慰謝料請求されたけれど「お金がない」と困っている人が取るべき正しい対処法
 
        
           
              - 「慰謝料を請求されたけどお金がないから払えない」
- 「支払いを無視したらどうなるのか」
不倫相手の配偶者から慰謝料を請求されたものの、お金がなくて支払えず困っていませんか?
お金がなくて慰謝料を支払えない場合でも、減額交渉や分割払い、支払い期限の延長などの現実的な対処法はあります。
支払えないからといって支払いを拒否すると、相手方に法的手続きを取られたり慰謝料を増額されたりするおそれがあるため、誠実に対応するようにしましょう。
本記事では、慰謝料請求された際にお金がない場合の具体的な対処法や交渉の流れ、支払いを拒否したときのリスクについて解説します。
記事を最後まで読むことで、トラブルを最小限に抑えつつ、適切な行動を選択できるでしょう。
慰謝料を請求されたけれどお金がない場合の3つの対処法
不倫相手の配偶者や自分の配偶者から慰謝料を請求されたものの、支払う資金が用意できない場合の対処法として、以下の3つの選択肢があります。
- 慰謝料の減額について交渉する
- 慰謝料の分割払いの打診をする
- 慰謝料の支払い期限の延長を求める
上記の対応をおこなうことで、法的な義務を果たしながらも自身の生活を守れます。
ここからは、それぞれの対処法について詳しく見ていきましょう。
1.慰謝料の減額について交渉する
お金が足りず慰謝料の支払いが難しいと感じたときは、まず慰謝料の金額を減らしてもらえないか相手方に相談してみましょう。
話し合いの最初に提示される慰謝料は、被害者側の感情や減額交渉の可能性から、相場より高めに設定されるケースが多いです。
そのため、交渉次第では、無理のない範囲で金額を見直してもらえる可能性があります。
なお、裁判では以下のような事情があると慰謝料が減額されることがあります。
- 婚姻期間が短い
- 不倫期間が短い
- 不貞行為の回数が少ない
- 不倫発覚後も離婚・別居をしなかった
- 不倫相手が主導していた
- すでに社会的制裁を受けている
- 相場よりも高額な慰謝料を請求された
- 収入や資産が少ない
- W不倫だった
また、慰謝料の減額が必要な証拠を用意しましょう。
例えば、失業中で収入が途絶えているならハローワークで発行される雇用保険受給資格者証、医療費の負担が大きい場合は医療機関の領収書など、状況を証明できる書類を提示しながら交渉すると相手の理解を得やすくなります。
2.慰謝料の分割払いの打診をする
一括で慰謝料を支払うのが難しければ、分割払いを提案することでも負担を軽減できます。
毎月の生活費やほかの支出を確保できる金額に調整してもらえば、無理なく支払いを継続できるでしょう。
ただし、慰謝料は一括で請求されるのが通常で、分割払いにしてもらうには相手の合意が必要です。
また、合意を得られても、連帯保証人を立てることを条件に出されたり、一括で支払う場合よりも増額されたりする可能性もあります。
そもそも、慰謝料の支払いが滞った際にリスクを負うのは相手方です。
相手の合意を得るためには、自分の要望を押し付けるのではなく、相手の希望もある程度聞き入れる必要があるでしょう。
3.慰謝料の支払い期限の延長を求める
今すぐは支払えないが、後日であれば支払えるという場合は、支払い期限の延長を申し出ることで時間的な余裕を確保できます。
例えば、数ヵ月後にボーナスや臨時収入が見込める場合は、その時期まで待ってもらうよう交渉するとよいでしょう。
交渉の際は以下の3点を相手に伝え、誠実な対応を心がけてください。
- 期日までに支払えないこと
- 支払いが難しい理由
- いつなら支払えるか
また、支払い期限を延長してもらったときは、その内容を書面化した合意書を作成しておきましょう。
これにより、「言った・言わない」のトラブルを避けられます。
お金がないときに慰謝料の減額や分割払いを交渉する際の大まかな流れ
慰謝料の減額や分割払いについて交渉する際のおおまかな流れは以下のとおりです。
- 相手方の請求内容を確認する
- 慰謝料の減額などを申し入れる
- 金額や支払い方法などを話し合う
- 話し合いがまとまったら示談書を作成する
交渉を進める際は、ステップごとに注意すべきポイントがあります。
ここからは、慰謝料の減額や分割払いを目指す場合に、どのような対応をとればよいか順番に解説します。
1.相手方の請求内容を確認する
慰謝料を請求されたら、まずは請求金額や理由など、請求内容を確認しましょう。
なぜなら、事実と異なることが書かれていたり、明らかに高額過ぎる請求金額が書かれていたりする場合があるからです。
また、慰謝料の金額は、離婚や別居をしたかどうかによって大きく変わります。
- 離婚・別居しない場合:50万円〜100万円
- 離婚・別居に至った場合:100万円〜300万円
そのほか、婚姻期間や不倫期間の長さや不貞回数など、さまざまな要素によって前後します。
例えば、不倫相手とその配偶者が離婚していないにもかかわらず200万円や300万円の請求が来た場合、相場より高いといえるでしょう。
慰謝料を請求されたからといって、必ずしもその金額を支払わなければならないとは限りません。
もしも請求金額の根拠や証拠資料を確認しても納得できない点があるなら、相手に質問することが重要です。
なお、請求方法は口頭やメール、LINE、内容証明郵便などさまざまです。
いずれの方法も強制力はありませんが、弁護士名義で内容証明郵便が届いたときは裁判も視野に入れている可能性が高いため、こちらも弁護士に相談したほうがよいでしょう。
2.慰謝料の減額などを申し入れる
お金がなくて慰謝料の支払いが難しい場合や相場より高いと感じるときは、慰謝料の減額や分割払いを相手に申し入れましょう。
方法は口頭やメールなどでも構いませんが、内容証明郵便を利用し、「回答書」という形式で返答するのが一番です。
内容証明郵便は、郵便局が「いつ・誰が・誰に・どのような文章を送付したか」を公的に証明してくれるサービスです。
送付した事実が記録として残るため、トラブルの際に証拠として利用できます。
なお、回答書には、以下の項目を記載するのが一般的です。
- 通知書を受け取った日付
- 不倫の事実・謝罪の意思
- 支払いが困難であること
- 支払い方法の提案(合計◯万円を毎月◯円・◯回の分割払いで支払うなど)
- 返信期限
テンプレートはネット上に多く出回っているため、参考にしながら自分の状況に合わせてカスタマイズするとよいでしょう。
また、作成した回答書は控えをとっておくことをおすすめします。
3.金額や支払い方法などを話し合う
減額や分割払いを申し入れたあとは、相手方と金額や支払い方法などについて協議します。
分割払いを希望する場合は、毎月の支払い額や支払い期間を明確に決め、お互いの意見を擦り合わせていきます。
なお、話し合いの方法は対面に限らず、電話や書面などでも問題ありません。
また、交渉の場面では「減額してもらえて当前」という態度を避け、誠実な姿勢で臨むことが重要です。
あくまでもお願いする立場であることを忘れず、無理のない範囲で合意できる条件を探ることがスムーズな合意につながります。
4.話し合いがまとまったら示談書を作成する
話し合いがまとまったら合意内容を書面化し、示談書を作成しましょう。
示談書を作成することで、合意した条件に関する認識の違いや将来的なトラブルを防げます。
例えば、口頭で「慰謝料額は50万円」と合意し全額支払っても、書面がなければ後日さらに50万円を請求された場合に、50万円で合意したこともすでに全額支払ったことも証明できません。
なお、示談書には以下のような項目を記載し、双方が署名・押印をしてください。
- 不倫の事実・謝罪の意思
- 慰謝料額(例:◯万円)の支払い義務を認めること
- 支払い期日・支払い方法・振込手数料の負担などの支払い条件
- 就業上必要不可欠な場合を除き、不倫相手と接触しないこと
- 不倫相手と接触した場合のペナルティ(違約金など)
示談書は同じものを2通作成し、当事者双方が1通ずつ保有します。
これにより、あとから内容を確認したい場合やトラブルが発生したときにも、証拠として活用できます。
慰謝料の減額や分割払いなどが難しい場合に検討すべき対処法
慰謝料の減額や分割払いを申し入れても、相手方が承諾してくれるとは限りません。
減額や分割払いが難しいときは、以下の方法を検討してください。
- 親や兄弟などからお金を借りる
- 不倫相手への求償権を行使する
- 弁護士にアドバイスを求める
例えば、弁護士に相談しつつ親や兄弟の力を借りるなど、複数の対処法を組み合わせることをおすすめします。
それぞれの方法について、具体的に見ていきましょう。
1.親や兄弟などからお金を借りる
お金がなくて慰謝料を一括で支払えず、減額や分割払いもできないときは、親や兄弟姉妹などにお金を借りることを検討しましょう。
ただし、借りたあときちんと返済していくならよいですが、肩代わりしてもらった場合は贈与に該当するため注意が必要です。
贈与の基礎控除額は年間110万円までであり、110万円を超えると贈与税がかかります。
また、慰謝料額が110万円を超える場合は、口約束ではなく借用書を作成し、返済額や返済期限、利息の有無などを明記しておきましょう。
親族だからと甘えず、しっかり返済することが大切です。
消費者金融からの借金はおすすめできない
お金がない場合でも、消費者金融からの借金はおすすめできません。
消費者金融は、銀行で融資を受けるよりも早く現金を手に入れられる利点がありますが、金利が高いため返済総額が膨らみやすく、長期間にわたって毎月の返済負担が続くデメリットがあります。
例えば、100万円を年利15%、返済期間3年で借りた場合の毎月の返済額や返済総額は以下のとおりです。
| 毎月の返済額 | 約34,665円 | 
|---|---|
| 3年間(36回)の返済総額 | 約1,247,952円 | 
※元利均等返済方式を採用しています。
実際の金額は契約内容や返済方式によって異なりますが、利息が膨らむ点は共通しています。
完済まで毎月支払い続けなければならないため、慰謝料を支払えるだけの資力がない場合は、まず親や兄弟姉妹など身近な人に相談し、借りられそうになければ弁護士に相談することをおすすめします。
2.不倫相手への求償権を行使する
不倫が原因で慰謝料を請求されたときは、不倫相手に対して一部負担を求める「求償権」を行使する方法があります。
不倫は民法上の「共同不法行為」に該当し、不倫当事者が連帯して損害賠償責任を負います。
そのため、一方が慰謝料を全額支払った場合、自分の責任を超えて支払った分についてはもう一方に請求可能です。
なお、負担割合は5:5とすることが一般的ですが、ケースによって異なります。
例えば、こちらの年齢が低い、不倫相手が独身だと偽っていたといった事情があるときは、不倫相手の負担割合を多めにできることもあります。
なお、求償権を行使する際は、以下の書類を整理しておきましょう。
- 被害者に慰謝料を支払ったことがわかる領収書や振込記録
- 不倫相手と被害者の関係、不貞行為の経緯がわかるやりとりや資料
- 求償や負担割合に関する合意書ややりとりの記録
話し合いで合意できていても、あとから「支払うとは言っていない」「支払う義務がない」などと不倫相手が態度を変える可能性があります。
法的手続きに進んだ場合に備え、自分が慰謝料を支払ったことや不倫相手にも共同不法行為の責任があることを証明できるよう、証拠を揃えて起きましょう。
【関連記事】求償権とは?不倫の慰謝料で損しないための基礎知識をわかりやすく解説
3.弁護士にアドバイスを求める
慰謝料の支払いが難しいと感じたときは、自己判断せず弁護士に相談することをおすすめします。
弁護士に相談・依頼することで、請求内容が法的に妥当かどうか確認してもらったり、減額・分割払いの交渉を有利に進めてもらったりすることが可能です。
慰謝料請求の通知が届いた時点で弁護士に相談すれば、支払い義務の有無や適切な対応方法を早い段階で把握でき、不当な請求や負担を回避しやすくなるでしょう。
また、弁護士が間に入ることで、相手方と直接交渉することによるストレスも軽減されます。
最終的に自己破産が選択肢となる場合のリスクや手続きについても、具体的なアドバイスを受けられるでしょう。
不倫に関する相談先については、以下の記事を参考にしてください。
【関連記事】不倫の相談はどこにすべき?相談前に準備すべきことやよくある質問についても解説|ベンナビ
お金がないことを理由に慰謝料の支払いを拒否するリスク
お金がなくて慰謝料を支払えない場合、つい「請求を無視してしまおう」という考えが浮かぶかもしれません。
しかし、慰謝料の支払いを拒否することには、以下のようなリスクがあります。
- 法的手続きを取られる可能性がある
- 慰謝料を増額されてしまう可能性がある
ここでは、慰謝料の支払いを拒否するリスクについて解説します。
1.法的手続きを取られる可能性がある
請求を無視して慰謝料を支払わずにいると、相手方に訴訟や強制執行などの法的手続きを取られる可能性があります。
訴訟になると時間や手間がかかるうえ、精神的な負担も大きくなるでしょう。
さらに、訴状が届いても無視を続けていると、請求された金額を支払うよう判決が出てしまいます。
判決後は強制執行によって銀行口座や給料、不動産などを差し押さえられる可能性があり、給料を差し押さえられると、勤務先に不倫をしたことや慰謝料を支払わず差し押さえにあっていることがバレます。
そのため、慰謝料を請求されたら放置せず、誠実に対応することが重要です。
どのように対応すればよいかわからないときは弁護士に相談し、専門的なアドバイスをもらいましょう。
2.慰謝料を増額されてしまう可能性がある
慰謝料を支払わない行為が「誠意のない対応」と判断されると、慰謝料を減額してもらうどころか増額されるおそれがあります。
請求を無視・拒否することが、相手方の反発や裁判所での心証悪化につながるためです。
そのため、支払いが難しい場合でも、事情を丁寧に説明し、誠意をもって対応することが大切です。
支払い能力がない場合は自己破産をするのもひとつの手段
支払い能力がなく、慰謝料の支払いがどうしても難しいなら、自己破産の手続きを検討するのもひとつの手段です。
自己破産とは、借金やローンなどの支払いができなくなったときに、裁判所に申し立てて借金をゼロにしてもらう手続きです。
手続きが認められると、原則として借金の返済義務がなくなります。
ただし、財産がある場合は一部を手放す必要があったり、一定期間はクレジットカードやローンの契約ができなくなったりする可能性がある点に注意が必要です。
また、慰謝料の内容や原因によっては免責が認められず、自己破産できない場合もあります。
そのため、自己破産を検討する際は弁護士に相談し、アドバイスをもらうと良いでしょう。
自己破産のデメリットや費用、条件については以下の記事を参考にしてください。
【関連記事】自己破産したらどうなる?デメリットや費用・条件を弁護士がわかりやすく解説|ベンナビ
さいごに|お金がなくて慰謝料を払えないなら弁護士に相談しよう
本記事では、慰謝料を支払うお金がない場合の対処法について解説しました。
「慰謝料を請求されたけれどお金がない」というときは、減額交渉や分割払いの打診、支払い期限の延長を求めるといった対処法があります。
相手方の承諾を得られない場合は、親や兄弟姉妹からお金を借りたり、不倫相手に対して求償権を行使したりといった方法を検討しましょう。
ただし、消費者金融からの借金は、金利が高く支払い負担が大きくなるためおすすめできません。
また、お金がないからといって慰謝料の支払いを拒否するのも、法的手続きに発展したり慰謝料を増額されたりするおそれがあるためやめておきましょう。
慰謝料を請求されたら、弁護士に相談するのがおすすめです。
自己破産も含めて、適切なアドバイスを受けられるでしょう。

 
 
         
         
     
         
         
         
           
 
 
 
