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遺留分問題について弁護士に依頼するメリット・デメリット

弁護士監修記事
遺産相続
2023年02月28日
2024年11月21日
遺留分問題について弁護士に依頼するメリット・デメリット
この記事を監修した弁護士
三上 貴規弁護士 (日暮里中央法律会計事務所)
早稲田大学法学部を卒業後、早稲田大学大学院法務研究科へ上位入学。第一東京弁護士会 所属。現在は日暮里中央法律会計事務所の代表弁護士を務める。(※本コラムにおける、法理論に関する部分のみを監修)
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遺産相続の際に一定の相続人に最低限の利益を保障する遺留分ですが、自身以外の相続人の勘違いなどでトラブルに発展するケースも珍しくありません。

遺留分に関するトラブルが発生した場合、弁護士への依頼も解決のための一つの手段です。

複雑な手続を任せられるという大きなメリットがあります。

一方で、弁護士への依頼には費用がかかるといったデメリットもあります。

この記事では、遺留分に関して弁護士に依頼する場合のメリットやデメリット、費用相場などを紹介します。

弁護士への依頼を検討している方は参考にしてください。

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遺留分とは

遺留分とは、遺産に関して、一定の相続人に最低限保障されている権利のことです。

遺留分は、兄弟姉妹以外の相続人、つまり、配偶者、子、直系尊属(父母など)に認められています。

遺留分を有する相続人を遺留分権利者と呼びます。

被相続人は、自分の財産を遺言で誰に与えようと(これを「遺贈」と呼びます)、誰に贈与しようと基本的には自由です。

しかし一方で、相続人の生活を保障する必要もあります。

被相続人の利益と相続人の生活保障のバランスをとるための制度が遺留分です。

以下では、意味を間違えやすい遺産と遺留分の違いと、遺留分の具体的な内容について解説します。

遺産と遺留分の違い

遺産とは、相続によって相続人に承継される財産のことをいい、相続財産と呼ばれることもあります。

現金や不動産などの目に見える財産だけでなく、債権や知的財産権などの目に見えない財産も遺産に含まれます。

また、借金などのマイナスの財産も遺産に含まれます。

遺留分は一定の相続人に保障されている権利のことを指すため、遺産とは意味が異なります。

遺留分が問題になるのは不公平な遺贈や贈与があったときです。

相続人全員が権利行使する必要はなく、遺留分権利者が個別に遺留分侵害者に対して遺留分侵害額請求を行って金銭の支払を求めることになります。

他の遺留分権利者が請求しない場合でも、自分単独で遺留分侵害額請求を行うことができます。

遺留分侵害額請求について詳しくは遺留分侵害額請求とは?期限や方法、遺留分の割合・計算方法を解説をご覧ください。

遺留分権利者の範囲

遺留分が認められるためには、自身が相続人である必要があります。

ただし、兄弟姉妹には遺留分が認められていないため注意が必要です。

遺留分が認められている相続人は、配偶者、子、直系尊属のみです。

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遺留分侵害額請求を弁護士に依頼した場合の業務範囲

遺留分侵害額請求権とは、遺留分権利者が、侵害された遺留分に相当する金銭の支払いを請求する権利です。

被相続人が遺留分を侵害する遺贈や贈与を行った場合に、それによって財産を取得した遺留分侵害者に対して請求をします。

内容証明郵便の作成

遺留分侵害額請求の方法に、法律上の決まりはありません。そのため、口頭で請求することもできなくはありません。

しかし、一般的には、配達証明付き内容証明郵便で請求することが多いです。

配達証明付き内容証明郵便とは送った内容や送った日付などの証拠が残る書面です。

いつ、いかなる内容の書面が誰から誰あてに差し出されたかということを、差出人が作成した謄本によって日本郵便株式会社が証明します。

遺留分侵害額請求の最も重要なポイントは、期限内に請求することです。

遺留分侵害額請求には、相続開始と遺留分を侵害する遺贈等があったことを知ってから1年間という短い期間制限(時効)があります。

後から「期限内に請求されていない」などと主張されないように、期限内に請求した記録が残る配達証明付き内容証明郵便を弁護士が作成してくれます。

交渉の代理

弁護士に依頼した場合には、自分の代理人として相手方と交渉してくれます。

遺留分侵害をしている相手は親族や顔見知りの場合が多く、自身で直接交渉すると冷静に対応するのが難しいことがあります。

そのような場合、精神的なストレスも大きくなってしまいます。

また、相手方に弁護士がついている場合、ご自身も弁護士に依頼することで、弁護士同士スムーズに交渉できる場合があります。

調停の代理

交渉しても解決できなければ、遺留分侵害額請求調停を申し立てることになります。

調停が成立するとお互いが合意した内容について法的効力が生じます。

調停は公的な手続であるため、申立てにはさまざまな書類を提出しなければなりません。

調停の必要書類はケースによって異なり、家事調停申立書をはじめ、戸籍謄本、遺言書の写し、遺産に関する証明書など多岐にわたります。

調停が始まってからも、相手方や調停委員の発言を理解して手続を有利に進めるためには法的知識が欠かせません。

調停の代理を弁護士に依頼すれば、申立てから実際の調停手続まで対応してくれるので、スムーズに手続を進めることができます。

訴訟の代理

交渉や調停での解決が見込めない場合は訴訟を提起することになります。

弁護士に依頼すれば、弁護士が代理人として訴訟の対応をしてくれます。

基本的には、交渉や調停を依頼した弁護士に依頼するとよいでしょう。

遺留分に関する事案を弁護士に依頼するメリット3選

遺留分に関する事案を弁護士に依頼するとどのようなメリットがあるのでしょうか。

3つのメリットをご紹介します。

メリット1.解決できる可能性が高まる

遺留分侵害額請求をするには、遺産として何があるのかを正確に把握する必要があります。

遺産を管理している相続人が伝えている財産が全てであるとは限りません。

弁護士に依頼すれば、遺産の調査方法についてアドバイスを受けたり、調査を代行してもらえたりします。

また、遺産の使い込みが疑われる場合や、被相続人が一部の相続人に多額の贈与をしていた場合などについても、法的な観点から適切にアドバイスしてもらえます。

弁護士に依頼することで、遺留分に関する事案を解決できる可能性が高まるといえます。

仮に話し合いがまとまらない場合でも、調停、訴訟とスムーズに手続を進めることができます。

メリット2.代理で交渉してもらえる

相続に関する話し合いは、感情的になってしまいがちで、解決までに時間がかかってしまうことがあります。

ささいな一言が感情的な対立を招いてしまうケースも見受けられます。

相続に関する交渉は大きなストレスになる場合があります。

弁護士に依頼することで交渉を代理してもらうことができます。

メリット3.複雑な手続を代理してくれる

遺留分に関する事案を含め、相続案件では行わなければならない手続が多く発生します。

中には複雑な手続もあります。

弁護士に依頼すれば、必要な手続を代理してもらえるため、ご自身の負担は大きく軽減されます。

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遺留分に関する事案を弁護士に依頼するデメリット

弁護士に依頼するデメリットは費用がかかることです。

費用倒れにならないよう、事前にしっかり見積もりをもらいましょう。

費用を払って依頼する価値があるのかどうかよく考えて、納得してから依頼するようにしましょう。

遺留分侵害額請求にかかる弁護士費用の相場

では、実際に遺留分侵害額請求にかかる弁護士費用の相場はどれくらいなのでしょうか。

相場を確認しておきましょう。

相談料

相談料は30分あたり5000円程度が相場ですが、初回相談を無料としている法律事務所もあります。

調停

調停の代理を依頼する場合には、着手金と報酬金が必要となるのが一般的です。

着手金額は遺産の額等によって変動するのが一般的です。

最低でも10万円程度は必要になることが多いです。

報酬金額も事例によって異なりますが、取得できた金額の5〜16%程度が相場のようです。

訴訟

訴訟の代理を依頼する場合も、調停と同じく着手金と報酬金が必要となるのが一般的です。

訴訟の着手金額も遺産の額等によって変動するのが一般的で、最低でも10万円程度は必要になることが多いです。

報酬金額も事例によって異なりますが、取得できた金額の5〜16%程度が相場のようです。

また、遺産に不動産が含まれる場合に不動産鑑定を行うときは、その費用として数十万円程度必要になることもあります。

ただし、不動産鑑定は必ず行わなければならないものではありません。

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遺留分の割合に関する事例

遺留分の割合は、誰が相続人なのかによって変動します。

また、ご自身の立場が配偶者なのか直系尊属なのかなどによっても最終的な遺留分の割合が変わってきます。

知識がないことで損をしてしまわないように、遺留分の割合をチェックしておきましょう。

遺留分の割合は事案によって異なるため、弁護士に相談してみるのもよいでしょう。

遺留分の割合の計算手順

まず、遺産全体の中で遺留分がどれだけあるか(総体的遺留分)を確認します。

総体的遺留分は、直系尊属のみが相続人である場合は遺産全体の3分の1であり、その他の場合は遺産全体の2分の1となります。

次に、総体的遺留分に各自の法定相続分をかけます。

そうすると、その人の遺留分(個別的遺留分)が算出されます。

以下、具体的な事例でみてみましょう。

相続人が2名の事例

父と母の2人のみが相続人である場合、直系尊属のみが相続人である場合にあたりますので、総体的遺留分は遺産全体の3分の1となります。

遺産の額が600万円であった場合、総体的遺留分は200万円となります。

このケースでは、父と母の法定相続分はそれぞれ2分の1ですので、父と母それぞれの個別的遺留分は、総体的遺留分200万円に2分の1をかけた100万円ということになります。

次に、配偶者と子の2人のみが相続人であるケースを検討してみましょう。

この場合、総体的遺留分は遺産全体の2分の1となります。

遺産の額が600万円であった場合、総体的遺留分は300万円となります。

このケースでは、配偶者と子の法定相続分はそれぞれ2分の1ですので、配偶者と子それぞれの個別的遺留分は、総体的遺留分300万円に2分の1をかけた150万円ということになります。

上記2つのケースを図示すると以下のようになります。

相続人

遺産の額

総体的遺留分

法定相続分

個別的遺留分

父と母の2人のみ

600万円

600万円×1/3
=200万円

父 1/2
母 1/2

200万円×1/2
=100万円

200万円×1/2
=100万円

配偶者と子の2人のみ

600万円

600万円×1/2
=300万円

配偶者 1/2
子 1/2

配偶者
300万円×1/2
=150万円


300万円×1/2
=150万円

 

相続人のパターンは様々ですので、具体的な算定については弁護士に相談してみるのがよいでしょう。

まとめ|遺留分の問題は弁護士に相談してみよう

遺留分に関する事例を弁護士に依頼するメリットやデメリット、費用相場などをご紹介してきました。

弁護士に依頼すれば、遺留分の問題を解決できる可能性が高まるため、まずは相談してみることをおすすめします。

弁護士費用に納得できた場合、弁護士に依頼して手続を進めましょう。

遺留分に関する交渉や手続は心身ともに負担がかかるものです。

弁護士に依頼することでその負担を軽減しつつ問題解決を目指すことができます。

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編集部
本記事はベンナビを運営する株式会社アシロが企画・編集をおこないました。
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