相続で揉める家族の特徴9選|被相続人・相続人それぞれの対策について詳しく解説
- 「相続で家族が揉めるのはよくあることなのだろうか…」
- 「できればトラブルを避けて円満に相続を進めたい…」
このように不安を感じていませんか?
相続トラブルは特別な家庭だけで起こるものではなく、ちょっとした認識のズレや準備不足が原因で、どの家庭でも起こり得るものです。
実際、遺産の多寡にかかわらず、感情的な対立に発展してしまうケースも少なくありません。
そこで本記事では、相続で揉めやすい家族の特徴をわかりやすく整理するとともに、トラブルを未然に防ぐための具体的な対策について詳しく解説します。
大切な家族関係を守るためにも、事前に知っておきたいポイントを一緒に確認していきましょう。
遺産相続で揉める家族はどの程度いるのか?
まずは、遺産相続で揉める家族数に関するデータを紹介します。
| 遺産分割事件の総数 | 15,379件 |
| 認容の事件数 | 1,198件 |
| 却下の事件数 | 27件 |
| 分割禁止の事件数 | 13件 |
| 調停成立の事件数 | 6,776件 |
| 調停をしない事件数 | 214件 |
| 調停に代わる審判の事件数 | 4,817件 |
| 取り下げの件数 | 2,289件 |
| 当然終了の件数 | 45件 |
【参照】令和6年 司法統計年報 3 家事編|最高裁判所事務総局
令和6年の司法統計によると、全国の裁判所が取り扱った遺産分割事件の総数は15,379件です。
ただし、これは遺産分割協議では決着がつかず、家庭裁判所の調停・審判手続きを利用せざるを得なくなった事件数に限られます。
遺産分割調停に発展しなくても、遺産分割協議で長期間揉めるケースも少なくないので、実際に相続で揉める家族数は相当多いと推察できるでしょう。
| 審理期間 | 事件数 |
| 1ヵ月 | 261件 |
| 3ヵ月 | 1,538件 |
| 6ヵ月 | 3,562件 |
| 1年以内 | 5,016件 |
| 2年以内 | 3,575件 |
| 3年以内 | 958件 |
| 3年を超える | 469件 |
| 総数 | 15,379件 |
【参照】令和6年 司法統計年報 3 家事編|最高裁判所事務総局
また、相続で揉めて遺産相続調停に発展したケースでは、その多くが1年以内の期間、手続きに時間を要していることがわかります。
1年を超える審理期間を要する事案も少なくはないので、早期に遺産相続手続きの終結を希望するなら、可能な限り遺産分割協議段階での合意形成を目指すべきだといえるでしょう。
相続で揉める家族の特徴10選|どんな事情があると揉めやすい?
ここでは、相続で揉める家族の10の特徴を解説します。
- 相続人の数が多い
- 分割しにくい財産がある
- 家族が不仲・疎遠になっている
- 認知症などを患った相続人がいる
- 特定の相続人が財産管理をしていた
- 特定の相続人だけが生前贈与を受けていた
- 特定の相続人が被相続人の介護をしていた
- 被相続人が再婚している・再婚相手との子どもがいる
- 一部の相続人に不利な内容の遺言書が残されていた
- 遺産分割協議に相続人以外の親族が強く関与してくる
それぞれの特徴について、詳しく見ていきましょう。
1.相続人の数が多い
相続人の数が多いと、相続で揉める可能性が高まります。
なぜなら、遺産分割手続きを進めるには、相続人全員の合意が必要だからです。
相続人の人数が多いほど意見が割れやすいので、遺産分割協議がまとまらず、調停・審判を利用せざるを得ない事態になることも考えられます。
なお、相続人の人数が多いときに生じる可能性が高いトラブルとして、以下のものが挙げられます。
- 遺産分割協議をする日程の調整だけで時間を要する、予定が合わずに協議を進めることさえ難しい
- 相続割合の調整について意見が合わない
- 協議内容に納得しない相続人が遺産分割協議書にサインをしてくれない など
2.分割しにくい財産がある
分割しにくい財産が遺産に含まれていると、相続で揉める可能性が高まります。
遺産分割の対象は、被相続人が所有していた全ての財産です。
預貯金や現金、貴金属類、不動産、株式といった有価証券、借金など、あらゆる財産が相続の対象とされて、相続人間で承継方法について話し合いがおこなわれます。
たとえば、遺産が預貯金や現金だけで構成されている場合には、相続人間で分割しやすいでしょう。
単純に割り算をするだけで遺産分割手続きが終了するからです。
一方、被相続人が不動産や株式を所有していた場合、以下の理由から、相続で揉める可能性があります。
- 不動産や株式の現在価額、評価方法について意見が合わない
- 不動産を誰がどのような方法で承継するのか揉める(現物分割、代償分割、換価分割、共有分割)
- 不動産や株式の売却条件について意見がまとまらない
- 不動産や株式を承継する相続人と預貯金などを承継する相続人との間でバランスがとれず、話し合いが難航する
- 一部の相続人が共有持分だけを売却するなどして権利関係が複雑になる など
3.家族が不仲・疎遠になっている
相続人同士が不仲・疎遠なケースも、相続で揉める可能性が高いです。
そもそも、遺産相続手続きを進めるには、相続人全員が話し合いに参加して同意形成を目指す必要があります。
しかし、家族が不仲・疎遠になっている事案では、以下のような事態が想定されます。
- 相続人の現在の住所や電話番号などを特定するのに時間・労力を要する
- そもそも相続人の連絡先を入手できず、遺産分割協議を開始することもできない
- 感情的になって話し合いが進まない など
4.認知症などを患った相続人がいる
相続人のなかに、認知症や精神疾患などを患っている人がいる場合、相続で揉める可能性が高まります。
なぜなら、意思能力が備わっていない人物が遺産分割協議に参加をしていた事実があとから判明すると遺産分割協議が無効になってしまうリスクがあるからです。
そのため、相続人のなかに認知症などの診断を受けている人物がいる場合には、医師の診断書などをチェックして遺産分割協議に参加させてよいかを判断したり、成年後見人や代理人を選任したりする必要があるでしょう。
5.特定の相続人が財産管理をしていた
特定の相続人が被相続人の財産管理を担当していた場合には、相続で揉めるリスクが高まります。
たとえば、被相続人に長男・次男・三男がいるケースで、次男が被相続人の身の回りの世話をしていたときには、普段から次男が被相続人のお金を扱うことになるでしょう。
このような場合、遺産相続発生後に以下のようなトラブルが生じる可能性があります。
- 財産管理をしていた相続人が遺産を使い込んでしまい、不当利得返還請求や強制執行などの法的措置が必要になる
- 財産管理をしていた人物が財産目録の作成に協力してくれない
- 生前のお金の流れが不透明なため、遺産分割協議で不信感が生まれて、冷静な話し合いが難しくなる など
6.特定の相続人だけが生前贈与を受けていた
特定の相続人だけが生前贈与を受けていた場合には、特別受益の調整が必要になり、相続で揉める可能性が高まります。
特別受益とは、相続人の一部が贈与・遺贈によって被相続人から受け取った利益のことです。
一部の相続人が特別受益に該当する生前贈与を受けていた場合には、生前贈与された財産の金額を相続財産に持ち戻したうえで相続分を算出して、相続人間の公平を目指す必要があります。
このような事実関係が存在するケースでは、以下のようなトラブルが生じて、相続が揉めるリスクが高まります。
- 生前贈与が特別受益に該当するかどうかについて意見がまとまらない
- 特別受益の算定額について争いが生じて遺産分割協議が成立しない
- 生前贈与を受けていない法定相続人が不満感を抱いて遺産分割協議に協力しようとしない
- 被相続人が持ち戻し免除の意思表示を示しているせいで相続人同士が不仲になる など
7.特定の相続人が被相続人の介護をしていた
相続人の一部が被相続人の介護をしていた事案では、寄与分の調整について揉める可能性があります。
寄与分とは、被相続人の事業に協力したり介護をしたりすることによって被相続人の財産の維持・増加について特別の寄与をした相続人がいる場合に、その相続人の貢献度分を相続分に加算する制度のことです。
一部の相続人が寄与分を主張してもほかの相続人がこれを認めなかったり、寄与分の金額について合意形成に至らなかったりする場合には、遺産分割協議がまとまらず、紛争が長期化しかねないでしょう。
8.被相続人が再婚している・再婚相手との子どもがいる
相続人の関係性が複雑なケースでは、相続で揉める可能性が高まります。
たとえば、被相続人が離婚・再婚を繰り返しているケース、連れ子と養子縁組をしているケース、再婚相手との間で子どもが生まれているケース、被相続人に隠し子がいたケースなどでは、相続関係が複雑になります。
そして、遺産分割手続きを進めるには相続人全員の参加が必要なので、前妻との間の子どもに連絡をするなどの手間をかけなければいけません。
9.一部の相続人に不利な内容の遺言書が残されていた
偏りがある内容の遺言書が残されていた場合、相続で揉める要因になりかねません。
たとえば、「全財産を長男に譲る」「(不倫相手)に預貯金の半分を贈与する」などの遺言書が発見されると、遺言書によって不利な状況を強いられる相続人が以下のような対応をする可能性があるでしょう。
- 遺留分侵害額請求権が行使される
- 遺言書の偽造などが疑われて遺産分割協議が難航する
- 遺言無効確認訴訟が提起される など
10.遺産分割協議に相続人以外の親族が強く関与してくる
遺産分割協議への参加が求められるのは法定相続人だけですが、実際の相続の現場では、法定相続人ではない人物が遺産分割手続きに口を出してくるケースが少なくありません。
たとえば、被相続人の配偶者と長男だけが法定相続人になる事案で、配偶者と長男との間では遺産分割方法についてある程度の意思疎通ができているのに、法定相続人ではない長男の嫁があれこれと口出しをしてくると、長男が嫁の意向に配慮せざるを得なくなり、遺産分割協議が成立しない可能性があります。
遺産相続手続きは、法律論だけでは円滑に進まないのが実情です。
当事者が冷静に話し合いを進めて公平な遺産相続を実現するためには、遺産分割協議段階から弁護士のサポートを受けて円滑に協議を進めるのがポイントになるでしょう。
【被相続人向け】相続で家族が揉めそうな場合の4つの防止策
自分が死亡したあと、残された家族が相続で揉めるのは本意ではないはずです。
ここでは、家族が相続で揉めないようにするために被相続人ができることを4つ紹介します。
- 適切な方法・内容の遺言書を残しておく
- 早い段階から家族間で話し合いをしておく
- 生前に財産の組み替えをしておく
- 念のために弁護士に相談して終活を進める
それぞれのポイントについて、詳しく見ていきましょう。
1.適切な内容の遺言書を残しておく
相続で揉めるのを防ぐ最大の予防策は、適切な遺言書を残しておくことです。
たとえば、遺言書の方法や内容に問題があると、以下のようなトラブルが生じる可能性があります。
- 遺言書を発見してもらえず、被相続人の意思が遺産相続に反映されない
- 遺言書の内容や方式に問題があり、遺言無効確認訴訟などを提起されて、遺言書を作成した意味がなくなる
- 遺言書が偽造されて被相続人が意図しない形で遺産分割手続きが進められる
- 遺言書の内容に偏りがあるため、遺留分侵害額請求権や特別寄与・寄与分の調整など、深刻な遺産相続トラブルが生じかねない など
このようなトラブルを回避するには、相続で揉めるリスクを排除する方式・内容の遺言書を用意するのがおすすめです。
以下のポイントを踏まえたうえで遺言書を作成しましょう。
- 遺言書を作成するときには、自筆証書遺言、公正証書遺言、秘密証書遺言のいずれかを選択しなければいけないが、可能な限り、改竄や偽造、変造、紛失のリスクがゼロになる公正証書遺言を選択する
- 自筆証書遺言の遺言形式を選択する際には、民法に規定されている自筆証書遺言の形式を遵守するように心がける
- 自筆証書遺言を作成した場合には、自宅などの紛失リスクがある場所で保管するのではなく、自筆証書遺言書保管制度を利用する
2.早い段階から家族間で話し合う
相続で揉めるのは、相続人同士で意見がまとまらないからです。
そのため、被相続人が存命のうちから遺産相続について家族を交えて話し合う機会を作り、遺産相続手続きの方向性について予め合意を得ておくとよいでしょう。
被相続人や相続人全員で事前に話し合いが済んでいれば、故人の意思を汲む形で円滑に遺産分割手続きが進みやすくなるはずです。
3.生前に財産の組み替えをしておく
相続で揉める要因になりそうな財産を存命中に処分しておけば、遺産相続手続きがスムーズに進みやすくなります。
たとえば、相続で揉める主な要因のひとつである不動産については、被相続人自身が生前に売却して現金化しておくことで、相続人が公平に財産を分けやすくなるはずです。
そのほかにも、高級車や貴金属類、株式などの有価証券についても、分配しやすい形や数にしておくのがおすすめです。
4.生前から弁護士に相談する
自分が死んだあとの遺産相続手続きが揉めないようにするには、終活のひとつとして、弁護士に相談・依頼をするのがおすすめです。
終活のために弁護士の力を借りることで、以下のメリットを得られます。
- 相続人の関係性や相続財産の状況などを聴取して、どのような遺産相続ならトラブルが生じにくいかを提案してくれる
- 家族が相続で揉めないような遺言書作成のサポートをしてくれる
- 家族を交えた話し合いに同席をして、円滑な合意形成に向けて尽力してくれる
- 作成した遺言書を保管して、相続発生時には、遺言書の執行にも対応してくれる
- 被相続人が死亡したあと相続で揉めたとしても、協議を支援するなどして早期の遺産相続実現を後押ししてくれる など
【相続人向け】遺産相続で家族が揉めそうな場合の3つの対処法
さいごに、家族間で相続で揉めてしまったときの対処法を3つ紹介します。
- 遺産分割協議がまとまらない雰囲気が出たなら、すぐに家庭裁判所に調停を申し立てる
- 相続放棄をして遺産分割手続きから離脱する
- 遺産相続トラブルが得意な弁護士に相談・依頼をする
それぞれのポイントについて、詳しく見ていきましょう。
1.早めに家庭裁判所に調停を申し立てる
明らかに遺産分割協議で相続人の同意が形成される見込みがない状況なら、速やかに家庭裁判所に遺産分割調停を申し立ててください。
なぜなら、相続人同士の意見が割れていてそれぞれが譲歩・妥協する様子がないのなら、当事者だけで話し合いを進めるメリットは少ないからです。
この場合、早々に家庭裁判所の調停委員の力を借りて、争点や意見を整理し、全ての相続人が同意できるような解決策を見出すために動き出したほうが合理的でしょう。
2.相続放棄をしてその相続には関与しない
相続で家族が揉めてしまうと、関係性が悪化したり、進展の見込みがない協議にいつまでも参加させられたりするなど、精神的・労力的な負担を強いられつづけてしまいます。
そして、遺産分割協議がまとまらない以上、家庭裁判所の調停・審判手続きを利用せざるを得ませんが、相続トラブルが解決するまでには相当期間、家庭裁判所の手続きに対応をし続けなければいけません。
これらの対応が面倒なら、相続放棄をするのも選択肢のひとつです。
相続放棄とは、被相続人のプラスの財産もマイナスの財産も承継しない意思表示のことです。
相続放棄をすれば最初から相続人ではなかったと扱われるので、遺産相続をめぐるトラブルから完全に離脱することができます。
ただし、相続放棄をする際には、以下の点に注意が必要です。
- 原則として、自己のために相続の開始があったことを知ったとき(通常、被相続人が死亡した日)から3ヵ月以内の熟慮期間中に家庭裁判所で相続放棄の申述手続きが必要
- 相続放棄をする前に、承継したい財産が存在しないかをしっかりと調査する
- 相続放棄をしたあとに新しい財産が発見されても、相続放棄の意思表示を撤回・取り消すのは相当難しい
【関連記事】相続放棄とは?手続きの流れや注意点、メリット・デメリットを解説
3.相続トラブルが得意な弁護士に解決を依頼する
被相続人が死亡したあと、家族間で相続で揉めてしまったときには、できるだけ早いタイミングで弁護士に相談・依頼するのがおすすめです。
なぜなら、遺産相続トラブルへの対応が得意な弁護士の力を借りることで、以下のメリットを得られるからです。
- 相続人や相続財産調査を尽くしてくれる
- 単純承認、限定承認、相続放棄のいずれを選択するべきかを判断してくれる
- 遺産分割協議に代理人として出席してくれるので、冷静な話し合いを期待できる
- 遺産分割調停・審判や民事訴訟、遺留分侵害額請求訴訟などの裁判所手続きに発展しても、手続きを代理して進めてくれる
- 名義変更や登記手続きなどの必要書類を準備してくれる
- 遺言書の有効性を確認し、合法的に遺言書を執行してくれる
さいごに|ベンナビ相続で相続トラブルが得意な弁護士を探そう!
家族間で相続で揉めてしまったときや、家族間で相続トラブルを生じさせたくないときには、念のために一度は弁護士に相談をしてください。
遺産相続トラブルの経験豊富な弁護士の力を借りれば、早期かつ円満に遺産相続手続きを終結してくれるので、家族間で相続について揉めるリスクを回避・軽減できるでしょう。
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