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養育費は税金控除対象?所得税・贈与税は?必要な手続きも紹介

弁護士監修記事
離婚トラブル
2023年02月21日
2024年10月09日
養育費は税金控除対象?所得税・贈与税は?必要な手続きも紹介
この記事を監修した弁護士
原 千広弁護士 (日暮里中央法律会計事務所)
東京大学法科大学院修了。東京弁護士会所属。離婚・相続等の家族案件から労働・国際案件まで幅広く携わり、Yahoo!ニュース等の記事監修も手がける。(※本コラムにおける、法理論に関する部分のみを監修)
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離婚後、養育費を支払っていたり、受け取っていたりしている方の中には、「支払っている養育費は扶養控除できる?」「受け取っている養育費に所得税や贈与税はかかる?」と疑問をお持ちの方もいるでしょう。

養育費を支払っている場合、支払義務者は一定の条件のもと扶養控除を受け得るうえ、受け取っている側に所得税や贈与税はかかりません。

しかし、場合によっては扶養控除の対象とならない可能性もあります。

この記事では、養育費の税金控除等について、支払う側・受け取る側のそれぞれの視点から解説します。

加えて、養育費の税金控除とあわせて知っておきたい、税金対策や制度を紹介するので、養育費を支払っている方や受け取っている方は、ぜひ参考にしてください。

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支払う側は扶養控除で税金対策ができる

養育費支払義務者は、一定の条件を満たすことで扶養控除を受けることができます。

扶養控除とは、16歳以上の子どもや両親など、所得が一定金額以下の親族を養っている場合に受けることができる税金控除の一つです。

所得税・住民税の計算は、年間の所得に対して累進課税の割合をかけることで算出できます。

所得金額から控除され金額が小さくなることで、累進課税の割合が小さくなったり、計算後の税金額が圧縮されたりします。

扶養控除が認められるための条件

子どもに関連して扶養控除を受けるためには、養っている親族が「扶養親族」と認められる必要があります。

扶養親族となるための条件は下記5つです。

①本人との続柄が下記のいずれかに当てはまること

  • 配偶者を除く親族(6親等内の血族および3親等内の姻族)であること
  • 里子(都道府県知事から養育を委託された児童)であること

②生計を一にしていること

「生計を一にしている」という要件は、子どもの塾などの学費、その他家賃や食費・医療費といった生活していくための費用を、同一の原資から支出している場合に認められます。

同居していることは必須ではありませんので、養育費を送金している場合も含まれえます。

【参考サイト】国税庁|生計を一にするかどうかの判定(養育費の負担)

③年間の収入・所得が基準以下であること

被扶養者の所得が、給与のみの場合給与収入が103万円以下、それ以外であれば合計所得が48万円以下の場合、扶養親族と認められます。

④自営業者の事業専従者ではないこと

自営業者の事業専従者である場合、扶養親族とは認められません。

ただし、青色申告の場合、専従者として実際に給与が支払われた場合に限ります。

⑤16歳以上であること

その年の12月31日時点で16歳未満の子どもは扶養親族とは認められません。

【参考サイト】国税庁|No.1180 扶養控除

養育費を扶養控除できないケース

養育費支払義務の対象となる子どもにつき扶養控除できないケースとしては、下記3パターンが考えられます。

それぞれ解説していきます。

  • 子どもが16歳未満の場合
  • 一括で養育費を支払った場合
  • 扶養が重複した場合

子どもが16歳未満の場合

子どもが16歳未満の場合、扶養親族の要件を満たさないため扶養控除の対象となりません。

ただし、16歳未満の子どもについては児童手当が給付されます。

【参考サイト】児童手当制度のご案内|こども家庭庁

一括で養育費を支払った場合

たとえば離婚時に慰謝料と共に養育費を一括で支払った場合、原則として扶養控除が受けられません。

扶養親族の要件である「生計を一にする」にあたらないとされるためです。

一方で、信託契約を結び委託先に一括で支払った場合は例外として扱われる可能性があります。

信託契約とは、信託銀行などの機関に財産の管理運用を委託する契約をいいます。

子どもが受益者として設定され、委託先の機関から毎月養育費が送られている場合、当初は一括で委託先に支払っていたとしても、その期間は扶養しているものとして認められます。

ただし、信託により収益が得られている場合、その収益は子どもの所得として扱われるため、収益が高額となり子どもが扶養から外れてしまう可能性もあることには、注意が必要です。

扶養が重複した場合

扶養の重複とは、両親どちらもが扶養控除を申請してしまうことです。

この場合、原則として、先に申請したほうのみが扶養控除の対象となります。

扶養控除は1人の子どもに対して1人の親しか適用できません。

離婚してどちらも働いている場合、どちらが扶養控除を申請するかあらかじめ決めておきましょう。

基本的には所得が多いほうに控除を適用したほうが、全体の手取り額は大きくなります。

定期的に状況を確認して調整できるようにしておくとより安心です。

なお、子どもが2人いる場合は、両親が子どもそれぞれ1人ずつを扶養に入れることで、両親とも扶養控除を受けることが可能です。

離婚時によくトラブルになるので、事前にどちらがどちらの扶養に入れるのか決めておきましょう。

養育費の扶養控除額はいくらまで?

養育費を扶養控除に出す場合、扶養控除額は以下2つのケースに分かれます。

扶養家族 扶養控除額
控除対象扶養親族(16歳以上) 38万円
特定扶養親族(19歳以上23歳未満) 63万円

それぞれ年齢で区分されているので、しっかり申請できるように以下の解説をチェックしておきましょう。

控除対象扶養親族

控除対象扶養親族は16歳以上の子どもに対して適用されます。

6親等内の血族および3親等内の姻族であれば適用されるほか、いわゆる里子も対象となります。

特定扶養親族

特定扶養親族とは、19歳以上23歳未満の子どもを扶養しているときに利用できる控除です。

一般的に、養育費は子どもが成人するまで支払うというのが慣例となっています。

しかし、大学進学等の事情でまとまった所得を得られないこともあり、その際に養育費の支払いを求められることもあります。

こうしたケースでは、特定扶養親族として申請することで、63万円の所得控除が受けられます。

【参考サイト】国税庁|No.1180 扶養控除

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受け取る側も養育費は贈与税・所得税の非課税対象

養育費を受け取る側の方の中には、養育費が所得税・贈与税などの課税対象ではないかと心配になる方もいるのではないでしょうか。

基本的には、養育費はそれらの課税対象にはなりません。

また、所得制限も特にないので、安心して受け取ってください。ちなみに、離婚した場合の慰謝料も課税対象外です。

しかし、下記のケースでは所得として扱われ、課税対象になりえる可能性があります。

滅多にあることではありませんが、念のため注意しておきましょう。

著しく多額だった場合

養育費は本来、生活や医療といった子どもが生きて成長していくための資金の、分担金として支払われるものです。

このため、生活に必要だと思われる金額から著しく乖離した多額の送金は贈与として扱われ、贈与税の対象となる恐れがあります。

一括して養育費を支払った場合にも贈与税の課税対象とされる可能性があります。

なお、「生活に必要だと思われる金額」については明確な基準がありません。

万が一税務署などから「乖離している」と指摘された場合、塾などの学費、部活動で必要な道具・旅費といったもので必要であると証明できるように、レシートや契約書などを保存しておきましょう。

扶養控除以外の節税

養育費を貰う・支払う場合において、扶養控除以外にできる節税を紹介します。

できるだけ金銭的な負担を減らすためにも、ぜひ押さえておきましょう。

寡婦控除(かふこうじょ)を利用する

寡婦控除とは、一定の要件を満たした女性が、27万円分の所得控除をすることができる制度をいいます。

寡婦控除を利用するための条件は下記のとおりです。

  • 夫と離婚したあと再婚しておらず扶養親族がいるか又は死別後に再婚していない
  • 合計所得金額が500万以下

基礎控除と同じように所得を圧縮できるので、対象となる方は必ず利用しましょう。

なお、寡婦控除を受けられるのは女性のみです。条件には「夫」との死別・離婚とありますが、「夫」とは民法上の婚姻関係にある男性を指します。

日本は法律上同性婚は認められていないため、女性のみが受けられるのです。

【参考サイト】国税庁|No.1170 寡婦控除

ひとり親控除を利用する

ひとり親控除は、男女問わず一定の要件を満たせば利用できる所得控除です。

35万円と寡婦控除よりも控除額が多くなっていますが、寡婦控除と併用することはできません。

ひとり親控除を受けるための条件は下記のとおりです。

申請する対象年の12月31日時点で「婚姻していない者」または「配偶者の生死の明らかでない一定の者」のうち、下記4つの要件全てを満たしていること

  • 事実婚またはそれと同等の事情があると認められる人物がいないこと
  • 生計を一にする子どもがいること
  • 子どもの総所得金額が48万円以下で、かつ、ほかの人の同一生計配偶者や扶養親族になっていないこと
  • 合計所得が500万円以下であること

たとえば離婚後、新たな交際相手もおらず、子どもが扶養に入っていて、所得金額500万円以下の方であればひとり親控除の対象となります。

一般的に、所得が大きければ大きいほど税率も高くなる(累進課税)ため、所得が大きい方の親が所得控除を利用した方が、恩恵も大きくなります。

しかし、所得の大きさに関わらず、元妻と元夫のどちらが活用するのが最終的に手取り額が大きくなるか、しっかりシミュレーションをしておきましょう。

【参考サイト】国税庁|No.1171 ひとり親控除

勤労学生控除

子ども自身が納税者の場合についての制度ですが、子どもが学生で、アルバイトなどで所得を得ている場合、勤労学生控除を利用して27万円の所得控除ができる可能性があります。

勤労学生控除の対象となるには、下記の点を満たしているがあります。

  • 給与などの勤労による所得があること
  • 合計所得金額が75万円以下で、かつ勤労以外の所得が10万円以下であること
  • 特定の学校の学生、生徒であること

特定の学校とは、学校教育法に規定する小学校・中学校・高等学校・大学・高等専門学校などのことで、一般に「学生」と呼ばれる人たちなら概ね対象です。

たとえば、アルバイトなどで130万円の給与収入がある場合、給与所得控除後の所得は75万円となりますので、勤労学生控除対象となります。

【参考サイト】国税庁|No.1175 勤労学生控除

税金控除の申告手続き

税金控除の手続きには、サラリーマンがおこなう年末調整と一般的に自営業者などがおこなう確定申告の2つがあります。

それぞれ解説していきます。

年末調整|会社にお勤めの方

年末調整とはサラリーマンやアルバイトなどの給与所得者が、自身の所得に関して所得税の過不足の精算をおこなう手続きをいいます。

源泉徴収は、年間を通して給与が毎月同じ金額であることを前提として計算されるため、年の途中で給与の変動があった場合、最終的な税負担額と源泉徴収金額とが合致しないことがあります。

このため、申告をして還付や追徴を受ける手続きが必要となりますので、下記をご参照ください。

年末調整における扶養控除

年末調整で扶養控除を申告する場合、会社から渡される給与所得者扶養控除等(異動)申告書に正しく記入しなければなりません。

令和5年の申告書は下記のとおりになっています。

【参考サイト】令和5年分の給与所得者扶養控除等(異動)申告書

16歳以上の子どもを扶養している場合、「B控除対象扶養親族」に記載をします。

特定扶養親族などについてもこちらに記入します。

なお、寡婦控除・ひとり親控除・勤労学生控除の対象となる場合、「C障害者、寡婦、ひとり親又は勤労学生」の欄に記載をすればOKです。

【参考サイト】国税庁│[手続名]給与所得者の扶養控除等の(異動)申告

確定申告|自営業・フリーランスの方

確定申告は、青色申告と白色申告に分かれています。

基本的に自営業の方や不動産等による所得がある方は確定申告をしなければなりません。

青色申告は開業届などを提出している人が税制上の優遇を受けるための確定申告です。

青色申告の場合、複式簿記等の方式により帳簿を作成しなければなりません。

確定申告の際には損益計算書と貸借対照表、そして控除証明のための書類等が必要です。

白色申告の場合、収支内訳書といういわば簡単な計算のまとめ書類と控除を証明する書類があればOKです。

確定申告における扶養控除

確定申告で扶養控除を受けるのに、扶養者が国内に住んでいれば特に書類は不要ですが、海外に居住している親族を扶養の対象とする場合には、親族関係書類や送金関係書類を求められます。

このほか、社会保険料控除や生命保険料控除といった控除を利用する際は、扶養者やご自身の控除証明書が必要です。

これらは時期になれば通常は加入先から送付されますので、保存しておきましょう。

青色・白色申告ともに、確定申告書Bで手続きができます。

第一表の左下「所得から差し引かれる金額」のところに、各種控除金額を記入することになります。

基礎控除や扶養控除といった控除項目がここに記載されます。

【参考サイト】
国税庁│確定申告の際にご持参いただくもの
国税庁│確定申告書の記載例

まとめ|お金の相談はプロに相談を

16歳未満の子どもには扶養控除ができない代わりに、児童手当が支給されます。

このほか、諸制度を利用することで税金対策ができ、手元に残る資金を少しでも多くできます。

養育費を払う人・貰う人が協力し合うことで実現できることもあるので、よく話し合いましょう。

難しい話も多いので、弁護士や税理士といった専門家に間に入ってもらうのも有効な手段です。

また養育費の減額や相談に関しては弁護士に養育費減額を無料相談できる窓口を紹介!費用やメリットも解説をご覧ください。

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編集部
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