近くの弁護士・法律事務所を探せる検索サイト

遺留分放棄の撤回はできる?可否と例外的に認められる可能性があるケースを解説

弁護士監修記事
遺産相続 遺留分
2026年05月11日
遺留分放棄の撤回はできる?可否と例外的に認められる可能性があるケースを解説
この記事を監修した弁護士
長谷川 達紀・日吉 加奈恵弁護士 (新静岡駅前法律事務所)
依頼者様のお気持ちに寄り添い、最も良い選択ができるよう、一緒に考え、解決策を提案させていただきます。
法律事務所のプロフィールを見る
  • 「遺留分放棄を了承してしまった。あとから撤回することはできるか。」
  • 「遺留分放棄の撤回をするにはどうすればいいか。」

遺留分の放棄は、遺産相続に多大な影響を及ぼす重大な決断です。

一度、遺留分の放棄をしたものの、何がしかの事情が変われば「撤回したい」と思うこともあるかもしれません。

被相続人の生前に、遺留分放棄の許可を出すのは家庭裁判所です。

家庭裁判所は、相続人の希望に従い、遺留分放棄の許可を撤回してくれるのでしょうか。

本記事では遺留分放棄の撤回ができるかや、撤回ができる例外的なケース、遺留分撤回の手続き方法、撤回が認められなかった場合の対処法を解説しています。

遺留分を放棄してしまうと、相続遺産を少しも引き継げなくなる可能性があるのは否めません。

本記事を読むことで、遺留分放棄の撤回をしたいときにどのようにすればよいか、最適な対処法を把握できます。

今すぐ無料相談電話相談OKの弁護士が見つかる!
ベンナビ相続で
遺産相続が得意な弁護士を探す

遺留分放棄の撤回はできるの?相続開始後でも撤回は可能?

遺留分の放棄は、遺産相続に重要な影響がある選択です。

遺留分放棄をしたあとに、事情や考えが変わって撤回したくなることもあるかもしれません。

ここでは遺留分放棄の撤回が可能か見ていきましょう。

遺留分放棄の撤回は原則として認められない

結論からいうと遺留分放棄の撤回は非常に難しく、原則として認められません

遺留分放棄は本人だけでなく、ほかの相続人の遺産相続にも大きな影響を及ぼす行為です。

そのため遺留分放棄をする際は、その意思に揺るぎないことを示す必要があります。

あとから考えが変わったからといって、簡単に認められるものではありません。

相続開始後は遺留分放棄の撤回がより認められ辛くなる

相続開始後は、遺留分放棄の撤回がさらに認められ辛くなります。

相続が開始され誰が何を相続するか確定したあとに、遺留分放棄の撤回を認めると権利関係が混乱するためです。

たとえば相続人同士の協議がすんで、不動産や預金、債券といった相続遺産の分割も完了したとします。

そのあとに遺留分放棄の撤回が認められたら、遺産を分割する前に戻して改めて協議し直さなくてはならなくなるかもしれません。

相続した遺産を処分した相続人もいるかもしれませんし、やり直しは現実的ではないでしょう。

極めて特別・例外的な事情がない限り、相続開始後は遺留分放棄の撤回が認められないのです。

遺留分放棄の撤回が認められる可能性がある例外的な2つのケース

前章で解説したとおり、遺留分放棄の撤回は非常にハードルが高い手続きといえます。

ただし、以下にあげる例外的なケースに関しては遺留分放棄の撤回が認められる可能性があります

遺留分放棄が権利者の自由な意思にもとづいていなかった場合

相続人の自由な意思でなく遺留分放棄の手続きをおこなった場合は、撤回が認められる可能性があります。

たとえば遺留分の権利者がほかの相続人に騙されたり、脅迫されるなどして無理やり手続きをさせられたりといったケースです。

このように権利者の自由な意思にもとづいていないといえる場合は、遺留分放棄の撤回が認められる可能性があります。

遺留分放棄の許可がでた事情に大きな変化が生じた場合

家庭裁判所は権利者の事情からみて合理的な理由があると認めた場合に限り、遺留分放棄の許可を出します。

ただし、あとからその事情に大きな変化が生じて、遺留分を放棄することが不合理になったと判断される場合は、遺留分放棄の撤回が認められる可能性があるのです。

「○○が買いたくなり、やっぱりお金が欲しくなったから遺留分放棄の撤回をしたい」といった、個人的な事情の変化だけでは認められません

それでは、実際にどのような事情で遺留分放棄の撤回が認められる可能性があるのでしょうか。

遺留分放棄の撤回が認められる可能性がある事情変化の例

事情に以下のような変化があった場合、遺留分放棄の撤回が認められる可能性があります。

【家業を継ぐ予定だった人が結局継がなかった】
親が営む事業を長男が継ぐことを前提に、ほかの兄弟姉妹が遺留分放棄をすることがあります。
しかし、結局長男が事業を継がなかった場合は遺留分放棄の前提が完全に崩れるため、ほかの兄弟姉妹は撤回が認められる余地があります。
【条件として約束された金銭が支払われなかった】
遺留分を放棄する代わりに、その対価として被相続人から生前に金銭を受け取る約束をすることがあります。
この場合、約束どおり金銭が支払われれば問題ありませんが、約束が果たされなければ、事情が大きく変化したとして撤回が認められる可能性があります。
【養子縁組を前提に遺留分放棄をおこなったが、離縁によって前提を失った】
過去の裁判例では、継母との養子縁組を前提に遺留分放棄をしたケースで撤回が認められています。
父の死亡前に離縁したことで養子縁組という前提がなくなり、「このまま放棄を維持するのは不合理」と判断されたためです。
(昭和44年10月23日 東京家庭裁判所審判)

 

上記のようなケースでは、例外的に遺留分放棄の撤回が認められる可能性があります。

ただし同様のケースでも事情は個別に少しずつ違うと考えられ、必ず認められるとはいえません。

自分のケースで撤回が認められる可能性があるかどうかは、相続問題に詳しい弁護士に相談して判断を仰ぐことをおすすめします。

遺留分放棄を撤回するには?

被相続人の生前に遺留分放棄の手続きをおこなった場合、遺留分放棄の撤回をするには家庭裁判所にて手続きが必要です。

以下、具体的な手続きの流れを見ていきましょう。

1.所定の申立書を作成する

まずは、申立書を作成します。

申立書には、撤回を求める理由を具体的かつ詳細に記載しなければなりません。

「撤回したい」という意思を示すだけでは足りません。

申立書に加え、以下の必要書類・資料も用意します。

  • 申立人の戸籍謄本
  • 被相続人の戸籍謄本
  • 撤回に至った事情を証明できる証拠

適切に手続きを進めたい場合や、撤回できる可能性を少しでも高めたいときは相続問題が得意な弁護士に依頼し、説得力のある申立書を作成してもらうことをおすすめします。

2.遺留分放棄の手続きをおこなった家庭裁判所に必要書類を提出する

申立書と必要書類の準備が整ったら、遺留分放棄を許可した家庭裁判所に提出します。

遺留分放棄の撤回ができるのは、遺留分放棄を許可した家庭裁判所だけなので注意ください。

裁判所は提出された書類を審査し、遺留分放棄の撤回を認めるか判断します。

また、上記の他に家庭裁判所から必要書類の提出を求められることがあるので、その場合は指示に従い提出しましょう。

なお、許可の取消しが却下された場合、ケースによっては「即時抗告」という方法で不服申立てができる可能性があります。

即時抗告とは、家庭裁判所の審判に対して不服がある場合に、高等裁判所に再審理を求める手続きです。

即時抗告が認められるかどうかは、過去の裁判例でも判断が分かれています。

遺留分放棄の撤回が認められなかった場合の対処法はある?

遺留分放棄の撤回が認められなかった場合の対処法は、相続開始前か後かで以下のように異なります。

  • 相続開始前なら被相続人に公平な遺言を作成するよう求める
  • 相続開始後であれば遺産分割協議でほかの相続人に公平な分割を求めるしかない

それぞれ詳しく見ていきましょう。

相続開始前なら被相続人に公平な遺言を作成するよう求める

遺留分放棄の撤回が認められなかった場合でも、被相続人がまだ健在であれば、公平な遺言書を作成してもらうことで遺留分の問題を回避できます。

「公平な遺言」といっても人によって受け取り方は異なりますが、各相続人の生活状況や被相続人との関係性を考慮したものであればほかの相続人も納得しやすいでしょう。

反対に、特定の相続人だけに配分が偏っているものは公平とはいえません。

どのような遺言を作成すれば公平といえるか、弁護士にアドバイスをもらうことも強く推奨されます。

相続開始後であれば遺産分割協議でほかの相続人に公平な分割を求めるしかない

相続開始後の遺留分放棄の撤回はほぼ不可能です。

この場合、取れる手段は非常に限られます。

すでに被相続人が亡くなっているため、公平な遺言を作成してもらうこともできません。

このような状況では、遺産分割協議でほかの相続人に対して公平な分割を求めるしかないでしょう。

遺留分を放棄しても、相続放棄とは異なり相続人としての立場は失われないため、遺産分割協議には参加できます。

ただし、ほかの相続人には希望に応じる義務はないため、交渉が成立するかどうかは相手の理解と協力次第です。

交渉を有利に進めるためには、弁護士に依頼し代理人として交渉してもらう方法があります。

話し合いがこじれそうな場合や希望を聞き入れてもらえそうにないときは、弁護士に相談することも検討してみてください。

後悔しないためにも遺留分放棄をするかは慎重に検討するべき

遺留分放棄は、一度おこなうと撤回が非常に難しく、特に相続開始後に認められる可能性はごくわずかです。

そのため、被相続人やほかの相続人から放棄を求められても、その場の雰囲気だけで安易に応じるべきではありません。

遺留分放棄に応じるかどうかは、少なくとも以下の点を確認したうえで判断しましょう。

  • なぜ遺留分放棄が必要なのか
  • 放棄する代わりに、どのような見返りがあるのか(金銭・不動産など)
  • その見返りが、受け取れたはずの遺留分に見合うのか

事業承継や、障害のある子どもに財産を多く残したいといった正当な理由があるケースも多いですが、説明に心から納得できるかどうかが重要です。

見返りがあるとしても、結果的に損をするかどうかはその場で判断できるものではありません。

いったん保留にし、将来の相続全体を踏まえて冷静に検討する必要があるでしょう。

少しでも不安があれば遺留分放棄について弁護士に相談するべき

申立てをする前に「本当に放棄していいのか」「ほかの相続人が提示した条件は妥当なのか」といった疑問を弁護士に相談することが重要です。

相続問題に精通している弁護士であれば、専門的な視点から以下の点に関する適切なアドバイスをしてくれるでしょう。

  • 遺留分放棄のメリットやデメリット
  • 見返りとして提示されている金額が妥当かどうか
  • ほかに取り得る選択肢がないかなど

少しでも不安や違和感があるなら、言われるままに了承するのではなく、まずは専門家の意見を聞くのがおすすめです。

一度放棄すると取り返しがつかなくなる場合があるからこそ、事前に弁護士に相談し、納得したうえで判断することが大切です。

今すぐ無料相談電話相談OKの弁護士が見つかる!
ベンナビ相続で
遺産相続が得意な弁護士を探す

さいごに|遺留分放棄の判断は慎重に

遺留分放棄の撤回ができるかどうかや、例外的に認められる可能性があるケースを解説しました。

遺留分放棄は、一度家庭裁判所の許可を得ると原則として撤回できません。

撤回が許可される可能性があるのは、自由意思にもとづいていなかった場合や放棄の前提になっていた事情が大きく変わったときなど、ごく限られたケースのみです。

撤回できなかった場合は、相続開始前なら被相続人に公平な遺言の作成を依頼し、相続開始後なら遺産分割協議でほかの相続人に公平な分割を求めるほかありません。

そもそも遺留分放棄は重大な決断であり、頼まれたからといって安易に応じるのは危険です。

放棄の必要性や見返りの内容、自分にとって本当に納得できるかを慎重に検討し、少しでも不安や違和感があるときは、早めに弁護士に相談しましょう

今すぐ無料相談電話相談OKの弁護士が見つかる!
ベンナビ相続で
遺産相続が得意な弁護士を探す

相談内容を選択してください

相談員
編集部
本記事はベンナビを運営する株式会社アシロが企画・編集をおこないました。
  • ※ベンナビに掲載されているコラムは、必ずしも弁護士が執筆したものではありません。
  • ※本記事の目的及び執筆体制についてはコラム記事ガイドライン をご覧ください。
遺産相続に関するコラム
相続放棄の費用相場|自分での手続きと弁護士への依頼の違いを解説
被相続人が多額の借金を抱えている場合などに行う相続放棄ですが、手続きをおこなうとなるとどれぐらいの費用が必要か知りたい方も多いのではないでしょうか。本記事では、相続放棄の手続きでかかる費用を解説するので、スムーズに手続きができるように準備しましょう。
事業承継の相談先11選|相談相手の選び方や相談するときのコツについても解説
事業承継をおこなう際には、多くの法律知識が必要となるため、専門家のサポートが必要不可欠です。本記事では、事業承継について相談できる機関や専門家について解説します。相談先を選ぶ際のポイントや相談のコツなども紹介するので、ぜひ参考にしてください。
家族信託とは?必要ないって本当?制度の仕組みや手続き方法をわかりやすく解説
家族信託とは、信頼できる家族に対して、資産をスムーズに引き継がせるための仕組みです。しかし、「本当に家族信託で資産が守れるのか」という疑問を持つこともあるでしょう。本記事では、家族信託がどういったものか、手続きの方法について詳しく解説していきます。
【高座郡】相続の無料相談ができる窓口9選!専門家の選び方や相談時のポイントも解説
本記事では、高座郡で利用できる無料相談窓口を9つご紹介します。各窓口の特徴や各専門家の違い、相談当日までの流れも解説。本記事を参考に、ぜひお気軽に無料相談を検討してみましょう。
もっとみる
地域から弁護士を探す
法律相談を投稿する
離婚・不倫問題 交通事故 相続・遺産トラブル 労働問題 刑事事件 債権回収 借金減額・債務整理 ネット誹謗中傷 企業法務 その他
弁護士の方はこちら