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捨て垢アカウントの特定方法|条件、手順、注意点など

弁護士監修記事
ITトラブル
2023年05月22日
2024年04月22日
捨て垢アカウントの特定方法|条件、手順、注意点など
この記事を監修した弁護士
立花志功弁護士 (立花志功法律事務所)
北海道・札幌にある地域密着型の弁護士事務所。IT問題に注力しており、インターネット上のトラブルを迅速に対応しています。
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捨て垢(捨てアカウント)とは、一般的に放棄したり削除されたりすることを前提とした匿名アカウントのことを指します。

捨て垢を使ったSNS上の誹謗中傷の場合、被害者は「相手が匿名だから」と泣き寝入りすることも少なくありません。

しかし、捨て垢であったとしても、発信者情報開示請求などで投稿者を特定できる可能性はあります。

この記事では、捨て垢から誹謗中傷や権利侵害に遭っている方に向けて、投稿者を特定できる発信者情報開示請求の主な要件、特定するための流れ・手続きなどを解説します。

また、TwitterとInstagramそれぞれで投稿者を特定する方法、投稿者を特定したあとの対応、捨て垢の投稿者を特定する際の注意点などについても説明します。

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捨て垢を使った投稿者は特定できる?開示請求の要件

SNS上の捨て垢の投稿者を発信者情報開示請求で特定するためには、権利が侵害されたことが明白であること、発信者情報の開示を受けるべき正当な理由があること、開示請求を受けるための補充的な要件を満たしていることなどが必要です。

ここでは、発信者情報開示請求をするのに必要な要件について確認しましょう。

権利が侵害されたことが明らかである

発信者情報開示請求をするには、名誉権侵害、名誉感情侵害、肖像権侵害、プライバシー侵害など、権利が侵害されたことが明らかである必要があります。

この要件は、一般的に「権利侵害の明白性」と呼ばれています。また、通常の損害賠償請求と異なり、開示請求手続きでは被害者側が「違法性阻却事由が存在しないこと」を主張・立証します。

  • 一 当該開示の請求に係る侵害情報の流通によって当該開示の請求をする者の権利が侵害されたことが明らかであるとき。

参考:特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律 | e-Gov法令検索

発信者情報の開示を受けるべき正当な理由がある

発信者情報開示請求をするには、損害賠償・投稿削除・謝罪広告を求める、刑事告訴をおこなうなど、投稿者の個人情報を求めるだけの合理的な理由が必要になります。

仮に、すでに損害賠償を受け取っていたり、投稿が削除されたりしている場合は、「正当な理由がある」とは認められず、投稿者の個人情報を請求することはできません。

なお、削除済みであっても、開示においては正当な理由は認められる場合があります。

  • 二 当該発信者情報が当該開示の請求をする者の損害賠償請求権の行使のために必要である場合その他当該発信者情報の開示を受けるべき正当な理由があるとき。

参考:特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律 | e-Gov法令検索

開示請求を受けるための補充的な要件を満たしている

TwitterやInstagramなどの「ログイン型サービス」でログイン時の通信情報の開示を求める場合は、運営会社が権利侵害投稿に関する発信者情報を保有していないなど、補充的な要件を満たしている必要があります。

本来、ログイン情報そのものは権利侵害とは直接関係がありませんが、この補充的要件を満たしている場合は開示を求められます。

  • 三 次のイからハまでのいずれかに該当するとき。
  •  イ 当該特定電気通信役務提供者が当該権利の侵害に係る特定発信者情報以外の発信者情報を保有していないと認めるとき。
  •  ロ 当該特定電気通信役務提供者が保有する当該権利の侵害に係る特定発信者情報以外の発信者情報が次に掲げる発信者情報以外の発信者情報であって総務省令で定めるもののみであると認めるとき。
  •   (1) 当該開示の請求に係る侵害情報の発信者の氏名及び住所
  •   (2) 当該権利の侵害に係る他の開示関係役務提供者を特定するために用いることができる発信者情報
  •  ハ 当該開示の請求をする者がこの項の規定により開示を受けた発信者情報(特定発信者情報を除く。)によっては当該開示の請求に係る侵害情報の発信者を特定することができないと認めるとき。

参考:特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律 | e-Gov法令検索

投稿者を特定する開示請求のやり方|2種類の方法

捨て垢を使った匿名投稿者を特定するためには、開示請求手続きが必要になります。

この手続きには、従来の「発信者情報開示請求」と、2022年10月1日に改正プロバイダ責任制限法で導入された「発信者情報開示命令」の2通りの方法があります。

ここでは、匿名の投稿者を特定するための手続き・手順について確認しましょう。

従来の「発信者情報開示請求」のやり方・手順

従来の発信者情報開示請求では、まずサイト管理者に対して投稿者のIPアドレス・タイムスタンプの開示を請求したのち、プロバイダに対して投稿者の個人情報の開示を請求するという2段階の手続きが必要です。

また、それぞれの段階に任意手続きと裁判手続きがあります。以下で、発信者情報開示請求の大まかな流れを確認しましょう。

【発信者情報開示請求の大まかな流れ】

  1. サイト管理者に投稿者のIPアドレスなどを開示するよう請求する(開示に応じた場合は③に進む)
  2. 裁判所に対してサイト管理者を相手方とする発信者情報開示仮処分命令の申し立てをおこなう
  3. サイト管理者が開示したIPアドレスをもとに投稿者が利用しているプロバイダを特定する
  4. プロバイダに対して投稿者の個人情報を開示するよう請求する(開示に応じた場合は終了)
  5. 裁判所に対してプロバイダを相手方とする発信者情報開示訴訟(本案訴訟)を提起する

新設の「発信者情報開示命令」のやり方・手順

2022年10月1日から導入された「発信者情報開示命令」の特徴は、サイト管理者に対する開示命令事件とプロバイダに対する開示命令事件を併合し、一体的な審理がおこなわれる点です。

これにより、従来の開示請求に比べ、迅速に投稿者の個人情報を取得できるようになりました。以下で、発信者情報開示命令の大まかな流れを確認しましょう。

【発信者情報開示命令の大まかな流れ】

  1. 裁判所に対してサイト管理者を相手方とする発信者情報開示命令と提供命令の申し立てをおこなう
  2. 裁判所に対してプロバイダを相手方とする発信者情報開示命令と消去禁止命令の申し立てをおこなう
  3. サイト管理者に対して、プロバイダへの発信者情報開示命令の申し立てをおこなった旨を通知する
  4. 裁判所が①の開示命令事件と②の開示命令事件を併合し、ひとつの事件として審理をおこなう

SNS別の開示請求手続きのやり方|TwitterとInstagram

投稿者を特定するための発信者情報開示請求(命令)のやり方・流れは、SNSや匿名掲示板などによって多少異なります。

そこで、捨て垢のトラブルが多いTwitterとInstagramのそれぞれの開示請求のやり方を確認しましょう。

Twitterで開示請求手続きをする場合

Twitter上の捨て垢の投稿者を特定するためには、まず権利侵害がおこなわれているツイートをスクリーンショットなどで保存し、証拠化する必要があります。

そして、Twitter, Inc.(合併後は「X Corp.」の予定)を相手方とする発信者情報開示請求(命令)の申し立てをおこないます。

これらの手続きによって投稿者のIPアドレスを取得し、プロバイダへ投稿者の個人情報を請求すれば、Twitter上の捨て垢の利用者を特定することができます。

Instagramで開示請求手続きをする場合

Instagram上の捨て垢の投稿者を特定する場合も、まずは権利侵害がおこなわれているフィードやストーリーズなどを保存し、証拠化しておきます。

そして、Meta Platforms, Inc.(日本の代表者「ビーコンサービス株式会社」)を相手方とする発信者情報開示請求(命令)の申し立てをおこないます。

これらにより、投稿者のIPアドレスなどが取得できるため、プロバイダへ投稿者の個人情報を請求すれば、開示請求手続きは完了となります。

捨て垢の投稿者を特定したあとの対応|損害賠償など

発信者情報開示請求(命令)で投稿者を特定できたら、加害者に損害賠償などを請求したり、刑事告訴をおこなったりすることなどが考えられます。

ここでは、投稿者を特定したあとにできる対応について確認しましょう。

損害賠償などを請求する

名誉権侵害、名誉感情侵害、肖像権侵害、プライバシー侵害などの権利侵害をおこなった加害者には、損害賠償を請求することができます。

損害賠償請求には大きく裁判外の手続きと裁判上の手続きがあり、示談交渉がまとまらなければ損害賠償を求めて訴訟をおこないます。

損害賠償の目安額は、以下のように被害内容によって異なります。

【インターネット上で権利侵害された場合の損害賠償の目安】

名誉毀損(個人)

10万~50万円程度

名誉毀損(法人)

50万~100万円程度

侮辱

1万~10万円程度

プライバシー侵害

10万~50万円程度

プライバシー侵害(悪質な場合)

100万円以上

刑事告訴をおこなう

捨て垢でおこなわれた行為が、侮辱罪、名誉棄損罪、著作権法違反、リベンジポルノ防止法違反などの犯罪に該当する場合は、刑事告訴をおこなうことが可能です。

刑事告訴をおこない有罪判決となれば、懲役刑や罰金刑などが科されることになります。

悪質なインターネット被害に遭った場合は、刑事告訴を検討するとよいでしょう。

捨て垢を使った加害者の特定が難しいケース

発信者情報開示請求の要件を満たしている場合であっても、アカウントが削除されていたり、DMで誹謗中傷されたりしている場合は特定が難しくなります。

ここでは、匿名投稿者の特定が難しいケースを確認しましょう。

アカウントが削除されてしまっている

発信者情報開示請求などで匿名投稿者を特定する場合、権利侵害を証明できる資料(証拠)が必要になります。

しかし、アカウントが削除されてしまっている場合、名誉毀損、侮辱、プライバシー侵害、肖像権侵害などに関する証拠を手に入れるのが困難になります。

その結果、権利侵害を証明できず、投稿者を特定できなくなってしまいます。

DMで直接誹謗中傷がおこなわれている

大前提として、プロバイダ責任制限法によって開示請求を求められる相手は、不特定多数の人に対して通信を媒介している特定電気通信役務提供者に限られます。

DM(ダイレクトメッセージ)は不特定多数に対する通信サービスとはいえないため、発信者情報開示請求をおこなうことができず、投稿者を特定できない可能性があります。

なお、DMが脅迫罪やストーカー規制法違反などに該当する場合は、捜査機関が対応してくれる場合があるでしょう。

ネットストーカー被害の相談に関してはネットストーカー被害の相談窓口|選び方・対処法・弁護士費用を解説をご覧ください。

まとめ|捨て垢の特定が難しいなら弁護士に相談する

SNS上で権利侵害をおこなっているアカウントが捨て垢だったとしても、発信者情報開示請求(命令)で投稿者を特定できる可能性はあります。

しかし、開示請求の手続きをするには法律の知識や経験が必要になるため、自力での対応が難しい場合はインターネットトラブルが得意な弁護士に相談することが重要になります。

インターネットトラブルが得意な弁護士を探すなら、「ベンナビIT」を利用することをおすすめします

また発信者情報開示請求については発信者情報開示請求とは|投稿者特定の手続き・注意点・弁護士費用などを解説をご覧ください。

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