相続放棄前後にやってはいけないこととは?12の具体例を解説
親が亡くなり、相続の手続きを進めるなかで負債が多いことが判明した場合、相続放棄を検討する人は少なくありません。
しかし、相続放棄を正式におこなう前後に一定の行為をしてしまうと、意図せず相続を承認したとみなされ、借金まで引き継いでしまうリスクがあります。
この記事では、相続放棄を検討している人がやってはいけない行為を「3つの区分」と「12の具体例」に分けてわかりやすく解説します。
誤った対応を避け、安心して相続放棄の手続きを進めるための指針としてぜひ参考にしてください。
- 相続放棄前後にやってはいけないこととは?
- 「単純承認をした」とみなされる3つの行為
-
相続放棄前後にやってはいけないことの具体例12つ
- 1.遺産分割協議に参加して遺産を取得すること
- 2.被相続人の預貯金を引き出したり名義変更・解約をしたりすること
- 3.被相続人名義の不動産を売却したり名義を変更したりすること
- 4.相続財産のうち高価な家財・車などを売却したり処分したりすること
- 5.被相続人が借りていた賃貸マンションやアパートを解約すること
- 6.被相続人のクレジットカードを解約したり名義変更したりすること
- 7.被相続人名義のスマートフォン契約を解約すること
- 8.被相続人名義の株式を売却すること
- 9.被相続人の資産から借金や税金を支払うこと
- 10.被相続人の資産から入院費を支払うこと
- 11.被相続人が他人に貸していた借金を取り立てること
- 12.被相続人が受取人となっている還付金を受領すること
- 相続放棄前後にやっても問題ない行為の具体例
- 相続放棄前に遺品整理をしたらバレるの?
- 相続放棄前に遺品整理や家財道具の処分などをしてしまったらどうすればいい?
- さいごに|相続放棄手続きで迷うことがあれば弁護士に相談を!
相続放棄前後にやってはいけないこととは?
相続放棄とは、相続人が被相続人(亡くなった人)の財産を一切受け継がないことを指します。
相続財産には、不動産や預貯金のようなプラスの財産だけでなく、借金などのマイナスの財産も含まれます。
そのため、被相続人が借金を抱えていたことが判明し、相続によるデメリットのほうが大きい場合には相続放棄を検討するべきです。
相続放棄を検討している場合に注意しなければならないのが「単純承認」とみなされてしまう行為です。
単純承認をすると、たとえ負債が多くても相続放棄ができなくなり、借金を含めた全ての遺産を相続するものと扱われます。
思わぬリスクを避けるためにも、相続放棄前後には慎重な行動が求められます。
「単純承認をした」とみなされる3つの行為
単純承認をしたとみなされる行為は、民法第921条により以下の3つと規定されています。
- 相続開始を知ってから3ヵ月の間に相続に関する手続きをせず放置する行為
- 相続財産を消費・処分する行為
- 相続財産を隠匿する行為
それぞれについて、根拠となる法律を引用しながら解説します。
相続開始を知ってから3ヵ月の間に相続に関する手続きをせず放置する行為
相続放棄や限定承認をする場合は、相続開始(被相続人の死亡)を知ってから3ヵ月以内に申し立てなくてはいけません。
民法には「法定単純承認」という決まりがあり、限定承認または相続放棄を選ばなかった場合は自動的に単純承認したとみなされ、借金も含めて全ての財産を相続することとなります。
(法定単純承認)
第九百二十一条 次に掲げる場合には、相続人は、単純承認をしたものとみなす。
二 相続人が第九百十五条第一項の期間内に限定承認又は相続の放棄をしなかったとき。
引用元:民法第921条|e-Gov 法令検索
たとえ手続きを忘れていただけだとしても、法律上は相続を承諾した扱いとなるため注意が必要です。
相続放棄を考えている場合は、家庭裁判所での申述期限を必ず守りましょう。
相続財産を消費・処分する行為
相続放棄前に、被相続人の財産を処分したり、現金を使ったりすることは単純承認とみなされます。
(法定単純承認)
一 相続人が相続財産の全部又は一部を処分したとき。ただし、保存行為及び第六百二条に定める期間を超えない賃貸をすることは、この限りでない。
引用元:民法第921条|e-Gov 法令検索
たとえば、被相続人名義の預金を引き出して何らかの支払いに充てたり、被相続人名義の不動産を売却したりすると、相続財産を消費・処分したとされ、単純承認したとみなされてしまう可能性が高いです。
相続財産の一部に手をつけなくてはならない場合は、必ず弁護士に確認してからおこないましょう。
相続財産を隠匿する行為
被相続人の遺産を故意に隠したり、ほかの相続人に知らせず自分だけで占有した場合も、単純承認とみなされます。
(法定単純承認)
三 相続人が、限定承認又は相続の放棄をした後であっても、相続財産の全部若しくは一部を隠匿し、私にこれを消費し、又は悪意でこれを相続財産の目録中に記載しなかったとき。
引用元:民法第921条|e-Gov 法令検索
相続財産の一部または全部を隠匿したことが発覚した場合、相続放棄や限定承認を選択したあとであっても単純承認したとみなされてしまいます。
相続放棄をするなら、財産の全貌を正直に開示する姿勢が求められます。
相続放棄前後にやってはいけないことの具体例12つ
では、具体的にどのような行為が単純承認とみなされる可能性があるのでしょうか。
ここからは、以下で挙げる12の例について、詳しく見ていきましょう。
- 遺産分割協議に参加して遺産を取得すること
- 被相続人の預貯金を引き出したり名義変更・解約をしたりすること
- 被相続人名義の不動産を売却したり名義を変更したりすること
- 相続財産のうち高価な家財・車などを売却したり処分したりすること
- 被相続人が借りていた賃貸マンションやアパートを解約すること
- 被相続人のクレジットカードを解約したり名義変更したりすること
- 被相続人名義のスマートフォン契約を解約すること
- 被相続人名義の株式を売却すること
- 被相続人の資産から借金や税金を支払うこと
- 被相続人の資産から入院費を支払うこと
- 被相続人が他人に貸していた借金を取り立てること
- 被相続人が受取人となっている還付金を受領すること
1.遺産分割協議に参加して遺産を取得すること
相続放棄をしたいと考えている段階で、遺産分割協議に参加し、財産の分配について話し合ったり、現金や不動産などを受け取ったりすると、「相続を承認した」とみなされるおそれがあります。
民法第939条によると、相続放棄をする場合はその相続に関してはじめから相続人とならなかったものとされます。
(相続の放棄の効力)
第九百三十九条 相続の放棄をした者は、その相続に関しては、初めから相続人とならなかったものとみなす。
引用元:民法|e-GOV 法令検索
そのため、相続放棄をする人は遺産分割協議に参加する権限を持ちません。
逆にいえば、遺産分割協議に参加した時点で「相続する意思がある」とみなされる可能性があるのです。
相続放棄を検討している場合、ほかの相続人から話し合いを求められても「放棄の意思があるため協議には参加できない」と明確に伝えましょう。
2.被相続人の預貯金を引き出したり名義変更・解約をしたりすること
相続放棄を考えている場合、被相続人の銀行口座に手をつけることは避けなければなりません。
たとえ公共料金の清算など「一時的な支払いのため」であっても、銀行から資金を引き出す行為自体が「相続財産の処分」とみなされることがあるからです。
預金を引き出すだけではなく、口座の名義を変更したり解約したりする行為も処分にあたるため注意しましょう。
どうしても必要な支払いがある場合でも、原則として被相続人の財産には手をつけず、弁護士に相談したうえで立替払いを検討するのがおすすめです。
3.被相続人名義の不動産を売却したり名義を変更したりすること
相続放棄を検討中に、被相続人名義の不動産を勝手に売却したり、登記名義を変更したりすることも厳禁です。
これらの行為は相続財産の処分に該当し、相続放棄の効力を失うリスクがあります。
もし管理や修繕が必要な場合は「崩れそうなブロック塀を補修する」といった保存行為の範囲内に留めましょう。
4.相続財産のうち高価な家財・車などを売却したり処分したりすること
家の中の家電や家具、車などを整理する際も注意が必要です。
特に、自動車や貴金属、美術品など換金価値の高いものを処分・売却すると、相続財産を処分したとみなされ、放棄が無効になるおそれがあります。
たとえ「邪魔だから処分した」程度の軽い意図でも、法律上は「承認行為」と判断される場合があります。
相続放棄を考えている間は、財産に一切手をつけず、そのままの状態で保存することが大切です。
判断が難しい場合は、弁護士に確認してから行動するようにしましょう。
5.被相続人が借りていた賃貸マンションやアパートを解約すること
被相続人が賃貸マンションやアパートを借りていた場合、そのままにしていると家賃が発生し続けてしまいます。
しかし、相続人が被相続人の賃貸契約を解約してしまうと、相続放棄が認められなくなるおそれがあります。
賃貸マンションやアパートの「賃借権」も被相続人の財産の一種であり、契約を解除することは相続の一部とみなされるためです。
相続放棄を検討している場合は、ほかの相続人に契約解除を依頼するか、大家さんに対して「相続放棄をする旨」を伝えたうえで一方的に契約を解除してもらうべきです。
6.被相続人のクレジットカードを解約したり名義変更したりすること
被相続人のクレジットカードを相続放棄前に解約したり、名義を変更したりする行為にも注意が必要です。
相続放棄を検討している段階で相続人が解約手続きをおこなうと、「被相続人の財産管理や契約処理を主体的におこなった」と見なされ、結果として相続を承認したと判断されるおそれがあります。
被相続人が所有していたクレジットカードは、相続放棄を申し立てたあとに、カード会社からの指示に従って手続きをおこなうのが安全です。
もし利用残高や未払いがある場合も相続財産から支払わず、カード会社に「相続放棄予定である」旨を連絡して対応を待ちましょう。
7.被相続人名義のスマートフォン契約を解約すること
被相続人が使用していたスマートフォンやインターネットなどの契約を、相続放棄前に相続人が解約する行為も避けるべきです。
スマートフォンなどの通信契約の解約は法定単純承認に当たる可能性は高くないと考えられているものの、判例が確立していないため、相続放棄予定の人は自ら解約せず、弁護士や通信会社に相談して進めるのが安全です
どうしても電話番号の停止などが必要な場合は、通信会社に「相続放棄を検討中である」旨を伝え、対応方法を確認するのが安全です。
8.被相続人名義の株式を売却すること
相続放棄を検討している段階で、被相続人名義の株式や投資信託を売却する行為も避けなければならない行為の一つです。
株式などの有価証券は明確に「相続財産」に該当し、それを売却することは「財産の処分」にあたります。
この時点で相続を承認したとみなされ、相続放棄の効力が否定される可能性が極めて高いです。
「株式の価値が下落しており早く売却したい」「口座維持手数料を回避したい」などの理由があっても、相続放棄を予定しているなら絶対に手をつけてはいけません。
証券口座の管理については、まず「被相続人が死亡した」旨を連絡し、相続放棄を予定していることを説明すれば、適切な対応(口座凍結など)を取ってもらえます。
判断を誤ると債務を全て引き継ぐ結果になりかねないため、注意しましょう。
9.被相続人の資産から借金や税金を支払うこと
相続放棄を検討している段階で、被相続人の財産を使って借金や税金を支払うのは避けなければなりません。
なぜなら、「被相続人の財産を処分した=相続を承認したと」みなされるおそれがあるからです。
どうしても支払いが必要な場合は、自分の口座から立て替えて払い、相続放棄後に清算するなどの対応を検討しましょう。
被相続人の資産には一切手をつけないのが安全です。
10.被相続人の資産から入院費を支払うこと
被相続人が亡くなる直前に入院していた場合、病院から医療費の請求が届くことがあります。
しかし、その支払いを被相続人の口座や現金でおこなうことはNGです。
これもまた「相続財産を処分した」とみなされる可能性が高い行為だからです。
入院費は原則として被相続人の債務(借金の一種)であり、相続放棄をするなら支払う義務はありません。
どうしても支払う必要がある場合は、被相続人の財産のなかではなく自分の預金から立て替えて払うようにしましょう。
11.被相続人が他人に貸していた借金を取り立てること
被相続人が他人にお金を貸していた場合もあるかもしれません。
しかし、貸付金を回収する権利である債権も相続財産の一部です。
したがって、相続放棄をする前に被相続人が貸していた金を取り立てたり、返済を受け取ったりすると、「相続財産を取得した」とみなされるおそれがあります。
たとえば、被相続人が知人に100万円を貸していた場合に、相続人が「返してほしい」と連絡して返済を受け取ると、相続放棄の意思が否定される可能性が高くなります。
返済を求めたい場合は、まず相続放棄をするかどうかを決める前に弁護士へ相談し、法的に問題ない方法で手続きを進めるようにしましょう。
12.被相続人が受取人となっている還付金を受領すること
被相続人の確定申告後に発生した税金の還付金や、医療費控除による払い戻し金などを相続人が受け取るのも避けるべきです。
こうした還付金は、被相続人の財産の一部とみなされるため、受け取ることで相続を承認したと判断されるおそれがあります。
「手続きを代行しただけ」「受け取ってからほかの相続人に分けるつもりだった」という場合でも、法的には相続したとみなされてしまうリスクがあります。
どうしても申請や返金手続きが必要な場合は、事前に弁護士や税理士に相談して、相続放棄に影響のない方法を確認しておきましょう。
相続放棄前後にやっても問題ない行為の具体例
原則として、相続放棄前後に被相続人の財産を処分・消費すると相続放棄が認められなくなってしまいます。
ただし、以下のような行為は例外であり、相続放棄をする前後におこなっても問題ありません。
自分が受取人となっている死亡保険金を受け取ること
生命保険金は、保険契約時に指定された「受取人」に直接支払われるものであり、民法上は「相続財産」には含まれません。
そのため、自分が被保険者(亡くなった人)の死亡保険金の受取人として指定されている場合、その保険金を受け取っても相続放棄の効力には影響しません。
ただし、注意が必要なのは、保険契約上の受取人が「亡くなった人本人」の場合です。
この場合、保険会社から支払われる保険金は相続財産に組み込まれます。そのため、相続放棄を予定している人が保険金を受け取ると「相続を承認した」とみなされてしまいます。
受取人の名義が誰になっているかを必ず確認し、疑わしい場合は保険会社や専門家に相談してから手続きを進めるのが安全です。
【関連記事】相続放棄しても生命保険は受け取れる!死亡保険金を請求する流れや相続税のポイント
相続財産のなかから葬儀費用を支払うこと
葬儀費用の支払いは、相続放棄をおこなう前後にかかわらず、通常は「相続の承認」にあたる行為とはされません。
なぜなら、葬儀の実施や墓石・仏具の購入などは社会的儀礼に基づく行為であり、遺産の処分とは異なると判断されるためです。
遺族として最低限の葬儀を執りおこない、その費用を相続財産の中から支払ったとしても、家庭裁判所はそれを「相続を承認した」と判断しないのが一般的です。
ただし、高額な法要費を支払うなど、通常の葬儀の範囲を超えた過剰な支出があると、被相続人の遺産を自らのために処分したとみなされる可能性があるので注意しましょう。
不安であれば、事前に弁護士へ相談することをおすすめします。
相続財産のうち財産価値がないものを形見分けすること
形見分けとは、故人の遺品のうち、金銭的価値がほとんどないものを親族間で分ける行為を指します。
相続放棄をする予定の人であっても、衣類や写真、日用品などを思い出として受け取る行為は問題ありません。
これらは市場で売却できるような経済的価値を持たないため、遺産を実質的に取得したとはみなされないからです。
ただし、貴金属や骨董品、ブランド時計など、明らかに価値があるものを形見として持ち帰ると、相続を承認したとみなされるおそれがあります。
判断が難しい場合は、鑑定を受けるか、相続放棄の申述後に家庭裁判所へ確認を取るのが安心です。
形見分けをする際は、あくまで「思い出として保管するだけの品」であることを意識しておこなうことが重要です。
【関連記事】相続放棄をするなら家の片付けは慎重に!NG行為とOKな範囲、注意点を解説
食べ物など日持ちのしない遺品を処分すること
亡くなった人の遺品の中に、食べ物や飲み物など日持ちしないものが含まれている場合、それらを処分する行為は相続放棄に影響しません。
日持ちしない物は時間の経過とともに腐敗したり衛生的に問題を生じたりするため、廃棄したからといって「相続財産の処分」とはみなされないのです。
むしろ、放置することで害虫や悪臭の原因となるおそれがあり、適切に処理することが望ましいとされています。
ただし、食料品や日用品の中に、高級酒や未開封のギフトセットなど、一定の金銭的価値を持つものがある場合は注意が必要です。
市場で売却できるような品を勝手に処分・消費すると「遺産の処分」とみなされたり、ほかの相続人から反感を買ったりするおそれもあります。
判断に迷う場合は処分するものを写真やメモで記録しておくか、弁護士に確認するなど慎重に対応しましょう。
相続財産を無償で貸与すること
相続放棄前後に、故人名義の土地や建物などを他人に無償で貸す行為は、原則として慎重におこなうべきですが、相続財産の内容や状況によっては問題ない場合もあります。
たとえば、相続財産を保護・維持する目的で一時的に親族に預ける、空き家の管理を委託するなどの行為は、「相続を承認した」とみなされないことが多いです。
しかし、単に知人や第三者に長期的・自由に使わせる場合は、事実上の「財産処分」にあたる可能性があります。
無償であっても、相続財産を第三者に貸与する際は弁護士などの専門家の助言を受けたうえで慎重におこなうべきです。
相続財産を保存・維持するための対応をおこなうこと
相続財産を放置すると、劣化や盗難、損傷などが生じるおそれがあるため、相続放棄前後であっても「財産を保存・維持するための行為」は認められています。
たとえば、故人の自宅を施錠して侵入を防ぐ、漏水を止めるために業者へ修理を依頼する、車を安全な場所へ移動させるといった対応は、全て「保存・維持するための行為」に該当します。
これらは遺産を自分のために利用したり処分したりする行為ではないため、相続放棄の効力に影響しません。
ただし、空き家となった被相続人の実家をリフォームするなど多額の費用を支出した場合は「財産を相続する意思がある」とみなされ、相続放棄が認められなくなるおそれがあります。
相続放棄を検討している場合は、あくまで「維持管理の範囲」を超えないよう意識して行動することが大切です。
健康保険や年金の喪失手続きをおこなうこと
被相続人が加入していた健康保険や年金の資格喪失手続きは、相続放棄前後を問わずおこなって問題ありません。
これらは親族の死亡に伴い必ずおこなうべき行政手続きであり、遺産の取得や処分とは無関係であるためです。
たとえば、国民健康保険の場合は市区町村役場で「資格喪失届」を提出し、保険証を返却します。
厚生年金や国民年金についても、被相続人の勤務先や年金事務所で必要な届け出をおこなうことになります。
これらの喪失手続きは放置すると保険料が誤って賦課されるなどのトラブルが発生することがあるため、相続放棄を検討している場合であっても速やかに実施しましょう。
相続放棄前に遺品整理をしたらバレるの?
相続放棄を考えている場合であっても、亡くなった親族の遺品整理には参加したいと考える人も多いはずです。
ここでは、遺品整理が相続放棄に影響するかどうかについて解説します。
裁判所が積極的に調査をすることはない
相続放棄の申述が家庭裁判所に受理された場合でも、裁判所自体が遺品整理の有無を能動的に調査することは通常ありません。
家庭裁判所は、現場での物的検査や日常生活の監視をおこなう性質の機関ではないため、遺品の処理状況を逐一チェックする仕組みは基本的に存在しないからです。
したがって「裁判所が自発的に現地調査してバレる」という心配は比較的低く、相続放棄をする人が遺品整理をしても問題がないケースが多いです。
ほかの相続人や債権者などの調査でバレる可能性が高い
相続放棄を考えている人が遺品整理で問題を指摘されるのは、ほかの相続人や債権者などの第三者による調査や突合せによるケースが多いです。
たとえば、共同相続人が自宅を訪れた際に、貴金属や通帳が減っていることに気づいたら遺品整理をした相続人に対して疑念を抱くことになるでしょう。
債権者が故人の資産状況を調べた結果と遺品の処分状況が合致しない、あるいは不審な処分があった旨の通報があれば、「遺品整理に関わった人が相続財産を処分したのでは」と疑われ、放棄の有効性が争点となり得ます。
特に価値のある物品を無断で売却・譲渡すると「遺産を処分した」と判断され、相続放棄が認められないリスクが高まります。
そのため、遺品整理をおこなう場合は、他相続人と事前に合意を取る、価値ある品は鑑定・一覧化して共有する、処分行為は写真と領収書で記録するなど、透明性を保つ対応が重要です。
相続放棄前に遺品整理や家財道具の処分などをしてしまったらどうすればいい?
相続放棄をする予定でありながら、遺品整理や家財の処分をしてしまった場合でも、すぐに「相続放棄が無効になる」と決まるわけではありません。
重要なのは、その行為が「相続財産を処分した」と判断されるかどうかです。
たとえば、金銭的価値のない衣類や日用品を整理した程度であれば、社会的常識の範囲内の行為として扱われることが多く、放棄の効力に影響しない可能性があります。
しかし、貴金属や不動産、通帳の引き出しなど、明らかに経済的価値を持つ財産を動かしていた場合は、「相続を承認した」とみなされ、放棄が認められないおそれがあります。
もし心当たりがある場合は、できるだけ早く弁護士などの専門家に相談し、事情を説明したうえで対応を検討しましょう。
状況によっては「財産の保存行為」として正当と認められるケースもあります。
処分行為が軽微なものであっても、後にほかの相続人や債権者から指摘されることを避けるため、整理や処分をおこなった日時・内容・理由を記録しておくことが大切です。
早めの相談と誠実な説明が、相続放棄を有効に進めるうえで最も重要な対応となります。
さいごに|相続放棄手続きで迷うことがあれば弁護士に相談を!
本記事では、相続放棄前後にやってはいけないことについて詳しく解説しました。
相続放棄は「相続しない」という明確な意思を示す重要な法的手続きですが、その前後の行動によっては放棄が無効と判断されるリスクもあります。
遺品整理や家財処分、保険金の受け取りなど、一見問題なさそうな行為でも、内容によっては「相続の承認」とみなされるおそれがあります。
裁判所は積極的に調査しないものの、ほかの相続人や債権者からの指摘で発覚するケースも少なくありません。
判断が難しい場合やすでに整理を始めてしまった場合は、早めに弁護士へ相談することが大切です。
弁護士に依頼すれば、どの行為が相続放棄に影響しないかを具体的に判断してもらえるほか、家庭裁判所への申述書作成や証拠整理なども安心して任せられます。
迷ったら一人で抱え込まず、専門家に相談して正確な対応をおこないましょう。
