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発信者情報開示請求されたらどうすべき?その後の流れや対処法を解説

弁護士監修記事
ITトラブル
2023年03月24日
2023年03月24日
発信者情報開示請求されたらどうすべき?その後の流れや対処法を解説
この記事を監修した弁護士
阿部 由羅弁護士 (ゆら総合法律事務所)
ゆら総合法律事務所の代表弁護士。不動産・金融・中小企業向けをはじめとした契約法務を得意としている。その他、一般民事から企業法務まで幅広く取り扱う。

SNSなどで他人を誹謗中傷したところ、発信者情報開示請求を受けてしまった場合には、速やかに弁護士へ相談しましょう。

誹謗中傷については重い法的責任を問われる可能性があるので、早めに準備をして責任追及に備えることが大切です。

今回は、SNS等でおこなってしまった誹謗中傷について、発信者情報開示請求がなされた場合の対処法を解説します。


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発信者情報開示請求がされたことはいつわかる?

「発信者情報開示請求」とは、インターネット上に流通している情報によって権利を侵害されたと主張する者が、サービス提供者に対して発信者の情報開示を求めることをいいます(プロバイダ責任制限法5)。

主に匿名でおこなわれた誹謗中傷の投稿について、発信者情報開示請求がおこなわれています。

発信者情報開示請求の相手方となるのは、投稿がおこなわれたサイトの管理者や、投稿に用いられた端末のインターネット接続業者などです。

投稿者本人に対して発信者情報開示請求がおこなわれるわけではありません。

投稿者本人が、自分の投稿について発信者情報開示請求がおこなわれたことを知るのは、主に以下の2つの場面です。

  1. サイト管理者・インターネット接続業者からの「意見照会」
  2. 被害者からの損害賠償請求

サイト管理者・インターネット接続業者からの「意見照会」

サイト管理者やインターネット接続業者が発信者情報開示請求を受けたときは、連絡が取れないなど特別の事情がある場合を除き、開示請求に応じるかどうかについて発信者(投稿者)の意見を聴かなければなりません(プロバイダ責任制限法6条1)。

意見照会は通常、投稿者に対して書面やメールで連絡する形でおこなわれます。

投稿者はここで初めて、自分の投稿について発信者情報開示請求がおこなわれたことがわかります。

意見照会を受けた投稿者は、開示請求を認めてよいかどうか、および認めるべきでない理由について意見を述べることができます。

ただし、サイト管理者やインターネット接続業者は、投稿者の意見に拘束されるわけではありません。

また、投稿者の意見にかかわらず、裁判所によって発信者情報の開示を命ずる命令等がおこなわれることもあります。

被害者からの損害賠償請求

サイト管理者やインターネット接続業者が投稿者の連絡先を把握していない場合や、意見照会の義務を怠った場合には、意見照会がおこなわれずに発信者情報が開示される可能性があります。

この場合、被害者から損害賠償請求を受けた段階で、投稿者は発信者情報開示請求がおこなわれていたことを知ることになります。

発信者情報開示請求はどんなときに認められる? 要件を解説

発信者情報開示請求が認められるのは、以下の2つの要件をいずれも満たす場合です。

  1. 侵害情報の流通による権利侵害が明らかであること
  2. 損害賠償請求権の行使など、開示を受けるべき正当な理由があること

さらに「特定発信者情報」の開示を請求する場合には、追加で以下の要件を満たす必要があります。

(a)請求を受けた者が、特定発信者情報以外の発信者情報を保有していないと認められること

(b)請求を受けた者の保有する発信者情報が、プロバイダ責任制限法施行規則4に定められるものに限定されていること

(c)特定発信者情報以外の発信者情報だけでは、投稿者を特定できないこと

侵害情報の流通による権利侵害が明らかであること

発信者情報開示請求が認められるためには、問題となる投稿等が流通することにより、請求者の権利を侵害されたことが明らかであることが必要です(プロバイダ責任制限法5条1項1号、2項1)。

たとえば誹謗中傷の投稿によって名誉権が侵害されている場合、個人情報が晒されてプライバシー権が侵害されている場合などには、上記の要件を満たします。

損害賠償請求権の行使など、開示を受けるべき正当な理由があること

さらに、損害賠償請求権の行使のために必要であるか、またはその他発信者情報の開示を受けるべき正当な理由があることが要件とされています(プロバイダ責任制限法5条1項2号、2項2)。

問題となる投稿等によって、請求者の権利が侵害されていることを示せれば、投稿者に対する損害賠償請求権が存在することは特に問題なく認められるでしょう。

したがって、投稿等が請求者の権利を侵害するものであるか否かが、発信者情報開示請求の焦点となります。

「特定発信者情報」に関する開示要件

発信者情報の中でも、ログイン型サービスにおけるログイン時通信等に関する以下の情報は、「特定発信者情報」と定義されています(プロバイダ責任制限法5条1プロバイダ責任制限法施行規則2条、3)。

  1. ログイン時通信等に紐づいたIPアドレス、当該IPアドレスと組み合わされたポート番号
  2. ログイン時通信等がおこなわれた端末からのインターネット接続サービス利用者識別符号
  3. ログイン時通信等がおこなわれた端末のSIM識別番号
  4. ログイン時通信等がおこなわれた端末のSMS電話番号
  5. ログイン時通信等の年月日および時刻

特定発信者情報の開示が認められるのは、前述の2つの要件に加えて、さらに以下のいずれかの要件を満たす場合に限られます(プロバイダ責任制限法5条2項3)。

(a)請求を受けた者が、特定発信者情報以外の発信者情報を保有していないと認められること

(b)請求を受けた者の保有する発信者情報が、プロバイダ責任制限法施行規則4に定められるものに限定されていること

(c)特定発信者情報以外の発信者情報だけでは、投稿者を特定できないこと

発信者情報開示請求をされたときにすべきこと

自分の投稿について、発信者情報開示請求がおこなわれたことがわかった場合、速やかに以下の対応をとることをおすすめします。

  1. 弁護士に相談する
  2. 損害賠償・示談の方針を検討する
  3. 刑事告訴に備える

 弁護士に相談する

発信者情報開示請求がおこなわれた場合、数か月後に個人情報が開示され、損害賠償請求や刑事告訴に発展する可能性があります。

その場合、裁判所への出廷などを強いられることになりますので、早めに準備を整えておくべきです。

これらの法律問題への対応に当たっては、弁護士のサポートを受けましょう。

早い段階で弁護士に相談すれば、手続きの流れや今後の見通しについてアドバイスを受けられるため、落ち着いて準備を整えることができます。


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損害賠償・示談の方針を検討する

被害者から損害賠償請求を受けることを想定して、損害賠償に応じるかどうか、応じるとすればどの程度の金額まで許容できるかを検討しておくべきです。

損害賠償の要否については、投稿内容が被害者の権利を侵害するものであるか否かを、法的な観点から検討して判断しましょう。

権利侵害はないと判断するなら、徹底的に争うことも考えられます。

これに対して、誹謗中傷やプライバシー権侵害に当たる可能性が高いと思われる場合は、早期の示談を目指す方針をとるのがよいでしょう。

刑事告訴に備える

投稿の内容によっては、名誉毀損罪・侮辱罪・偽計業務妨害罪などにより、被害者に刑事告訴されることがあります。

刑事告訴がなされた場合、投稿者は警察から取調べを要請される可能性が出てきます。

取調べに応じるか否かは自由ですが、拒否すると逮捕に発展することもあり得るため、弁護士に相談しながら対応方針を検討しておきましょう。

弁護士に相談すれば、黙秘権があることや、取調べに臨む際の心構えについてもアドバイスを受けられます。

不本意な供述をして、重い刑事処分のリスクを高めてしまうことがないように、早い段階で弁護士にご相談ください。

ネット上の誹謗中傷について問われる法的責任|賠償金・量刑の目安

インターネット上での誹謗中傷については、民事・刑事上の法的責任を問われる可能性があります。

被害者に対する民事責任

誹謗中傷について発生する民事上の責任は、主に以下の2点です。

  1. 損害賠償責任
  2. 名誉回復措置義務

損害賠償責任

インターネット上での誹謗中傷は不法行為(民法709)に当たるため、投稿者は被害者に対して損害賠償責任を負います。

損害賠償の対象には、被害者が受けた精神的損害の慰謝料に加えて、営業上の損害なども含まれます。

慰謝料は10万円から100万円程度が標準的ですが、営業上の損害が加わると、さらに高額となる可能性があるので要注意です。

名誉回復措置義務

誹謗中傷の投稿によって被害者の名誉を毀損した場合、被害者の請求(仮処分申立て・訴訟提起など)によって、裁判所から名誉を回復するのに適当な処分(=名誉回復措置)を命じられる可能性があります(民法723)。

裁判所が名誉回復措置を命じるのは、金銭賠償だけでは被害回復が困難な場合に限るのが実務の運用です(東京高裁平成27年7月8日判決参照)。

名誉回復措置の例としては、謝罪広告の掲載などが挙げられます。

刑事責任

誹謗中傷の投稿者は、名誉毀損罪・侮辱罪・偽計業務妨害罪などの刑事責任を問われる可能性があります。

名誉毀損罪・侮辱罪

被害者の社会的評価を下げるような投稿については、名誉毀損罪または侮辱罪が成立します(刑法230条1項、231)。

投稿の中で何らかの事実が摘示されていれば名誉毀損罪、事実の摘示がなければ侮辱罪です。

ただし名誉毀損罪については、公共の利害に関する場合の特例により、以下の要件をすべて満たす場合には犯罪不成立(違法性阻却)となります(刑法230条の2)。

  1. 投稿が公共の利害に関する事実に係ること
  2. 投稿の目的が専ら公益を図ることにあったと認められること
  3. 摘示された事実が真実であることの証明があったこと

名誉毀損罪の法定刑は「3年以下の懲役もしくは禁錮または50万円以下の罰金」、侮辱罪の法定刑は「1年以下の懲役もしくは禁錮もしくは30万円以下の罰金または拘留もしくは科料」とされています。

いずれも初犯であれば不起訴となる可能性があり、起訴されたとしても罰金以下、または執行猶予付き判決となるケースが多いです。

偽計業務妨害罪

誹謗中傷の投稿によって、被害者の業務を妨害した場合には偽計業務妨害罪が成立します(刑法233)。

偽計業務妨害罪の法定刑は「3年以下の懲役または50万円以下の罰金」です。

名誉毀損罪または侮辱罪と同時に成立する場合は「観念的競合」となり、最も重い刑により処断されます(刑法54条1項前段)。

発信者情報開示請求の意見照会に関するQ&A

発信者情報開示請求に関して意見照会が届いた際の対応につき、以下の2つの質問に回答します。

  • 開示を拒否する意見を述べるとどうなりますか?
  • 意見照会は無視しても大丈夫ですか?

開示を拒否する意見を述べるとどうなりますか?

開示を拒否する意見を述べた場合でも、最終的には裁判所の命令等によって、発信者情報が開示される可能性があります。

その際には、開示を拒否したことで被害感情を悪化させ、被害者から厳しく損害賠償請求や刑事告訴を受ける可能性があることに注意しなければなりません。

したがって、裁判所によって発信者情報開示請求が認められる可能性が高い場合には、開示に同意することも選択肢の一つです。

なお開示を拒否する意見を述べた後に、裁判所が発信者情報開示命令を発した場合、意見照会元からその旨の通知を受けることができます(プロバイダ責任制限法6条2)。

意見照会は無視しても大丈夫ですか?

意見照会を無視した場合、サイト管理者やインターネット接続業者によって、任意に発信者情報が開示される可能性が高くなります。

したがって発信者情報の開示を拒否したい場合には、意見照会を無視せずに、拒否する旨とその理由を述べるべきです。

まとめ|開示請求の意見照会が届いたら早めに弁護士へ相談を

誹謗中傷などの投稿について、発信者情報開示請求の意見照会が届いたら、損害賠償請求や刑事告訴に発展する一歩手前の段階です。

被害者からの請求等への準備を整えるため、できる限り早い段階で弁護士へ相談することをおすすめします。


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編集部
本記事はベンナビを運営する株式会社アシロが企画・編集をおこないました。
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