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セクハラ・パワハラはどこからアウト?覚えておきたいハラスメントの知識と対処法

弁護士監修記事
労働問題
2023年05月29日
2024年04月22日
セクハラ・パワハラはどこからアウト?覚えておきたいハラスメントの知識と対処法
この記事を監修した弁護士
(アシロ 社内弁護士)
この記事は、株式会社アシロの『ベンナビ編集部』が執筆、社内弁護士が監修しました。

セクハラやパワハラは、職場や仕事上の人間関係において行われる嫌がらせです。

たとえ加害者が軽い気持ちで行った言動であっても、被害者にとっては耐えられないと感じることもあります。

ときには被害者がメンタル不調を起こして退職に追い込まれたり、うつ病などの精神疾患を発症するまで追い詰められたりすることもあります。

しかし、セクハラやパワハラは1990年代から2000年代にかけて広がった概念であり、年齢や立場、労働環境によっても認識にギャップがあるでしょう。

この記事では、セクハラ、パワハラの定義を解説します。

実際にどのような言動が該当するのか、事例を交えて紹介しておりますので、ハラスメント行為の理解を深めることができるでしょう。

また、自分がセクハラ、パワハラの被害者になった場合の対処法についても解説しますので、参考にしてみてください。

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セクハラの基礎知識

セクハラは、職場や学校などにおいて行われる性的な嫌がらせのことをいいます。

日本でもたびたび問題として取り上げられているため、代表的な事例や基準について知っている方も多いでしょう。

ここでは、セクハラの基礎知識だけでなく、注意すべき言動や実際の事例について解説します。  

セクハラとは、性的言動による嫌がらせ行為

セクハラとは、セクシャルハラスメントの略で、「性的な嫌がらせ」のことをいいます。

厚生労働省の定義によると、セクハラとは、「性的な言動」に対して労働者がとった対応によって労働条件に不利益を受けたり、「性的な言動」により就業環境が害されたりすることを指します。

セクハラの判断基準を明確にすることは難しく、基本的には被害者が女性なら「平均的な女性労働者の感じ方」を、男性なら「平均的な男性労働者の感じ方」を基準に判断されます。

セクハラにあたる性的な言動には、以下のようなものがあります。

  • 性的な事実を尋ねること
  • 執拗に体を触ること
  • 性的な関係を強要すること
  • 食事やデートへの執拗な誘い

それ以外にも、性別役割分担意識に基づく発言も、セクハラにあたる可能性があります。

職場において発生したセクシャルハラスメントについて、事業主は、労働者からの相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備をするなど、解決のための措置をとらなければなりません(男女雇用機会均等法第11条)。

また、セクハラは男性から女性への性的嫌がらせだけでなく、女性から男性への性的言動や同性間の性的言動も含みます。

「セクハラ」というと、あくまでも職場内のルール違反程度に軽く捉えられがちです。

しかし、セクハラは実際に、「強制わいせつ罪」、「強制性交等罪」、「名誉毀損罪」などの罪に問われる可能性もある行為なのです。

セクハラの種類

厚生労働省の分類によると、セクハラには「対価型セクハラ」と「環境型セクハラ」があります。

「対価型セクハラ」とは、立場の上下を利用して労働者の意に反する性的な嫌がらせをおこない、労働者が抵抗や拒否等をしたことで、解雇、降格、減給など、客観的に見て不利な評価を与えるハラスメント行為です。

典型的な例としては、以下のものがあります。

  • 事業主によるセクハラ行為を拒否した労働者を解雇すること
  • 日頃から職場で性的発言をする上司に対して抗議した労働者を降格処分させること

対して、「環境型セクハラ」とは、職場での性的な嫌がらせによって就業環境が不快なものとなり、労働者の能力発揮に重大な悪影響が出ることをいいます。

具体的には以下の例が挙げられます。

  • 職場内にヌードポスターが貼られていることに労働者が苦痛を感じ、業務に専念できないこと
  • 職場内で日常的に性的な発言が繰り返され、労働者が苦痛を感じ、就労意欲を失っていること
  • 上司が部下の恋愛、結婚、出産に対して過剰に口出しすることで、職場環境を害していること

以上の2つの分類の他、現代ではSNSやチャットツールなどのやり取りが原因で起こる、「妄想型セクハラ」も増加しています。

業務時間外にプライベートなメッセージを送るケースが典型で、別名「思い込みセクハラ」と呼ばれるように、加害者側にセクハラの自覚がないことが特徴です。

また、職場内だけではなく、取引先や顧客からセクハラを受けるケースも問題となることがあります。

会社で注意すべきセクハラになり得る言動

体に触れたり、デートに誘ったりすることだけがセクハラではありません。 以下は、特に注意すべき言動です。

  • 「今日の服はデート用?」「メイクが気合い入ってるね」など、服装や容姿に関する発言
  • 「女なんだからお茶を淹れろ」など、性別による役割分担を押しつける発言
  • 褒めるつもりで頭を撫でる行為
  • 職場内での下ネタ発言
  • 「かわいいね」「セクシーだね」など、性的な魅力をほめる発言
  • 「そろそろ結婚しないの?」「行き遅れちゃうよ」など、年齢などを繰り返し指摘すること
  • 女性から男性へのボディタッチ

セクハラは加害者に加害意識が薄く、繰り返される傾向があります。

些細な一言でも、繰り返されると被害者に大きな精神的ストレスを与えてしまうでしょう。

実際にあったセクハラ事例

セクハラは、単に職場内の嫌がらせではありません。

ひどいケースではセクハラを受けた被害者が精神的な苦痛のために退職に追い込まれることや、精神的疾患を発症することもあります。

以下は、実際に裁判にまで発展したセクハラの事例です。

<事例1>

ホテルのフロントをしていた女性に対し、上司の男性が食事に誘い、性的行為を強要した結果、女性は体調を崩して退職を余儀なくされたケース。

裁判では、上司の男性に対して慰謝料110万円の損害賠償が命じられた。

<事例2>

勤務中に二人きりになったときのみ、代表者が女性職員の体を触る、抱きつく、毎月生理の日を聞くなどの性的嫌がらせを繰り返した。

女性職員が断固拒否したところ、代表者によって解雇されたケース。

裁判では、代表者に対して100万円の損害賠償が命じられた。

<事例3>

大学教授が被害者の学生に対し、飲み会の席で自分の隣に座ることを強制し、被害者の同意なく身体に触れる、抱きつく、キスをするなどの行為をおこなった。

被害者は精神的な苦痛から心療内科を受診するに至り、本件が明るみになってからも加害者の教授は自己を正当化し続けたケース。

裁判では、加害者の大学教授に対し、慰謝料120万円の支払いが命じられた。

セクハラを原因とした裁判では、被害者は、セクハラの加害者本人だけでなく、対策を講じなかった会社に対しても慰謝料を請求できます。

慰謝料額は数十万円から100万円程度が一般的です。

慰謝料関連の相談は慰謝料請求の無料電話相談とは?利用すべき人と注意点を徹底解説!をご覧ください。

パワハラの基礎知識

パワハラとは、パワーハラスメントの略で、2000年代前半に提唱された和製英語です。

特に日本では組織が閉鎖的であり、上下関係が固定されやすいという会社の特徴から、パワハラが発生しやすい背景があります。

以下で、パワハラの基礎知識と判断基準、実際の事例を紹介します。

パワハラは力関係を利用した嫌がらせ行為

パワハラとは、主に職場や学校などの組織内における力関係を利用した嫌がらせ行為全般を指します。

以下は、厚生労働省が示した、パワーハラスメントにあたる典型的な言動6種類です。

  1. 身体的な攻撃
  2. 精神的な攻撃
  3. 人間関係からの切り離し
  4. 過大な要求
  5. 過小な要求
  6. 個の侵害

パワハラは、身体的・精神的な攻撃の他にも、無視や仲間からの隔離なども含まれます。

また、明らかに遂行不能なことを押しつけたり、逆に能力に見合わない程度の低い仕事を与えたりすることもパワハラとみなされることがあります。

たとえば、以下のような例は、パワハラにあたる可能性が高いといえます。

  • 多数の面前で上司が部下を叱咤し、「給料分は働け!」など、人格を否定する言動を言う
  • 長時間、複数回にわたって度を越えた叱責を続ける
  • ミスをするたびに大量の反省文を書かせる

ただし、客観的に見て業務上必要である場合や適切な業務指導はパワハラには該当しません。

パワハラは、言動の経緯、状況など、さまざまな要素を加味して総合的に判断されます。

パワハラの判断基準は?

厚生労働省では、以下の3つを満たす行為をパワハラと定義しています。

  1. 優越的な関係を背景とした言動
  2. 業務上必要かつ相当な範囲を超えたもの
  3. 労働者の就業環境が害されるもの

前述の3つの定義を全て満たす行為はパワハラとみなされます。

優越的な関係とは、上司から部下へ、使用者から労働者への行為など、立場上抵抗や拒絶が困難な関係にあることを指します。

ただし、同僚間の行為や部下から上司に対する行為でも、集団による嫌がらせの場合や、言動を行う者が業務上豊富な知識や経験をもっている場合など、被害者が抵抗や拒絶が難しいものは「優越的な関係」があると認定されることもあります。

「業務上必要かつ相当な範囲」の基準は目的や行為がおこなわれた経緯や状況、頻度や継続性、または、被害者の属性や心理状態など、複数の要素を考慮し、総合的に判断されます。

パワハラの判断基準についてはパワハラの判断基準とは?|具体例や対処法について解説をご覧ください。

実際にあったパワハラ事例

パワハラは社内のいじめにとどまらず、裁判に発展する可能性もあります。 以下は、パワハラが実際に認められた裁判例です。

<事例1>

先輩看護師が後輩看護師に対し、家の掃除やパチンコの開店待ちなどをさせ、ことあるごとに「死ね」などの言葉で執拗ないじめをおこなった。

最終的に後輩看護師が、パワハラを苦に自殺したケース。

裁判所はパワハラを認め、不法行為責任を認定して慰謝料1,000万円を遺族に支払うよう命じた。

<事例2>

上司が、部下の接客中に笑顔が不十分だなどとし、会話練習を命じ、ポスターを丸めて頭部を30回殴打するなどの暴力行為をおこなったケース。

裁判所は上司の行為には違法性がないとはいえないと認め、慰謝料20万円の支払いを命じた。

パワハラの慰謝料についてはパワハラの慰謝料はどれくらい?うつ病になったときの相場や必要な手続きを解説をご覧ください。

セクハラ・パワハラに対する会社の義務

前述のとおり、職場において発生したセクシャルハラスメントについては、事業主は、労働者からの相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備をするなど、解決のための措置をとらなければなりません(男女雇用機会均等法第11条)。

2019年の法改正により、セクシャルハラスメント防止対策について、事業主に相談したこと等を理由とする不利益取扱いの禁止や自社の労働者が他社の労働者にセクシャルハラスメントを行った場合(取引先等へのセクハラの場合)の協力対応が加わりました。

パワーハラスメントについては、労働施策総合推進法(通称:パワハラ防止法)により、2019年6月1日から大企業には職場のハラスメント対策措置が義務付けられています。

また、2022年4月1日以降は、中小企業に対しても、パワハラ対策措置が義務づけられました。

そのため、職場でハラスメントが発生した場合には、加害者だけでなく、対策措置をとらなかった会社側も損害賠償請求の対象となります。

厚生労働省では、会社のとるべきハラスメント対策として、以下のような項目を挙げています。

  1. 事業主の方針等の明確化および周知・啓発
  2. 相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備
  3. 職場におけるパワハラに関する事後の迅速かつ適切な対応 その他、相談者のプライバシーに配慮する義務、相談を理由にその労働者に不利益な取扱いをしないことを定め、啓蒙する義務

参考:職場のセクシュアルハラスメント対策はあなたの義務です!!|厚生労働省 参考:労働施策総合推進法に基づく「パワーハラスメント防止措置」が中小企業の事業主にも義務化されます!|厚生労働省

セクハラ・パワハラへの効果的な対処法

実際にセクハラ・パワハラの被害者になってしまった場合には、以下のような対処法があります。

  • 会社内の相談窓口に相談
  • 労働局の雇用環境均等(部)室に相談
  • 解決しなければ弁護士に相談

会社側にはセクハラ・パワハラを始めとするハラスメント行為に対して対策を講じる義務があります。

社内に相談窓口があるなら一度そこに相談してみるのも一つの手段です。

ただし、小さな会社や、事業主からのハラスメントを受けている場合など、社内窓口では対応できない、あるいは解決が期待できないこともあるでしょう。

会社にハラスメント窓口がない、あっても解決が期待できない場合には、各地域の労働局が設置している雇用環境均等(部)室に相談するという方法もあります。

雇用環境均等(部)室とは、職場でのトラブル解決の援助のために、都道府県の労働局内に設置された相談窓口です。

相談することで、事業主に対する行政指導や紛争解決への援助をしてもらえます。

また、自力での解決が難しい場合には、法的措置の検討も含めて弁護士に相談することも検討しましょう。

労働局への相談はパワハラは労働局に相談できる?労働局の活用方法やその他の解決方法も紹介をご覧ください。

まとめ

セクハラ・パワハラに限らず、職場のハラスメントへの対策は、事業主に課せられた義務です。

パワハラ・セクハラを受けたら、まずは社内の窓口に相談するか、労働局の雇用環境均等室に相談しましょう。

セクハラ・パワハラは単に職場内の問題ではありません。

ときに暴行や脅迫、強制わいせつや傷害などの刑事罰にも発展する大きな問題です。

会社に頼れない、一人で声を上げる勇気がないという方は、ぜひ一度弁護士に相談してみてください。

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編集部
本記事はベンナビを運営する株式会社アシロが企画・編集をおこないました。
  • ※ベンナビに掲載されているコラムは、必ずしも弁護士が執筆したものではありません。
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