婚姻を継続し難い重大な事由とは?具体例と離婚を有利に進める手順
「婚姻を継続し難い重大な事由」は、裁判で離婚が認められるかどうかを左右する重要な要件です。
しかし、法律には具体的なケースが細かく定められているわけではなく、夫婦関係が修復できない状態にあるかどうかを個別の事情に応じて判断します。
そのため、「性格の不一致だけで離婚できるのか」「モラハラや長期間の別居は該当するのか」と疑問を抱く方も多いでしょう。
そこで本記事では、婚姻を継続し難い重大な事由の意味や判断基準を解説したうえで、離婚事由として認められる具体例を紹介します。
あわせて、離婚を有利に進めるために準備しておきたいポイントについても解説します。
「婚姻を継続し難い重大な事由」とは?
「婚姻を継続し難い重大な事由」とは、民法770条が定める法定離婚事由の一つです。
不貞行為や悪意の遺棄のような明確な離婚理由がなくても、夫婦関係が客観的に見て修復不可能なほど破綻していると認められれば、裁判で離婚が認められる可能性があります。
いわば、さまざまな事情によって婚姻関係の継続が困難になったケースを判断するための包括的な規定です。
一方で、単なる夫婦喧嘩や一時的な不仲だけでは該当しません。
離婚が認められるには、婚姻関係を続けることが社会通念上困難といえる程度まで関係が破綻していることが必要です。
そのため、裁判では別居期間や生活状況、夫婦関係の経緯などを総合的に考慮して判断されます。
なお、2026年4月施行の民法改正により、「婚姻を継続し難い重大な事由」は条文上の位置づけが第5号から第4号へ変更されました。
これは旧第4号の「強度の精神病」が削除されたことに伴うものであり、「婚姻を継続し難い重大な事由」の内容や判断基準に変更はありません。
婚姻を継続し難い重大な事由に該当する11のケース
婚姻を継続し難い重大な事由には、該当すれば必ず認められるという決まった型はありません。
性格の不一致やDV、長期間の別居など、複数の要因が重なって判断されるのが実情です。
そこでここからは、婚姻を継続し難い重大な事由に該当する可能性がある代表的なケースを見ていきましょう。
1.価値観の違いや性格の不一致
性格の不一致そのものは、それだけでは離婚事由になりません。
生まれも育ちも違う夫婦なら、価値観のズレがあっても当然であるためです。
ただし、対立が修復不可能なレベルにまで達していれば評価は変わります。
たとえば、性格の不一致から別居に至り、同居期間よりも長く別居していたケースは、婚姻を継続し難い重大な事由に該当する可能性があります。
ポイントは、価値観の違いや性格の不一致だけでなく、長期間の別居やDVなど別の要素も組み合わせて判断されることです。
夫婦関係調整調停などを経ても改善の見込みがない、といった積み重ねが評価されます。
【関連記事】性格の不一致で離婚できる?慰謝料はもらえる?性格が合わない夫・妻と別れる方法
2.DV
配偶者からの身体的な暴力(DV)は、婚姻関係を破壊する重大な事由です。
裁判所も、暴力に対しては厳しい姿勢を取っています。
実際に、言葉による支配や性交渉の強要、繰り返しの暴力を受けた妻が家を出たケースでは、婚姻関係が破綻したとして離婚が認められました(神戸地裁 平成13年11月5日判決)。
なお、離婚が認められるかどうかは、暴力の頻度や程度によって変わります。
たとえば、毎週のように暴力を受けていたり、けがを繰り返したりしているようなケースであれば、離婚事由として認められる可能性が高いです。
ただし、年に1回程度の軽い暴力にとどまる場合は、離婚が認められないこともあります。
【関連記事】DVで離婚は認められる!慰謝料の相場や十分な証拠がない場合の対策まで解説
3.日常的なモラルハラスメント(モラハラ)
日常的な暴言や人格否定といった精神的な虐待(モラハラ)も、婚姻関係を壊す重大な事由になり得ます。
モラハラとは、相手の人格を否定する発言や、生活費をわざと渡さないといった行為が繰り返し続いている状態を指します。
一度ではなく、継続していることがポイントです。
たとえば、配偶者から繰り返し人格を否定する言動を受けていたケースは、婚姻を継続し難い重大な事由に該当する可能性があります。
ただし身体的なDVとは異なり、モラハラの被害は目に見えにくく、立証のハードルが高い傾向にあります。
4.ギャンブルや過度な借金などの金銭問題
ギャンブルや借金そのものが、すぐ離婚理由になるわけではありません。
ただし、浪費や借金の程度によっては、婚姻を継続し難い重大な事由に該当する可能性があります。
たとえば、配偶者の金銭問題によって生活が成り立たなくなり、全く改善が見られないようなケースです。
何度注意しても反省の色がなくギャンブルや借金を繰り返している事実が、破綻の証拠として重く見られます。
5.長期にわたる別居
長期にわたる別居も、離婚事由になり得ます。
夫婦の義務である同居義務が長期間にわたって果たされていない状況は、夫婦関係の修復が困難であることの客観的な証拠になるためです。
たとえば、長期間の別居が続いており、夫婦間の交流がほとんどないようなケースは、婚姻を継続し難い重大な事由に該当する可能性があります。
ただし、必要な別居期間はケースによって異なります。
目安は5〜10年程度といわれていますが、何年別居すれば必ず認められるという明確な基準はありません。
なお、別居期間にカウントされるのは、単身赴任や入院のような正当な理由のない別居に限られます。
夫婦関係が壊れた結果としての別居であることが前提です。
【関連記事】別居何年で離婚できる?統計や早期に離婚を成立させるためのポイントも解説
6.セックスレスや性的異常などの性生活の問題
正当な理由なく性交渉を拒否されている場合や、性生活上の問題が深刻な場合、離婚事由として認められることがあります。
セックスレスの一般的な目安は、1年以上性交渉がない状態が継続していることです。
実際に、結婚当初から夫の性生活上の問題が続き、妻が離婚を決意したケースでは、婚姻を継続し難い重大な事由にあたると判断されました(最高裁 昭和37年2月6日判決)。
なお、夫のEDや妻の性機能障害が原因でセックスレスになっているケースも、離婚事由となる場合があります。
ただし、EDだからというだけでは認められにくく、EDが原因で婚姻の継続が難しい状態に至っているかどうかが重要です。
また、加齢やもともと夫婦仲が悪い状態からのセックスレスは、認められにくいのが実情です。
【関連記事】セックスレスで離婚は可能?離婚が認められるケース・認められないケースを解説
7.家事や育児に対する非協力的な態度
配偶者が家事や育児に非協力的なケースも、離婚事由に該当する可能性があります。
夫婦には、お互いに協力し助け合う義務があるためです。
裁判所が重視するのは、協力義務違反が深刻なレベルに達しているかどうかです。
たとえば、育児に理解を示さず家事の分担も拒否するなど、長年配偶者への配慮を欠いた結果別居に至ったようなケースは、婚姻を継続し難い重大な事由に該当する可能性があります。
ただし、家事や育児に協力しないというだけで離婚を認めてもらうのは困難です。
ほとんど家に帰らない、生活費を渡さないといったほかの事情が重なると、認められやすくなります。
8.配偶者の親族との深刻な不和
嫁姑問題のような配偶者の親族との対立も、配偶者が放置して夫婦の信頼が崩れた場合は離婚事由になり得ます。
たとえば、夫(妻)の親族との深刻な不和があるなか、夫(妻)が関係を取り持とうとしなかったケースは、婚姻を継続し難い重大な事由に該当する可能性があります。
ただし、親族と不仲であるというだけでは不十分です。
配偶者がかばってくれず、関係を調整する努力を怠ったなどの事情がなければ認められにくい点に注意が必要です。
9.家庭生活を顧みない過度な宗教活動
配偶者が過度な宗教活動にのめり込み、家庭生活に深刻な影響を与えた場合も、離婚事由となる場合があります。
たとえば、配偶者が宗教にのめり込んで育児や家事を放棄し、家を出て行ったようなケースは、婚姻を継続し難い重大な事由に該当する可能性があります。
もちろん、信仰の自由自体は尊重されるものです。
問題になるのは、信仰を強要されたり育児放棄をしたり、宗教的な理由から夫婦関係が築けなくなったりした場合です。
なお、多額の寄付による生活困窮や、宗教活動を理由に家に帰らなくなったケースは、ほかの離婚事由に該当する可能性もあります。
10.配偶者の重大な犯罪行為や服役
配偶者の重大な犯罪行為や服役も、離婚事由になる場合があります。
収入が途絶えて経済的に困窮したり社会的信用を失ったりなど、家族に与える影響が大きいためです。
たとえば、配偶者が実刑判決を受けて服役し、家族を扶養できなくなったケースは、婚姻を継続し難い重大な事由に該当する可能性があります。
ただし、どのような犯罪でも認められるわけではありません。
服役までする事態になれば、夫婦関係の継続が難しいと判断されやすくなります。
一方で、軽微な犯罪や執行猶予がついたケースであれば、犯罪行為以外のほかの要素もあわせて判断される傾向にあります。
11.配偶者が強度の精神病
2026年4月の民法改正で、強度の精神病は法定離婚事由から削除されました。
精神疾患を離婚事由とすることが、人権侵害や差別を助長するとして問題視されたためです。
ただし現在でも、精神疾患が原因で夫婦関係が破綻しているなら、婚姻を継続し難い重大な事由にあたるとして離婚が認められる場合があります。
精神疾患やうつ病を理由に離婚する場合のポイントについては、以下の記事を参考にしてください。
【関連記事】精神疾患やうつ病で離婚できる?離婚率や離婚したいときのポイントを解説
婚姻を継続し難い重大な事由を理由に慰謝料は請求できる?
離婚が認められたからといって、必ず慰謝料を受け取れるわけではありません。
請求できるかどうかはケースによって変わります。
そもそも慰謝料とは、相手の不法行為によって受けた精神的な苦痛を、お金で償ってもらうものです。
つまり、離婚の原因が相手の違法な行為によるものかどうかで、請求の可否が決まります。
ここからは、慰謝料を請求できるケースとできないケースを順番に見ていきましょう。
相手に有責性がない場合は慰謝料請求は難しい
性格の不一致や宗教観の違いなど、どちらか一方に明確な責任がない場合は、慰謝料の請求が難しくなります。
ただし、相手に有責性がなくても、養育費や財産分与などを請求することは可能です。
また、相手がなかなか離婚に応じてくれない場合などに、話をまとめるための解決金として金銭のやり取りがおこなわれるケースもあります。
相手の行為が不法行為にあたる場合は慰謝料の対象になる
DVやモラハラなど、相手の行為が不法行為にあたる場合は慰謝料を請求できます。
不法行為の被害者には、精神的苦痛に対する損害賠償として慰謝料を請求する権利が生じるためです。
慰謝料の相場は、行為の悪質さや婚姻期間の長さ、子どもの有無などさまざまな事情によって異なります。
また、離婚原因によっても、以下のようにおおよその目安が変わってきます。
- DV:50万〜300万円程度
- モラハラ:50万〜250万円程度
- 性交渉の拒否:50万〜150万円程度
- 借金:100万〜300万円程度
慰謝料を獲得するうえで欠かせないのが、客観的な証拠です。
暴言を録音したデータやけがの写真、医師の診断書などを日頃から集めておきましょう。
離婚慰謝料を請求できるケースや慰謝料相場、証拠については以下の記事を参考にしてください。
【関連記事】離婚慰謝料とは?請求できるケース・ケース別の慰謝料相場・必要な証拠を解説
婚姻を継続し難い重大な事由で離婚する4つの手順
ここからは、婚姻を継続し難い重大な事由で離婚するための、4つの手順を見ていきましょう。
1.証拠を集める
離婚を有利に進めるには、客観的な証拠を集めることが重要です。
相手の有責性や夫婦関係が破綻している事実を、形として残しておきましょう。
ケース別の証拠は以下のとおりです。
- DV:けがの写真、医師の診断書、警察への相談記録
- モラハラ:暴言の録音データ、LINE・メールのやり取り
- 借金:金銭消費貸借契約書、督促状
- 浪費:銀行口座の入出金記録、クレジットカードの明細書
- 別居:別居の時期がわかる資料
そのほか、日記もそれだけでは証拠として弱いですが、ほかの証拠と組み合わせることで有効な証拠となる可能性があります。
証拠は、相手と同居しているうちに集めておきましょう。
別居してからでは、証拠を集める機会が減るため難易度が上がります。
ただし、自力での収集が難しいと感じたら、無理をせず弁護士に相談してください。
何をどのように集めればよいか、具体的なアドバイスをもらえます。
2.協議離婚を試みる
証拠が揃ったら、まずは夫婦間で離婚について話し合いましょう。
集めた証拠をもとに離婚の意思を伝え、慰謝料や財産分与といった条件面を交渉します。
話し合いがまとまれば、理由にかかわらず離婚できるので、時間も費用も大きく抑えられます。
ただし、相手が感情的になって話し合いにならない場合もあります。
話し合いが難しければ、無理をせず調停に切り替える判断が大切です。
なお、話し合いがまとまったら、口約束で終わらせず公正証書として残しておきましょう。
【関連記事】離婚の公正証書は作成すべき理由とは?作成しないリスクや作成手順も解説
3.協議がまとまらなければ離婚調停を申し立てる
話し合いがまとまらない場合や、そもそも相手が話し合いに応じてくれないときは、家庭裁判所に離婚調停を申し立てます。
調停は、調停委員という第三者を介して話し合いを進める手続きです。
相手と直接顔を合わせずに済むため、精神的なストレスを減らせます。
重要なのは、第三者にも納得してもらえるよう伝えることです。
集めた証拠をもとに、論理的に主張を組み立てなければなりません。
調停にかかる期間はケースにもよりますが、6ヵ月〜1年程度が目安です。
双方が納得して合意に至れば調停離婚が成立します。
4.調停不成立なら離婚訴訟を提起する
調停でも合意できなければ、家庭裁判所に離婚訴訟を提起します。
訴訟では、民法の定める法定離婚事由に当てはまるかどうかが審査されます。
提出した証拠が結果を大きく左右するため、いかに有効な証拠を集められるかが重要です。
裁判官が「婚姻を継続し難い重大な事由がある」と判断すれば、相手の同意がなくても離婚が成立します。
ただし、訴訟を有利に進めるには専門知識や経験が必要です。
自分で対応しようとせず、弁護士に対応を依頼し代理人として出席してもらうことをおすすめします。
婚姻を継続し難い重大な事由での離婚を弁護士に相談すべき3つの理由
婚姻を継続し難い重大な事由での離婚で弁護士に相談すべき理由は、以下の3つです。
- 法定離婚事由に該当するかを正確に判断してもらえる
- 相手と直接交渉する精神的負担を軽減できる
- 慰謝料や財産分与を適切な条件で獲得しやすくなる
ここからは、それぞれの理由について、詳しく見ていきましょう。
1.法定離婚事由に該当するかを正確に判断してもらえる
弁護士に依頼すると、自分のケースが法定離婚事由に該当するかどうかを専門家の視点で判断してもらえます。
素人判断では見落としがちなことも、過去の判例や実務経験に基づいて分析してくれるのがメリットです。
また、手持ちの証拠が法的に通用するのか、足りないのであればどのような証拠を追加すべきかについても、具体的なアドバイスをもらえます。
離婚の見通しが立てば、「離婚できるのだろうか」という不安から解放され、前向きに準備を進められます。
2.相手と直接交渉する精神的負担を軽減できる
弁護士に依頼すると、相手と直接交渉する必要がなくなります。
特にモラハラやDVの被害に遭っている場合は、相手とやり取りせずに済むだけでも精神的な負担が軽減されるはずです。
また、弁護士は相手の威圧的な態度や理不尽な要求に対しても、法的根拠をもって対応してくれます。
当事者同士で感情をぶつけ合わずに済むため、冷静に手続きを進められます。
3.慰謝料や財産分与を適切な条件で獲得しやすくなる
慰謝料や財産分与で納得のいく条件を引き出しやすくなるのも、弁護士に依頼すべき理由のひとつです。
相手が財産を隠しているケースでも、弁護士会照会などを通じて財産の全容を把握したうえで交渉してくれます。
また、慰謝料の増額につながる事情があれば主張し、相手からの不当な減額要求は毅然と退けてくれます。
適切な金額を受け取れるかどうかは、離婚後の生活を左右する大切なポイントです。
納得のいく条件での解決を目指すためにも、離婚手続きは弁護士に依頼したうえで進めましょう。
さいごに|婚姻を継続し難い重大な事由で離婚する際は弁護士に相談を
婚姻を継続し難い重大な事由は、不貞行為や悪意の遺棄のような原因がなくても離婚を認めてもらうための規定です。
ただし、裁判で離婚が認められるには、客観的な証拠や法的な主張の組み立てが必要です。
婚姻を継続し難い重大な事由で離婚する際は、弁護士への相談を検討しましょう。
弁護士に相談することで、離婚事由に該当するかを判断してもらえるうえ、有利な条件での解決を目指せます。
初回無料相談を実施している事務所も多いため、まずは気軽に相談してみてください。
