損害賠償請求の裁判に掛かる費用の種類や金額を徹底解説
普段の生活の中でトラブルが発生した場合、ときに損害賠償請求の裁判へと発展することがあります。
しかし、損害賠償請求裁判にはどのような費用項目があって、どれくらいの金額が必要なのかまで理解している方は少ないでしょう。
そこで今回は、損害賠償請求裁判に掛かる費用を解説します。
本記事を読めば裁判に必要な金額の目安がわかりますので、参考にしてください。
身近なトラブルから損害賠償を請求に至った事例
損害賠償とは、契約に基づく債務不履行や第三者の不法行為などによって他人に損害を与えた人が、損害を補償することです。
そして身近で起こるトラブルによって被害を受けた場合、損害賠償を請求できるケースがあります。
ここでは、実際に損害賠償請求ができる事例を紹介します。
損害賠償を請求に至った事例
まずは損害賠償請求が認められた過去の事例を一部紹介しましょう。
- 隣家の庭木が自宅の敷地内に侵入し、伐採をお願いしたが改善されず、屋根や窓ガラスなどが傷ついた。
- マンションの上階の騒音や振動が激しく、注意喚起したが対応されなかったために不眠症になった。
- 空き巣に入られて、お金を盗まれた。
- ゴルフのプレー中に相手の打球が自分にぶつかりけがをした。
損害賠償を請求する場合、相手の行為に違法性があり、行為が故意や過失に基づいていることが必要です。
損害賠償請求ができない例
一方で、損害賠償請求ができないケースもあります。下記は一例です。
- 過去に例を見ない規模の台風でどこかから飛んできたトタンによって窓ガラスが割れた。
- 昔から仲の良い友人が詐欺被害に遭った。
- トラブルの相手と和解した。
- 隣家が火事になり自宅に燃え移って火事になった など
損害賠償請求の裁判に掛かる費用の種類
損害賠償請求の裁判になった場合、次の費用が発生します。
- 訴訟費用
- 弁護士費用
訴訟費用
訴訟費用とは、裁判に必要な費用のうち、弁護士費用を除いた費用を指します。
たとえば、収入印紙で支払う裁判所手数料や、書類の郵送に必要な切手代などがあります。
その他、証人の旅費や裁判に必要な鑑定費用などが含まれることもあります。
弁護士費用
損害賠償裁判の弁護士費用とは、弁護士に相談するための相談料、事件に着手する際に発生する着手金、事件が解決したときに支払う報奨金などです。
その他、弁護士の出張費用である日当、書類作成や調査などに実費が掛かることがあります。
なお、後述しますが、不法行為に基づいて損害賠償を請求する場合、損害額の10%については弁護士費用として上乗せして請求することが認められています。
損害賠償請求裁判における訴訟費用の内訳
ここでは損害賠償請求裁判で必要な訴訟費用の内訳を解説します。
裁判所手数料
裁判所手数料は訴訟の目的価額(=相手に求める損害賠償の金額)によって、以下の金額が定められています。
訴訟の目的価額 | 裁判所手数料 |
---|---|
100万円まで | 10万円ごとに1,000円 |
500万円まで | 20万円ごとに1,000円 |
1,000万円まで | 50万円ごとに2,000円 |
1億円まで | 100万円ごとに3,000円 |
50億円まで | 500万円ごとに1万円 |
50億円超え | 1,000万円ごとに1万円 |
一例として、目的価額が80万円・300万円・700万円の場合の裁判所手数料は以下のとおりです。
目的価額 | 裁判所手数料 |
---|---|
80万円 | 1,000円×80万円÷10万円 =8,000円 |
300万円 | 1万円+1,000円×(300万円-100万円)÷20万円 =1万円+1万円 =2万円 |
700万円 | 1万円+2万円+2,000円×(700万円-500万円)÷50万円 =1万円+2万円+8,000円 =3万8,000円 |
裁判所手数料の詳細は裁判所のホームページに記載された早見表などを使って確認しましょう。
参照元|裁判所 手数料
郵便切手代
切手代は訴状を提出する裁判所によって金額が異なります。
たとえば、東京地方裁判所では原告・被告がそれぞれ1名の場合、合計6,000円の切手代が必要です。
また、当事者増が一人増えるごとに2,178円が追加されます。
ただし、原告や控訴人が複数でも、共通の代理人(弁護士)がいる場合は切手代を加算する必要はありません。
損害賠償請求裁判における弁護士費用の内訳
次に、損害賠償請求で必要な弁護士費用の内訳を解説します。
相談料
弁護士にトラブルや裁判について相談する際に発生するのが相談料です。
1時間あたり1万円程度が相場ですが、法律事務所によって相談内容や相談時間しだいで相談料を無料としているケースもあります。
無料相談の詳細は弁護士の無料電話相談窓口4選|24時間法律相談受付のおすすめ窓口はどこ?をご覧ください。
着手金
弁護士に依頼する際に発生するのが着手金です。
裁判の結果に関わらず支払う費用で、返金されません。
着手金は訴訟の目的となる金額(=賠償金額)に応じて決まります。
法律事務所によって金額が異なり、依頼する裁判の内容によっては着手金が無料となる法律事務所もあります。
着手金における後払いは弁護士への着手金は後払いできる?対応してもらいやすい場合と注意点をご覧ください。
報酬金
依頼した案件が成功し、賠償金が回収できた場合に発生するのが報酬金です。
報酬金は経済的利益(=弁護士に依頼したことで確保できた金額または支払いを逃れた金額)のうち何%かを支払います。
なお、委任契約の内容によりますが、裁判で負けたことで目的を達成できなかった場合や経済的な利益が獲得できなかった場合などは、一般的に報酬金は発生しません。
実費・日当
実費とは、弁護士が裁判に必要な書面の作成、裁判への出席などに掛かる費用で、活動に必要な交通費も含まれます。
また訴訟費用の納付を代行してもらう場合も実費として請求されます。
日当とは、弁護士が遠方に出張した際の出張費用です。
実費や日当は金額を予測するのが難しく、予定外の出費が発生することもあります。
あらかじめ弁護士に概算の見積もりを提示してもらうなどして、金額を想定しておくことが重要です。
知っておくべき訴訟費用の性質と猶予制度
損害賠償請求裁判に必要な訴訟費用には特徴的な性質があるほか、訴訟費用の猶予制度があります。
特徴や性質・制度を知っておくことで、必要なタイミングで費用を準備しておけます。
裁判に焦らないためにも理解しておきましょう。
訴訟費用は裁判を起こす側が先に払う
訴訟費用は原告側、つまり裁判を起こす側が先に立て替えて支払うのが原則です。
損害賠償請求の民事裁判を起こす場合、弁護士を雇うかどうかに関わらず、いったんは訴える側が訴訟費用を負担しなければなりません。
弁護士費用と合わせて相応の負担が必要になる点に注意が必要です。
訴訟費用は相手に請求できる
訴訟費用は最終的に敗訴側が負担するのが原則です。
これは民事訴訟法第61条の条文に明記されています。
損害賠償請求裁判で勝訴した場合、敗訴した当事者に対して訴訟費用を請求できます。
また証人の旅費や日当など、法律で定められた費用が発生した場合も請求が可能です。
ただし、訴訟費用は敗訴者が全額負担する場合もあれば、一部を原告が負担する場合もあり、割合は裁判所が判断します。
また当事者の意思表示によって判決以外で裁判が終了した場合、終了させた当事者が訴訟費用を負担します。
訴えを取り下げた場合や損害賠償請求を放棄した場合は原告側の負担、損害賠償を認めた場合は被告側の負担です。
なお、和解する場合は双方が負担します。
訴訟費用の支払い猶予制度がある
損害賠償請求の裁判では、訴訟費用を支払うのが難しい人を救済するために、訴訟費用の支払猶予制度が設けられています。
これは経済力に乏しい人の裁判を受ける権利を保障するための制度で、訴訟上の救助とも呼ばれています。
ただし、申立内容から裁判を起こしても明らかに勝ち目がないと判断される場合は、支払猶予が認められない場合もあります。
知っておくべき弁護士費用の性質と注意点
次に弁護士費用の性質や注意点を解説します。
弁護士費用は訴訟費用とは扱い方が異なります。
弁護士との手続きややり取りをスムーズにおこなうためにも、理解しておきましょう。
訴訟費用は請求できても弁護士費用は相手に請求できない
裁判に勝訴した場合、訴訟費用は相手方に請求できますが、原則として、弁護士費用は請求できません。
あくまでも、弁護士費用を負担するのはそれぞれの依頼者です。
弁護士費用を負けた側に支払わせることはできない点に注意が必要です。
弁護士費用を相手に請求できる例外
損害賠償請求の裁判においては例外的に弁護士費用の一部を請求できる場合があります。
『不法行為に対して賠償を求めたところ、相手方が応じないから裁判を起こし、自分一人では対応できずやむなく弁護士を雇ったため、弁護士費用も損害に含まれる』というのが判例の考え方です。
ただし、請求できるのは弁護士費用の全額ではなく、損害額の10%程度となります。
あくまでも原則として、不法行為に基づく請求の場合に限られることに注意が必要です。
契約に基づく債務不履行の場合、請求できないことが多いので、どのような根拠で請求するかを含めて慎重な検討が必要です。
なお、被害者側が敗訴した場合には、相手方の弁護士費用を請求される・支払うといったことはありません。
損害賠償請求裁判の弁護士費用は法律事務所によって異なる
損害賠償裁判について弁護士に依頼する場合、弁護士費用の金額は法律事務所によって異なります。
かつては報酬基準の規定が一律に定められていましたが、現在はその規定が廃止され、各法律事務所が報酬を自由に設定できるようになっています。
ただし、現在でも廃止された旧報酬基準をそのまま採用している法律事務所も多いところです。
そのため、同じ内容で弁護士に依頼する場合でも事務所によって費用が異なり、各事務所の料金体系を比較することが大切です。
弁護士費用を抑えるために争う金額を下げてはいけない
着手金や報酬金はそれぞれの経済的利益の金額によって決まります。
そのため、裁判で争う金額が大きくなるほど、弁護士費用も高くなります。
それぞれの場面で問題となる経済的利益とは以下のような意味合いです。
- 着手金:弁護士に依頼することで見込まれる利益あるいは相手に請求しうる金額
- 報酬金:弁護士に依頼することで実際に回収できた金額(または支払を逃れた金額)や獲得できた利益
しかし、弁護士費用が高くなるからといって、争う金額を下げるのは避けましょう。
損害額が大きいほど相手に請求できる金額も大きくなります。
しかし、弁護士費用を出し惜しんで請求額を抑えることはオススメできません。
被害の実態について、裁判でも丁寧に主張立証することで、裁判所もその損害を正確に評価できます。
請求額をおさえると、裁判所にも弱気な印象を与え、後々、損害額に見合った賠償請求が認められにくくなるおそれがありますので、ご注意ください。
丁寧な裁判をするためにも、弁護士費用は必要経費として、割り切って考えるようにしましょう。
損害が少額の場合は裁判を起こすか慎重に考える
相手方と争う金額が少額な場合は、裁判を起こすか慎重に検討しましょう。
まず、争う金額が少額の場合、費用対効果の側面から受任を断る弁護士も一定数いるため、弁護士を探すのに時間や労力が掛かる可能性があります。
また、少額訴訟に対しては時間制報酬を採用する事務所がありますが、判決までにどれだけ時間が掛かるのか予測が難しいため、想像以上の出費となる可能性もあります。
そのため、少額を争う場合は、まず裁判を起こすかどうかを検討しましょう。
そのうえで訴訟を起こす場合は調停や示談交渉での解決を目指すなど、弁護士費用を抑える工夫をすることが重要です。
損害賠償請求裁判における弁護士費用の決まり方【一例】
最後に損害賠償請求の裁判時の、弁護士費用の相場を紹介します。
かつては「(旧)日本弁護士連合会報酬等基準」という規定により弁護士費用が定められていましたが、現在は廃止され弁護士費用は自由設定となっています。
ただし、現在でも多くの事務所が基準を参考に料金を設定しています。
ここでは上記基準に準じた費用と自由設定での費用を紹介しますが、法律事務所ごとに金額は異なるため、あくまでも一例として認識してください。
着手金の決まり方
(旧)日本弁護士連合会報酬等基準による着手金の金額は次のとおりです。
経済的利益の額 | 着手金 |
---|---|
300万円以下 | 経済的利益の8% |
300万円超え3,000万円以下 | 経済的利益の5%+9万円 |
3,000万円超え3億円以下 | 経済的利益の3%+69万円 |
3億円超え | 経済的利益の2%+369万円 |
※着手金の最低金額は10万円
仮に400万円の損害賠償を請求する場合、着手金は29万円(400万円×5%+9万円)です。
一方、同じく400万円の損害賠償請求訴訟で、「経済的利益の5.5%+9万9,000円(31万9,000円)」「経済的利益の10.8%(43万2,000円)」「40万円~60万円」などと設定する法律事務所もあります。
そのため、複数の事務所を比較することが重要です。
報奨金の決まり方
(旧)日本弁護士連合会報酬等基準による報奨金の金額は次のとおりです。
経済的利益の額 | 報酬金 |
---|---|
300万円以下 | 経済的利益の16% |
300万円超え3,000万円以下 | 経済的利益の10%+18万円 |
3,000万円超え3億円以下 | 経済的利益の6%+138万円 |
3億円超え | 経済利益の4%+738万円 |
仮に400万円の損害賠償を請求する場合、報奨金は58万円(400万円×10%+18万円)です。
一方、同じく400万円の損害賠償請求訴訟で、「経済的利益の11%+19万8,000円(63万8,000円)」「経済的利益の16.2%(64万8,000円)」「40万円と経済的利益の22%(88万円)のいずれか高いほう」などと定めている法律事務所もあります。
着手金同様に、複数の事務所を比較することが重要といえるでしょう。
まとめ|損害賠償請求時に必要な費用を理解して裁判に臨もう
損害賠償請求裁判には訴訟費用と弁護士費用が必要です。
訴訟費用は裁判所手数料や郵便切手代などで、原告が立て替え最終的に裁判に負けた側が負担します。
弁護士費用は着手金や報酬金、実費などの経費で、原則依頼人が費用を負担し、裁判に勝った場合でも一部のみしか請求できません。
弁護士費用は自由設定となっているため、依頼する内容が同じでも法律事務所によって金額が異なります。
争う金額が高いほど弁護士費用も高くなりますが、必要経費として割り切るようにしましょう。
また少額訴訟では弁護士費用を抑える工夫が必要です。
自分は裁判や弁護士とは縁遠いと思っていても、身近なトラブルをきっかけに損害賠償請求へと発展することがあります。
裁判になる場合は弁護士への依頼が必要ですので、あなたが納得できる金額で対応してくれる弁護士を探し、必要な費用を工面しましょう。