セクハラの慰謝料請求を弁護士へ相談する際に知っておくべきこと
セクハラは違法行為です。
悪質なセクハラは、セクハラ加害者や企業に対して慰謝料請求を行うことができます。
今回はセクハラ被害による慰謝料の相場と請求方法、そしてセクハラ行為で問われる可能性のある罪についてまとめました。
セクハラに困っている場合の相談先
セクハラ被害にあったら、まず相談することからはじめてください。
セクハラは相談をすること自体、勇気がいることだと思います。
しかし、相談するということはセクハラの解決に向かって自ら努力をした証拠にもなります。
主な相談先は次のとおりです。
- 社内のセクハラ相談窓口
- 社外のセクハラ相談窓口
- セクハラで慰謝料請求をするなら弁護士に相談
セクハラを理由に慰謝料請求したい、セクハラ被害に悩んでいる方は弁護士に相談することをおすすめします。
セクハラを理由に慰謝料請求する場合、訴訟に発展することがあります。
訴訟は弁護士の力が必要不可欠です。
セクハラの慰謝料請求の弁護士費用相場
職場でのセクハラ行為について慰謝料請求を弁護士に依頼する際にかかる弁護士費用は事務所毎に異なります。
ただ、一定の目安としては下表の通りです。
相談料 |
5000円~/時(無料) |
着手金 |
10~30万程度 |
成功報酬 |
経済的利益の20~30% |
日当や交通費・郵送代等の実費 |
状況に応じて変動 |
成功報酬の部分での経済的利益とは、一般的には弁護士に依頼した結果として確保できた利益額の事を指します。
例えば弁護士に依頼した結果、200万円の慰謝料が支払われたという場合の経済的利益は200万円となります。
ただし、経済的利益を実際に支払われれた金額をいうのか、権利として確定した場合の金額をいうのかは、事務所毎に異なりますので、依頼先によく確認しましょう。
弁護士への慰謝料相談は慰謝料請求の無料電話相談とは?利用すべき人と注意点を徹底解説!をご覧ください。
セクハラの種類と違法性
セクハラは、男女雇用機会均等法に違反する、違法性の高いハラスメントです。
厚生労働省はセクハラを「対価型セクハラ」と「環境型セクハラ」に分類し、企業にセクハラ防止措置を取るよう義務付けています。
セクハラの種類
セクハラとは、相手の意に反する「性的な言動」によって不快感を与え、職場環境を悪化させるハラスメントです。
厚生労働省ではセクハラを「対価型セクハラ」と「環境型セクハラ」の2種類に分類して定義しています。
セクハラの違法性
セクハラは、上記の法律に違反するため、違法性が高いといわれており、企業はセクハラの防止措置をとる義務があるとされています。
第十一条 事業主は、職場において行われる性的な言動に対するその雇用する労働者の対応により当該労働者がその労働条件につき不利益を受け、又は当該性的な言動により当該労働者の就業環境が害されることのないよう、当該労働者からの相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備その他の雇用管理上必要な措置を講じなければならない。
引用元:男女雇用機会均等法第十一条より引用
セクハラは、上記の法律に違反するため、違法性が高いといわれています。
企業はセクハラの防止措置をとる義務があるとされています。
セクハラは、セクハラの加害者だけでなく、企業の責任も問われる問題なのです。
悪質なセクハラは刑事裁判にもなる
肉体関係を強要されたなどの場合は、強姦罪が成立し刑事事件としてセクハラ加害者への刑事告訴、民事上の慰謝料請求を行うことができます。
例えば、肉体関係や性的行為を強制させた場合は、強姦罪や強制わいせつにあたり慰謝料が1,000万円を超えることもあります。
刑事事件についての相談は刑事事件について無料で電話相談できる弁護士の探し方|無料相談するメリットも解説をご覧ください。
セクハラは罪に問われる可能性もある
問われる可能性のある罪 | セクハラの例 |
公然わいせつ罪 | ・上司が職場にヌードポスターなどを掲示した ・上司が男性部下に裸芸を強要して、周囲が不快に思った |
強制わいせつ罪 強姦罪 |
・上司や同僚などが身体を触ってきた ・昇進や降格などを対価に性交渉などを強要した |
傷害罪 暴行罪 強姦罪 |
・性交渉や身体を触ってくることに抵抗したら殴られた・合意なしに性交渉をした、またはしようとした |
名誉毀損罪 侮辱罪 |
・性差別などの言動によって不快な思いをした |
セクハラはさまざまな罪に問われる可能性があります。
また、セクハラによって働けなくなった、精神疾患などになったという場合は損害賠償を請求されることもあります。
セクハラは企業にも責任がある
先の項目でもお伝えしましたが、セクハラは企業(会社)も責任を問われることがあります。
男女雇用機会均等法でも、事業主(企業)はセクハラに適切な対応をするための体制整備を行わなければならないとしています。
もしも、セクハラを企業に相談したのに解決のための措置を取らない、セクハラを把握していながら見て見ぬ振りをしたという場合、企業はセクハラの防止措置を怠ったとして責任を問われることになります。
セクハラの被害で請求が可能な慰謝料の相場
セクハラによって肉体的・精神的苦痛を与えられたり、働けなくなったなどの損害が出た場合はセクハラ被害による慰謝料請求をすることが可能です。
この項目ではセクハラの慰謝料の相場や訴訟事例をご紹介します。
セクハラの慰謝料の相場
セクハラ被害による慰謝料の相場は50〜300万円と言われています。
ただ、セクハラによる慰謝料はセクハラの内容や損害の程度によって大きく差が出ます。
また、セクハラによる慰謝料の請求は、セクハラ加害者だけでなく使用者(企業)にも支払い責任が発生することがあります。
以下ではケース別にセクハラ被害の相場をお伝えします。
セクハラによって会社を退職した場合
セクハラによって会社を退職した場合は、セクハラがなければ仕事を辞めずに済んだはずですから慰謝料も高くなります。
セクハラによって会社を退職した場合の慰謝料の相場は、100〜300万円程度です。
セクハラによって不利益が生じた(退職まではしていない)場合
会社を退職しないまでも、セクハラによって精神的苦痛を与えられたり、不利益が生じた場合の慰謝料の相場は50〜100万円程度です。
セクハラの慰謝料は、セクハラ加害者の立場(役職や職場での優位性)や、セクハラ行為に対して企業が行なった措置によって金額が左右されます。
セクハラ加害者が役員などで立場が優位であったり、企業がセクハラ行為を黙認していたなどの場合は慰謝料も高額になることが考えられます。
セクハラ慰謝料に影響を与える要素
職場でのセクハラ行為の慰謝料額はセクシャル・ハラスメントの悪質性に応じて判断されます。
このような悪質性は以下のような事項を考慮して評価されるのが一般的です。
加害者・被害者の社内での立場・関係
加害者・被害者の職場での立場や関係は、行為の悪質性を考える上で重要です。
例えば、加害者が管理職である場合には、本来は他社員の手本となるべき者であるため、そのような者によるセクシャル・ハラスメントは悪質と言えます。
また、加害者が被害者の人事権を掌握しているような場合には、職場での優越的な地位を背景とする行為としてやはり悪質と言えます。
行為の態様、期間、頻度
セクハラ行為の態様がどのようなものであったか、セクハラがどの程度の期間継続されていたか、実際のセクハラ行為がどの程度の頻度で行われていたかも、悪質性を考慮する上では重要です。
例えば、行為態様が殊更性的なものであったり、行為期間が長期間に及んでいたり、頻度が多数回であるような場合には、悪質との評価を受けやすいことはわかりやすいと思います。
セクハラによる結果の有無
セクハラ行為を受けた結果、被害者がどのような被害を被ったかも重要です。
例えば、セクハラ行為の結果、被害者が職場にいられなくなり退職したというような場合や被害者が精神不調に陥って通院を余儀なくされたという場合には、行為が悪質との評価を受けやすいと言えるでしょう。
セクハラの慰謝料請求の証拠
セクハラ行為について慰謝料を請求するためには、被害者側でセクハラ行為があったことを立証する必要があります。
また、証拠はセクハラを理由に慰謝料請求するというだけでなく、セクハラの相談をする際にも非常に重要になりますので、セクハラ被害にあったと思ったら少しずつ証拠集めをしましょう。
このような証拠としては以下のような証拠が考えられます。
メール等
セクハラ的な言動がメール等でされている場合やセクハラ行為をしたことを自認するようなメールは証拠になります。
セクハラ発言はLINEで送られることもあると思います。
発言や、やりとりの内容をスクリーンショットなどで保存しておくか印刷をするなどして手元に残しておきましょう。
このようなメール等は不快であるとして削除しがちですが、証拠として確保しておくことを推奨します。
映像、録音
セクハラ行為についての映像データ(防犯カメラ映像等)やセクハラ発言を録音した音声データも証拠になります。
もっとも、このような映像データは行為自体が写っていなければ意味がありません。
また、音声データは発言があった部分を切り取るのではなく、前後の会話の状況が分かるような形で残すことが望ましいと言えます。
日記やメモ
被害者が日々のセクハラ被害について継続的に記録した日記やメモも証拠になり得ます。
上記のメールや音声に比べれば証明力は低いですが、内容が具体的であり(日時・場所・行為内容が具体的に記録されている)、かつ日々機械的に記録されているようなものであれば、それなりに証明力があるといえます。
セクハラの記録日記をつける際に記載するべき点は以下の通りです。
- 「いつ(日時)」
- 「どこで」
- 「誰によって」
- 「どんなことをされたか」
- 「どうなったか(セクハラによって出た支障)」
逆に言えば、内容が抽象的であったり、日々記録されたものではなく後日記憶に基づいて作成されたものは、あまり証拠になりませんので、注意しましょう。
セクハラ被害記録ノートは、可能な限りボールペンなどの筆記具で直筆し、改ざんなどがされていないということも証明しましょう。
第三者の供述
職場内の第三者の供述もセクハラ行為の証拠となります。
もっとも、被害者の親族や友人の伝聞供述は信用性が低いと評価されやすいため、できれば同じ職場で直接セクハラ行為を目撃した者の供述を確保したいところです。
医師の診療記録(カルテ)
セクハラ被害により精神不調に陥り、心療内科等を受診しているのであれば、その診療記録がセクハラ行為の証拠となることがあります。
例えば、医師にセクハラ被害を受けているい事を具体的に申告していれば、医師はその旨をカルテに記録することが多いです。
このようなカルテはセクハラ被害を受けていた当時の被害者供述として証拠となり得ます。
セクハラで慰謝料を獲得できた裁判例
事例 横浜地裁1995年3月24日
女性社員が、同じ会社の上司から抱きつかれるなどのセクハラ行為を受け、その後セクハラ行為を理由として退職した。
女性は、セクハラ加害者(上司)と企業に対し損害賠償請求を行なった。
結果
一審では「20分もの長時間、上司のなすがままにされていたこと」から、合意である可能性があるとして棄却された。
その後、控訴審判では、強姦被害者の対処行動などの研究などから合意ではないと判断され、セクハラ加害者(上司)と企業に慰謝料275万の支払いが命じられた。
参照元:「横浜セクシャル・ハラスメント事件|セクハラ110番」
セクハラを理由に慰謝料を請求する手順
セクハラを社内や社外の相談窓口に相談しても解決されなかったり、悪質なセクハラによって働けなくなったなどの損害が発生した場合はセクハラを理由に慰謝料請求することができます。
この項目では、セクハラを理由に慰謝料請求をする大まかな手順を以下にまとめました。
セクハラの証拠を集める
セクハラ行為があったことを立証するために、まずは上述したようなセクハラの証拠を収集しましょう。
セクハラ行為をはっきりと拒絶する
セクハラ行為は、曖昧に拒否してしまうと「合意があった」と取られてしまうことがあります。
セクハラ加害者に「セクハラ行為はやめてほしい」と、はっきりと拒絶したという事実が重要です。
拒絶の意思はなるべく多くの人が見ているところで行うとより効果的です。
企業に内容証明郵便を送る
拒絶しているのにセクハラ加害者がセクハラ行為をやめない、セクハラの証拠は押さえてあるという場合は、企業にセクハラ被害を内容証明郵便で送りましょう。
内容証明郵便とは、郵便局が送った文書の内容を証明してくれるサービスです。
内容証明郵便を送ることで、「言った・言わない」というトラブルが回避できます。
セクハラで内容証明郵便を送る際は「差止め要求書」などでセクハラ被害の内容を詳細に記載するようにしてください。
企業(セクハラ加害者)と交渉をする
企業に送った内容証明郵便を元に、企業とセクハラ解決のために交渉をしましょう。
交渉の際は、セクハラ加害者との直接交渉を避けるようにしましょう。
企業にセクハラの証拠を提出するよう求められた場合は、コピーを提出して原本は自分の手元に残しておくようにしてください。
なお、セクハラ被害を弁護士に相談した場合は、企業との交渉も代理で行うことができます。
セクハラ加害者を訴える
企業にセクハラ被害を相談しても取り合ってくれなかった、セクハラ被害がおさまらない、セクハラによって働けなくなるなど損害が出たという時は、セクハラ加害者本人を訴えることも考えましょう。
加害者を直接訴える場合は弁護士への相談をおすすめします。
逆セクハラでも訴える事が可能
セクハラは男性から女性に行われるハラスメントというイメージがありますが、近年では女性から男性に行われる「逆セクハラ」というのも話題になっています。
逆セクハラの例としては「だから彼女できないんだよ」といったものから、飲み会などで服を脱がされる、更衣室のドアを開けられるなどがあります。
同性であってもセクハラは訴えられる
セクハラは同性間であっても成立します。
同性間でのセクハラの例としては、キャバクラなどの風俗に無理やり連れて行かれる、同性に身体を触られたなどがあります。
同性だから問題にならないということはありません。
同性間のセクハラで裁判に発展したものもあります。
2016年、厚生労働省は男女雇用機会均等法の指針を改正し、同性でもセクハラに該当するということを明言しています。
同性でも、上記のようなセクハラ行為を受けたのであれば、十分に訴えることができるのです。
まとめ
セクハラは許されない行為です。
セクハラにあったら、必ず相談することからはじめてください。
また、相談をしても取り合ってもらえない、セクハラ被害がおさまらないという場合は訴えることも可能です。
悪質なセクハラに悩まれている方は弁護士に相談し、セクハラを理由に訴えるということも考えてみてください。