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労基に訴えるとどうなる?|必要な証拠や動き方を解説

弁護士監修記事
労働問題
2023年04月19日
2024年04月22日
労基に訴えるとどうなる?|必要な証拠や動き方を解説
この記事を監修した弁護士
阿部 由羅弁護士 (ゆら総合法律事務所)
ゆら総合法律事務所の代表弁護士。不動産・金融・中小企業向けをはじめとした契約法務を得意としている。その他、一般民事から企業法務まで幅広く取り扱う。

労働環境に不満を抱えていると、労働基準監督署への通報(申告)を検討することもあるでしょう。

しかし、労働基準監督署はその権限や組織の性質上、対応できることと対応できないことがある点に注意が必要です。

本記事では、労働基準監督署が対応可能なトラブル事例と対応が難しいトラブル事例、および申告の際に必要な証拠を固める方法などを解説します。

労働基準監督署へトラブルを訴える際の参考にしてください。

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労働基準監督署が対応できるトラブル・対応できないトラブル

労働基準監督署は、企業が労働基準法および労働安全衛生法を遵守しているかどうかを監督する役割を担っています。

労働基準法または労働安全衛生法に違反している疑いのある企業に対して、労働基準監督署は立ち入り調査を行った上で行政指導などをおこないます。

一方、労働基準法および労働安全衛生法に関係しない労働問題についても、労働基準監督署に相談すれば一般的なアドバイスは受けられます。

しかし、労働基準監督署の管轄事項ではないため、立ち入り調査や行政指導などはできません。

このように、労働基準監督署には対応できるトラブルと対応できないトラブルがあり、すべての労働問題に対応してくれるわけではない点に注意が必要です。

以下では、労働基準監督署はどんなトラブルに対応でき、どんなトラブルに対応できないのか、その例を紹介します。

残業代の未払いなどの賃金トラブル|対応できる

会社から残業代が支払われなかったなど、賃金に関するトラブルが生じた場合は、労働基準監督署に申告すれば対応してもらえる可能性があります。

賃金の支払いや残業代に関するルールは労働基準法で定められており、労働基準監督署の管轄事項だからです。

休憩・休日・有給休暇に関するトラブル|対応できる

勤務中に適切な休憩が与えられない、休日出勤が続いている、有給休暇の取得が認められないなどのトラブルも、労働基準監督署に申告すれば対応してもらえる可能性があります。

休憩・休日・有給に関するルールは労働基準法で定められており、労働基準監督署の管轄事項だからです。

労災隠しのトラブル|対応できる

会社に労災隠しをされた場合にも、労働基準監督署へ申告すれば対応してもらえる可能性があります。

労働者が業務上の原因により負傷し、または死亡した場合には、会社は労働基準監督署に「労働者死傷病報告書」を提出しなければなりません。

しかし、労働基準監督署による摘発等を怖れたために、労働者死傷病報告書を提出しない会社があります。このような労災の隠ぺい行為は「労災隠し」と呼ばれます。

労働者死傷病報告書の提出義務は、労働安全衛生法(労働安全衛生規則)で定められています。

したがって、労災隠しは労働安全衛生法に関係するため、労働基準監督署の管轄事項です。

不当解雇などの解雇トラブル|対応できない場合が多い

解雇に関するトラブルについては、労働基準監督署は対応できない場合が多いです。 解雇に関してもっとも多く見られるトラブルは、不当解雇です。

客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当と認められない解雇は無効とされています(解雇権濫用の法理)。

しかし、解雇権濫用の法理は労働契約法で定められているため、労働基準監督署の管轄事項ではありません。

したがって、不当解雇に関するトラブルには、労働基準監督署は対応できません。

ただし、会社が解雇予告義務または解雇予告手当の支払義務を怠った場合には、労働基準法に関する問題なので、労働基準監督署に相談すれば対応してもらえる可能性があります。

不当解雇等の相談は不当解雇に関するおすすめ相談先5選|無料でよいアドバイスをもらうコツをご覧ください。

ハラスメントのトラブル|対応できない

パワハラについては労働施策総合推進法、セクハラについては男女雇用機会均等法において、それぞれ事業主にハラスメント防止措置が義務付けられています。

これらの法律は、いずれも労働基準監督署の管轄外です。

したがって、職場においてハラスメントの被害に遭ったとしても、労働基準監督署による具体的な対応は期待できません。

パワハラ等による相談が必要な場合はパワハラは労働局に相談できる?労働局の活用方法やその他の解決方法も紹介をご覧ください。

労働基準監督署を動かすための方法

労働基準監督署に立ち入り調査や行政指導などの具体的な対応をとってもらうには、労働基準法違反や労働安全衛生法違反の証拠を準備することが大切です。

また、事実関係を整理して、わかりやすく説明することも求められます。

きちんと事実確認ができる証拠を集める

労働基準法違反や労働安全衛生法違反の有力な証拠を提示できれば、労働基準監督署は立ち入り調査などに動きやすくなります。

相談をする前に、証拠となる書類やデータなどをできる限り集め、労働基準監督署に提出しましょう。

証拠になりうる書類・データとしては以下のようなものがあります。

  • 雇用契約書
  • 就業規則
  • 勤務時間記録
  • 給与明細書
  • 休暇申請書
  • 会議の議事録

問題の内容に応じた証拠資料を持参することで、起きているトラブルの詳細を伝えやすくなります。

事前に相談する内容を整理する

労働基準監督署に相談する際には、証拠を集めるだけでなく、情報の整理も重要です。

相談を受ける担当者から、そのトラブルがいつから起きているのか、どのような影響があるのかなどを確認されます。

時系列やできごとを整理して相談に臨みましょう。

トラブル別|最低限集めたい主な証拠

労働基準監督署に対して以下のトラブルを相談する際に、集めておきたい証拠を具体的に紹介します。

  • 残業代の未払い
  • 違法な長時間労働
  • 有給休暇の取得拒否

残業代の未払いについて相談する際に集めたい主な証拠

残業代の未払いを証明するためには、以下の証拠が必要です。

<本来支払うべき残業代の金額を証明するもの>

  • 雇用契約書
  • 就業規則
  • 賃金規程
  • 残業をしたことの証拠(勤怠管理システムの記録、業務メール、業務日誌など)

<実際に支払われた残業代の金額を証明するもの>

  • 給与明細
  • 源泉徴収票など

違法な長時間労働について相談する際に集めたい主な証拠

違法な長時間労働を証明するには、以下の証拠が必要です。

<時間外労働などの上限に関するルールを証明するもの>

  • 36協定書
  • 雇用契約書
  • 就業規則など

<実際の労働時間を証明するもの>

  • 残業をしたことの証拠(勤怠管理システムの記録、業務メール、業務日誌など)
  • 上司などから残業を指示された際のやり取りの記録など

有給休暇の取得拒否について相談する際に集めたい主な証拠

有給休暇の取得を違法に拒否されたことを証明するには、以下の証拠が必要です。

<有給休暇の権利を証明するもの>

  • 雇用契約書
  • 勤怠の履歴(勤怠管理システムの記録など)など

<有給休暇の取得を拒否された事実を証明するもの>

  • 有給休暇の取得を申請した際のやり取りの記録
  • 実際の有給休暇消化日数に関する記録など

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労働基準監督署に通報するメリット

労働基準監督署への通報(申告)は、労働者であれば無料でおこなうことができる点がメリットです。

労働基準法または労働安全衛生法に関係する事項であれば、労働基準監督署に通報することで、立ち入り調査や行政指導による労働環境や待遇の改善が期待できます。

相談・申告は従業員の雇用形態に関わらず無料でできる

労働基準監督署への相談・申告は、雇用形態に関わらず無料でできます。アルバイトやパート社員、契約社員でも、正社員と同様に労働基準監督署への相談が可能です。

メールや電話による相談・申告や、匿名での相談・申告も可能です。会社による労働基準法違反・労働安全衛生法違反に悩んでいる方は、労働基準監督署に相談してみましょう。

労働基準監督署のメール相談は労働基準監督署にメール相談は効果的?|相談方法について解説をご覧ください。

参考:全国労働基準監督署の所在案内

是正勧告により労働トラブルが解決する可能性がある

労働基準監督官は、労働基準法違反・労働安全衛生法違反を犯している企業に対して是正勧告(行政指導)をすることができます。

労働基準監督官の是正勧告を受けた企業は、実際に違反状態を改善した上で、その改善状況を報告する必要があります。

残業代の未払いや違法な長時間労働などの問題も、労働基準監督官の是正勧告をきっかけとして、抜本的に解決するケースも多いです。

労働基準監督署に通報することのデメリット

労働基準監督署は、監督官庁である性質上、労働者個人のためにきめ細かいサポートをすることができません。

労働基準監督署に相談しても、結局満足な対応をとってもらえず、時間だけが過ぎてしまうことも多いので注意が必要です。

動いてもらうまでに時間がかかる場合がある

労働基準監督署は、常に多くの労働トラブルに対応しており、調査対象の企業の数が多いため、対応には時間がかかる場合があります。

また、実際に調査を実施することになっても、書類の確認や追加での情報収集などが必要であり、それらの作業にも時間がかかります。

そのため、実際に動いてもらうまでにはかなりの時間を要するケースが多く、即時に問題が解決されない可能性が高いことにご注意ください。

証拠がないと対応すらしてもらえない場合がある

労働基準監督署の人員リソースは有限なので、すべての労働者の申告について調査を実施することはできません。

実際に調査が行われるのは、確実な有力証拠が揃っている事案や、きわめて重大な違反行為が疑われる事案などに限られます。

労働基準監督署に相談しても、結局調査が実施されず徒労に終わってしまうケースも多いです。

少しでも労働基準監督署に対応してもらえる可能性を少しでも挙げるには、有力な証拠をできる限り豊富に集めましょう。

すぐにでも行動を起こしたいなら弁護士に相談

労働基準監督署に問題を訴えたとしても、必ずしも迅速な対応をしてもらえるわけではありません。

労働基準監督署は常に多くのトラブルの対応に当たっており、緊急性や重大性の高い問題から処理される傾向があるためです。

迅速な解決を望む場合は、労働審判や訴訟を通じて、会社の責任を直接追及することも検討しましょう。

ただし、労働審判や訴訟は専門性が高い手続きなので、自分で対応するのは非常に大変です。実際に労働審判や訴訟を利用する際には、労働問題を得意とする弁護士への依頼をご検討ください。

労働問題を解決するためには、労働基準監督署相談することも選択肢の一つですが、弁護士に相談する選択肢もあることを覚えておきましょう。

また弁護士に相談する場合労働問題の24時間無料相談窓口|その他の窓口も受付時間別に紹介をご覧ください。

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編集部
本記事はベンナビを運営する株式会社アシロが企画・編集をおこないました。
  • ※ベンナビに掲載されているコラムは、必ずしも弁護士が執筆したものではありません。
  • ※本記事の目的及び執筆体制についてはコラム記事ガイドラインをご覧ください。
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