財産分与で株はどう分ける?対象になる株や評価額の計算方法を解説
離婚を考えたとき、「相手名義の株も分けてもらえるのか」「株価が動くから、何を基準に分ければいいのか」と迷う方は多いでしょう。「NISAで運用している分はどうなる?」「自社株を持っている場合は?」という疑問も出てくるはずです。
婚姻中に夫婦の収入で購入した株は、名義にかかわらず原則として財産分与の対象になります。ただし株価は日々変動するため、いつの時点で評価するかによって分与額が大きく変わります。
本記事では、対象になる株とならない株の見分け方、評価額の計算方法、売却・移管・代償金という3つの分け方、税金や請求期限の注意点まで解説します。相手が証券口座を隠している場合の対処法もまとめているので、自分のケースに当てはめながら読み進めてみてください。
離婚時の株は財産分与の対象になる?
婚姻中に夫婦の協力によって取得した株は、原則として財産分与の対象になります。財産分与とは、夫婦が婚姻期間中に協力して築いた財産を、離婚時に公平に分ける制度です。預貯金や不動産と同じように、株式や投資信託も対象に含まれます。
判断の分かれ目になるのは、いつ・誰の資金で取得したかです。
| 判断の軸 | 対象になる財産(共有財産) | 対象外になる財産(特有財産) |
| 取得時期 | 婚姻中 | 結婚前・別居後 |
| 取得資金 | 夫婦の収入・共有財産 | 親などからの相続・贈与 |
証券口座の名義が夫だけ、妻だけであっても結論は変わりません。順に詳しく見ていきましょう。
婚姻中に購入した株は原則として共有財産になる
婚姻中に購入した株は、夫婦の共有財産として原則2分の1ずつ分けます。婚姻中の収入は、夫婦が協力して得たものと評価されるためです。
専業主婦(主夫)で直接の収入がなかった場合も、分与割合が下がるわけではありません。家事や育児による貢献が考慮され、2分の1ずつを原則とする運用が定着しています。
なお、株そのものを1株ずつ分ける必要はありません。評価額を金銭に換算し、売却代金や代償金で清算する方法が一般的です。
【参考元】財産分与|法務省
名義が夫婦どちらか一方でも対象になる
証券口座や株式の名義が一方だけでも、婚姻中に共有財産で購入した株は財産分与の対象になります。重視されるのは形式的な名義ではなく、実質的に夫婦の協力で形成された財産かどうかという点です。
たとえば夫名義のネット証券口座で運用していた株でも、婚姻中に購入された分については、妻は分与を請求できます。「自分の名義だから自分のものだ」と主張された場合は、購入時期と入金元がわかる資料を確認してみてください。
結婚前の株・相続や贈与で取得した株は対象外になる
結婚前から保有していた株や、相続・贈与で取得した株は、特有財産として財産分与の対象外になります。
ただし、対象外だと主張する側が、取得時期や資金の出所を資料で示す必要があります。「昔から持っていた」という説明だけでは認められにくいのが実情です。財産分与の対象から外すためには、以下のような資料が求められます。
- 結婚前の取引報告書、証券口座の開設書類
- 遺産分割協議書など相続関係の資料
- 贈与契約書、贈与時の振込記録
結婚前に買った株を婚姻中に買い増している場合は、買い増した分が対象になる点にも注意しましょう。
配当金・売却益・含み益も財産分与の対象になる?
婚姻中に保有していた株から生じた配当金や売却益、含み益も、財産分与の対象です。共有財産である株から生まれた利益は、同じく共有財産として扱われるのが基本です。
配当金が預金口座に貯まっていれば、その預金も分与の対象になります。売却していない株についても、基準時点の株価で評価するため、値上がりによる含み益を反映した金額が分与対象となります。
一方、結婚前に取得した株や、相続・贈与で取得した株は特有財産です。婚姻中に一切売買せず、市場の動きによって自然に値上がりしただけなら、その増加分も基本的に財産分与の対象外と考えられます。
ただし、婚姻中に売買や銘柄の入れ替えを繰り返して資産が増えた場合は、増加分が財産分与の対象になる可能性があります。売買の有無だけで一律に決まるわけではなく、判断は難しいため、取引履歴などを用意して弁護士に相談するのがおすすめです。
財産分与で株を分ける方法
株の分け方には、売却して現金で分ける、株式を移管して現物で分ける、一方が取得して代償金を支払うという3つの方法があります。
| 分け方 | 向いているケース | 注意点 |
| 売却して現金で分ける | 双方とも保有にこだわらない | 譲渡益の税金、売却手数料がかかる |
| 移管して現物で分ける | 保有を続けたい銘柄がある | 口座開設や移管手数料が必要 |
| 代償金で清算する | 非上場株式・自社株がある | まとまった現金が必要 |
どの方法を選ぶかは、株の種類、株価変動のリスク、税金、非上場株式かどうかによって変わります。それぞれの方法について詳しく解説します。
株を売却して現金で分ける
株を売却して現金化し、売却代金を分ける方法です。現金なら金額が明確で、1円単位まで公平に分けられます。株価変動のリスクを離婚後に持ち越さずに済む点も安心材料です。
注意したいのは、売却にかかるコストです。購入時より値上がりしていれば、譲渡益に対して所得税・住民税(合計20.315%)がかかります。売却手数料も含め、差し引き後の金額をどう分けるか決めておきましょう。
売るタイミングによって手取り額は変わるため、いつまでに売却するかについても合意しておくのが確実です。
【参考元】No.1463 株式等を譲渡したときの課税(申告分離課税)|国税庁
株式を移管して現物分割する
株を売却せず、証券口座間で移管して現物のまま分ける方法もあります。値上がりを期待して保有を続けたい場合や、売却益への課税を避けたい場合に、選択肢にあがりやすいでしょう。
移管を選ぶなら、受け取る側も証券口座を用意しておく必要があります。手続きには移管依頼書などの書類提出が必要で、1銘柄あたり数千円の移管手数料がかかる証券会社もあります。
とくに注意したいのがNISA口座です。NISA口座の株式を、そのまま相手名義のNISA口座へ移すことはできません。相手に渡すには、いったん課税口座へ払い出すか、売却する必要があります。
口座の種類によって手続きが変わるため、事前に証券会社へ確認しておきましょう。
株を取得する側が代償金を支払う
一方が株を保有し続け、相手に評価額の一部を代償金として支払う方法もあります。株を手放したくない場合や、非上場株式・自社株のように現物で分けにくい場合に使いやすい方法です。
代償金の額は、基準時点の評価額に分与割合を掛けて計算します。評価額1,000万円の株を夫が保有し続けるなら、妻へ500万円を支払うイメージです。
分割払いにするなら、支払期限と未払い時の対応を離婚協議書や公正証書に残しておきましょう。強制執行認諾文言付きの公正証書にしておけば、未払い時に裁判を経ずに差し押さえを申し立てられます。
ほかの財産とあわせて調整する
株だけで公平に分けにくい場合は、預貯金や不動産、退職金などほかの財産とあわせて調整する方法も検討しましょう。
たとえば、夫が株1,000万円を保有し続ける代わりに、妻が預貯金を1,000万円多く受け取るといった形です。株価変動のリスクや税金をふまえると、現金やほかの資産でバランスを取るほうが実務的なケースは少なくありません。
調整するには、夫婦の財産を一覧にする作業が欠かせません。総額を出してから分け方を検討すれば、株だけに気を取られて全体で損をする事態を防げます。
株の財産分与を進める流れ
株は預貯金と違い、価格が日々動きます。証券口座・NISA・投資信託・自社株と種類も多いため、順序立てて整理しないと計算が合わなくなりがちです。
ここでは、株の財産分与をスムーズに進めるための手順を解説します。
1. 夫婦が保有する株や証券口座を洗い出す
最初にやるべきは、夫婦が保有する証券口座と銘柄の洗い出しです。下記のように証券会社名・銘柄・株数・取得時期・口座の種類まで一覧にしておくと、今後の判定と評価がスムーズに進みます。
| 項目 | 記入例 |
| 証券会社名 | ◯◯証券 |
| 銘柄・株数 | ◯◯株式会社/1,000株 |
| 取得時期 | 2020年◯月 |
| 取得資金 | 給与の振込口座(◯◯銀行)から入金 |
| 口座の種類 | 特定口座/NISA口座 |
手がかりになるのは、残高証明書や年間取引報告書だけではありません。銀行口座から証券会社への入出金履歴、配当金の入金記録、証券会社からの郵送物やメールからも口座の存在をたどれます。
集めるべき資料の詳細は後述します。
【関連記事】離婚の準備6つ|後悔しないために今からはじめるべきことは?
2. 財産分与の対象になる株か確認する
洗い出した株を、共有財産と特有財産に仕分けます。婚姻中に夫婦の収入で買った株は共有財産、結婚前の株や相続・贈与で得た株は特有財産というのが基本です。
仕分けで迷いやすいのは、次の3つのケースです。
- 結婚前に買った株を、婚姻中に買い増している
- 相続した株を売却し、その資金で別の銘柄を購入している
- 特有財産と共有財産を同じ口座で混ぜて運用している
いずれも「どこまでが特有財産か」を切り分ける作業が必要です。取得時期ごとの取引履歴をたどり、購入資金がどこから出たのかを確認しましょう。切り分けが難しい場合は、資料を持参して弁護士に相談するのが確実です。
3. 基準時を決めて株の評価額を算出する
対象になる株が固まったら、評価の基準時を決めます。実務では、夫婦の協力関係が終わった別居時を基準にするのが一般的です。別居していない場合は、離婚時が基準になります。
| 財産の種類 | 評価の方法 |
| 上場株式 | 基準日の株価×保有株数 |
| 投資信託 | 基準日の基準価額×保有口数 |
| NISA口座の資産 | 基準日の時価(非課税かどうかは無関係) |
| 非上場株式・自社株 | 決算書などをもとに専門的に評価 |
株価は日々変動するため、基準日が1ヵ月違うだけで評価額が数十万円変わることも珍しくありません。具体的な計算方法は後述します。
4. 売却・移管・代償金など分け方と税金を整理する
評価額が出たら、分け方とあわせて税金や手数料を整理します。分け方は三通りありますが、どれを選ぶかで手取り額が変わる点に注意しましょう。
| 分け方 | 発生しうる費用・税金 |
| 売却して現金で分ける | 譲渡益への所得税・住民税20.315%、売却手数料 |
| 株式を移管する | 移管手数料、含み益がある場合は課税の可能性 |
| 代償金で清算する | 原則として課税なし(過大な分与を除く) |
たとえば含み益500万円の株を売却すると、約100万円が税金として差し引かれます。「評価額1,000万円だから500万円ずつ」と決めても、実際の手取りは想定を下回りかねません。税負担を誰がどう引き受けるかまで含めて話し合っておきましょう。
なお、NISA口座の資産を相手へ渡す場合は、課税口座への払い出しか売却が必要です。払い出すと取得価額が払出日の時価に置き換わり、それ以降の利益は課税対象になります。
5. 合意内容を書面化し、売却・移管・代償金の支払いをおこなう
分け方が決まったら、内容を離婚協議書にまとめます。「株は半分ずつ」といった曖昧な記載では、後から解釈をめぐって揉めかねません。記載するべき主な項目は次のとおりです。
| 記載項目 | 具体例 |
| 証券会社名・口座 | ◯◯証券 特定口座 |
| 銘柄・株数 | ◯◯株式会社 普通株式1,000株 |
| 基準日と評価額 | 2026年◯月◯日終値/100万円 |
| 分け方 | 売却・移管・代償金のいずれか |
| 実行期限 | 売却・移管を完了する期限 |
| 代償金の額と支払期限 | 50万円を◯年◯月末日までに振込 |
代償金を分割払いにするなら、公正証書の作成も検討しましょう。強制執行認諾文言を入れておけば、未払い時に裁判を経ずに給与や預貯金の差し押さえを申し立てられます。
売却や移管の完了後は、売却報告書、移管手続きの控え、振込記録を保存してください。約束が守られなかったときの証拠になります。
【参考元】公証事務|日本公証人連合会
【関連記事】離婚協議書の書き方ガイド|無料テンプレートや自分で作成する際のポイントも紹介
株式の評価額の計算方法
株式の評価方法は、上場株式か非上場株式かによって大きく異なります。
| 項目 | 上場株式 | 非上場株式・自社株 |
| 市場価格 | あり | なし |
| 評価の方法 | 基準日の株価×保有株数 | 決算書などをもとに算定 |
| 必要な資料 | ・残高証明書 ・株価情報 |
・決算書 ・株主名簿 ・登記事項証明書 |
| 専門家の関与 | 不要なことが多い | 税理士・公認会計士が必要になりやすい |
上場株式であれば、証券口座の画面を見れば評価額をすぐ確認できます。一方、非上場株式は市場価格がないため、評価方法そのものが争点になりやすい財産です。基準日をいつにするかで金額が変わる点は、どちらにも共通します。
上場株式の場合
上場株式は「基準日の株価×保有株数」で評価額を算出します。保有株数は、証券口座の残高証明書や取引画面で確認できます。株価は、証券会社のサイトや株価情報サイトで基準日の終値を調べましょう。
争点になりやすいのは基準日の設定です。数ヵ月または数年の別居のあとに離婚したケースで、別居後に株価が上昇していれば、受け取る側は離婚時を主張しがちになるでしょう。
なお、基準日が土日祝や休場日にあたる場合は、直近の取引日の終値を使う方法が一般的です。基準日について争いがある場合は、自己判断せず弁護士に確認してください。
計算例
上場株式の評価額は、次のように計算します。
|
【前提】 ・基準日の株価:1株1,000円 ・保有株数:1,000株 【計算】 1,000円 × 1,000株 = 100万円 |
この100万円が、財産分与の対象になる評価額の目安です。2分の1ずつ分けるなら、それぞれ50万円が基準になります。
複数の銘柄を保有しているなら、銘柄ごとに同じ計算をして合計しましょう。実際には、売却時の手数料や税金、ほかの財産との調整も踏まえて最終的な分与額を決めることになります。
非上場株式の場合
非上場株式は市場価格がないため、会社の資産や利益をもとに評価します。配偶者が会社を経営している場合や、勤務先の自社株を保有している場合に問題になる財産です。
評価に使われる主な方式は、次の3つです。
| 評価方式 | 概要 | 使われやすいケース |
| 純資産価額方式 | 会社の資産から負債を引いた純資産をもとに算定 | 中小企業、資産を多く持つ会社 |
| 類似業種比準方式 | 同業の上場企業の株価と比較して算定 | 規模の大きい会社 |
| 配当還元方式 | 過去の配当額をもとに算定 | 経営に関与しない少数株主 |
評価には、決算書(3期分程度)、株主名簿、登記事項証明書などの会社資料が欠かせません。相手が経営者の場合、資料の開示自体が争点になることもあります。
さらに、自社株は評価額だけの問題ではありません。株式を分けると議決権が分散して経営に影響が出るため、代償金での清算を選ぶケースが多くなります。
算定には専門的な判断を伴うため、弁護士と税理士・公認会計士の連携が必要です。
計算例
非上場株式では、純資産をもとに1株あたりの価値を出す下記の方法がイメージしやすいでしょう。
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【前提】 ・会社の資産:1億円 ・会社の負債:4,000万円 ・発行済株式数:600株 ・配偶者の保有株数:100株 【計算】 1. 純資産:1億円 − 4,000万円 = 6,000万円 2. 1株あたりの価値:6,000万円 ÷ 600株 = 10万円 3. 保有株の評価額:10万円 × 100株 = 1,000万円 |
上記を2分の1ずつ分けるなら、500万円が清算額の目安になります。
ただし実際の評価では、会社の規模・収益性・株主構成・役員としての立場なども考慮されます。上記はあくまで考え方を示した簡易な例と捉えてください。正確な評価額は、決算書をそろえたうえで税理士や公認会計士に算定してもらいましょう。
分割が難しい財産を財産分与する際の扱い
投資信託・NISA・iDeCo・投資用不動産・会員権などは、預貯金のように単純に半分ずつ分けられません。
婚姻中に夫婦の協力で形成した財産であれば、名義にかかわらず分与の対象になります。とはいえ、制度上すぐに現金化できなかったり、名義変更に制限があったりするのが実情です。
| 財産の種類 | 評価の方法 | 現実的な分け方 |
| 投資信託 | 基準価額 × 保有口数 | 売却・代償金 |
| NISA口座の資産 | 基準日の時価 | 売却・代償金 |
| iDeCo・企業型確定拠出年金 | 基準日の残高 | ほかの財産で調整 |
| 投資用不動産 | 査定額 - ローン残高 | 売却・代償金 |
| 会員権 | 市場価格・返還金 | 売却・代償金 |
いずれも、評価方法・税金・手数料・移管の可否を確認したうえで判断する必要があります。判断に迷う場合は、弁護士や税理士、証券会社に確認しておきましょう。
投資信託の場合
投資信託も、婚姻中の収入や共有財産で購入したものなら財産分与の対象になります。評価額は「基準日の基準価額 × 保有口数」で算出します。基準価額は1万口あたりで表示されるのが一般的なので、口数の単位を取り違えないよう注意しましょう。
たとえば1万口あたりの基準価額15,000円で保有口数が100万口なら、評価額は150万円という計算です。
分け方は株式と同じく、売却して現金で分ける、一方が保有して代償金を払う、ほかの財産と調整するの三通りです。
売却時には、譲渡益への課税(20.315%)に加えて、解約時に差し引かれる「信託財産留保額」がかかる商品もあります。基準価額は日々動くため、実際の受取額は評価額と一致しない点も押さえておきましょう。
NISAの場合
NISA口座で運用している株式や投資信託も、婚姻中に形成した資産であれば財産分与の対象です。NISAは運用益が非課税になる制度にすぎず、財産分与の対象かどうかとは別問題として考えます。評価額は、課税口座と同じく基準日の時価で計算します。
ただし、以下の点に注意しましょう。
- NISA口座から相手名義のNISA口座へ、そのまま移すことはできない
- 相手へ渡すには、課税口座へ払い出すか売却する必要がある
- 課税口座へ払い出すと、取得価額は払出日の時価に置き換わる
- 払い出し後の値上がり分には、通常どおり課税される
- 使った非課税投資枠は、その年のうちには再利用できない
非課税のメリットを維持したいなら、名義人がそのまま保有し続け、相手には代償金を支払う方法が現実的です。手続きの可否は証券会社によって異なるため、事前に確認しておきましょう。
【参考元】NISA特設ウェブサイト|金融庁
iDeCo・企業型確定拠出年金の場合
iDeCoや企業型確定拠出年金(企業型DC)も、婚姻期間中に積み立てた部分は財産分与で考慮される可能性があります。ただし、株や投資信託のように自由に分けられません。iDeCoは原則60歳まで引き出せず、離婚を理由に途中解約することもできないためです。
現実的な清算方法は、次のいずれかになります。
- 基準日の残高をもとに評価し、ほかの財産で調整する
- 相当額を代償金として支払う
確認したいのは、婚姻期間中に積み立てた部分がいくらかという点です。記録関連運営機関から届く「お取引状況のお知らせ」などで残高を確認しましょう。なお、iDeCoや企業型DCは、厚生年金を分ける年金分割とは別の制度です。年金分割の手続きをしても自動的に清算されるわけではないため、別途整理する必要があります。
【参考元】iDeCo公式サイト|国民年金基金連合会
投資用不動産の場合
投資用マンションやアパートも、婚姻中に取得したものなら財産分与の対象です。実質的な価値を把握するため、不動産会社の査定額からローン残高を差し引いて計算します。
査定額3,000万円でローン残高2,000万円なら、1,000万円がプラスの価値です。査定額がローン残高を下回るオーバーローンの場合、その物件自体に分けるべき価値はないと考えます。
自宅と違って収益が絡む点も特徴です。家賃収入・管理費・修繕積立金・固定資産税・空室リスクまで含めて、持ち続ける価値があるかを判断しましょう。
とくに注意したいのが、共有名義や連帯債務・連帯保証があるケースです。離婚しても金融機関との契約関係は自動的に解消されません。名義を外したい場合は、借り換えが可能か金融機関に確認する必要があります。
【関連記事】離婚で不動産を分与するときのポイント|家やマンションの財産分与をわかりやすく解説
ゴルフ会員権・リゾート会員権の場合
ゴルフ会員権やリゾート会員権も、婚姻中に共有財産で取得したものなら財産分与の対象になります。
確認すべきは、購入時期・購入資金・名義・現在の相場・退会時の返還金(預託金)の有無です。会員権市場で売買されているものなら、取引相場から評価額を把握できます。分け方は、売却して現金で分けるか、一方が保有し続けて代償金で清算するかの二通りです。
保有を続ける場合は、以下のような保有に伴うコストと制約についても注意しましょう。
- 譲渡制限や譲渡先の承認が必要な場合がある
- 名義変更料が数十万円かかることもある
- 年会費の負担が離婚後も続く
- 預託金の返還には据置期間や条件がある
条件は会員権ごとに異なるため、規約や運営会社の案内を確認したうえで話し合いましょう。
株の財産分与で確認すべき資料
株の財産分与では、証券口座の資料だけでなく、銀行口座の履歴や会社資料まで確認が必要になります。
| 区分 | 主な資料 | わかること |
| 証券口座 | ・残高証明書 ・取引報告書 ・年間取引報告書 |
・銘柄 ・株数 ・評価額 ・売買の時期 |
| 銀行口座 | ・入出金履歴 ・配当金の入金記録 |
・証券会社名 ・購入資金の出所 |
| NISA・特定口座 | ・年間取引報告書 ・口座残高資料 |
・口座種別 ・非課税枠の利用状況 |
| 非上場株式・自社株 | ・決算書 ・株主名簿 ・登記事項証明書 |
・会社の資産・負債 ・株主構成 |
まず押さえたいのは、基準日時点の残高証明書です。銘柄と株数、評価額が一枚でわかるため、話し合いの土台になります。ネット証券を使っている場合は、取引画面のスクリーンショットやPDF出力も保存しておきましょう。
非上場株式や自社株があるなら、決算書は3期分ほど確認してください。会社資料の入手や評価方法で揉めそうなときは、早めに弁護士や税理士へ相談してください。
【関連記事】離婚の財産分与を無料相談できる3つの窓口と弁護士選びのポイント
財産分与の際に相手が株や証券口座を隠している場合の対処法
「投資をしていたはずなのに、証券口座はないと言われた」というケースは珍しくありません。
証券口座の存在に気づかないまま離婚条件に合意すると、本来受け取れたはずの財産を取り逃すことになります。とはいえ、個人でできる調査には限界があります。手がかりを集めたうえで、弁護士などの専門家に相談するのが現実的です。
ここでは、相手が株や証券口座を隠している場合の対処法について、順を追って解説します。
郵送物・メール・銀行口座の入出金履歴から証券会社を確認する
まずは、相手が利用していた証券会社を特定する手がかりを集めましょう。自宅に届く郵送物には、取引報告書や配当金計算書、株主総会の招集通知などがあります。封筒に証券会社名や信託銀行名が印字されていれば、それだけで有力な情報です。
また銀行口座に証券会社への入出金履歴が残っていれば、口座の存在を裏づけられます。
ただし、相手のスマートフォンやパソコンに無断でログインする行為は避けてください。違法行為に該当し、集めた情報が使えないばかりか、逆に損害賠償を請求されかねません。
弁護士会照会や調査嘱託を検討する
証券会社名まで絞り込めたら、弁護士会照会や調査嘱託によって、相手名義の証券口座を調査できる可能性があります。
弁護士会照会は、弁護士が依頼を受けた事件について、弁護士会を通じて企業や官公庁に情報の照会をおこなう制度です(弁護士法第23条の2)。弁護士会が必要性と相当性を審査したうえで実施されます。
調査嘱託は、調停・審判・訴訟などの裁判手続きにおいて、裁判所から証券会社などへ必要な調査を依頼する制度です。当事者が申し立てても必ず採用されるわけではなく、裁判所が必要性を判断します。
いずれの手続きでも、金融機関名がまったくわからない状態では調査が困難です。「どこかに口座があるはず」という推測だけでは、照会先を特定できません。事前の手がかり集めが結果を左右するため、資料は捨てずに保管しておきましょう。
【参考元】弁護士会照会制度|日本弁護士連合会
財産分与調停で資料提出を求める
相手が、証券会社および株式の情報を任意に開示しない場合は、家庭裁判所の財産分与調停を利用する方法もあります。
調停では、調停委員が間に入り、双方に財産資料の提出を促しながら話し合いを進めます。当事者同士では応じてもらえなかった開示に、裁判所の手続きの中では応じるケースもあるでしょう。
調停に臨む際は、相手が情報を隠していると主張するだけでは足りません。証券会社からの郵送物や入金履歴など、疑いの根拠となる資料を整理して持参しましょう。
なお、改正により、裁判所が当事者に財産情報の開示を命じられる制度が新設されました(家事事件手続法第152条の2第2項)。正当な理由なく従わない場合には10万円以下の過料に処されるため、開示を求める側の後押しになります。
【参考元】財産分与請求調停|裁判所
離婚後に隠していた株が見つかった場合は財産分与を請求できる?
離婚後に株が見つかった場合は、離婚時の取り決めや株の取得時期によって対応が異なります。婚姻中の収入で取得した株であり、離婚時の財産分与に含まれていなければ、追加で分与を求められる可能性があります。
離婚協議書に「今後は互いに財産上の請求をしない」といった清算条項がある場合、追加請求は難しいのが実情です。ただし、相手が意図的に株を隠していた場合は、詐欺や錯誤を理由とする合意の取消しなどを検討できる余地があるでしょう。
まずは取引報告書や入出金履歴を確保し、株の取得時期や購入資金、離婚時の合意内容を確認しましょう。
隠し財産が疑われる場合は早めに弁護士へ相談する
隠し財産の疑いがあるなら、離婚条件に合意する前に弁護士へ相談しましょう。
一度「財産分与は完了した」と合意すると、財産関係は解決済みとみなされます。新たな財産が見つかっても追加の分与ができない恐れがあるため注意してください。
さらに清算条項があると、相手から「追加請求は合意に反する」と主張され、交渉や法的手続きが難しくなるでしょう。相手が意図的に財産を隠していた場合などは、合意後でも追加請求を検討できる余地があります。
弁護士に相談すれば、集めるべき資料や財産の開示を求める方法について助言を受けられるため、早めに相談しましょう。なお、清算条項とは、今後、離婚に関して互いに一切の請求をしないなどの合意した旨の条項を指します。
【関連記事】財産分与は弁護士に相談しよう!|依頼するメリットや費用などを解説
株を財産分与するときの注意点
株は価格が変動するため、評価時点や分け方によって金額や税負担が変わります。また、離婚後に請求する場合は期限にも注意が必要です。ここでは、特に確認しておきたい3つの注意点を解説します。
株価変動が大きいと評価時点で争いになりやすい
株価は日々動くため、いつの時点で評価するかが争点になりやすい財産です。同じ1,000株でも、株価が1,000円のときと1,500円のときでは、評価額に50万円の差が出ます。値動きの大きい銘柄なら、数ヵ月で倍近く変わることもあるでしょう。
基準日は、夫婦間の合意により決めることも可能です。値動きが激しい銘柄なら、一定期間の平均株価を使う方法も検討できます。
避けたいのは、評価時点を曖昧にしたまま合意することです。離婚協議書には、基準日と評価方法まで明記しておきましょう。
株を売却・現物分与すると税金がかかる可能性がある
財産分与で株を受け取る側に、原則として贈与税はかかりません。夫婦の財産を清算する手続きであり、贈与とは性質が異なるためです。一方で、次のケースでは課税される可能性があります。
| 株を売却して現金化する | 譲渡益に所得税・住民税20.315% |
| 株を現物のまま分与する | 分与する側に譲渡所得税がかかる可能性 |
見落としやすいのが現物分与です。財産分与として株を渡す行為は、税務上「時価で譲渡した」と扱われる場合があります。含み益が大きい株では、渡した側に思わぬ課税が生じかねません。
また、分与された額が過大と判断される場合や、税を免れる目的の離婚と見なされる場合には、贈与税の対象になります。高額な株や非上場株式を分ける場合は、税理士に確認しておくと安心です。
【参考元】No.4414 離婚して財産をもらったとき|国税庁
離婚後に財産分与を請求できる期間には期限がある
離婚後に株の財産分与を請求するなら、家庭裁判所への申立てに期限がある点に注意が必要です。
| 離婚した時期 | 申立ての期限 |
| 2026年4月1日以降 | 離婚した日の翌日から5年 |
| 2026年3月31日まで | 離婚した日の翌日から2年 |
改正民法により、2026年4月1日以降に離婚したケースでは期限が5年に延長されました。以前に離婚した方は2年のままなので、残り期間を早めに確認してください。
期限に余裕があるように見えても、油断は禁物です。時間が経つほどに取引履歴の保存期間が過ぎたり、相手が資産を処分したりして、回収が難しくなります。証券口座の存在に心当たりがあるなら、期限を待たずに動き出しましょう。
財産分与が話し合いで決まらない場合の対応
株の財産分与は、評価額・税金の負担・隠し口座の有無と、争点が多くなりがちです。当事者だけで解決できないときは、弁護士など専門家の力を借りましょう。
ここでは、財産分与が話し合いで決まらない場合の対応について詳しく解説します。
弁護士を通じて財産開示や交渉をおこなう
相手が情報を出さない場合や、評価額で折り合えない場合は、弁護士に交渉を任せる方法があります。
弁護士が代理人として、証券口座の残高証明書や取引履歴の開示を求めてくれます。法的な根拠を示して請求するため、当事者からの依頼より応じてもらいやすいのが実情です。
非上場株式や高額な株式が絡む場合は、評価方法と税負担を踏まえた交渉が欠かせません。税理士と連携して対応する事務所もあります。感情的な対立で話し合いが進まないケースでも、弁護士を介せば冷静なやり取りに戻せるでしょう。
財産分与請求調停を申し立てる
交渉でもまとまらないときは、家庭裁判所に財産分与請求調停を申し立てます。調停では、調停委員を介して夫婦の財産全体について話し合います。株の評価額・証券口座の開示・分け方・代償金の支払方法まで、まとめて調整できる場です。
離婚前であれば「夫婦関係調整調停(離婚)」のなかで、離婚後であれば「財産分与請求調停」として申し立てる流れになります。調停でも合意に至らない場合は、審判に移行し、裁判官が資料をもとに判断します。
【関連記事】離婚調停の申し立てから終了までの流れ|調停の平均的な実施回数と期間
株の財産分与で困ったら「ベンナビ離婚」を活用しよう
株の財産分与でお困りなら、離婚問題に対応できる弁護士を探せる「ベンナビ離婚」の活用がおすすめです。
株の分与は、上場株式の基準日の設定・NISAや投資信託の扱い・非上場株式や自社株の評価など、専門的な判断が必要になる場面が多くあります。相場感がないまま合意すると、数百万円単位で損をしかねません。
ベンナビ離婚では、地域や相談内容、初回相談無料といった条件から弁護士を検索できます。財産分与の解決実績を掲載している事務所も多く、依頼前に対応範囲や費用を確認できる点も安心材料です。
以下のいずれかにひとつでも当てはまるなら、合意する前に相談してみてください。
- 相手が証券口座を開示しない
- 評価額で揉めている
- 自社株が含まれている
財産分与で株を分ける場合によくある質問
最後に、株の財産分与でよく寄せられる疑問に回答します。
配偶者名義の自社株は財産分与できる?
婚姻中に取得した自社株であれば、財産分与の対象になり得ます。問題になるのは分け方です。株式そのものを分けると議決権が分散し、経営に影響が出るため、株は配偶者が保有したまま、相手に代償金を支払う方法が選ばれるのが一般的です。
評価には決算書や株主名簿が必要で、開示をめぐって争いになることもあります。弁護士と税理士に相談しながら進めましょう。
株価が離婚後に上がった場合はどうなる?
離婚後に値上がりしても、原則として基準時点の評価額をもとに判断します。財産分与は、別居時や離婚時といった基準時の財産を清算する手続きだからです。離婚後の値上がり分まで当然に分けられるわけではありません。
裏を返せば、値下がりしても分与額は変わりません。基準日と評価方法を離婚協議書に明記しておけば、後日の蒸し返しを防げます。
財産分与の対象にならないものにはどのような株がある?
結婚前から保有していた株や、相続・贈与で取得した株は、原則として対象外です。夫婦の協力とは無関係に取得した特有財産にあたるためです。
ただし、婚姻中に共有財産で買い増した分は対象になります。取得時期と購入資金がわかる取引履歴を確認しておきましょう。
共有財産とは?株が共有財産にあたるケースは?
共有財産とは、婚姻中に夫婦が協力して形成した財産を指します。預貯金・不動産・車・保険・株式・投資信託などが含まれます。
株が共有財産にあたる典型は、婚姻中に給与や共有の預貯金で購入したケースです。証券口座の名義が一方だけでも変わりません。
判断に迷ったら、購入時期、購入資金の出所、運用の状況という3点を確認してください。
まとめ|株の財産分与は対象範囲・評価額・税金を確認して進めよう
株の財産分与では、対象になる株かどうか、いつの時点で評価するか、どう分けるか、税金がかかるかの4点を確認して進めましょう。
| 確認項目 | ポイント |
| 対象範囲 | ・婚姻中に購入した株やNISA資産は対象 ・結婚前・相続・贈与の株は対象外になりやすい |
| 評価額 | ・上場株式は基準日の株価×株数 ・非上場株式は専門的な評価が必要 |
| 分け方 | 売却・移管・代償金の三通り |
| 税金 | ・受け取る側は原則非課税 ・売却益や現物分与では課税の可能性あり |
とくに非上場株式や自社株が含まれる場合、評価額の算定だけで数百万円の差が生じることもあります。
相手が証券口座を開示しない場合や、税金の扱いに不安がある場合は、弁護士などの専門家の力を借りるのが確実です。「ベンナビ離婚」で財産分与に対応できる弁護士を探し、まずは無料相談を活用してみてください。
