き開始が決定すると、次は再生計画案を作成して裁判所に提出します。
再生計画案の提出期限は、申立てから3か月~4か月程度に設定されるのが通常です。
期日までに提出できなければ、手続きは廃止になってしまいます。
必ず期日までに提出しましょう。
個人再生が許可されるには、提出した再生計画案を債権者に認めてもらう必要があります。
そのため、現実的に返済が可能な計画を提示しなければなりません。
再生計画の作成に不安がある場合は弁護士や司法書士と相談しながら作成するとよいでしょう。
再生計画の提出後には、計画に基づく履行が可能であるかを判断するために履行テスト(積立て)が行われます。
忘れずに毎月の支払をするようにしましょう。
4.再生計画案が許可されて返済が始まる
再生計画案が許可されると、返済が始まります。
再生計画に沿って毎月必ず返済をしましょう。
完済すれば、手続きは終了です。
公務員が個人再生の手続きをする際の4つの注意点
公務員が個人再生を利用するにはメリットがある一方で、注意しなければならないこともあります。
次の4つの注意点を参考にしてください。
1.個人再生を利用できないケースもある
個人再生を利用できるのは、借金の総額が100万円以上5,000万円以下の場合です。
100万円未満の借金しかない場合はメリットが発生しないことが通常で、借金額が5,000万円を超えている場合は、個人再生を利用できません。
また、個人再生の手続きのうち小規模個人再生の手続きを選択する場合、債権者の過半数の同意を得なければなりません。
反対や異議を申し出る債権者が多ければ手続きは廃止されてしまいます。
公務員の方の借入先として多いのが公務員共済組合です。
公務員共済組合は再生手続きに反対することがあるため、その債権額が過半を占めているようなケースでは、手続きが廃止になってしまうおそれがあることを覚えておきましょう。
これらのリスクを避けるためには、給与所得者等再生を選択するなど、弁護士と話し合ってより確実な方法を選ぶとよいでしょう。
2.勤務先に個人再生を知られるリスクがある
個人再生をすれば、勤務先に知られるリスクもあります。
とくに公務員共済組合から借入れをしている場合は、組合経由で個人再生をしたことが知られる可能性が高いでしょう。
また、公務員が個人再生をする際は、裁判所に退職金証明書を提出しなければなりません。
退職金証明書は勤務先からもらう必要があり、取得する際に取得理由を聞かれるのが通常です。
「個人再生をする」と直接伝えた場合はもちろん、「裁判所に提出する」などと伝えたことによって個人再生や自己破産をするのではないかと勘ぐられるリスクがあります。
また、個人再生をおこなうと、国が発行する機関紙である官報に名前と住所が掲載される点にも注意が必要です。
官報を日常的に読む方は少ないですが、官報から個人再生をおこなったことが知られる可能性はゼロではありません。
3.退職見込額が多いと減額効果が小さくなる
退職見込額が多い場合、減額効果が小さくなります。
個人再生をするときは退職金の見込額も申告しなければなりません。
退職金は、将来見込まれる収入であり本人が有している請求権でもあります。
そのため、原則的に退職見込額の8分の1の金額は、個人再生の際に資産として扱われます。
その点、公務員は勤続年数が長いほど退職金が多い傾向にあり、減額効果が小さくなる可能性が高いでしょう。
4.共済貸付への偏頗弁済を理由に弁済額が増えることがある
公務員共済組合から借入れをしていた場合、弁済額が増えることがあります。
これは、偏頗弁済だと扱われ公務員共済組合に返済した分を、増額して返済しなければならなくなるからです。
偏頗弁済とは、一部の債権者にだけ偏って返済してしまうことです。
偏頗弁済は、個人再生の手続き上ほかの債権者の利益を減らしてしまうことになるため、許されていません。
しかし、公務員共済組合からの借入れに対する返済は、ほとんどの場合で月々の給与額から天引きされています。
そのため、自分では偏頗弁済をしているつもりがなくても自動的に公務員共済組合にだけ返済しているケースがあるのです。
このような場合、弁済額が増える可能性がある点に注意しましょう。
さいごに|公務員が個人再生の手続きをする際は弁護士に相談しよう
公務員でも個人再生をすることは可能です。
むしろ、安定した収入があるため手続きを進めやすく、公務員にとっては大きなメリットがあるといえるでしょう。
一方で、個人再生の手続きは非常に複雑な点に注意が必要です。
適切に手続きを進めるには弁護士のサポートを受けることを検討しましょう。
公務員の方が安心して個人再生手続きを任せるなら、ポータルサイト「ベンナビ債務整理」を活用して弁護士を探してみてください。
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